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19.12.20掲載 平成19年12月18日 最高裁判決 著作権法

2007-12-20 14:16:39 | Weblog
平成19年12月18日 最高裁判決 著作権法

主文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人らの負担とする。

理由
 上告代理人遠山友寛ほかの上告受理申立て理由第2,第3について
 1 本件は,(1)第1審判決別紙映画目録記載の映画「シェーン」(以下「本件映画」という。)の著作権者である上告人X1(以下「上告人X1」という。)が,本件映画を収録したマスターフィルムを製造し販売する被上告人Y1及びこれを基に本件映画を複製したDVD商品を製造し販売する被上告人Y2に対し,本件映画の複製権及び頒布権の侵害を理由に,上記マスターフィルム及びDVD商品のそれぞれの販売等の差止め及び廃棄を求め,(2)我が国における本件映画の独占的利用権を有する上告人X2が,被上告人らに対し,上記利用権の侵害を理由に,不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。これに対し,被上告人らは,本件映画の著作権は存続期間の満了により消滅したと主張している。

 2 本件映画の著作権法上の保護に関する関係法令の概要等は,次のとおりである。
(1)本件映画は,アメリカ合衆国法人である上告人X1を著作者とし,その著作名義をもって,1953年(昭和28年)に同国において最初に公表されたものであるが,我が国及びアメリカ合衆国は,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に加盟しているため,本件映画は,同条約3条(1)及び著作権法6条3号の規定により,我が国の著作権法による保護を受け,その保護期間については我が国の法令に従うこととなる(同条約7条(8)本文)。
(2)映画の著作物の保護期間に関する我が国の法令の概要は,次のとおりである。
 ア 旧著作権法(明治32年法律第39号)は,映画の著作物の保護期間を,独創性の有無(22条の3後段)及び著作名義の実名,無名・変名,団体の別(3条,5条,6条)によって別異に取り扱っていたところ,本件映画のように団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物の保護期間は,公表(発行又は興行)後33年間とされていた(22条の3,6条,52条2項)。
 イ 旧著作権法は,昭和46年1月1日に施行された現行の著作権法(昭和45年法律第48号。以下「現行著作権法」ということもある。)により全部改正された。現行著作権法(下記ウの改正前のもの)は,映画の著作物の保護期間を原則として公表後50年を経過するまでと定める(54条1項)とともに,附則2条1項において,「改正後の著作権法・・・中著作権に関する規定は,この法律の施行の際現に改正前の著作権法・・・による著作権の全部が消滅している著作物については,適用しない」旨の経過措置を定めた。
 なお,旧著作権法及び現行著作権法を通じて,上記保護期間の終期を計算するときは,公表された日の属する年の翌年から起算するものとされ(旧著作権法9条,現行著作権法57条),その年から所定の年数を経過した年の末日の終了をもって当該期間は満了することとなる(民法141条)。
 ウ 映画の著作物の保護期間の延長措置等を定めた著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号。以下「本件改正法」といい,その改正を「本件改正」という。)が,平成15年6月12日に成立し,平成16年1月1日から施行された。これにより,映画の著作物の保護期間は,原則として公表後70年を経過するまでとされることとなった(本件改正後の著作権法54条1項)。なお,本件改正法附則2条は,この保護期間の延長措置の適用に関し,「改正後の著作権法・・・第54条第1項の規定は,この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し,この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については,なお従前の例による」旨を規定している(以下,この規定を「本件経過規定」という。)。 
(3)本件映画を含め,昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,旧著作権法上の保護としては,公表後33年を経過するまで,すなわち昭和61年12月31日までの保護期間が予定されていたところ,昭和46年1月1日の現行著作権法の施行に伴い,公表後50年を経過するまで,すなわち平成15年12月31日まで保護されることとなった。そして,本件映画が本件経過規定にいう「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」として本件改正後の著作権法54条1項の適用が認められるとすれば,その保護期間は平成35年12月31日まで延長されたことになるのに対し,本件経過規定にいう「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物」として本件改正後の著作権法54条1項の適用が認められないとすれば,保護期間は延長されず,その著作権は既に消滅していることになる。

