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【知財高裁平成20年6月26日】商標法

2010-06-29 15:38:52 | Weblog
【知財高裁平成20年6月26日】商標法
 被告は、商標法4条1項7号、10号、15号、19号に該当することを理由として、本件商標の無効審判請求をした。
 これに対して、審決は、本件商標が商標法4条1項7号に該当する商標について登録されたものであるから、商46条1項の無効理由が存在すると判断した。
 すなわち、審決は、原告が、「CONMAR」との文字からなる米国商標が被告の商標であることを認識していたにもかかわらず、「CONMAR」との文字からなる商標が日本において商標登録されていないことを奇貨として、被告に無断で剽窃的に、スライドファスナーを含む「ボタン類」を指定商品として本件商標を出願し、登録を受け、ひいては被告の日本国内への参入を阻止しているものであり、そうすると、本件商標の登録を認めることは、公正な取引秩序を乱し、社会一般の道徳観念ないしは国際信義に反し、公の秩序を害するものであるから、本件商標は商標法4条1項7号に該当すると判断した。
 しかし、当裁判所は、審決が認定した事実の下において、少なくとも商標法4条1項7号に該当するとした点には誤りがあり、審決は取り消すべきものと判断する。以下、この点について述べる。
 商標法は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」について商標登録を受けることができず、また、無効理由に該当する旨定めている(商4条1項7号、46条1項1号)。商標法4条1項7号は、本来、商標を構成する「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」(標章)それ自体が公の秩序又は善良な風俗に反するような場合に、そのような商標について、登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられた規定である(商標の構成に着目した公序良俗違反)。
 ところで、商標法4条1項7号は、上記のような場合ばかりではなく、商標登録を受けるべきでない者からされた登録出願についても、商標保護を目的とする商標法の精神にもとり、商品流通社会の秩序を害し、公の秩序又は善良な風俗に反することになるから、そのような者から出願された商標について、登録による権利を付与しないことを目的として適用される例がなくはない(主体に着目した公序良俗違反)。
 確かに、例えば、外国等で周知著名となった商標等について、その商標の付された商品の主体とはおよそ関係のない第三者が、日本において、無断で商標登録をしたような場合、又は、誰でも自由に使用できる公有ともいうべき状態になっており、特定の者に独占させることが好ましくない商標等について、特定の者が商標登録したような場合に、その出願経緯等の事情いかんによっては、社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、国家・社会の利益、すなわち公益を害すると評価し得る場合が全く存在しないとはいえない。
 しかし、商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、商標法4条1項各号で個別的具体的に定めているから、このことに照らすならば、当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、特段の事情がない限り、当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえる。
 すなわち、商標法は、商標登録を受けることができない商標について、同項8号で「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」と規定し、同項10号で「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標・・・」と規定し、同項15号で「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標・・・」と規定し、同項19号で「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的・・・をもって使用をするもの・・・」と規定している。商標法のこのような構造を前提とするならば、少なくとも、これらの条項(商4条1項8号、10号、15号、19号)の該当性の有無と密接不可分とされる事情については、専ら、当該条項の該当性の有無によって判断すべきであるといえる。
 また、当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や、国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた商標法4条1項19号の趣旨に照らすならば、それらの趣旨から離れて、商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。
 そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっても、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者(例えば、出願された商標と同一の商標を既に外国で使用している外国法人など)との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合(例えば、外国法人が、あらかじめ日本のライセンシーとの契約において、ライセンシーが自ら商標登録出願をしないことや、ライセンシーが商標登録出願をして登録を得た場合にその登録された商標の商標権の譲渡を受けることを約するなどの措置を採ることができたにもかかわらず、そのような措置を怠っていたような場合)は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。


