堤卓の弁理士試験情報

弁理士試験に関する情報を提供します。

間接侵害(101条2号) (18.5.31)

2006-05-31 06:39:08 | Weblog
間接侵害(特101条2号)

1.「発明による課題の解決に不可欠なもの」
(1)「発明による課題の解決に不可欠なもの」は、請求項に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念であり、発明の構成要素以外にも物の生産や方法の使用に用いられる道具、原料等も含まれることがある。
 逆に、請求項に記載された発明の構成要素であっても、その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは、「発明による課題の解決に不可欠なもの」には当たらない。
 それを用いることにより、初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような部品、道具、原料等が、「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当することになる。 

(2)「発明による課題の解決に不可欠なもの」という要件は、「~にのみ用いる」という専用品の要件を外した場合に、間接侵害の規定が特許権の効力の不当な拡張とならないよう、新たな間接侵害の規定の対象物を「発明」という観点から見て重要な部品等に限定するために設けられたものである。
 「発明による課題の解決に不可欠なもの」は、専用品に限られないため、その発明にとって重要でない部品等は間接侵害の対象外となるが、その発明にとって重要な部品等は、他に非侵害用途があるものであっても、間接侵害の対象に含まれることになり、間接侵害の成立範囲をより適切なものとすることができる。

2.「日本国内において広く一般に流通しているものを除く」
 「日本国内において広く一般に流通しているもの」には、例えば、ねじ、くぎ、電球、トランジスタ等、日本国内において広く普及している一般的な製品が含まれる。
 「広く一般に流通している」ということは、それが特注品ではなく、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品であるということであって、そのような物の生産・譲渡等まで間接侵害行為に含めることは、取引の安定性の確保という観点から好ましくないため、新たに追加する間接侵害の規定の対象外としたものである。

3.「その物がその発明の実施に用いられること」
 これは、文字通り、自らが生産、譲渡等を行う部品等の物が、他者により特定の発明の実施に用いられることを認識しているという要件である。

4.「その発明が特許発明であること」
(1)「特許発明」とは、特許を受けている発明であって(特2条2項)、「その発明が特許発明であること」とは、その発明が特許を受けている発明であること、すなわち、その発明に特許権が存在していることを認識していることという要件である。

(2)専用品という要件を外した2号の規定では、その部品等に侵害用途以外の多くの用途がある場合もあるので、部品等の供給業者に対し、部品等の供給先で行われる他人の実施内容についてまで、特許権が存在するか否かの注意義務を負わせることは、酷であるといえる。
 したがって、2号の規定では、自ら生産、譲渡等をする物が、特定の発明の実施に用いられることの認識に加え、その発明に特許権が存在することの認識も間接侵害成立の要件とすることとした。

5.「知りながら」
(1)「知りながら」という要件は、「その発明が特許発明であること」及び「その物がその発明の実施に使用されること」について実際に知っていたことを必要とするものである。
 それらの事実を知らなかった場合には、それがたとえ過失による場合であっても該当しないことになる。
 過失により知らなかった場合を含めていないが、これは、自らの供給する部品等が複数の用途を有する場合に、それらが供給先においてどのように使われるかについてまで注意義務を負わせることは、部品等の供給者にとって酷であり、また、取引の安全を著しく欠くおそれがあるためである。

(2)警告と悪意の立証
 例えば、相手方に警告状を送付した場合には、少なくともその警告状の送付後についての相手方の悪意は、比較的容易に立証可能であるといえる。
 したがって、実務上は、警告状の送付後の行為について、新たな間接侵害の規定の適用が争われるケースが多くなるものと予測される。
 しかし、特許法101条2号の規定の適用が認められるためには、問題とされている部品等の供給先の行為が特許発明の技術的範囲に属していること、その部品等がその特許発明による課題の解決に不可欠なものであることが、その前提として必要となる。
 権利者が、これらの客観的事実が認識されないままに不用意に警告状を乱発すると、不法行為(民法709条)として損害賠償請求の対象となる可能性のあることにも、注意が必要である。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 無効審判と訂正と訴訟との関... | トップ | 審決取消訴訟 (18.5.... »

Weblog」カテゴリの最新記事