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2022年12月31日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の10

2022-12-31 05:29:04 | Weblog
2022年12月31日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の10

(パリ条約等による優先権主張の手続の特例)第六十条の十
1 国際意匠登録出願については、第十五条第一項において読み替えて準用する特許法第四十三条(同項において準用する同法第四十三条の二第二項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)並びに第十五条第一項において準用する同法第四十三条の二第一項(第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第二項の規定は、適用しない。
2 特許法第四十三条第二項から第九項までの規定は、ジュネーブ改正協定第六条(1)(a)の規定による優先権の主張をした者に準用する。この場合において、同法第四十三条第二項中「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内」とあるのは、「経済産業省令で定める期間内」と読み替えるものとする。

〔解説〕

 令和元年改正により、国際意匠登録出願についても、特許法43条2項から9項までを準用することとした。

<意匠法15条等の令和元年改正>
 平成27年以降、意匠法条約(DLT)については、予想外に各国間の意見の隔たりが大きく、令和元年現在で採択の見通しが立っていない。他方、DLTの素案に規定のある救済規定及び同時に措置する予定であった優先権書類に関する通知規定等については、出願人の利便性を向上させる観点から、早急に整備すべき事項である。特に、近年、特許と意匠との間の変更出願が増加してきており、その数が年間約100件から、多い年には約180件にのぼっていることにかんがみれば、特許制度と意匠制度の調和が重要な課題となっている。
 そこで、手続救済規定及び注意喚起のための通知規定の整備については、DLT採択に先んじて、措置を講じることとした。
 すなわち、出願人に対する救済措置を充実させるべく、意匠法において準用されていなかったパリ条約の例による優先権主張(特43条の2)、指定期間経過後の救済規定(特5条3項)、優先権主張に関する注意喚起のための通知規定等(特43条第6項及び第7項)を新たに準用するため、必要な規定を整備した。

・60条の10第1項(適用除外)

 国際意匠登録出願については、特許法43条、43条の2は準用しない旨を規定している。
 準用する必要のある規定は60条の10第2項で明記することとした。
 分かりにくい規定である。

 60条の10は、国際意匠登録出願についての優先権の主張の手続の特例を定めた規定である。
 国際意匠登録出願についての優先権の主張については、各指定締約国に対して直接行うことについてジュネーブ改正協定にはこれを妨げる規定は置かれていないが、「締約国に対する出願手続の一元化」というジュネーブ改正協定の趣旨にかんがみ、ジュネーブ改正協定の規定による国際事務局経由の手続に一元化することとしている。このため、60条の10第1項において、国際意匠登録出願については、日本国の特許庁に優先権の主張をする場合の手続の規定は適用しないこととしている。

 令和元年改正において、日本国の特許庁に優先権の主張をする場合には、意匠法15条1項において、特許法43条の2第1項(パリ条約の例による優先権主張)を新たに準用することに伴い、60条の10第1項において、国際意匠登録出願についての優先権の主張については、意匠法15条1項で準用する特許法43条の2第1項(特許法43条の3第3項において準用する場合を含む)の規定を適用しない旨を規定した。

 これに加え、特許法43条の2第1項を、意匠法15条1項において準用する特許法43条の3第3項において準用する場合についても、特許法43条の3第1項に規定するWTO加盟国にした出願に基づく優先権の主張をする場合であって、特許法43条の3第3項において準用する特許法43条の2第1項の期間徒過後の優先権の主張をする場合が想定されるが、国際出願に際して国際事務局に対して、このような優先権の主張の手続を行うことがジュネーブ改正協定第6条(1)(a)の規定によっては認められていない。
 したがって、意匠法60条の10第1項において、特許法43条の2第1項を、意匠法15条1項において準用する特許法43条の3第3項において準用する場合についても、国際意匠登録出願については適用しない旨を規定した。

 また、意匠法15条1項の改正に伴い、意匠法60条の10第1項において、意匠法15条1項で新たに準用する特許法43条6項(優先権書類に関する注意喚起のための通知規定)及び7項(書類等提出規定)を国際意匠登録出願に適用しない旨を規定すべく、所要の改正を行った。

・60条の10第2項(特43条等の準用)