【知財高裁平成20年4月14日】意匠法

2010-06-28 09:34:06 | Weblog
【知財高裁平成20年4月14日】意匠法
 原告は、意匠登録を受ける意匠を別紙1のとおり第一形態の意匠及び第二形態の意匠とする本件原出願をした。
 審査官は、本件原出願に、意匠登録を受けようとする意匠として、二の意匠(第一形態の意匠及び第二形態の意匠)が包含され、意匠法7条に規定する要件を満たしていないものと判断し、原告に対し、本件原出願に係る第1回拒絶理由通知を発した。
 これに対し、原告は、本件原出願に係る第1回拒絶理由通知に係る拒絶理由を解消するため、本件原出願について、意匠登録を受けようとする「【意匠の説明の項】」及び図面全図を別紙2のとおり(「【意匠の説明】」の項においては、部分意匠であることを明示し、図面については、別紙1における第一形態の意匠に係る全図を削除して第二形態の意匠に係る図面7枚と同一のものとした。)とする本件第1次補正をし、さらに、本件第1次補正において記載漏れのあった「【部分意匠】」の欄を追加する本件第2次補正をした。
 審査官は、本件第1次補正による補正後の意匠について、意匠登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界が不明確であり、意匠登録を受けようとする部分の形状が特定されていないため、意匠登録を受けようとする意匠が、意匠法3条1項柱書に規定する意匠に該当しないものと判断し、原告に対し、本件原出願に係る第2回拒絶理由通知を発した。
 これに対し、原告は、本件原出願に係る第2回拒絶理由通知に係る拒絶理由を解消するため、本件原出願について、意匠登録を受けようとする「【意匠の説明】」の項及び図面全図を別紙3のとおり(「【意匠の説明】」の項においては、図面における各線の意義を明確にし、図面については、本件第1次補正における図面7枚(うち4枚には必要な修正が施された。)に、斜視参考図、正面参考図及び本件参考図を加えたものとした。)とする本件第3次補正をした。
 しかしながら、審査官は、本件原出願における意匠登録を受けようとする意匠(第二形態の意匠)が、先行意匠に類似することを理由として、原告に対し、本件原出願に係る第3回拒絶理由通知を発した。
 そこで、原告は、第一形態の意匠について意匠登録を受けるため、本件原出願を分割するとの形式をとり(すなわち、本件原出願の出願日及び本件優先日をそのまま維持する目的で)、本件出願をした。
 上記のとおりの本件審査手続の経過に照らせば、原告が、本件原出願に意匠登録を受けようとする意匠として二の意匠が包含されており、意7条に規定する要件を満たさないとの本件原出願に係る第1回拒絶理由通知を受けたため、これに係る拒絶理由を解消するため、すなわち、本件原出願が、意匠登録を受けようとする意匠として一の意匠のみを包含するものとなるよう、本件第1次補正をしたことは明らかであるから、本件原出願における意匠登録を受けようとする意匠は、本件第1次補正により、第二形態の意匠のみとされ、第一形態の意匠は、本件原出願における意匠登録を受けようとする意匠から除外されたことにより放棄されたものと認めるのが相当である。
 また、原告は、本件第1次補正によって意匠登録を受けようとする意匠とされた第二形態の意匠(部分意匠)が、意匠登録を受けようとする部分とその余の部分との境界が不明確であり、意匠法3条1項柱書に規定する意匠に該当しないとの本件原出願に係る第2回拒絶理由通知を受けたため、これに係る拒絶理由を解消するため、第二形態の意匠に係る必要な手続補正として、本件第3次補正をしたものと認めるのが相当である(なお、本件第2次補正は、本件第1次補正において記載漏れのあった軽微な事項の追加に係るものである。)。
 そうすると、本件原出願における意匠登録を受けようとする意匠は、本件第1次補正によって、本件原出願時から第二形態の意匠のみとされ、本件第3次補正も、第二形態の意匠についてされたものであるといえるから、本件出願の時点では、本件原出願における意匠登録を受けようとする意匠は、第二形態の意匠のみであったと認められる。
 したがって、本件原出願は、本件出願の時点では、「二以上の意匠を包含する意匠登録出願」ではなかったものであるから、本件出願が分割要件を欠くものであったことは明らかであり、その他、本件出願の時点において、同出願が分割要件を満たしていたものと認めるに足りる証拠はない。

