居残り佐平次(フランキー堺)
「女郎宿 居残る才も 初春まで」
海光
お正月の恒例行事のひとつ、新春映画を2つ鑑賞した
その1つが「幕末太陽傳」。日活の製作再開3周年作品であり、創立100周年に選ばれた記念作品である。
監督は孤高、川島雄三。この作品のメガホンを最後に日活と袂を別ったのに、この度の選択に不思議なご縁を感じる。だが、そのおかげで、逸品に出会えた。日活の英断に感謝せねばなるまい。
あっしの職場から刊行された藤本義一「無条件幸福論」には、数奇な師弟だった川島とのいきさつが書かれている。珍しく共感することの多い新書であったことを付け加えておく。
女郎おそめ役(左幸子) 女郎こはる役(南田洋子)
主役の佐平次の講釈といい、立ち回りといい、じつに痛快なこと。
主演した喜劇俳優、フランキー堺は天才ですな。
左幸子演ずるおそめは小憎らしいほどの美貌で観客を魅了するが、こはる役の南田洋子に完全に食われていた。妖艶でさばさばと快活な遊女の本質を見事に演じていたと思う。
立っているだけで絵になる裕次郎演じる高杉に至っては、寝そべっているシーンが多かった。日活のスターである彼が、フランキー堺に主役の座を譲り、脇役に徹したのも、彼の演技力を考えての川島の妙案だろう。二谷英明のギタギタした感じもよい。ほかに、若衆喜助こと岡田真澄、小沢昭一、山岡久乃、金子信雄、菅井きん、小林旭、西村晃、役者が揃っている。
昨年2度歩いた東海道とその第1の宿場町、品川宿がじつによく描かれている。
旧い関東をうまく表現した雪の降りしきる街道を、鈴が森の御仕置場まで、痩せた馬に裸同然で乗せられ、また陰鬱に警護し、付き従う囚人たちの哀れなシーンが今でも目に焼きついている。
幕末の宿場町なぞもちろん見たことなどないが、史実から思い浮かべる映像の本物加減!?に、誤解を恐れず云えば、心を奪われてしまった。
鈴が森のお仕置場
この看板に下に、実際に使われた、火あぶりの台石と磔の台石が置かれている。
小説家岡本綺堂も書いた、八百屋お七もここで焼かれたと云われる。17年ほど前、地下鉄に毒を巻きたくさんの犠牲者を出し、今もなお苦しめている教祖もどきがこの時代に生きていたらと思ってしまう。
駅伝の見学のついでに、鈴が森の御仕置場にいってみた。昼日中だからよいものを、薄ら寒い、得体の知れない不穏がそこかしこに纏っていた。
思わず、付き合ってくれた家族とともに、お賽銭を投げ入れ、手を合わせる。お寺で子どもたちがみかんとお菓子をもらった。
子どもたちがこの処刑場に生るみかんじゃないよな、と心配していた。
初春の陽だまりに実る果実の樹に、隔世の思いを抱く。
高杉晋作役(石原裕次郎)
名作「幕末太陽傳」。恐らくこれから何度も観返すことになるだろう。ご興味ある方には間違いなく、お薦めの1作である
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今年も宜しくお願いいたします。
海さまのブログは、今年も絶好調ですね。
お江戸の歴史を垣間見ながら、今の東京を知る。そんな感じですね。
幕末太陽傳。なんとも懐かしい俳優さんの名前に感動です。
高杉晋作さまのお写真には、もう絶句!なんと絵のようなお方ですね。
タイムトリップしたよで・・・初春の夢のようです。
物語も、こんな魅力のある作品が書けるとよいのですが。。。ちょっと頭の中もお正月休みボケしています。
10日に帰国しましたら、ばりばり・・頑張ります。頑張ろう。頑張るつもり・・・気持ちだけは夏より熱いのですがねぇ・・・飛びたい。。。
明けましておめでとうございます。
新年早々、ブログをお褒め頂き、嬉しい限りです。幕末太陽傳は、古典落語の「居残り佐平次」を川島監督が映画化したのです。着想が素晴らしいですよねえ。旅籠屋にいる飯盛り女。あっしも一度こんなどんちゃん騒ぎしてみたいものだ。年末年始は結局行事が多く、創作に当てられたのは二日。何とか書き終えたので、これからじっくり推敲していきやす。前作までとかなり赴きが変わるのでみなさんの反応が愉しみでありやす。
魔女っ子マッチさんも腕を奮ってくださいまし。新世代!?で季節風に新風を吹き込みましょう(笑)。
今年もよろしくお願い申し上げます