<令和元年改正>
 国際意匠登録出願に係る優先権の主張についての証明書等の提出手続については、ジュネーブ改正協定には国際事務局に提出するものとされていないため、優先権書類等を日本国の特許庁に直接提出することができる。
 令和元年改正前の意匠法60条の10第2項においては、特許法43条2項から5項まで、8項及び9項については、ジュネーブ改正協定6条(1)(a)の規定による優先権の主張をした者に対して準用する旨が規定されていた。
 令和元年改正において、意匠法15条1項が改正されたので、意匠法15条1項において新たに準用する特許法43条6項及び7項についても、ジュネーブ改正協定6条(1)(a)の規定による優先権の主張をした者に対して準用するため、これらの規定を意匠法60条の10第2項において準用することとした。
 他方、意匠法15条1項で準用する特許法43条の2第1項に規定するパリ条約の例による優先権の主張は、国際出願に際して国際事務局に対して優先権の主張の手続を行うことがジュネーブ改正協定6条(1)(a)の規定によっては認められていないため、特許法43条の2第1項については、国際意匠登録出願について適用しないこととした。

<特許法43条1項の不準用>
 特許法43条1項は、国際意匠登録出願に準用しない。
 通常の意匠登録出願がパリ条約の優先権の主張を伴う場合には、15条1項において、特許法43条1項を準用しているが、国際意匠登録出願がパリ条約の優先権の主張を伴う場合には、優先権の主張の申立てについては改正協定及び規則に従うこととしているため、特許法43条1項の規定は適用しないこととした。
 国際出願においては、優先権の主張の申立ては、国際出願の願書に記載する。

<特許法43条2項~9項の準用>
 特許法43条2項から9項までは、国際意匠登録出願に準用する。
 優先権書類に関しては、改正協定及び規則に規定がないため、国内法令を適用することとしたものである。

 国際出願については、改正協定6条(1)により、パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴うことができることとされている。
 その優先権の主張は、意匠法68条4項で準用する特許法26条の規定により、特段の追加的な手続を要することなく、日本国の特許庁との関係においても適法な優先権の主張となるが、優先権書類等の提出手続については、改正協定では国際出願に伴う手続とされていないため、日本国の特許庁との関係における所要の手続規定を整備することとした。

 国際出願における優先権の主張については、各指定締約国に対して直接行うことについて、改正協定にはこれを妨げる規定は置かれていないが、「締約国に対する出願手続の一元化」という改正協定の趣旨にかんがみ、改正協定6条(1)の規定による国際事務局経由の手続に一元化することとした。
 このため、国際意匠登録出願については、日本国の特許庁に優先権の主張をする場合の手続規定(特許法43条1項)は適用しないこととした。

 さらに、意匠法15条1項で準用する特許法43条の3第2項に規定する特定国(パリ条約の同盟国又は世界貿易機関の加盟国のいずれでもない国)についての優先権の主張は、国際出願に際して国際事務局に対して優先権の主張の手続を行うことが改正協定6条(1)(a)によっては認められていないため、意匠法15条1項において準用する特許法43条の3第2項は、国際意匠登録出願について適用しないこととした。

 優先権書類等の提出手続については、改正協定では国際出願に伴う手続とされていないため、優先権書類等は日本国に直接提出できることとし、優先権書類等の提出の手続に係る特許法43条2項~9項の規定を改正協定6条(1)(a)による優先権の主張をした者についても、準用することとした。

<特許法43条2項の準用>
 特許法43条2項は「前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、若しくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であつてその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。(各号略)」と規定している。
 準用する際に「次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内」を「経済産業省令で定める期間内」に読み替えている。
 国際出願における優先権の主張の手続期間は、改正協定6条(1)(b)により下位規則に委任されていることから、優先権書類等の提出期間は経済産業省令に委任することとした。
 経済産業省令(意匠法施行規則12条の2)
 意匠法第六十条の十第二項の経済産業省令で定める期間は、国際公表があつた日から三月とする。
 国際意匠登録出願についての手続を開始できるのは、国際公表後であるので、優先権書類の提出期限は、国際公表の日から3月とすることとした。

<特許法43条3項の準用>
 特許法43条3項は「第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知つたときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。」と規定している。

<特許法43条4項の準用>
 特許法43条4項は「第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。」と規定している。

<特許法43条5項の準用>
 特許法43条5項は「第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。」と規定している。
 平成30年改正により、手続の簡素化等によるユーザーの利便性向上の観点から、意匠法においても、特許法43条5項を準用し、意匠登録出願に係る優先権書類のオンライン交換制度を導入することとした。
 そこで、この規定を、国際意匠登録出願にも準用することとした。