【知財高裁平成19年6月20日】特許法

2010-06-27 06:59:10 | Weblog
【知財高裁平成19年6月20日】特許法
 2 なお,当裁判所において,本決定に際して考慮した問題点につき,補足して説明する。
(1)本件のように,2以上の請求項に係る発明についての特許を無効にすることを求める特許無効審判において,特許権者による訂正請求を認めた上で,一部の請求項に係る発明についての特許を無効とし,残りの請求項に係る発明についての特許の無効請求を不成立とする審決がされた場合に,審決のうち無効不成立とした請求項に係る部分について取消訴訟が提起されなかったときには,審決が認めた訂正の帰趨が問題となる。
 すなわち,上記の場合において,特許法181条2項の規定による審決の取消しの決定により,審決のうち特許を無効とした請求項に係る部分が取り消されて,審判手続が再開されたときに,同法134条の2第4項に規定する訂正請求のみなし取下げとの関係で,当該審決において認められた訂正のうち無効不成立とされた請求項に関する部分については,訂正が確定したものと解するのか,あるいは同項の規定により取り下げられたものと解するのかが問題となる。
 そこで,本決定により差し戻された事件について,今後行われる審判における審理に資するため,本件訂正の帰趨につき付言する。
(2)本件訂正は,本件明細書の特許請求の範囲のうち請求項4のみを訂正するものであって,その余の請求項を訂正するものではなく,また,本件審決によれば,特許請求の範囲以外の訂正事項(本件明細書の段落【0014】,【0032】,【0079】,【0080】に係るもの)はいずれも請求項4の訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものとされているから,本件審決は,専ら請求項4との関係で本件訂正を認めたものというべきである。
 そして,本件審決は,本件訂正が認められることを前提として,本件特許の請求項4に係る発明についての無効審判請求を不成立としたものであるから,本件審決中「訂正を認める。」との部分と,「特許第3749833号の請求項4に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分は,一体不可分の関係にあるというべきである。
 しかるところ,被告(審判請求人)は,本件審決中「特許第3749833号の請求項4に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分については取消訴訟を提起していないから,本件審決中の上記部分は,出訴期間の経過により確定した。けだし,特許が2以上の請求項に係るものであるときには,無効審判は請求項ごとに請求することができるものとされているのであるから(特許法123条1項柱書),2以上の請求項について無効審判が請求されて審決においてこれに対する判断がされた場合にあっては,当該審決は,各請求項についての判断ごとに可分な行政処分として,それぞれが取消訴訟の対象となるものであり,それぞれ別個に確定するというべきであるからである。
 審決は,行政処分であり,その取消しを求める訴えは,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り,提起することができるのであり(行政事件訴訟法9条参照),2以上の請求項に係る特許についての無効審判において,一部の請求項に係る発明についての特許を無効とし,残りの請求項に係る発明についての特許の無効請求を不成立とする審決がされた場合には,特許法178条2項の規定する当事者,参加人又は参加を申請してその申請を拒否された者のうち,審決中,特許を無効とされた請求項に係る部分については被請求人(特許権者)側のみが,無効請求が不成立とされた請求項に係る部分については請求人側のみが,取消訴訟を提起することができる。そして,審決のうち,それぞれの部分について特許法178条3項に規定する期間内に上記の者から取消訴訟が提起されなかったときには,当該部分は確定するものと解することとなる。