 3 原審は,本件改正後の著作権法54条1項が適用されるのは,本件改正法の施行日である平成16年1月1日において本件改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物であるところ,本件映画は平成15年12月31日の終了をもって著作権の存続期間が満了しているから,本件改正後の著作権法54条1項の適用を受けないとして,上告人らの請求をいずれも棄却した。これに対し,上告人らは,本件経過規定中の「この法律の施行の際現に」という文言は,当該法律の施行の直前の状態を指すものと解すべきであるのに,これを「この法律の施行の日において」と同義に理解し,本件改正後の著作権法54条1項の適用を否定した原審の判断には,本件経過規定の解釈適用を誤った法令違反があると主張する。

 4(1)そこで検討すると,本件経過規定中の「・・・の際」という文言は,一定の時間的な広がりを含意させるために用いられることもあり,「・・・の際」という文言だけに着目すれば,「この法律の施行の際」という法文の文言が本件改正法の施行日である平成16年1月1日を指すものと断定することはできない。しかし,一般に,法令の経過規定において,「この法律の施行の際現に」という本件経過規定と同様の文言(以下「本件文言」という。)が用いられているのは,新法令の施行日においても継続することとなる旧法令下の事実状態又は法状態が想定される場合に,新法令の施行日において現に継続中の旧法令下の事実状態又は法状態を新法令がどのように取り扱うかを明らかにするためであるから,そのような本件文言の一般的な用いられ方(以下「本件文言の一般用法」という。)を前提とする限り,本件文言が新法令の施行の直前の状態を指すものと解することはできない。所論引用の立法例も,本件文言の一般用法によっているものと理解できるのであり,上告人らの主張を基礎付けるものとはいえない。
 したがって,本件文言の一般用法においては,「この法律の施行の際」とは,当該法律の施行日を指すものと解するほかなく,「・・・の際」という文言が一定の時間的な広がりを含意させるために用いられることがあるからといって,当該法律の施行の直前の時点を含むものと解することはできない。
本件経過規定における本件文言についても,本件文言の一般用法と異なる用いられ方をしたものと解すべき理由はなく,「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」とあるのは,本件改正前の著作権法に基づく映画の著作物の保護期間が,本件改正法の施行日においても現に継続中である場合を指し,その場合は当該映画の著作物の保護期間については本件改正後の著作権法54条1項が適用されて原則として公表後70年を経過するまでとなることを明らかにしたのが本件経過規定であると解すべきである。そして,本件経過規定は,「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については,なお従前の例による」と定めているが,これは,本件改正法の施行日において既に保護期間の満了している映画の著作物については,本件改正前の著作権法の保護期間が適用され,本件改正後の著作権法の保護期間は適用されないことを念のため明記したものと解すべきであり,本件改正法の施行の直前に著作権の消滅する著作物について本件改正後の著作権法の保護期間が適用されないことは,この定めによっても明らかというべきである。したがって,本件映画を含め,昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,本件改正による保護期間の延長措置の対象となるものではなく,その著作権は平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了し消滅したというべきである。 
(2)上告人らは,本件改正法の施行後においては「改正前の著作権法」はもはや存在しないのであるから,本件文言は当該法律の施行の直前の状態を指すものと理解しないと,「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」という規定自体が論理破たんを来すこととなる旨主張する。しかし,本件文言は,上記のとおり,新法令の施行日においても継続することとなる旧法令下の事実状態又は法状態が想定される場合に,新法令の施行日において現に継続中の旧法令下の事実状態又は法状態を新法令がどのように取り扱うかを明らかにするために用いられるものであるから,何ら論理矛盾は存しない。
 また,上告人らは,本件改正法の成立に当たり,昭和28年に公表された映画の著作物の保護期間の延長を意図する立法者意思が存したことは明らかであるとして,この立法者意思に沿った解釈をすべきであると主張する。しかし,本件経過規定における本件文言について,本件文言の一般用法とは異なる用い方をするというのが立法者意思であり,それに従った解釈をするというのであれば,その立法者意思が明白であることを要するというべきであるが,本件改正法の制定に当たり,そのような立法者意思が,国会審議や附帯決議等によって明らかにされたということはできず,法案の提出準備作業を担った文化庁の担当者において,映画の著作物の保護期間が延長される対象に昭和28年に公表された作品が含まれるものと想定していたというにすぎないのであるから,これをもって上告人らの主張するような立法者意思が明白であるとすることはできない。

 5 以上によれば,本件映画の著作権は存続期間が満了して消滅したとする原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)


19.12.8 マドリッド協定議定書 国際登録出願制度の概要

2007-12-08 08:17:46 | Weblog
マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願の概要