<特許法43条6項の準用>
 特許法43条6項は「特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかつたときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。」と規定している。
 令和元年改正により、意匠法15条1項において特許法43条6項を準用することとしたことから、意匠法60条の10第2項においても準用することとした。

<特許法43条7項の準用>
 特許法43条7項は「前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。」と規定している。
 令和元年改正により、意匠法15条1項において特許法43条7項を準用することとしたことから、意匠法60条の10第2項においても準用することとした。

<特許法43条8項の準用>
 特許法43条8項は「第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。」と規定している。

<特許法43条9項の準用>
 特許法43条9項は「第七項又は前項の規定により第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面の提出があつたときは、第四項の規定は、適用しない。」と規定している。

<特許法43条の2の不準用>
 令和元年改正により、意匠法15条1項においては、意匠登録出願について特許法43条の2(優先期間の徒過の救済)を準用することとしたが、国際意匠登録出願については、準用しないこととした。
 改正協定6条(1)(a)においては、優先期間の徒過の例外を認めていないからである。

 改正協定 第六条 優先権
(1)[優先権の主張]
(a)国際出願には、パリ条約の締約国若しくは世界貿易機関の加盟国において又はこれらの国についてされた一又は二以上の先の出願に基づく優先権をパリ条約第四条の規定に基づいて主張する申立てを含めることができる。


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2022年12月29日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の9

2022-12-30 06:24:32 | Weblog
2022年12月29日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の9

(秘密意匠の特例)第六十条の九
 国際意匠登録出願の出願人については、第十四条の規定は、適用しない。

〔解説〕

 国際意匠登録出願については、14条により意匠を秘密にすることを請求することができないこととした。

<趣旨>
 改正協定10条(3)により、国際登録は、国際事務局が公表する。国際公表は、原則として国際登録の日から6月(令和4年1月1日後は12月)経過した後速やかに行う(改正協定第17規則)。国際公表がされた後は、意匠を秘密にすることを請求する実益がない。
 国際意匠登録出願は、国際公表がされたものである(60条の6第1項)。
 そうすると、事実上、国際意匠登録出願に係る意匠を秘密にすることができない。
 そこで、国際意匠登録出願については、14条は適用しないこととした。

 改正協定 第十条 国際登録、国際登録の日、公表及び国際登録の秘密の写し
(3)[公表]
(a)国際登録は、国際事務局が公表する。その公表は、全ての締約国において十分なものとみなされるものとし、名義人が他の方法による公表を求められることはないものとする。
(b)国際事務局は、公表された国際登録の写しを指定官庁に送付する。
(4)[公表前の秘密の保持]
 国際事務局は、(5)及び次条(4)(b)の規定が適用される場合を除くほか、公表するまで国際出願及び国際登録を秘密のものとして取り扱う。


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2022年12月29日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の8

2022-12-29 06:16:46 | Weblog
2022年12月29日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の8

(関連意匠の登録の特例)第六十条の八
1 本意匠の意匠登録出願と関連意匠の意匠登録出願の少なくともいずれか一方が国際意匠登録出願である場合における第十条第一項(同条第五項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この項及び次項において同じ。)の規定の適用については、同条第一項中「又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による」とあるのは、「若しくは第四十三条の三第一項若しくは第二項又はジュネーブ改正協定第六条(1)(a)の規定による」とする。
2 本意匠の意匠権が第六十条の十四第二項に規定する国際登録を基礎とした意匠権である場合における第十条第一項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「第四十四条第四項」とあるのは、「第六十条の十四第二項」とする。
3 基礎意匠に係る一又は二以上の関連意匠の意匠権が第六十条の十四第二項に規定する国際登録を基礎とした意匠権である場合における第十条第八項の規定の適用については、同項中「第四十四条第四項」とあるのは、「第四十四条第四項若しくは第六十条の十四第二項」とする。

〔解説〕

・60条の8第1項(10条1項の適用)