 そうすると,本件審決のうち,「特許第3749833号の請求項4に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分が確定したことに伴って,本件審決中「訂正を認める。」との部分も確定したものと解するのが相当である(特許法134条の2第5項において準用される同法128条参照)。
(3)以上検討したとおり,本件訂正はすでに確定したものであるから,本決定が効力を生じた後,本件審判の手続が本件特許の請求項1及び2に関する部分について再開され,特許法134条の3第2項の規定により指定された期間内に訂正請求がされ又は同条5項の規定により同期間の末日に訂正請求がされたものとみなされても,本件訂正に関しては同法134条の2第4項の規定によるみなし取下げの効果は生じない。
 また,別件審判についても,本件訂正が確定していることを前提として,その審理が行われるべきである。
 3 本件に関する判断は以上のとおりであるが,この機会に,特許法134条の2第4項の規定によるみなし取下げの効果は,請求項ごとに生じると解すべきことについて,当裁判所の見解を示しておく。
(1)特許法は,昭和62年法律第27号による改正により,いわゆる改善多項制を導入するとともに,2以上の請求項に係る特許については請求項ごとに無効審判請求をすることができることとしたが(特許法123条1項柱書),その後,平成5年法律第26号による改正により,無効審判の手続において訂正請求をすることができることとし,さらに,平成11年法律第41号による改正(以下,「平成11年改正」という。)により,訂正請求の当否に関し,訂正後の請求項に係る発明(ただし,無効審判請求がされていない請求項に係る発明を除く。)について,いわゆる独立特許要件の判断を行わないこととした。
 なお,2以上の請求項に係る発明についての特許を無効にすることを求める特許無効審判において,特許権者による訂正請求を認めた上で,一部の請求項に係る発明についての特許を無効とし,残りの請求項に係る発明についての特許の無効請求を不成立とする審決は,平成11年改正において,上記のとおり,訂正請求の当否に関し独立特許要件の判断を行わないこととされたことに伴い,現れるに至ったものである(平成11年改正前の特許法の下では,このような場合,独立特許要件を欠くとして訂正請求が全体として認められず,訂正前の特許請求の範囲の記載に基づいて,各請求項の無効理由の存否が判断されていた。)。
 このように,2以上の請求項に係る無効審判請求においては,無効理由の存否は請求項ごとに独立して判断されるのであり,個々の請求項ごとの審判が同時に進行しているものとして考えるのが,無効審判制度の趣旨に沿うものである。そうすると,無効審判の審決において認められた訂正の効力についても,個々の請求項ごとに生ずると解するのが相当である。
 そして,特許法134条の2第4項のいわゆるみなし取下げの規定は,平成15年法律第47号による改正により導入されたものであるが,上記のような無効審判制度を前提としていることは明らかであるから,その効果も請求項ごとに生じると解するのが相当である。
(2)なお,いわゆる改善多項制が導入され,請求項ごとに無効審判請求についての判断を行う制度が採用されたため,上記のとおり,2以上の請求項に係る発明についての特許に関して,一部の請求項につき無効審判請求の審決が確定し,あるいは特許請求の範囲等の記載が訂正されることが生ずるが,このような結果が,必ずしも特許登録原簿の記載に反映されていないようにも見受けられる。仮に,特許庁において,無効審決による特許無効ないし訂正の効力が請求項ごとに生ずるとの実務運用がされていないとするならば,それは法の趣旨に反するものといわざるを得ない。