★商標の国際登録とは
 外国で商標を登録するには2つの方法がある。
 第1に、従来からの手続方法で、パリ条約等を利用して各国別に直接出願する方法である。
 第2に、我が国がマドリッド協定議定書に加盟したことにより可能となった手続方法で、各国毎に行わなければならない商標の登録出願手続を、1通の出願書類を日本国特許庁に提出することにより複数国に一括して登録出願することができる手続方法である。

★マドリッド協定議定書の概要
 締約国の特許庁(本国官庁)に出願又は登録されている商標を基礎として、保護を求める締約国(指定国)を明示し、世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局に、本国官庁経由で国際出願を行う。
 国際事務局は、国際登録簿に登録後、指定国へ領域指定の通報を送付する。
 指定通報を受けた指定国官庁が、保護を拒絶する旨の通知を一定期間(1年又は各国の宣言により18か月)内に国際事務局に行わないと、標章の国際登録の日、又は国際登録後の領域指定の記録の日(事後指定日)から、その標章が指定国官庁において、当該官庁による登録を受けていたならば与えられたであろう保護と同一の保護が与えられることになる。

★議定書出願のメリット 

・メリット1 手続の簡素化
 議定書出願では、複数国で権利を取得したい場合、本国官庁(日本国特許庁)に1通の出願書類を提出することにより、複数国に同日に出願した場合と同等の権利を有する。
 また、複数国分の出願手数料の支払いも、国際事務局に一括して支払うことで完了する。

・メリット2 容易な書類作成
 議定書出願では、言語が異なる国に対しても出願等の手続書類は所定の様式に基づき英語又は仏語・スペイン語(日本国は英語のみ)で行う。
 各国言語への翻訳は必要ないため、国毎の指定商品(役務)の把握が容易になる。

・メリット3 権利管理の簡便化
 議定書制度では、国際事務局における国際登録簿により権利関係は一元管理されている。よって、各国毎に存続期間の更新や所有権の移転、名称変更申請等の手続を行う必要はない。

・メリット4 経費の削減
 各国別に直接出願する場合は、各国が求める態様の出願書類の作成が必要なため、各国の代理人の報酬や翻訳等の費用が必要になる。
 議定書出願は、拒絶理由が発見されずに登録になる場合は各国の代理人の選任は不要なため代理人費用は発生しない。
 指定国で拒絶理由が発見され、その国で再審査等を行う場合にのみ、その国の代理人の選任は必要となり費用が発生する。

・メリット5 迅速な審査(拒絶通報期間の制限)
 議定書出願では、指定国官庁が拒絶理由を発見した場合の国際事務局への通報期間を1年(又は18ヶ月)以内に制限している。
 各国毎に直接出願をする場合には、このような審査(拒絶)期間の制限のない国もあるので、議定書出願を行うことにより各指定国での審査が迅速に行われる場合がある。

・メリット6 締約国の事後指定による保護の拡張
 事後指定の手続により、出願時に指定しなかった締約国はもとより、出願後に新たに加盟した締約国についても保護の拡張を求めることができる。
 また、出願時に特定の国に対し商品(役務)を限定的に指定した場合でも、国際登録の範囲内であれば指定しなかった商品(役務)を追加することができる。

★国際登録出願の対象

(1)対象となる標章
 国際登録出願の対象となる標章は、我が国の特許庁(本国官庁)に係属している自己の商標登録出願若しくは防護標章登録出願(基礎出願)又は自己の商標登録若しくは防護標章登録(基礎登録)を基礎とする必要がある。

(2)指定商品及び役務の範囲
 国際登録出願で指定可能な商品及び役務は、上記の基礎となる出願又は登録されている商標で指定している商品及び役務と同一又はその範囲内であることが必要である。

★国際登録出願の出願人

(1)国際登録出願をすることができる者は、日本国民又は日本国内に住所又は居所(法人にあっては営業所)を有する外国人である。

(2)2人以上の出願人がいる場合には、出願人全員が前記(1)の要件を満たしていることが必要である。

★国際登録出願の効果

(1)本国官庁を経由して国際事務局へ提出された国際登録出願は、原則として本国官庁への提出日が国際登録日としてみなされる。[議3条(4)、法第68条の9]
 ただし、国際登録の事後指定は、国際登録簿に記録された事後指定の日にされた国際登録出願と認定される。[議3条の3(2)、法第68条の9]

