Altered Notes

Something New.

ビッグバンド・ジャズ・ドラミング

2019-11-13 01:02:12 | 音楽
ビッグバンド・ジャズの面白さのひとつは圧倒的なダイナミズムであり、それはグルーヴするリズムセクションと輝くサウンドを聴かせるホーンセクションのアンサンブルが織りなす総合力である。そしてジャズでビッグバンドと言えばなんと言ってもデューク・エリントン・オーケストラとカウント・ベイシー・オーケストラが双璧として有名であることは間違いないだろう。

今回はカウント・ベイシー・オーケストラのライブ映像を紹介する。

COUNT BASIE ´68 - THE MAGIC FLEA

1968年、ドイツはベルリンでのコンサート映像である。曲は「マジックフリー」。サミー・ネスティコの作曲で1968年のアルバム「ベイシー・ストレート・アヘッド」に収録されている。非常に速いテンポで演奏されるスリリングでダイナミックな曲である。

バンド全体が素晴らしい演奏を繰り広げるのだが、ここで筆者が敢えて推したいポイントはドラムである。大所帯のビッグバンドをリズムで支え全体を鼓舞するドラムの魅力が爆発しているのである。

聴いていただければお判りと思うが、エディー”ロックジョウ”デイビスのテナーソロ開始直前のアンサンブルとテナーソロが終わった後の後半のアンサンブルに於けるハロルド・ジョーンズのドラムプレイは凄まじいものがある。

超速いテンポの4ビートリズムで強力にグルーヴし、ビッグバンドならではの細かい決め所を確実にビシバシ決めていく迫力は否応なく音楽的な興奮にリスナーを巻き込んでゆく。技術が凄いだけではこうした演奏にはならない。卓越したリズム感とスイング感覚、そしてドラムという打楽器を音楽的に叩くセンスの問題である。

また、これだけ凄い演奏にも関わらず、ハロルド・ジョーンズは必要最低限の力しか使っていない。決してシャカリキに力んでいる訳ではなく余裕で演奏しているのだ。

そしてこの演奏が音楽の喜びに満ちているのは極めて優秀なホーンセクションの存在があってこそである。ビッグバンドは総合力だ。ドラムの良さが際立つのもメンバー全員が非常に優れた演奏力を持っているからにほかならない。

このフィルム映像では後半はハロルド・ジョーンズのドラム演奏にスポットが当たるので視覚的にも捉えやすくなっている。このフィルムの制作者は音楽を良く判っている、と言えよう。

過去にこの演奏映像の視聴ができたYoutubeページに於いても
”Great drumming by Harold Jones”
というキャプションが付けられていた。それで判るように、ハロルド・ジョーンズのドラミングが全編の白眉として挙げられるのは当然だろう。

見れば判るように彼のドラムセッティングはとてもオーソドックスである。(いわゆる3点セットと呼ばれる標準的なセッティング)しかしそこから繰り出される演奏は唯一無二の凄みと味わいがある。バンドの良し悪しを最終的に決定づけるのはドラムの出来次第であることが良く判ると思う。ハロルド・ジョーンズのドラムはこの時期のカウント・ベイシー・オーケストラが持っていたかけがえのない宝と言えよう。