<趣旨>
 国際意匠登録出願についても10条の関連意匠制度を利用することができるが、改正協定6条の優先権の主張を伴う場合は、出願日は先の出願日とすることとした。
 国際意匠登録出願を本意匠の意匠登録出願とすることができ、国際意匠登録出願を関連意匠の意匠登録出願とすることもできる(10条1項)。
 10条1項の適用において、国際意匠登録出願が改正協定6条(1)(a)による優先権の主張を伴う場合には、優先権の主張の基礎とされた出願日を基準とすることとした。本意匠の意匠登録出願、関連意匠の意匠登録出願がパリ条約の優先権の主張を伴う場合と同様に扱うこととしたものである。

 改正協定 第六条 優先権
(1)[優先権の主張]
(a)国際出願には、パリ条約の締約国若しくは世界貿易機関の加盟国において又はこれらの国についてされた一又は二以上の先の出願に基づく優先権をパリ条約第四条の規定に基づいて主張する申立てを含めることができる。
(b)規則は、(a)に規定する申立てを国際出願をした後に行うことができることを定めることができる。この場合には、規則は、当該申立てを行うことができる期限について定める。
(2)[優先権の主張の基礎となる国際出願]
 国際出願は、その出願日から、出願の結果のいかんを問わず、パリ条約第四条に規定する正規の出願と同等のものとする。

 国際意匠登録出願における優先権の主張の手続については、改正協定及び規則に従うこととされている。

<同条第五項の規定により読み替えて準用する場合を含む。>
 10条5項は、「前項の場合における第一項の規定の適用については、同項中「当該本意匠」とあるのは、「当該関連意匠に係る最初に選択した一の意匠」とする。」と規定している。
 10条4項は「第一項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠については、当該関連意匠を本意匠とみなして、同項の規定により意匠登録を受けることができるものとする。当該意匠登録を受けることができるものとされた関連意匠にのみ類似する意匠及び当該関連意匠に連鎖する段階的な関連意匠にのみ類似する意匠についても、同様とする。」と規定している。
 60条の8第1項の「本意匠の意匠登録出願と関連意匠の意匠登録出願」には、関連意匠にのみ類似する意匠について関連意匠の意匠登録出願がされた場合の本意匠とみなされた意匠登録出願と関連意匠の意匠登録出願が含まれることとなる。

・60条の8第2項(本意匠の意匠権が国際登録を基礎とした意匠権である場合)

 10条1項ただし書の適用においては、本意匠の意匠権が国際登録を基礎とした意匠権であるときは、60条の14第2項により消滅したものとみなされた場合を含めることとした。
 その結果、本意匠の意匠権が国際登録を基礎とした意匠権である場合において、国際登録が消滅したときは、その後は、関連意匠の意匠登録を受けることができないこととなる。
 60条の14第2項は「前条の規定により読み替えて適用する第二十条第二項の規定により設定の登録を受けた意匠権(以下「国際登録を基礎とした意匠権」という。)は、その基礎とした国際登録が消滅したときは、消滅したものとみなす。」と規定している。

・60条の8第3項(10条8項の適用)

 関連意匠の意匠権が国際登録を基礎とした意匠権であるときは、10条8項の適用において、関連意匠の意匠権の消滅事由として、60条の14第2項により消滅した場合を含めることとした。

<具体例>
 意匠イについて国際意匠登録出願Aをした後に、国際意匠登録出願Aに係る意匠イを本意匠とする関連意匠ロについて関連意匠の意匠登録出願Bをするときは、令和元年改正前は、国際意匠登録出願Aの国際登録の日以後、国際意匠登録出願Aについて国際公表がされる前に、関連意匠の意匠登録出願Bをしなければならなかった。国際意匠登録出願Aについて国際公表がされると意匠イが刊行物公知意匠となるため、その後に関連意匠ロについて関連意匠の意匠登録出願Bをしても、3条1項3号により拒絶されるからである。
 ところが、令和元年改正により、国際公表された意匠イは、自己の意匠となるので、10条2項により、先行意匠から除外されることとなる。そうすると、関連意匠ロの意匠登録出願Bは、本意匠イの国際意匠登録出願Aの国際登録の日から10年以内にすることができることとなる。

