週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

おとりさま

2012年11月23日 | ★江戸っ子エッセイ★

 
                一の酉(鷲神社境内にて)

 この活況ぶりが伝わるだろうか
 
 今年も霜月(11月)の8、20の酉の日に、市が開催された。

 暦ではいわゆる二の酉で、両日とも好天に恵まれ、不景気風の吹く最中、たいへんな賑わいでござった。

 葛飾郡の花又の大明神から起こった酉の市も、新吉原の新の市になってから隆盛を極めたといわれている。祭神は天日鷲神 日本武尊。鷲神は天手力男神の息子で、弦という楽器を司っており、その弦の先に鷲が止まったので、ここから開運をもたらすと祀られるようになったそうな。

 幼い頃、いまより広範囲の道路が通行止めになった。家のまん前の車道で寝そべることがとにかく嬉しかった。ロウ石で丸や四角を書いて、いろんな遊びに興じたものだ。大きな熊手や湯気を立てた頭芋を手に、道をゆく人々の顔もホクホクして温かかった。

  

 会社帰りの遅い時刻(酉の市は深夜0時まで)でも人の波は途切れない。

 通勤の自転車を降り、長國寺に向かうと、長蛇の列である。

 その波に流されるように、逆らうように掻き分けて進むと鷲神社の社がみえた。

  

   

 運を掻っ込もうと、でっかい熊手が我が物顔に往来する。

 其角が詠む、「春をまつことのはじめや酉の市」。

 八つ頭の芋は縁起もの。

 かつての下谷田圃に、あわもち、切山椒と並んで、どれも霜月の市の風物詩だ。

   
  
  

 中央図書館にある熊手、森下みの家にある熊手もでっかいが、さすが本家本元、鷲神社正面にかけられた熊手の巨大さは度肝を抜く。

  
                 鷲神社の巨大熊手

 福福しいお多福顔が、日本の美。忘れちゃ困る江戸の粋。

 鷲神社そばの記念館では、一葉祭りが開催中である。

 観音裏の一葉桜には、一斉にイルミネーションが輝き、スカイツリーと競演している。

 もう一つ、昨日弊社刊U字工事の刊行記念のサイン会があった浅草東武ビル(松屋上)の屋上に、お神輿が飾られている。ここでも、スカイツリーと2ショットするチャンスですぞ。

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           二の酉(巣鴨大鳥神社)

 二の酉は、昼の散歩と会社帰りに巣鴨の大鳥神社に寄ってみた。

 普段、ひっそりと佇む社だが、この日ばかりは、ご近所さんで賑わっていた。

 旬を感じることの大切さを、まだまだ日本人は持っている。

  
               大鳥神社(夜)

  
          秋田肉巻きりたんぽの屋台

 珍しかったので、パチリ。秋田名物のB級グルメ。

 屋台を冷やかす笑顔が、人の心を明るくさせる。

 鷲大明神も、きっとどこかで弦を奏でていらっしゃることだろう。

 おいらはせいぜい言葉を選んで、書物で闇を照らすことができたらと思う。紡いだ文章に鷲が止まるかどうかは、この先の精進にかかっている。

 毎度のこと。やるしかないのだ。やるしか。

 今年も残すは、師走、浅草の羽子板市

 12月17、18、19日に開催される予定。

 しめか、飾りか、橙か、雑器に、木鉢に、摺子木に、火打ち石や、火打鎌、五徳…。

 江戸の正月前は大忙し、いまの比でなかったはず。心ばかりが急いて、いっこうに身の回りが片付かない。ご先祖さまが見たら、さぞ嘆くことであろう。

 穏やかなる正月を迎えるべく、師走の準備に取り掛かりたい

  
  
 
   
     「江戸の市愚痴を売っては売れ残り」 海光