Altered Notes

Something New.

宇垣美里 マイメロ論の普遍妥当性

2020-02-01 22:52:52 | 人物
少し前のことだが、宇垣美里さんのいわゆる「マイメロ論」が話題になり多くの共感を得たことがある。

マイメロ論とは、宇垣さんにふりかかる不当な言論など不条理を感じるような事態への対処方法である。これについて宇垣さんご自身は次のような見解を自身のコラムやトーク番組の中で述べている。

「ふりかかってくる災難やどうしようもない理不尽を、一つひとつ自主的に受け止めるには、人生は長すぎる」

という前提の上で、しかしそこからいかに逃れるかを考えた時に

「そんなときは『私はマイメロだよ~☆ 難しいことはよくわかんないし、イチゴ食べたいでーす』って思えば、たいていのことはどうでもよくなる」

という(一見、素っ頓狂だが)画期的な手段で不条理とも思える状況からの逃避・解放を成し遂げるのである。

この話は多くの若い女性を中心に共感の輪を広げたようだ。それは宇垣さんのこの見解が現代社会に於ける普遍妥当性を持ち得ているからであろう。また、番組の中でこの話を聞いたくりぃむしちゅーの有田哲平氏は大爆笑しながら全面的に宇垣さんに賛同して「その話、さんま御殿でしてほしい」とまで発言したのであった。


宇垣さんのこの見解がいかに普遍的価値を持ち、人として妥当なものであるかを担保するものとして現代における知の巨人として知られる解剖学者の養老孟司氏の見解を紹介したい。

養老氏はジャズピアニスト山下洋輔氏との対談(NHK Eテレ「SWITCHインタビュー達人達」)に於いて次のように述べている。

昆虫は相互のコミュニケーション方法として匂い・アクション・音など各種の手段を持っている。中でも音を駆使した手段に養老氏は注目する。音とは「振動」であり、これはコミュニケーション手段として実に相応しい。なぜなら音は出した次の瞬間にすぐ消えてしまうから即刻リセットできる。音(振動)は最も後腐れのないコミュニケーション手段だ、と。昆虫が音を出す時、我々は「音でコミュニケーションしている」と捉えるが、実は「振動でコミュニケーションしている」という解釈が最も実態に合致しているようだ。

養老孟司氏は続けて・・・

「だから私は人間もそのように捉えていて、悪口を言われた時は『所詮空気の振動だ』と思うようにしています」

「あれ(悪口)は何か意味があると思うから怒るのであって、『また空気が振動してる』で終わりですよ」

・・・と述べている。

こうした養老孟司氏の見解は、自分に対して行われる不条理かつ無意味で無益な働きかけに依る自分の精神の無駄な疲弊や消耗を防止する一種の防衛手段として認められるものであり、すなわち宇垣美里さんがマイメロ論で述べた趣旨と軌を一にするものである。そこには普遍妥当性がある、と言えるだろう。


宇垣さんのマイメロ論に対して興味本位かつ面白半分で報じ、突飛でもない”変なこと”として見ることで、あたかも宇垣さんが奇異な人であるかのような扱い方をするケースもあったようだ。たまたまサンリオのアニメ・漫画キャラクターを引き合いに出した事で、そのギャップに困惑する人もいたかもしれない。しかし宇垣さんが言わんとしている内容をきちんと受け取るならばそこに養老孟司氏の発言同様の普遍妥当性を見い出す事は容易である。それでも”変だ”と主張する向きは恐らくはじめから悪意があるのだろうし、そうでなければよほど頭が悪いか、である。最初から妙な色眼鏡で見てくる人にはどのような真実も歪んで見えるだろうし決して正しく伝わる事はないのである。


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※トップの画像はTBS「有田哲平の夢なら醒めないで」(2019年2月)から

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