<国際意匠登録出願が3条の2の先願に該当する場合>
 乙の意匠登録出願Bが、甲の国際意匠登録出願Aを先願として、3条の2により拒絶されるのは、乙の意匠登録出願Bが、甲の国際意匠登録出願Aに係る国際登録の日後であって、国際公表がされる前にされた場合に限られる。甲の国際意匠登録出願Aについて国際公表がされた後に、乙の意匠登録出願Bがされた場合は、国際公表に係る公報は、3条1項2号の刊行物に該当し、新規性が否定されることとなるからである。
 国際公表に係る公報は、3条の2本文の意匠公報には該当しないため、国際意匠登録出願が3条の2の先願として引用されるためには、国際意匠登録出願について、20条3項の意匠公報が発行されるか、66条3項の意匠公報が発行されることが必要である。

<具体例>
 甲が意匠イについて国際意匠登録出願Aをした。
 その後、甲は、国際意匠登録出願Aの図面について補正Bをした。補正Bは、図面に記載された意匠イをこれに類似する意匠ロに変更するものである。
 その後、国際意匠登録出願Aの審査官は、補正Bを要旨の変更であるとして決定をもって却下した(17条の2第1項)。
 この場合、甲が、補正B後の意匠ロについて17条の3第1項の新たな意匠登録出願Cをしたときは、新たな意匠登録出願Cは、補正Bについて手続補正書を提出した時にしたものとみなされる(17条の3第1項)。
 しかし、補正Bをする前に、国際意匠登録出願Aについて国際公表がされているので、国際意匠登録出願Aに係る意匠イは国際公表された意匠に該当し(3条1項2号)、これに類似する意匠ロに係る意匠登録出願Cは、新規性がないとして拒絶される(3条1項3号、17条1号)。したがって、17条の3第1項の新たな意匠登録出願Cをすることは、有効とはいえない。
 ところが、令和元年改正後は、意匠ロは意匠イに類似しているので、甲は、意匠ロについて、17条の3第1項の適用を受けることなく、国際意匠登録出願Aに係る意匠イを本意匠とする関連意匠とする意匠登録出願Dをしたときは(10条1項)、国際公表された自己の意匠イは先行意匠から除外され(10条2項)、意匠登録出願Dに係る意匠ロは、国際意匠登録出願Aに係る意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができる場合がある。


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2022年12月28日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の7

2022-12-28 05:50:34 | Weblog
2022年12月28日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の7

(意匠の新規性の喪失の例外の特例)第六十条の七
1 第四条第二項の規定の適用を受けようとする国際意匠登録出願の出願人は、その旨を記載した書面及び証明書を、同条第三項の規定にかかわらず、国際公表があつた日後経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出することができる。
2 前項に規定する出願人が、その国際出願と同時に証明書をジュネーブ改正協定第一条(xxvⅲ)に規定する国際事務局(以下「国際事務局」という。)に提出したときは、第四条第三項の規定の適用については、証明書をジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日に特許庁長官に提出したものとみなす。

〔解説〕

・1項(手続の特例)

<趣旨>
 国際意匠登録出願についても、4条2項の適用を受けることができるが、出願人が外国人であるときは、4条3項の手続をすることが困難である。
 そこで、国際意匠登録出願については、4条2項の適用を受けようとする旨を記載した書面と、公表された意匠が4条2項の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(証明書)は、国際公表があった日後経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出することができることとした。

<国際公表があった日後>
 「国際公表があった日後」としたのは、日本国を指定締約国に含む国際出願について国際登録が国際公表されたときに、意匠登録出願(国際意匠登録出願)とみなされ、日本国の特許庁に手続をすることが可能となるからである。
 国際公表は、原則として国際登録の日から12月経過後に行われる(改正協定規則17)。ただし、出願人が出願時に請求したときは国際登録後直ちに国際公表が行われる。

<平成30年改正>
 平成30年改正により、4条2項の「6月」が「1年」に延長されたので、この改正は、国際意匠登録出願にも適用される。

 経済産業省令(意匠法施行規則1条の2)
 意匠法第六十条の七の経済産業省令で定める期間は、三十日とする。
 ただし、同法第六十条の六第三項に規定する国際意匠登録出願(以下「国際意匠登録出願」という。)について同法第四条第二項の規定の適用を受けようとする者がその責めに帰することができない理由により当該期間内に同条第三項に規定する証明書を提出することができないときは、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)を経過する日までの期間(当該期間が七月を超えるときは、七月)とする。

<当該期間が七月を超えるときは、七月>
 「当該期間」とは、4条3項の書面を提出することができる期間を意味する。
 4条3項の書面を提出することができるのは、国際公表があった日からである。
 そうすると、「当該期間」が国際公表があった日から7月を超えるときは、4条3項の書面を提出することができるのは、7月までということになる。
 すなわち、「7月」とは、「30日」と「6月」を合算したものである。