【知財高裁平成19年9月12日】特許法

2010-06-26 14:21:51 | Weblog
【知財高裁平成19年9月12日】特許法
 4 付言
 本判決により審決が取り消された事件について,今後行われる審判の審理に資するため,確定効の範囲等に関し,以下のとおり補足して述べる。
(1)はじめに
 ア 特許が2以上の請求項に係るものであるときには,その無効審判は請求項ごとに請求することができるものとされていること(特許法123条1項柱書)に照らすならば,2以上の請求項に係る特許無効審判の請求に対してされた審決は,各請求項に係る審決部分ごとに取消訴訟の対象となり,各請求項に係る審決部分ごとに形式的に確定する。
 審決の形式的な確定は,当該審決に対する審決取消訴訟の原告適格を有するすべての者について,出訴期間が経過し,当該審決を争うことができなくなることによって生ずる(特許法178条3項)。
 そうすると,2以上の請求項に係る特許についての無効審判において,一部の請求項に係る特許について無効とし,残余の請求項に係る特許について審判請求を不成立とする審決がされた場合には,それぞれ原告適格を有する者(審決によって不利益を受けた者)が異なるため,各請求項に係る審決部分ごとに,形式的確定の有無及び確定の日等が異なる場合が生じ得る。
 無効審判請求を不成立とした審決部分は,請求人側のみが取消訴訟を提起する原告適格を有するのであるから,請求人側に係る出訴期間の経過によって,審決部分もまた形式的に確定することになる。
 イ 審決の取消しの判決又は決定の確定により,審判手続が再開され,特許法134条の3第1項又は2項の規定により指定された期間内に訂正請求がされ又は同条5項の規定により同期間の末日に訂正請求がされたものとみなされる場合があるが,その場合には,特許法134条の2第4項の規定による先にした訂正の請求のみなし取下げの効果もまた,請求項ごとに生じる(知財高裁平成19年6月20日決定・平成19年(行ケ)第10081号審決取消請求事件,知財高裁平成19年7月23日決定・平成19年(行ケ)第10099号審決取消請求事件参照)。
 そして,特許無効審判請求の審決について,審判請求を不成立とした請求項に係る審決部分については取消訴訟が提起されず,特許を無効とした請求項に係る審決部分についてのみ取消訴訟が提起され,かつ,所定の期間内に訂正審判請求がされ,特許法181条2項の規定に基づき,特許を無効とした請求項に係る審決部分が取り消された後,再開された審判手続において,特許法134条の2第4項の規定により特許を無効とした請求項に係る先にした訂正の請求は取り下げられたものとみなされる場合がある。
 これに対して審判請求を不成立とした請求項に係る審決部分は形式的に確定しているので,当該請求項に係る先にした訂正の請求は特許法134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなされることはなく,再開された審判手続において,当該請求項に係る新たな訂正の請求がされているときは,当該請求項に係る特許無効審判請求を不成立とした確定審決が存在することを前提として,いわゆる独立特許要件の有無についても判断すべきことになる(特許法134条の2第5項の規定により読み替えて準用される126条5項)。
(2)本件手続の経緯
 ア 本件手続の経緯は,前記第2の1のとおりであり,特許庁は,平成17年6月28日,「特許第2580489号の請求項1ないし4,6ないし10に係る発明についての特許を無効とする。特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決(第1次審決)をし,これに対して,原告が,第1次審決中の請求項1ないし4,6ないし10に係る発明についての特許を無効とする部分の取消しを求めて審決取消訴訟を提起し,併せて,本件特許の特許請求の範囲の減縮等を目的とする訂正審判請求をした。
 なお,第1次審決中の審判請求不成立部分について,被告(審判請求人)からの審決取消訴訟の提起はなかった。
 知的財産高等裁判所(第2部)は,特許法181条2項に基づき,事件を審判官に差し戻すため,第1次審決中の請求項1ないし4,6ないし10に係る発明についての特許を無効とする部分を取り消す旨の決定をした。
 差戻し後の事件について,所定の期間内に訂正の請求がされなかったため,上記訂正審判請求の請求書に添付された訂正した明細書,特許請求の範囲又は図面を援用した本件訂正の請求がされたものとみなされた。
 そして,特許庁は,平成18年8月15日,「訂正を認める。特許第2580489号の請求項1ないし4,6ないし10に係る発明についての特許を無効とする。特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決(本件審決はその一部)をした。
 イ 本件手続について見ると,第1次審決中「特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決部分については,被告(審判請求人)において取消訴訟を提起することなく出訴期間が経過したのであるから,同審決部分は形式的に確定した。
 しかるに,特許庁は,本件特許の請求項5に係る無効審判請求が形式的に確定していないとの前提に立った上で,当該請求項についても審判手続で審理し,「特許第2580489号の請求項5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」旨の判断をした。
 上記審判手続のあり方は,著しく妥当を欠くというべきである。けだし,本件特許の請求項5については,無効審判請求に係る無効理由が存在しないものとする審決部分が確定したことにより,原告は,形式的確定の利益を享受できる地位を得ているのであるから,それにもかかわらず,他の請求項に係る特許を無効とした審決部分について取消訴訟を提起して,当該請求項について有利な結果を得ようとしたことにより,かえって無効審判請求を不成立とする請求項5についてまで,不安定な地位にさらされることになることは著しく不合理だからである。
(3)まとめ
 本判決により審決が取り消された事件について,今後行われる審判においては,上記の点を踏まえた審理,判断がされるべきである。

