田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

海浜のキバラハキリバチ

2009-06-26 | ハチ目(膜翅目)
キバラハキリバチ
ハキリバチ科のキバラハキリバチ Megachile xanthothrix Yasumatsu et Hirashima, 1964

津市河芸町の豊津海岸でキバラハキリバチ♂とおぼしき葉切蜂を見つけた。
調べてみると、近県での記録も無さそうなので、既知の情報を整理しておく。

山口県のレッドデータブックによると、「体長メス16~18mm。体は黒色で腹部背面は黄褐色のビロード毛で覆われる。腹面の毛は基部が金色毛で、末端に向かい暗色となる。他のハキリバチとは色彩から一見して区別できる。成虫は夏から秋にかけて主に河川敷や海浜周辺に生息するようで、砂地に営巣することが知られている。」

島根県レッドデータブックによると「体長はメスが16-17mm、オスが15-16mm。大型のハキリバチである。胸・腹部の背面が橙黄色ないし黄褐色の毛で覆われている。稀種のため、生態的知見がきわめて乏しい。年1化性で、活動期間は夏から初秋である。本種は1964年に安松・平嶋によって新種とされ、メスの頭頂部には黒褐色の短毛がみられる点と、オスの前脚基節にみられる剛毛束と突起部が広く分離する点によってほかの近縁種から識別される。越冬は前蛹態で行う。成虫はハギ類、クズ、ヨメナ、カラスザンショウなどを訪花するので、広食性種といえる。
 巣は砂地に設けられる。そのために生息地がしばしば河川敷や海浜地に限定される。営巣メスは自掘もするが、既存孔の方をよく利用するらしい。」

山口県では「西日本を中心に局所的に分布するが、個体数は極めて少ない。」として絶滅危惧Ⅱ類に選定、島根県では「海浜の開発や破壊による海浜固有の生態系の喪失で、生息密度がきわめて低い。」として絶滅危惧Ⅱ類VUに選定、また広島県、岡山県、高知県の3県では準絶滅危惧種としている。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによれば、
キバラハキリバチは「体長♀16~18mm。黒色。頭部および胸部の毛は主として灰白色。腹部背面には黄褐色の絨毛あり;腹面の刷毛は基部淡色(黄金色に近い,末端節に向かい少し暗色となる。♂の毛の具合は♀に似る。夏季出現し、地中に営巣する。分布:本州・四国・九州;朝鮮半島・中国東北部。」

Yasumatsu,K.& Y.Hirashima(1964)Red-haired leaf-cutter bees of the group of Megachile bicolor from Japan,the Ryukyus and Formosa.Kontyu,32:175-187.によると、
タイプ標本の内、1960年8月4日に福岡市香椎で採集された、ゴマの花に居た♂がホロタイプとなっている。福岡県筑前大島、山口県下関などでも標本が採集されている。
九州大学のキャンパスではムラサキナツフジの花粉や蜜を集める♀の様子が観察されている。
「this species probably has one generation a year.Adults appear from July to September, but they are very scarce in number.」
雌の体長は16-17mmで、その特徴は「vertex with fuscous hairs;pronotum with a tuft of fuscous hairs laterally just in front of tegulae;mesoscutum with or whithout admixture of sparse fuscous hairs ; mesopleuron with hairs fuscous below, broadly pale above,sparse fuscous hairs below wing base;scape pale ferruginous or golden,becoming darker(nearly fulvous)toward apical sterna;hairs(scopa)on 6th sternum fuscous apicany, fulvous basally;hairs on outer faces of mid tarsi delicate in colour, broadly nearly fuscous anterioly・yellowish posteriorly」
雄の体長は約15㎜で、その特徴は「Fore coxae with a tuft of bristles separated from coxal pine;vertex with sparse fuscous hairs laterally(near summits of eyes)」

ノアズキの葉を切り、花にも訪花している目撃情報もある。

島根県のある調査では「初見日はオスが7月上旬、メスが7月下旬であった」という。

これまでのところ、キバラハキリバチは本州(大阪府、京都府、岡山、広島、島根、山口県)、四国(香川県、高知県)、九州(福岡県、佐賀県、鹿児島県)のほか国外では朝鮮半島、中国東北部に分布しているようである。そして、ここ三重県にも。

この日の最高気温は29.7℃であった。発見場所の近くでは、5頭ほどのクモバチの仲間が競うように穴を掘っていた。マエグロツリアブ、スキバツリアブ、そして黄色いあのキモグリバエ科もいた。

2009.6.25
キバラハキリバチ
2009.6.25 クズの葉上で キバラハキリバチ♂

キバラハキリバチ

追記
藤原岳自然科学館の川添昭夫館長からの私信によると、キバラハキリバチは「海岸性の固有種で県内では初記録です。海岸線にはまだ固有種がいると思います。クズの花によくきます。」

キバラハキリバチ今年も


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