田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ハマベバエ科のハマベバエ

2009-03-03 | ハエ目(双翅目)
ハマベバエ
庭で一匹の見慣れぬハエを見つけた。赤みのある6本の脚を広げて止まっている様子から逞しさを感じる。
研究者の方々にお聞きした。
後脚の第1付節が細長いので、Sphaeroceridaeではないと言う。
seaweed flyとかKelp flyと呼ばれているハマベバエに間違いないとのことである。
Coelopa属には数種あり、日本産に用いられているC. frigidaはおそらく適当ではないのだろうと言う。
ハマベバエは海岸に打ち上げられた湿った海藻に依存していて、幼虫は腐敗しつつある海藻類を食べて育つと言う。
それを聞いて思い出した。去年の夏にビニール袋いっぱいの海藻を採集してきて、標本にし切れなかったのを洗面器に入れたまま庭に放置しておいたことを。きっと、この海藻が腐敗してハマベバエがやってきたのではないかと合点した。

参考文献を拾い読みしたら、
「海水苦汁(にがり)より臭素を製造する際に副生する油状の高沸点部分が,ある種のハエに強い誘引作用を示すことを見出し,後にこのハエは,農技研・福原楢男氏によりハマベバエCoelopa frigida Fab.と同定された。ハマベバエは海岸の海藻・貝類死骸堆積物等に発生し,近年とくに一部のカキ生産地帯では,その大発生が公害問題にまで発展している。」

「海岸に打ち寄せられた海藻で繁殖し、潮の干満に従って集団として移動し、時に冬季~春季に市街地、灯火に飛来することはヨーロッパで古くから知られている。そして、芳香族の有機化合物トリクロルエチレンに強く誘引され、海岸付近の工場に進入して被害をもたらすことも報告されている。」

また、有明海に面した造船所で塗装中のペイントに飛来して、そのままくっついて死んでしまい、作業に障害を及ぼしたとの報告がある。
海岸から20km離れた大学で、クロロホルムを使用する研究室へ多数の成虫が飛来して進入した報告がある。
海岸から6km離れた印刷工場のトルエンに多数飛来した報告がある。
養殖のノリ網に付着する多量の腐敗ノリで大発生する報告がある。
風の流れに向かって集団的に動くことが観察されている。
などを知った。

上宮氏の論文は冒頭に「ハマベバエ Coelopa (Fucomyia) frigida (Fabricius),(after Gorodkov,1985)」と書き出されている。

『世界文化生物大図鑑 昆虫1』では学名がFucomyia frigida Fabriciusとしてあり、「体長5~5.5mm、体は褐色、背腹に扁平で腹部、脚などに強剛毛がある。日本全土に分布し、北日本に多い。」と解説している。

九大目録ではハマベバエ科(Coelopidae)はハマベバエの一種のみで、学名はCoelopa frigida (Fabricius.1805)となっている。

参考文献
上宮健吉(1987):有機化合物のハマベバエに対する誘引性.衛生動物Vol.38, No.3 pp. 179-186.
松本義明,西川 周,田中康雄(1966):ハマベバエの誘引物質について.日本応用昆虫学会大会講演要旨,26.
宮武頼夫,馬野正雄(1978):船をおそうハマベバエ.Nature Study,24(6):10-11.

2009.2.26

ハマベバエ
ツツジの葉上にて

ハマベバエ
アジサイの茎にて

ハマベバエ



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