
クモバチ科のハイイロクモバチ Pompilus cinereus (Fabricius)
津市北部の砂浜海岸。町屋海岸から河芸の海岸にかけて,海浜植物が生えている砂浜を忙しそうに歩き回っている小さなクモバチがいる。探せば,砂浜のあちこちに彼らの巣穴がいくつも見つかる。オオフタバムグラが群生している砂浜であろうと,ハマボウフウ・コウボウシバ・ハマニガナの群落であろうが,変わりなく彼らは暮らしているように感じられる。
この日は一つの巣穴に2頭のクモバチが入れ替わりながら巣穴を掘ったり,出入りしているのを見つけた。
ハイイロクモバチだと思う。三重県内では未記録種ではなかろうか。
新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると,ハイイロクモバチは「体長♀5~14㎜,♂4~7.5㎜。黒色。顕著な灰白色の微毛を密布し,特に腹部の各背板後方では幅広い帯斑となる。各脚脛節の距は乳白色。頬(♀♂)や前胸側板,前脚基節(♀)に白色長毛が密生する。翅は透明で,前翅の外縁は幅広く曇る。海浜や川岸に棲み,各種徘徊性のクモを狩り,これを前進運搬する。獲物をいったん砂中に隠してから,単房巣を掘る。分布:本州・沖縄・八重山諸島;旧世界(含オーストラリア)。
石川県では絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。
石川県のレッドデータブックによると「比較的自然に恵まれた海浜植物帯に生息している。徘徊性のクモを狩り、砂中に穴を掘り産卵する。営巣は海浜植物群落内およびその周辺と思われる。アオスジクモバチに似るが、各肢脛節の距が乳白色であること、メスの前肢付節には櫛歯状の刺列が発達していることなどから区別できる。別名、ナミコナフキベッコウ。」
2010.10.14