(2)議定書は、国際登録について、出願人が工業所有権の保護に関するパリ条約に基づく優先権を主張する場合、パリ条約第4条Dに定める手続に従わなくても優先権を享有することができる旨定めており、通常の商標登録出願について行うべきパリ条約に基づく優先権主張及び優先権証明書の提出の手続を行う必要がない。[議4条(2)、法第68条の15第1項]

★国際登録出願の言語

(1)出願の言語
 国際登録出願で使用する言語として認められる言語は、本国官庁により定められる。[規則6(1)(b)]
 日本国特許庁が定めた言語・・・「英語」[法施規様式第9の2備考4]

(2)国際登録出願以外の通信の言語
 国際事務局と日本国特許庁(本国官庁)間の言語・・・「英語」[規則6(2)(b)(iii)]
 国際事務局と出願人又は名義人間の言語・・・「英語」
 ただし、当該出願人又は名義人が国際事務局へ通信の言語を、英語又は仏語若しくはスペイン語にする旨を願書に表明したときは表明した言語となる。[規則6(2)(b)(iv)] 

★国際登録日

(1)本国官庁が受理した日による国際登録日
 国際登録出願は本国官庁から国際事務局へ提出する。[議2条]
 国際登録出願の受理日は、本国官庁が実際に国際登録出願を受領した日となる。すなわち、日本国特許庁に国際登録出願の書面が到達した日をもって本国官庁の受理日となる。[議3条(1)]
(注)商標法第77条第2項では、願書等の提出の効力発生時期を規定する特許法第19条の適用について、国際登録出願については準用していない。また、マドリッド協定議定書に基づく特例を規定する商標法第7章の2中には、国際登録出願の願書の効力発生時期についての特例が規定されていない。
 国際事務局が国際登録出願を、本国官庁が受理した日から2ヶ月以内に受理したときは、本国官庁が受理した日が国際登録日となる。[議3条(4)]

(2)国際事務局が受理した日による国際登録日
 国際事務局が国際登録出願を、本国官庁が受理した日から2ヶ月以内に受理しなかったときは、国際事務局が受理した日が国際登録日となる。[議3条(4)]

★国際登録簿

 国際事務局は、国際登録出願が議定書及び同規則に定める要件に合致すると認めた場合には、標章を国際登録簿に登録し、国際登録について指定国の官庁に対して通報するとともに、本国官庁へ通知し、かつ名義人に証明書を送付する。[規則14(1)]

★国際登録の存続期間

 国際事務局による標章の登録は、国際登録日から10年間にわたって効力を有し、議定書第7条に規定する条件に従い更新することができる。[議6条(1)]
 なお、更新の手続も国際登録出願と同様に、1回の更新申請で各指定締約国に反映させることができる。

★指定国官庁による審査[議5条(2)(a)、(b)]

 指定国官庁は国際事務局による「領域指定」の通報日から1年(又は各国の宣言により18ヶ月)以内に、その対象である標章に保護を与えることができないことを「暫定的拒絶の通報(日本における拒絶理由通知に相当)」により行うことができる。
 上記の期間内に「暫定的拒絶の通報」が発出されない場合には、当該指定国では登録になったものとみなされる。

★事後指定の概要

 事後指定とは、国際登録出願が国際登録された後に、新たに「領域指定」として指定国を又は指定商品(役務)を追加することができる制度である。
 ただし、指定国の追加は議定書加盟国のみですが、国際登録出願のときに指定しなかった国はもとより、国際登録出願後の新規加盟国(事後指定提出時には加盟済)も追加することができる。
 また、指定商品(役務)の追加は国際登録簿に登録されている商品(役務)の範囲と実質的に同一又はその範囲内で追加することができる。

★事後指定の日

(1)本国官庁が受理した日による事後指定の日
 国際事務局が事後指定を、本国官庁(日本国特許庁)が受理した日から2ヶ月以内に受理したときは、本国官庁が受理した日が事後指定の日となる。[規則24(6)]

(2)国際事務局が受理した日による事後指定の日
 事後指定を名義人が直接国際事務局へ提出したときは、国際事務局が事後指定を受理した日となる。
 事後指定を、本国官庁(日本国特許庁)が受理した日から国際事務局が2ヶ月を経過して受理したときは、国際事務局が受理した日となる。[規則24(6)]

