庭で見つけたハエ。体長は5ミリを超える程度。植木鉢の類に静止していたが、すぐに逃げられて、どこへ向かっていったのか眼で追うことが出来なかった。
こんなハエは今まで図鑑でさえ見たことが無いので、研究者にお尋ねした。
三枝豊平先生から寄せられたコメントは
「アシナガバエ科の1種で、ホソアシナガバエ亜科SciapodinaeのSciapus属の1種です。
未記載種か既知種かの判定は私にはできません。しかし、本種またはこれにきわめて類似した種は海岸などの乾いた砂地の砂上またはそのような場所の植生上を生活場所にしているものです。
Sciapusの種は一般に光沢ある金緑色ですが、本種は灰色の霞がかかったような色彩で、砂上に静止しているときは、大変砂と紛らわしく、見つけにくいものです。また、Sciapodinaeのほとんどすべての種は草や背の低い樹木の葉上を生活場所にしており、湿地などの関連が少ないものです。
Sciapus属のハエはこれから高温期になると、林縁などの日当たりのよい広い草本類や潅木の葉の上で活発に活動しているのが、ごく普通に観察できます。緑の多い場所では人家の庭先にも普通にいます。日本に相当多数の種が生息していますが、ほとんど未研究です。
草の上を活発に歩いたり、すぐ別の葉に移動するので、撮影は必ずしも簡単ではないでしょう。これらは草の上にいる小型の軟弱な昆虫(アブラムシ、コナジラミなど)を捕らえて摂食します。摂食中は比較的動きがないのでこのようなチャンスを狙うといい写真がとれるでしょう。」
新訂原色昆虫大図鑑にはSciapus属なんて1種も載っていない。「ホソアシナガバエ亜科の種は日本列島に相当数生息するが、研究はほとんど進んでいない。ホソアシナガバエ亜科の属の分類は従来安定していない。」との記述を見つけただけである。
ネット検索をしてもホソアシナガバエ亜科なんて1件もヒットしなかったが、三枝先生から次のようなコメントをいただいて事情が飲み込めた。
「Sciapodinaeの和名はヒゲナガアシナガバエ亜科の名称もあります。これは触角刺毛が他のアシナガバエ科の種に比べて細く長いことに基づいているのでしょう。私は本亜科の種が細長い腹部と著しく細い脚をもつことからホソアシナガバエ亜科と呼んでいます。」
三枝先生はある画像掲示板にて「日本列島に著しく多数(数十から数百種)の未記載種・未記録種がある科」のひとつにアシナガバエ科をあげている。
おそらく名前はまだ無いのだろう。この地味な装いではあるが、気品さえ感じさせられるスレンダーなハエが2009.5.6 13時過ぎに津市河芸町の我家に現れたことだけは確かなことである。
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