Altered Notes

Something New.

アルジェリア人質事件を理解する

2013-02-09 06:26:22 | 社会・政治
アルジェリア人質事件に関連して「イギリスが秘密情報部MI6派遣」というニュースが流れた。
これはイナメナスのガス田を襲撃した武装勢力のリーダーの捜索をイギリスが主導したい狙いがあると思われる。
(MI6は旧称で、今はSISと呼ばれる。)

今回の人質事件は、そこだけを注目しても何も理解はできない。
背景を知る必要がある。

第一幕はフランスのマリへの侵攻である。
それに対する第二幕として今回の事件が発生した、ということ。
北アフリカ全体で何が起きているかを知っていないと正確な理解には至らない。

人質襲撃事件においては、三重の警備体制がしかれていたにも関わらず、事件が起きた、とか、敷地内の警備員が銃を持たず丸腰だったことがけしからん、等の意見がある。
しかしすべてを警備可能を考えるのは無理がある。

問題は「人」である。
土地が広大だから警備しきれない等の物理的な問題ではなく、「人」が問題。人間を全てチェックすることは不可能である。
いくら不安だからといって現地人の雇用を全くしないということはできないのである。
全てをチェックできるはずと考えるのはイスラムに対する無理解がある故であろう。

イスラムの人間は人のつながりを重要視している。
皆が繋がっているし、同じイスラム教徒として皆が同胞であるという考え方をしている。

同胞が攻撃されれば、どうやってそれに報いるかを考える。
日本や西欧ではそうしたことは刑事事件として国家が裁くと考えられている。しかしイスラムではこれは民事なのである。
血の報復というのがあるが、すなわち仇討ちである。
自分たちの手でやり返す・・・それは神の裁きと同等のものとして
捉えられている。

こうしたイスラムの考え方を基本事項として理解していないといけない。
やられたら必ずやり返すのである。
そして人間の繋がりが深く煩雑であり大切に考えられているということは、今回のような事件において誰がクロで誰がシロかの判定を難しくする。
人のつながりのどこまでがクロなのか判断が難しいのである。
いわゆるグレーゾーンになってくる。

イスラムの社会に入るということはその人間関係の中に入るということである。そこをなるべく傷つけず、脅かさない配慮が必要である。
もし力づくで物事を進めれば確実にイスラムの恨みを買うことになる。

アルジェリア政府はこの事件について事前に情報を得ていたようだが結果として事前に手を打つことはできなかった。

このアルジェリア事件は、アメリカの9.11以降、ブッシュ政権が「対テロ戦争」として進めてきたケースと酷似してきたのが気になる。

今回の人質事件が起きた時、イギリスのキャメロン首相などは「何十年も続く戦争が始まった」と発言している。
これは9.11の後でブッシュ政権の副大統領だったチェイニー氏が言った言葉と同じなのだ。