★事後指定の効果

 国際事務局は、国際登録後に提出された事後指定が適用される要件を満たしている場合には、国際登録簿に記録し、事後指定において指定された指定国にその旨を通報し、かつ、同時に名義人、及び当該事後の指定が本国官庁によって提出された場合には、本国官庁に通知する。[規則24(7)]
 各指定国では、事後指定の日にその国に直接出願した場合と同等の効果が発生し、事後指定の通報日から1年(又は18月)以内に拒絶の通報を行わない場合は、当該指定国の国内登録と同一の保護を受ける。

★事後指定の有効期間

 事後指定により追加した指定国又は指定商品(役務)の有効期間は、その国際登録出願における国際登録日から10年となり、事後指定日からは起算されない。

★セントラルアタック(国際登録の従属性)の概要[議6条(3)、(4)、規則22(1)]
 セントラルアタックとは、国際登録出願の基礎出願又は基礎登録が、国際登録日から5年の期間が満了する前に拒絶、放棄、無効等となった場合には、国際登録出願により指定された商品(役務)の全部又は一部についての国際登録が取り消され、その結果として指定国における国際登録の効果も当該取り消しに係る範囲内で失効するという制度である。
 なお、セントラルアタックによって国際登録において指定された商品(役務)の全部又は一部が取り消された場合において、指定国に一定の条件を満たす商標登録出願(直接出願)を行えば、国際登録日(又は事後指定の記録日)に出願が行われたものとみなされる。
 また本国官庁は、セントラルアタックの事実を確認したときには、国際事務局に通報する義務を負っている。

★セントラルアタックの手続

(1)本国官庁
 本国官庁は、国際登録出願の基礎出願又は基礎登録が、国際登録日から5年の期間が満了する前に、以下の事由が発生した場合には、国際事務局へセントラルアタック通報を行う。(出願人には、事前に通報内容を通知する。)
 拒絶、無効、取り下げ、放棄が確定
 拒絶査定不服審判が請求され、拒絶が確定(5年経過後を含む)
 異議申立・登録無効(取消)審判が請求され、商標権が取消(5年経過後を含む)
 指定商品(役務)が補正により減縮

(2)国際事務局
 国際事務局は、本国官庁からのセントラルアタック通報に基づき国際登録簿に記録し、指定国及び名義人へ以下の内容を通報する。
 国際登録簿から取り消した日
 取り消された指定商品(役務)

(3)指定国官庁
 国際事務局からのセントラルアタック通報に基づき、指定商品(役務)の全部又は一部を取り消す。

(4)名義人
 セントラルアタックによって指定商品(役務)の全部又は一部が取り消された場合は、名義人は、取り消された指定商品(役務)に関して指定国へ商標登録出願を行うことができる。その際に、下記の要件を全て満たす場合には国際登録日(事後指定の記録日)にされた商標登録出願とみなされる。
 また、国際登録出願について優先権を主張していた場合には商標登録出願にも優先権が認められる。
 商標登録出願が国際登録の取消された日から3ヶ月以内に行われること
 取り消された指定商品(役務)と商標登録出願の指定商品(役務)が実質的に同一であること
 指定国で定める商標登録出願の手数料を支払うこと

★国際登録の独立性[議6条(2)]

 国際登録は、当該国際登録の日から5年の期間が満了したときは、セントラルアタックで失効になった範囲を除くほか、基礎出願による登録又は基礎登録から独立した標章登録が構成される。

★セントラルアタックの効果
 議定書制度を利用して各国で登録になっている商標を取り消す場合には、基礎出願(登録)のある本国官庁への1つの手続で複数国に対して手続を行った場合と同様の効果を得ることができ、手続面、費用面で、格段のメリットがある。

★国際登録から5年経過時に異議申立や無効審判等が係属中の場合
 異議申立や無効審判等により、5年の期間満了後において権利が消滅した場合においても、セントラルアタックの適用の対象となる。


19.12.1 最高裁判決(19.11.8) インクタンク事件

2007-12-01 13:02:51 | Weblog
最高裁判決の紹介

平成19年11月8日 最高裁判決 インクタンク事件

1 本件は,インクジェットプリンタ用インクタンクに関する特許権を有する被上告人が,上告人の輸入販売するインクジェットプリンタ用インクタンクについて,被上告人の特許の特許発明の技術的範囲に属するとして,上告人に対し,そのインクタンクの輸入,販売等の差止め及び廃棄を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。(省略)