・2項(手続の特例)令和3年改正

<趣旨>
 ジュネーブ改正協定に基づく国際出願の出願人は、国際事務局に直接出願するときは、願書を国際事務局に提出するが、意匠の新規性の喪失の例外の適用を受けるための4条3項の証明書は、国際登録の日から原則6月(令和4年1月1日以降は原則12月)後である国際公表の日から、30日以内に日本国の特許庁長官に提出しなければならない。
 その際、願書と4条3項の証明書の提出時期や提出先の違いに起因し、新規性の喪失の例外を申し出た出願人のうち約4割が日本国の特許庁に4条3項の証明書を提出せず、結果として新規性の喪失の例外の規定の適用を受けることができない事例が生じていた。
 また、令和2年初頭からの新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、一部の外国について国際郵便の引受けが停止され、日本国の特許庁から海外の出願人に対する書面の送付が遅滞する事例が生じた。海外の出願人においても、4条3項の証明書に係る証拠の収集や証明書の国際郵便での送付が困難となる事例も生じていた。
 そこで、令和3年改正により、国際出願の出願人が、願書とともに、4条3項の証明書を国際事務局に提出したときは、国際登録の日に日本国の特許庁長官に提出したものとみなすこととした(60条の7第2項)。

<4条3項の「その旨を記載した書面」について>
 4条3項の「その旨を記載した書面」については、国際出願の願書に必要事項を記載することにより、日本国の特許庁長官への提出を省略することができる。


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2022年12月27日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の6

2022-12-27 05:12:41 | Weblog
2022年12月27日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の6

(国際出願による意匠登録出願)第六十条の六
1 日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条(3)(a)の規定による公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日にされた意匠登録出願とみなす。
2 二以上の意匠を包含する国際出願についての前項の規定の適用については、同項中「された意匠登録出願」とあるのは、「国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願」とする。
3 第一項(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により意匠登録出願とみなされた国際出願(以下「国際意匠登録出願」という。)に係るジュネーブ改正協定第一条(vⅲ)に規定する国際登録簿(以下「国際登録簿」という。)に記録された次の表の上欄に掲げる事項は、第六条第一項の規定により提出した願書に記載された同表の下欄に掲げる事項とみなす。
(表は省略)
4 国際意匠登録出願に係る国際登録簿に記録された意匠は、第六条第一項の規定により提出した図面に記載された意匠登録を受けようとする意匠とみなす。

〔解説〕

・60条の6第1項(意匠登録出願とみなされる国際出願)

(1)改正協定に基づく国際出願が、日本国の意匠登録出願とみなされるのは、以下の要件を満たす場合である。

(a)改正協定に基づく国際出願であって、日本国を指定締約国とするものであること
(b)国際登録がされていること
(c)国際登録について国際公表がされていること

 国際登録について国際公表がされていることが意匠登録出願とみなされるための要件であるので、日本国の意匠登録出願とみなされたときは、すでに国際出願の内容は国際公表されていることとなる。

(2)日本国の意匠登録出願とみなされた意匠登録出願の出願日は、国際登録の日である。
 日本国の意匠登録出願とみなされた後でなければ、当該意匠登録出願について日本国の特許庁長官に手続をすることができないので、国際登録に係る意匠登録出願についての日本国に対する手続は、国際公表後でなければ、することができないこととなる。

 改正協定 第九条 国際出願の出願日
(1)[直接の国際出願]
 出願日は、国際出願が国際事務局に対して直接にされる場合には、(3)の規定が適用される場合を除くほか、国際事務局が当該国際出願を受理した日とする。
(2)[間接の国際出願]
 出願日は、国際出願が出願人の締約国の官庁を通じてされる場合には、所定の方法により決定する。
(3)[特定の不備のある国際出願]
 出願日は、国際事務局が国際出願を受理した日において、当該国際出願に出願日の延期を要する所定の不備がある場合には、国際事務局が当該不備の補正を受理した日とする。

