10月のこと
同人の大会作品をレポートするため、どうしても観ておいたほうがいいな、という映画に出会ってしまった。
それが園子温監督の希望の国である。
直近ではヒミズが話題となった。国際的にも国内のクリエーターたちにも評価の高い監督だが、おいらはこの作品が初めての鑑賞である。
あの震災から随分経ったようで、まだ一年半だ。人の気持ちは移ろいやすい。それを的確に表現した作品だった。
衝撃を通り越した映像を見てからその後、時折特集されるドキュメンタリーを無意識に避けるように生きていた。いつのまにか……。
あの日からかの土地では不条理、理不尽、矛盾が有象無象に渦巻き、血の通う人間の尊厳を踏みにじってきた。
過去は消えない。ただだからといって過去に生きるのではなく、流されず傷や思い出や悔しさや不条理を忘れずに進む大切さを教えてくれる作品である。
映画のあと、原作も読んでみた。撮影の舞台裏も書かれている。撮影の前後ですら変化する監督はじめ、スタッフ、家族の行動とセリフがリアルに伝わって、人間の強靭さと狡さを考えさせられた。
多くは語るまい。おいらにはそんな資格も無いだろう。
ただ、おいらも考えていたことを、あさのさんも思っていたんだ、とすんなり心に入ってきた。
それぞれのあの日。それを語らず、伝えずして何が物書きか。
それぞれの物語に向き合おう
「そぞろ寒言葉に宿る温かさ」 海光