Altered Notes

Something New.

シリア内戦での化学兵器使用問題とその影響

2013-08-28 21:00:58 | 国際
シリア内戦で化学兵器が使用されたとされる問題である。
この事件で1300人が死亡と反政府側が発表した。(8/21)

化学兵器が使用されたその詳細な模様は日本では放送されていないが、ネット上や海外のTVではどこでも放送されている。子どもたちが泡吹いて倒れていく様はむごたらしいものであり、だからこそ怒りが盛り上がっているのだが…問題は
「誰が犯人かわからない」
という点である。
わからないのに米英仏などは
「犯人はアサド政権だ」
と決めてかかっている。
現在は国連の調査団がシリア入りして、現場にこれから行く、という段階である。

アサド政権側としては
「我々は国連の調査団も受け入れているじゃないか」
「現場にも行かせようとしている」
と言っており、何がいけないのか?というスタンスである。

しかし米英は
「調査を受け入れるのが5日遅れた」
と言うのだが意味がよくわからない。

事件が起きたのは先週の水曜日である。
二日後には証拠集めをすると言って、それで来週には空爆するとイギリスは言っているのだがまだ何も解明されていない段階でそれはいくらなんでも無茶苦茶ではないだろうか。
米英は「(アサド政権側が化学兵器を使った)証拠がある」と言っているが、公には何も開示されてはいない。
既に米のミサイル駆逐艦4隻が攻撃態勢に入っており英国も同様である。
米英はなぜこれほどまでに急ぐのだろうか?



客観的には米英は強引に開戦に持って行こうとしているように見える。
なによりも国際社会の前提として「侵略戦争はやってはいけない」ことになっている。一方的な武力行使はやってはいけないのだ。やはり国連安保理できちんと決議するのがルールである。安保理は即日招集はされたのだが決議はされていない。だからこのまま突っ走るとなると一方的な武力行使ということになってしまう。しかしイギリスのヘイグ外相は決議なしで軍事行動
が可能と発言している。これは米英共通の姿勢である。
27日にはケリー国務長官が「シリアが化学兵器使使用」と断定して記者会見した。
これについてロシアは「深刻な結果を招く」(ラブロフ外相)として強く批判している。




仮に軍事行動を開始するにしても「何をするのか?」という話である。ここはよくよく考えなければならない。
相手(アサド政権側)は本当に化学兵器を持っている、と仮定して考えてみよう。しかも大量に持っているとすると、そこにどのようにして軍事介入するのだろうか?

フランスのファビウス外相は既に「軍事介入するぞ」と発言したのだが、しかし「地上軍は派遣しません」とも言っている。本当に化学兵器を使われると自軍の兵士が殺される事になるので、当然ながら地上軍は投入できないのである。だから空爆するしかない、という結論になる。


核兵器の施設や通常兵器の大きなプラントであれば、攻撃目標としてわかりやすく明確にできるが、しかし化学兵器は小分けして保存することが可能なのだ。(オウムのサリンのようなもの。小さな容器、例えばビニール袋等でも保存可能)なので、それを国中に分散して保存していたらどうやって攻撃するのか?
その場合、ミサイルで破壊ということにもできない上に、もしミサイルを打ち込んだらその周辺一帯は化学兵器のガスが充満することになり、軍民関係なく周辺の無関係な住民が多く死亡
するような悲惨な事態になりかねない。軍に何の関係もない被害者が出るので攻撃を仕掛けられない、ということである。

ここに化学兵器のジレンマがある。




実はアメリカ政府の拙速をよそにアメリカの世論はずっと平静でノーマルなようだ。

ロイターによる調査によれば
「オバマ政権はシリアに軍事介入すべき」
とする意見はわずか9%である。

逆に
「拙速な軍事介入に反対」
とする意見は60%に達している。


ところが問題はそれだけでは済まないようである。

ズビグニュー・ブレジンスキーという超大物戦略家でカーター政権の時の安全保障補佐官だった人物がいる。この人が大変な重大な告発を6月にしている。

「サウジアラビア カタールと欧米同盟諸国が シリア危機を工作している」
(2013/06/29発言)


つまりCIAなどが入り込んで、わざわざ問題を煽っている、と言うのだ。情報工作をしてわざわざやっている、と言っているのである。

実はアメリカはこの点で前科がたくさんある。
代表的な事例を挙げる。

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<米国が過去に自作自演で軍事介入 政府を転覆した事例>

1953年 イラン・クーデター

1964年 トンキン湾事件

2003年 イラク戦争

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1953年にイランでクーデターがあった。当時はモサッデク政権があったのだが、それが転覆されてパーレビ国王が政権をとることになったクーデターである。
これについて今年の8月20日(つい先日、である)、アメリカの公文書が公開されて
「これはCIAがやりました」
とする内容の文書が正式に公開された。なので 100% 間違いないと言える。

1964年にはトンキン湾事件があった。これはアメリカの駆逐艦がベトナムのトンキン湾で北ベトナムに攻撃を受けた、として、それを理由にして北ベトナムを攻撃したのである。
しかしこれはでっち上げ(自作自演)であった。アメリカのジャーナリストたちがそれを暴いたのである。

そして2003年のイラク戦争である。これは記憶にも新しい。米政府はイラクが大量破壊兵器を持っていると言い張って戦争に突入した。しかしその結果は御存知の通り、実際は持ってなかったのである。



ここまでお読みになってきてこれらの話が「日本には関係ないこと」と思ったら実は大間違いである。



安倍内閣は大急ぎで集団的自衛権行使容認をやろうとしている。
従来は「集団的自衛権」は憲法9条があるので「できません」という伝統的な解釈になっていた。

しかし今回「行使容認派」の小松一郎氏(元駐仏大使)が内閣法制局長官に就任した。前の山本氏という内閣法制局長官の首を切って小松氏にすげ替えて行使容認の方向に持って行こうとしているのである。

政府では「防衛出動」に加えて、首相の指示による
「集団的自衛出動」
を検討している。

「集団的自衛出動」とは何か?という疑問は当然である。
たしかに今まで聞いたことがない言葉である。
「防衛出動」は急迫不正の侵害があったら憲法9条があっても防衛しますよ、ということであり、これはこれまでも「合憲である」と解釈されてきた。
ところがここへきて「集団的自衛出動」という言葉が突然出てきた。我々は聞いたことがない言葉である。
集団的自衛出動というのは「自衛権」の行使とは少し異なっていて、要するに自分たちの同盟国が何かあった時には何でもかんでも出動するということを意味している。とにかく自動的に出動する、ということだ。
それを有識者会議が年内にもサクっとまとめて提言案を出して、それを首相の一任でやってしまおう、というようなことなのである。

これはとんでもないことである。
今、化学兵器がばら撒かれている戦場に日本も行くことになってしまうのだ。しかもアメリカだって莫大な戦費がかかるので躊躇している戦争である。その戦費を日本に押し付けようとしている思惑も米政府にはあるのだ。
これでいいのだろうか?



お判りのように、米英が戦争に持ち込もうとしている理由・根拠は10年前のイラク戦争と一緒である。10年前はまだ信頼されたかもしれないが、当時の実態が周知された今ではみんながしらけているのだ。

そして・・・莫大な戦費がかかるとなると日本においては確実に増税の方向に進むことになる。
その為の消費税増税、ということでもあるのだ。