田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

マエグロツリアブの新たな生息地

2009-07-09 | ツリアブ
津市河芸町内の砂浜海岸にマエグロツリアブの生息地が点在していることは、これまでの調査で分かっている。このほど、生息地調査の範囲を拡大してみたところ、あらたな生息地が確認できたのでメモっておく。
河芸町の豊津海岸から南に続く白塚海岸、さらに南の町屋海岸でも生息を確認した。また、鈴鹿市の鼓ケ浦海岸でも生息を確認した。

マエグロツリアブが棲んでおりそうな所ばかりを探しているので、私の眼にはマエグロツリアブの姿がたくさん見えている。鈴鹿と津の両市にまたがる海岸一帯におそらく数百頭が生息していると感じている。クロバネツリアブの姿はこれらの海岸ではマエグロツリアブの10分の1くらいしか見かけない。また、スキバツリアブとなると更に少ない数である。3種のうち、マエグロツリアブだけは集団でいることが多い。特に寝場所ではその傾向が良く出ている。もっとも、集団から離れて単独で寝る個体も良く見かける。クロバネツリアブとスキバツリアブはほとんど単独で寝ている。クロバネツリアブが2頭で寝ているのを一度だけ見たことがある。

鈴鹿市の鼓ケ浦海岸には必ず生息していると思っていた。なぜなら、『鈴鹿市の自然』にクロバネツリアブとした標本写真が載っているが、翅脈の様子から私はマエグロツリアブだと思っている。あれは間違いなく、誤同定である。鈴鹿市の担当者を通じて同定された方には私の声が届いたようであるが、「類似種がいるけれども、写真の個体は間違いなくクロバネツリアブである」との返答が帰ってきた。それでも私は、今なおあれは誤同定であると思っている。私がこれまで見てきたマエグロツリアブの翅脈と全く同じであり、クロバネツリアブのそれとは絶対に異なっている。また、地元の小学生が採集したクロバネツリアブの標本は13頭が記録されているが、あのすばしっこいクロバネツリアブが小学生にそう容易く捕らえられるとは思えないし、13頭もあの海岸にまとまって生息しているとは到底思えない。、『鈴鹿市の自然』に記録されているクロバネツリアブのほとんどはマエグロツリアブであろうと私は思っている。標本を見ないで思っているだけだが。

白塚海岸
津市の白塚海岸 2009.6.30
伊勢湾随一、奥行きのある砂浜。この辺りは自然のままで、50年前の風景と変わっていない。

白塚海岸
津市の白塚海岸 
この辺りはグラウンドが造成されたりして山土が入れられるなど人の手が入っている。また、松の木をどんどん植えている人がいる。こんな雑草の間にもマエグロツリアブが優雅に飛んでいる。ヤブガラシが花を咲かせていた。
クロバネツリアブ
白塚海岸のクロバネツリアブ 2009.6.30

マエグロツリアブ
白塚海岸のマエグロツリアブ 2009.6.30

スキバツリアブ
白塚海岸のスキバツリアブ 2009.6.30
腹部は第1節以外の各節背面に短い黄色鱗毛による横帯を生じると図鑑には載っているが、この個体も黄色鱗毛ではない。なぜだ。

町屋海岸
津市栗真町の町屋海岸 2009.7.8
三重大学の裏にある砂浜海岸だが、自治会からの協力要請を受け、地元の栗真小学校が卒業記念に毎年松の植樹を子供たちにさせている。砂浜がどんどん消えて、堤防からは砂浜が見えないどころか、海さえもがだんだん見えなくなってきている。原野のような様相となっているが、ヤブガラシの周辺を探せば、マエグロツリアブに出会える。ハチ類も多いので、それなりの覚悟が要る。

マエグロツリアブ
町屋海岸のマエグロツリアブ 2009.7.8

鼓ケ浦海岸
鈴鹿市の鼓ケ浦海岸 2009.7.8
地元の鼓ケ浦小学校、白子小学校、鼓ケ浦中学校などが例年卒業記念の松植樹を行っている。鈴鹿ライオンズクラブの植えた松林には「環境保全活動植樹」という看板が立っていた。長い砂浜が続くが、確実に松の森が増えていっている。

鼓ケ浦海岸
鈴鹿市の鼓ケ浦海岸
マエグロツリアブの生息を確認したが、ヤブガラシは生えていない。

マエグロツリアブ
鼓ケ浦海岸のマエグロツリアブ♂ 2009.7.8


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