3 原審は,次のとおり判示して,被上告人の請求を認容した。
 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において当該特許発明に係る製品(以下「特許製品」という。)を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達したものとして消尽し,もはや特許権者は,当該特許製品を使用し,譲渡し又は貸し渡す行為等に対し,特許権に基づく差止請求権等を行使することができないというべきである(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁参照)。
 しかしながら,①当該特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(第1類型),又は,②当該特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合(第2類型)には,特許権は消尽せず,特許権者は,当該特許製品について権利行使をすることが許されるものと解するのが相当である。
 また,我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合,特許権者は,譲受人に対しては,当該特許製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨の合意をしたときを除き,譲受人から当該特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては,譲受人との間でその旨の合意をした上で当該特許製品にこれを明確に表示したときを除き,当該特許製品を我が国に輸入し,国内で使用,譲渡等する行為に対して特許権に基づく権利行使をすることはできないというべきである(前掲最高裁平成9年7月1日第三小法廷判決)。
 しかしながら,①当該特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合(第1類型),又は,②当該特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合(第2類型)には,特許権者は,当該特許製品について権利行使をすることが許されるものと解するのが相当である。
 本件において,被上告人製品は,当初に充てんされたインクが費消されたことをもって,製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えたということはできず,上告人製品について,上記第1類型に該当するということはできない。しかし,丙会社における上告人製品の製品化の工程は,本件発明の本質的部分である構成要件H及び構成要件Kを充足しない状態となっている本件インクタンク本体について,その内部を洗浄して固着したインクを洗い流した上,これに構成要件Kを充足する一定量のインクを再充てんするという行為を含むものである。そして,丙会社の上記行為は,再び圧接部の界面の機能を回復させて空気の移動を妨げる障壁を形成させるものであり,被上告人製品中の本件発明の本質的部分を構成する部材の一部についての加工又は交換にほかならない。したがって,上告人製品については,国内で販売された被上告人製品を利用したもの,国外で販売された被上告人製品を利用したもののいずれに関しても,上記第2類型に該当するものとして,本件特許権の行使が制限されないというべきであり,被上告人は,上告人に対し,上告人製品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めることができる。

4 論旨は,原審の特許権行使の可否に係る判断基準,及びこれに基づいて本件特許権の行使が制限されないとした判断について,法令違反をいうものであるが,採用することはできない。その理由は,以下のとおりである。

※ここからが最高裁判所の判示部分です。

(1)特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者(以下,両者を併せて「特許権者等」という。)が我が国において特許製品を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該特許製品の使用,譲渡等(特許法2条3項1号にいう使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をいう。以下同じ。)には及ばず,特許権者は,当該特許製品について特許権を行使することは許されないものと解するのが相当である。この場合,特許製品について譲渡を行う都度特許権者の許諾を要するとすると,市場における特許製品の円滑な流通が妨げられ,かえって特許権者自身の利益を害し,ひいては特許法1条所定の特許法の目的にも反することになる一方,特許権者は,特許発明の公開の代償を確保する機会が既に保障されているものということができ,特許権者等から譲渡された特許製品について,特許権者がその流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである(前掲最高裁平成9年7月1日第三小法廷判決参照)。このような権利の消尽については,半導体集積回路の回路配置に関する法律12条3項,種苗法21条4項において,明文で規定されているところであり,特許権についても,これと同様の権利行使の制限が妥当するものと解されるというべきである。

※ここまでは、最高裁判決BBS事件の引用です。

 しかしながら,特許権の消尽により特許権の行使が制限される対象となるのは,飽くまで特許権者等が我が国において譲渡した特許製品そのものに限られるものであるから,特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許されるというべきである。

※特許権の消尽の対象となるのは、特許権者等がわが国で譲渡した特許製品そのものに限られるとしています。
 そして、加工や部材の交換により特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたときは、消尽しないとしています。
 この点は、新たな製造であるかどうかを基準とする点で、原審(知財高裁)とは異なる点です。むしろ、第1審の東京地裁に近い考え方です。
 
そして,上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断するのが相当であり,当該特許製品の属性としては,製品の機能,構造及び材質,用途,耐用期間,使用態様が,加工及び部材の交換の態様としては,加工等がされた際の当該特許製品の状態,加工の内容及び程度,交換された部材の耐用期間,当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきである。