【知財高裁平成20年5月29日】特許法

2010-06-24 17:08:37 | Weblog
【知財高裁平成20年5月29日】特許法
 2 訂正審判の請求について,請求が成り立たない旨の審決があり,これに対し特許権者が提起した取消訴訟の係属中に,当該特許登録を無効にする審決が確定した場合には,特許権者は,上記取消訴訟において勝訴判決を得たとしても訂正審判の請求が認容されることはあり得ないのであるから,上記審決の取消しを求めるにつき法律上の利益を失うに至ったものというべきである(最高裁判所昭和57年(行ツ)第27号,同裁判所昭和59年4月24日第三小法廷判決)。
 本件においても,前記1で認定した事実によると,訂正審判請求が成り立たない旨の本件審決に対して取消しを求めて本訴提起したところ,本訴係属中に本件特許登録を無効にする旨の本件無効審決が確定したのであるから,本訴請求は法律上の利益を失うに至ったものといえる。
 したがって,原告の本訴請求は訴えの利益がなく不適法であるから,本件訴えを却下することとし,主文のとおり判決する。

【東京地裁平成21年3月25日】特許法

2010-06-23 09:24:18 | Weblog
【東京地裁平成21年3月25日】特許法
 1 取消理由1について
(1)特許法は,PCT出願について,本件条約の優先日から2年6か月の国内書面提出期間内に,特許法所定の国内書面を提出する必要があり(法184条の5第1項),外国語で出願を行う場合は,さらに,国内書面提出期間内(ただし,上記国内書面を国内書面提出期間の満了前2か月から満了の日までの間に提出した場合は,国内書面の提出の日から2か月の翻訳文提出特例期間内)に,本件条約所定の明細書,請求の範囲等の日本語による翻訳文を提出する必要があるとし(法184条の4第1項),上記翻訳文(要約の翻訳文は除く。)が上記期間内に提出されないときは,当該国際特許出願は取り下げられたものとみなすものとしている(法184条の4第3項)。そして,特許法上,上記の翻訳文の未提出による取下げが擬制された場合に,権利の回復を認める旨の規定は存在しない。
 本件においては,前記争いのない事実等で判示したとおり,本件国際特許出願の優先日は平成16年3月4日であり,国内書面提出期間の末日は平成18年9月4日であるところ,原告は,同月1日に,特許庁に対して,本件国内書面を提出し,同年11月3日に,本件各翻訳文を提出したのであるから,本件各翻訳文は,翻訳文提出特例期間(同年11月1日まで)経過後に提出されたものと認められ,本件国際特許出願は,法184条の4第3項の規定に基づき,取り下げられたものとみなされることになる。
 そこで,特許庁長官は,前記争いのない事実で判示したとおり,本件国際特許出願の翻訳文提出書に係る手続について,本件却下理由通知書1に記載した理由(本件各翻訳文が翻訳文提出特例期間経過後の提出であること)によって本件却下処分1を行い,本件国内書面に係る手続について,本件却下理由通知書2に記載した理由(本件国内書面は,本件各翻訳文が翻訳文提出特例期間内に提出されなかったことにより,本件国際特許出願が取り下げられたものとみなされることにより不必要な手続となること)によって本件却下処分2を行ったものである。
(2)原告は,取消理由1に係る主張として,上記翻訳文提出期間の徒過については,本件条約に基づく本件規則49.6が直接適用され,同規定により,原告の権利の回復が認められる旨主張する。
 ア 本件規則49.6の適用につき,同規則49.6(f)は,「2002年10月1日に(a)から(e)の規定が指定官庁によつて適用される国内法令に適合しない場合には,当該指定官庁がその旨を2003年1月1日までに国際事務局に通告することを条件として,これらの規定は,その国内法令に適合しない間,当該指定官庁については,適用しない。国際事務局は,その通告を速やかに公報に掲載する。」と規定するところ,前記争いのない事実等で判示したとおり,日本の特許庁は,同規則に基づき,国際事務局に対し,同規則49.6(a)ないし(e)は国内法令に適合しないことを通告し,国際事務局は,その通告を公報に掲載している。したがって,本件規則49.6は,その規定上の手続により,我が国に適用されないことが明らかといえる。
