田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

砂浜のハマベコムシヒキ

2009-06-25 | ハエ目(双翅目)
ハマベコムシヒキ
2009.6.23 ムシヒキアブ科のハマベコムシヒキ Stichopogon infuscatus Bezzi, 1910

津市河芸町の芦原海岸でハネボシスナニクバエの観察をしていたら、同じくらいの大きさで白っぽい感じのハエが動いているのが眼に入った。初めて見るハエだ。砂浜にひざまづいて彼らの動きを追いかけた。
ハエはハマベコムシヒキと判った。
ハマベと名の付くものがあると、私は浜辺に住んでいる人間だから当然出会えるもんだという気がしている。ハマベコムシヒキも以前から会いたいと思っていたハエなのではあるが、手持ちの図鑑には載っていない。ネット検索しても和名では画像が出てこない。とにかく小さなムシヒキアブという程度のイメージしか持っていなかった。
やっと会えた。
人に会いたいという気持ちはだんだん薄らいできているが、見たことの無い生き物との出会いは期待している。

三重県のレッドデータブックでは情報不足、京都府では要注目種としている。
自然状態の残る砂浜海岸に広く分布しているようで、典型的な海浜性の種。環境指標性が高い。身体は灰白色で、腹部背面に黒色の斑紋がある。体長は6mmくらい。
こんなに小さいにもかかわらず、ムシヒキアブなのであるから、生きて動いている虫たちを襲って、捕らえて体液を吸っているものと思われる。直翅目の幼虫やクモ類を捕らえた目撃情報もある。

type localityは台湾産。日本では鹿児島県市木町、鹿児島市谷山、鹿児島県佐多町大泊、鹿児島県鹿屋市、佐賀県唐津市虹ノ松原など九州の各地に生息しているとされていたが、その後、兵庫県淡路島南部の海岸と兵庫県北部から鳥取県にかけての海岸、鳥取砂丘、徳島県の吉野川河口、信濃川、神奈川県、茨城県と次から次へと生息が確認されてきている。石狩市の石狩川河口でも見つかっているようだ。
ハエ屋さんたちに人気があるのか、「はなあぶ」という機関紙に盛んに登場している。
三重県内では鼓ケ浦海岸で採集されている。『鈴鹿市の自然』によると「小型のムシヒキアブで、海浜性。最近本州から記録された種で自然度の高い環境に見られるが個体数は比較的多い。」
町屋海岸での生息も確認されていたように記憶している。

ハマベコムシヒキに関する文献は、
Nagatomi, A. 1983. The Japanese Stichopogon (Diptera, Asilidae). Kontyu, 51(3):474-486
Ohishi, H. 2002. Stichopogon infuscatus Bezzi new to Kyoto, Japan (Diptera: Asilidae). –Hana abu 13: 37 [Japanese].
Satou, N. 2005. Photographic report on Stichopogon infuscatus Bezzi. – Hana abu 19: 47-49,cover [Japanese].
Ichige, K. 2005. Stichopogon infuscatus Bezzi new to Ibaraki Pref. Japan. – Hana abu 19: 22 [Japanese].
脇 一郎.2006.ハマベコムシヒキを神奈川県で採集.はなあぶ 22: 80

ハマベコムシヒキ
2009.6.24

ハマベコムシヒキ
2009.6.24

ハマベコムシヒキの生息する芦原海岸
ハマベコムシヒキの生息する芦原海岸 海浜植物が疎らに生えている。


2009.7.6 豊津海岸でヨコバイの仲間を捕らえたハマベコムシヒキ


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