※新たな製造に該当するかどうかの判断基準を具体的に明示しています。
 この基準は、知財高裁の考え方も取り入れていると思います。
 弁理士試験としては、この具体的基準まで再現できるようにしておくことが必要と思います。

(2)我が国の特許権者又はこれと同視し得る者(以下,両者を併せて「我が国の特許権者等」という。)が国外において特許製品を譲渡した場合においては,特許権者は,譲受人に対しては,譲受人との間で当該特許製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨の合意をした場合を除き,譲受人から当該特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては,譲受人との間で上記の合意をした上当該特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて,当該特許製品について我が国において特許権を行使することは許されないものと解されるところ(前掲最高裁平成9年7月1日第三小法廷判決),これにより特許権の行使が制限される対象となるのは,飽くまで我が国の特許権者等が国外において譲渡した特許製品そのものに限られるものであることは,特許権者等が我が国において特許製品を譲渡した場合と異ならない。そうすると,我が国の特許権者等が国外において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,我が国において特許権を行使することが許されるというべきである。そして,上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては,特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされた場合と同一の基準に従って判断するのが相当である。

※この部分は、国境を超えた場合に言及しています。
 新たな製造に該当するかどうかで判断する点は、国内消尽の場合と同様です。

(3)これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,被上告人は,被上告人製品のインクタンクにインクを再充てんして再使用することとした場合には,印刷品位の低下やプリンタ本体の故障等を生じさせるおそれもあることから,これを1回で使い切り,新しいものと交換するものとしており,そのために被上告人製品にはインク補充のための開口部が設けられておらず,そのような構造上,インクを再充てんするためにはインクタンク本体に穴を開けることが不可欠であって,上告人製品の製品化の工程においても,本件インクタンク本体の液体収納室の上面に穴を開け,そこからインクを注入した後にこれをふさいでいるというのである。このような上告人製品の製品化の工程における加工等の態様は,単に消耗品であるインクを補充しているというにとどまらず,インクタンク本体をインクの補充が可能となるように変形させるものにほかならない。
 また,前記事実関係等によれば,被上告人製品は,インク自体が圧接部の界面において空気の移動を妨げる障壁となる技術的役割を担っているところ,インクがある程度費消されると,圧接部の界面の一部又は全部がインクを保持しなくなるものであり,プリンタから取り外された使用済みの被上告人製品については,1週間~10日程度が経過した後には内部に残存するインクが固着するに至り,これにその状態のままインクを再充てんした場合には,たとえ液体収納室全体及び負圧発生部材収納室の負圧発生部材の圧接部の界面を超える部分までインクを充てんしたとしても,圧接部の界面において空気の移動を妨げる障壁を形成するという機能が害されるというのである。そして,上告人製品においては,本件インクタンク本体の内部を洗浄することにより,そこに固着していたインクが洗い流され,圧接部の界面において空気の移動を妨げる障壁を形成する機能の回復が図られるとともに,使用開始前の被上告人製品と同程度の量のインクが充てんされることにより,インクタンクの姿勢のいかんにかかわらず,圧接部の界面全体においてインクを保持することができる状態が復元されているというのであるから,上告人製品の製品化の工程における加工等の態様は,単に費消されたインクを再充てんしたというにとどまらず,使用済みの本件インクタンク本体を再使用し,本件発明の本質的部分に係る構成(構成要件H及び構成要件K)を欠くに至った状態のものについて,これを再び充足させるものであるということができ,本件発明の実質的な価値を再び実現し,開封前のインク漏れ防止という本件発明の作用効果を新たに発揮させるものと評せざるを得ない。
 これらのほか,インクタンクの取引の実情など前記事実関係等に現れた事情を総合的に考慮すると,上告人製品については,加工前の被上告人製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認めるのが相当である。

※本件事案では、新たな製造に該当するとしています。結論は、原審(知財高裁)と同じです。

したがって,特許権者等が我が国において譲渡し,又は我が国の特許権者等が国外において譲渡した特許製品である被上告人製品の使用済みインクタンク本体を利用して製品化された上告人製品については,本件特許権の行使が制限される対象となるものではないから,本件特許権の特許権者である被上告人は,本件特許権に基づいてその輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めることができるというべきである。

5 以上によれば,所論の点に関する原審の判断は,結論において正当であり,論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。