 改正協定 第十三規則 官庁を通じてされる国際出願
(3)[間接の国際出願の出願日]
 第十四規則(2)の規定を条件として、官庁を通じてされた国際出願の出願日は、次のとおりとする。
(i)千九百九十九年改正協定のみが適用される国際出願の場合には、官庁がその国際出願を受理した日。ただし、その日から一箇月以内に国際事務局が当該国際出願を受理した場合に限る。
(ⅱ)他の場合には、国際事務局が当該国際出願を受理した日。

 改正協定 第十四規則 国際事務局による審査
(2)[国際出願に出願日の延期を要する不備]
 出願日は、国際事務局が国際出願を受理した日において、当該国際出願に出願日の延期を要する所定の不備がある場合には、国際事務局が当該不備の補正を受理した日とする。国際出願に出願日の延期を要する不備は、次のものとする。
(a)国際出願が、一の所定の言語で作成されていない。
(b)国際出願に次のいずれかの要素が欠けている。
(i)千九百九十九年改正協定又は千九百六十年改正協定に基づく国際登録を求める旨の明示的又は黙示的な表示
(ⅱ)出願人を特定する表示
(ⅲ)出願人又はその代理人がある場合には当該代理人と連絡を取るために十分な表示
(ⅳ)国際出願の対象である意匠の複製物又は千九百九十九年改正協定第五条(1)(ⅲ)の規定に従った意匠の見本
(v)少なくとも一の締約国の指定

 改正協定 第十条 国際登録、国際登録の日、公表及び国際登録の秘密の写し
(1)[国際登録]
 国際事務局は、国際出願を受理した後直ちに、又は第八条の規定に従って補正をするよう求めている場合には必要な補正を受理した後直ちに、国際出願の対象である意匠を登録する。その登録は、第十一条の規定に従って公表が延期されるか否かにかかわらず、するものとする。
(2)[国際登録の日]
(a)国際登録の日は、(b)の規定が適用される場合を除くほか、国際出願の出願日とする。
(b)国際登録の日は、国際事務局が国際出願を受理した日において、当該国際出願に第五条(2)の規定に関連する不備がある場合には、国際事務局が当該不備の補正を受理した日又は国際出願の出願日のいずれか遅い日とする。
(3)[公表]
(a)国際登録は、国際事務局が公表する。その公表は、全ての締約国において十分なものとみなされるものとし、名義人が他の方法による公表を求められることはないものとする。
(b)国際事務局は、公表された国際登録の写しを指定官庁に送付する。
(4)[公表前の秘密の保持]
 国際事務局は、(5)及び次条(4)(b)の規定が適用される場合を除くほか、公表するまで国際出願及び国際登録を秘密のものとして取り扱う。

 改正協定 第十七規則 国際登録の公表
(1)[公表の時]国際登録は、次の時に公表する。
(i)出願人が請求する場合には、登録の後直ちに
(ⅱ)(ⅱの二)に従い、公表の延期が請求され、当該請求が考慮される場合には、延期の期間が満了した日の後直ちに
(ⅱの二)名義人が請求する場合には、当該請求が国際事務局により受理された後直ちに
(ⅲ)その他の場合には、国際登録の日の十二箇月後又はその後できる限り速やかに。
(2)[公表の内容] 公報における国際登録の公表は、次のものを含む。
(i)国際登録簿に記録された情報
(ⅱ)意匠の一又は二以上の複製物
(ⅲ)公表が延期された場合には、延期の期間が満了した日又は満了したとみなされる日の表示

 現在(2022年9月)、国際公表は、原則として、国際登録の日の12箇月後に行われる。

 改正協定 第十四条 国際登録の効果
(1)[適用される法令に基づく出願の効果]
 国際登録は、国際登録の日から、指定締約国において、当該指定締約国の法令に基づく意匠の保護の付与のための正規の出願と少なくとも同一の効果を有する。
(2)[適用される法令に基づく保護の付与の効果]
(a)国際登録は、第十二条の規定に従いその官庁が拒絶を通報していない指定締約国において、遅くとも拒絶を通報するために当該指定締約国に認められている期間の満了の日から、又は当該指定締約国が規則に基づいて宣言を行った場合には遅くとも当該宣言において特定された時から、当該指定締約国の法令に基づく意匠の保護の付与と同一の効果を有する。
(b)国際登録は、指定締約国の官庁が拒絶を通報し、その後当該拒絶の一部又は全部について取り下げた場合には、当該指定締約国において、当該拒絶が取り下げられた範囲については、遅くとも当該拒絶が取り下げられた日から、当該指定締約国の法令に基づく意匠の保護の付与と同一の効果を有する。
(c)この(2)の規定により国際登録に与えられる効果は、登録の対象である一又は二以上の意匠であって、指定官庁が国際事務局から受理し、又は該当する場合には当該指定官庁における手続によって修正されたものについて適用する。
(3)[出願人の締約国の指定の効果に関する宣言]
(a)その官庁が審査官庁である締約国は、宣言により、事務局長に対し、自国が出願人の締約国である場合には、国際登録における自国の指定が効果を有しない旨を通告することができる。
(b)国際事務局は、(a)に規定する宣言を行った締約国が出願人の締約国及び指定締約国の双方として国際出願に表示されている場合には、当該指定締約国の指定を考慮しない。