 また,特許法は,特許出願の出願審査請求の期間を出願日から3年以内と規定するところ(法48条の3第1項),本件規則49.6(a)ないし(e)によれば,優先日から30か月を経過する時までに翻訳文を提出せずにその効力が失われた国際出願の出願人は,期間を遵守できなかった理由がなくなった日から2か月又は期間満了から12か月(優先日からすれば42か月)の期間内は,出願人の権利を回復することができるから,仮に,同規則に従い,外国語による国際特許出願において,翻訳文の提出を優先日から最大3年6か月まで可能とする場合には,出願審査請求がされてから,最大6か月の間,明細書等の翻訳文が提出されない事態も生ずることになり,その間の審査を行うことができないため,特許庁における審査に支障が生じるおそれがあることになる。したがって,本件規則49.6(a)ないし(e)は,日本の国内法令に適合しないというべきであり,特許庁の行った上記通告には,合理性があると認められる。
 原告は,PCT出願において,国内段階での期間内翻訳文未提出による失権を回復するための救済規定が国内法として整備されていない国は,主要国中では日本のみである旨主張するところ,仮にそうであるとしても,特許出願制度において翻訳文提出の期間を徒過した場合にどのような措置を講ずるかは,各国の立法政策等に委ねられた問題と解すべく,失権を回復する具体的規定が設けられていないからといって,本件規則49.6が我が国の法規範として直接適用されるものでないことは,前記説示に照らして明らかといえる。
 イ したがって,その余の点について検討するまでもなく,原告の取消理由1に係る主張は,理由がない。
 2 取消理由2について
(1)特許法は,外国語でされたPCT出願に対しては,明細書,請求の範囲等について,国内書面提出期間又は翻訳文提出特例期間内に日本語による翻訳文の提出を要求し,上記期間内に上記の翻訳文の提出がなかった場合は,当該出願は取り下げられたものとみなす旨規定している(法184条の4第1項,同3項)。
 ア 原告は,外国語でされたPCT出願に対してのみ上記期間内に翻訳文の提出を要求することは,外国語でPCT出願をするのは専ら在外人である以上,実質的に内外人を差別していることになり,パリ条約2条の内国民待遇,特許法25条2号の相互主義に反する旨主張する。また,原告は,パリ条約に基づく出願の場合と同様に,PCT出願の翻訳文提出特例期間の起算日を優先日とすべきであり,そのようにせずに,法184条の4第1項及び3項を形式に適用して,上記起算日を国内書面提出の日とすることは,パリ条約上の内国民待遇の原則に反する旨主張する。
 しかしながら,特許法の上記規定は,外国語でされたPCT出願の場合に,日本語でされたPCT出願においては要求しない手続を要求し,これを満たさない場合の出願の取下擬制の効果を規定しているのであって,その取扱いの差は,出願の際に使用する言語によるものであり,出願者の国籍によるものではないから,内国民待遇や相互主義違反の問題は生じないというべきである。
 イ また,原告は,法184条の4第3項は,発明の保護を基礎として作成された本件条約の法目的(前文,2条(1))に反する旨主張するが,本件条約自体は,翻訳文提出期間を徒過した場合の権利回復規定を設けておらず,権利回復を規定した本件規則も,前記1で判示したとおり,各国の事情により,権利回復規定を設けないことを認めているのであるから(本件規則49.6(f)),特許法の上記規定が,本件条約の法目的に反するということもできない。
(2)したがって,原告の取消理由2に係る主張は,理由がない。
 3 以上より,原告の取消理由1及び2に係る主張は,すべて理由がなく,本件各却下処分は,いずれも適法である。


