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路線バスが「使えない」理由

2020-02-19 22:28:58 | 社会・政治
太川陽介氏と蛭子能収氏のコンビに依る「路線バス乗り継ぎの旅」などのTV番組でおなじみの路線バスだが、バス業界全体の様相を見ると、利用者が思うようには伸びず苦しんでいるようである。

なぜそうなのか?

単純な話、路線バスの情報が広く周知されていないからである。路線バスがその地域の何処をどのように走っていて、どの程度の間隔でダイヤが組まれているのか、その「情報」があまねく知らされていないからだ。つまり路線自体が認知されていない事が最大の要因である。

そこで大きな障害になるのがバス会社毎の縦割り意識だ。
太川&蛭子バス旅ではしばしばバス会社の案内所やバス運転手に(この先の)路線を尋ねる、という場面が出てくる。しかし「此処から先は他社路線になるのでわかりません」と言われて行き止まりになるケースが多い。バス会社は自社の路線の情報しか持っていなくて、他社路線の情報について全く知らないケースが多い。確かに、もしも他社路線について間違った情報を与えてしまったら責任の取りようがないから、という事はあるだろうが、しかしそれでは利用者は困るのだ。利用者はあのバス会社、このバス会社という意識はない。そんなことは利用者の知ったことではない。「目的地までどうしたらたどり着けるのか」これが肝心なのである。しかしバス会社はバス路線を運行する自社の都合や事情しか考慮しない。だから他社路線バスがいくら近接した地域を運行していても、その情報を知ろうとすらしない。結果として利用者は真に有益な情報(目的地にどうやってたどり着くかの情報)が得られす、結果としてバス利用を取りやめることになる。

これでは駄目だろう。現状では利用者目線が全く無いと言っても過言ではない。利用者は自分が目的地に向かう為にどんなバス路線をどのように乗り継げば良いのか知りたいのであって、バス会社の別を超えた情報が欲しいのである。格好良い言葉で言えば「ソリューションを提示してほしい」のだ。しかもバス会社横断的に、だ。バス会社を意識することなく利用できれば乗客はちゃんと目的地に着けるし、「後でまた利用しよう」ということにもなる。しかし現状ではそれは全く実現できていない。(*1)

バス利用者数が伸びない最大の要因がここにある。利用者目線の欠如とバス会社同士の横の連携が全然取れていない事。利用者にとって「目的地にどうやったらたどり着けるのか」を示すソリューションの提示ができてないこと・・・である。なぜそうなってしまったか? それは路線バスについての情報普及・広報についての意識が低すぎる(無さ過ぎる)こと・・・これである。

各バス会社同士が横の連携をしっかり持ち常に運行情報を共有して、いつでも何処でも利用者に対して多角的に柔軟に情報を提供できることが肝心なのである。利用者が最も欲しい情報はそれなのだから。これが可能になれば利用者は間違いなく伸びるだろう。

鉄道は路線が比較的よく知られており、路線を知るための情報にもたどり着きやすい。従って利用者は自分の目的地に向かってどの路線をどう利用すればいいのかが把握しやすい。しかしバスの路線情報、しかも自分が今必要としている情報にたどり着くのは鉄道に比較するとかなり面倒で難しい場面すらある。おまけにバス会社自身がそうした基本的な情報を広く知らせる意志が希薄で、やる気もなさそうである。(*2)

逆に言えば、ここにバス利用者を革命的に増やす為のヒントがある。バスを利用したい人に必要なバス情報(特に路線図)が会社の区別なくすぐに得られる(現在の鉄道並みに)ようにすれば、これは大きな力になるものと思われる。地方ではお馴染みのコミュニティバスも含めて路線や時刻表の情報が容易に得られれば利用者にとってもありがたいことである。例えば、今までは鉄道を利用して大回りで目的地に向かっていたのが、バス路線が明確になればもっと近道が存在することが判って早く到着できるようになる、というケースも多々出てくるであろう。

鉄道には路線図というものがあり、比較的容易にそれを参照することができる。利用者は路線図を俯瞰することで総合的に直感的に任意のA地点からB地点へどのようにたどり着けるかが把握しやすい。しかしバスの場合は利用者目線に立った路線図がすぐに参照できる訳ではないので、目的地までのルートの把握が極めて難しいのである。特に地方のコミュニティバスの場合はその傾向が強い。

各バス会社同士がうまく連携して情報の共有と利用者への明確かつフレキシブルな情報提供ができれば、バス利用者も飛躍的に増加させることができる可能性は高い。



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(*1)
鉄道の場合は基本的に自社路線しか案内していないが、接続する関連路線などは他社線であっても示されるケースは多い。そして、鉄道路線の存在は一般的な地図にも明示されるほど大きな存在として普遍的に知られているものなので、利用者は複数の鉄道会社を同時に俯瞰した路線やルートを想像しやすいところがバスとは異なるのである。バスの場合は地図上にその路線が明示されるわけでもなく、あくまでバス運行会社に問い合わせ(WEB調べ含む)ないと、どの路線が何処に存在しているかも判らない。これを複数のバス会社にまたがって利用者が調べて目的地までの路線(ルート)のイメージを形成するのは結構大変なことだ。太川蛭子コンビが毎回苦労していた訳である。


(*2)
交通網が発達している東京のバス路線ですらそうである。東京にはバス路線がかなり沢山存在するのだが、何処にどんな路線があるか一般にはあまり知られていない。鉄道ではたどり着けない地域・場所も少なくないのでバス路線情報が広く認知されれば利用する人はかなり多い筈だ。前述の通り、東京のバスの路線網はかなりキメが細かいのでかなり利用価値は高いのである。