【知財高裁平成21年3月11日】特許法

2010-06-23 07:58:20 | Weblog
【知財高裁平成21年3月11日】特許法
 3 争点(5)(告知・流布に係る差止請求権の存否)について
 上記2(4)のとおり,被控訴人製品(1)及び(2)は,本件発明1~3の構成要件をすべて充足し,本件発明1~3の技術的範囲に属するものであるから,被控訴人製品(1)及び(2)を製造販売する被控訴人の行為は,本件特許権を侵害するものである。
 したがって,控訴人Xが,「被控訴人製品の製造,譲渡,貸渡し並びに譲渡及び貸渡しの申出が,本件特許権を侵害する」との告知又は流布をしたとしても,これが「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当するものではないから,これらの告知又は流布が不正競争防止法2条1項14号に該当するものではなく,同号に該当することを理由として,同法3条1項に基づき,被控訴人製品の製造販売が本件特許権を侵害する旨の告知又は流布の差止めを求める被控訴人の請求は,理由がなく,これを認めることはできない。
 5 争点(7)(本件特許権侵害による損害賠償請求権の存否及びその額)について
(1)特許法102条1項類推適用について
 証拠及び弁論の全趣旨によれば,控訴人X及び控訴会社代表者Bは,平成14年1月ころ,控訴会社に対し,本件特許権の独占的通常実施権を許諾し,控訴会社は,この独占的通常実施権に基づき,本件特許権についての実施品である控訴会社製品を製造し,直接又は被控訴人を含む代理店を介し,百貨店における催事会場等に販売スペースを借り受けて印鑑の販売を行うという方法等によって,控訴会社製品を百貨店等に販売してきたことが認められる。
 ところで,特許法102条1項は,特許権の侵害製品の販売等により特許権者又は専用実施権者による特許製品の販売数量等が減少した場合,民法709条に基づき逸失利益の賠償を請求するにおいて,侵害行為と因果関係のある販売数量の減少の範囲を訴訟において立証することが困難であることから,特許権者又は専用実施権者の保護を図るため,侵害者の譲渡数量に権利者の製品の単位数量当たりの利益額を乗じた額を,実施能力に応じた額の限度において損害額とし,ただし,譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を権利者が販売することができないとする事情があるときは,侵害者がその旨を立証することにより,その事情に応じた額を控除するとする規定である。そして,独占的通常実施権者は,当該特許権を独占的に実施して市場から利益を上げることができる点においては専用実施権者と実質的に異なるところはなく,同項の趣旨は,独占的通常実施権者にも妥当するから,独占的通常実施権者が侵害者の実施行為によって受けた損害についても,同項を類推適用することができる。
(裁判長裁判官 塚原朋一)



飯田橋ゼミの論文直前ゼミ・6月20日(日)開催の案内

2010-06-16 10:40:27 | Weblog
飯田橋ゼミでは、6月20日(日)に論文直前ゼミを開催します。
1日で3科目の答案を書くゼミです。
答案作成後、質疑応答をします。
参加希望の方は、下記のアドレスにメールを送信してください。
案内を送信します。
tsutsumi@dream.com