・60条の6第2項(意匠ごとにされた意匠登録出願)

 改正協定に基づく国際出願には2以上の意匠を含めることができるので、その場合は、日本国においては、意匠ごとにされた意匠登録出願とすることとした。
 7条は、意匠登録出願は、意匠ごとにしなければならない旨を規定しているので、改正協定との整合を図るために、国際出願に2以上の意匠が包含されているときは、意匠ごとにされた意匠登録出願とすることにより、国際出願が2以上の意匠を包含していることを理由として、7条違反であるとして拒絶できないこととした。
 ただし、国際意匠登録出願であっても、「意匠に係る物品」の欄に2以上の物品が記載されているときは、7条違反の拒絶理由に該当する。

 改正協定 第五条 国際出願の内容
(4)[同一の国際出願における二以上の意匠]
 国際出願には、所定の条件に従い、二以上の意匠を含めることができる。

・60条の6第3項(願書の記載事項の取扱い)

 日本国の意匠登録出願とみなされた国際出願を「国際意匠登録出願」と定義している。
 「国際登録出願」は国際段階の出願を意味するが、「国際意匠登録出願」は日本国の意匠登録出願とみなされた出願を意味する。

 国際登録簿に記録された所定の事項は、6条1項の願書に記載された事項とみなされる。
 国際意匠登録出願については、翻訳文の提出を要求することはできない。

・60条の6第4項(国際登録簿との関係)

 国際意匠登録出願に係る国際登録簿に記録された意匠は、6条1項の図面に記載された意匠登録を受けようとする意匠とみなされる。

<表の下欄>
 令和元年改正により、意匠法の保護対象に、物品のほかに、建築物が含まれ、保護対象となる画像の範囲が拡大されたことから(2条1項)、国際意匠登録出願に係る意匠が建築物又は画像である場合を想定して読み替えることとした。


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2022年12月26日 弁理士試験 代々木塾 商標法68条の7

2022-12-26 08:00:54 | Weblog
2022年12月26日 弁理士試験 代々木塾 商標法68条の7

(商標登録出願に関する規定の準用)第六十八条の七
 第七十七条第二項において準用する特許法第十七条第三項(第三号に係る部分に限る。)及び第十八条第一項の規定は、国際登録出願、事後指定、国際登録の存続期間の更新の申請及び国際登録の名義人の変更の記録の請求に準用する。

〔解説〕

 国際登録出願、事後指定、国際登録の存続期間の更新の申請及び国際登録の名義人の変更の記録の請求において、所定の手数料(76条3号~6号)を納付しないときは、特許庁長官は、手続の補正を命ずることができ、補正命令に応じないときは、手続を却下することができる(準特17条3項3号、18条1項)。
 特許法17条3項各号のうち準用しているのは3号のみであるので、国際登録出願が1号と2号に該当するときであっても、特許庁長官は、補正命令をすることができない。方式要件については、国際事務局が点検する権限を有し、本国官庁には点検する権限がないからである。


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2022年12月25日 弁理士試験 代々木塾 商標法68条の3

2022-12-25 05:19:52 | Weblog
2022年12月25日 弁理士試験 代々木塾 商標法68条の3

 第六十八条の三
1 特許庁長官は、国際登録出願の願書及び必要な書面を議定書第二条(1)に規定する国際事務局(以下「国際事務局」という。)に送付しなければならない。
2 特許庁長官は前項の場合において、願書の記載事項とその基礎とした商標登録出願等又は商標登録等の記載事項が一致するときは、その旨及び国際登録出願の受理の日を願書に記載しなければならない。
3 第一項の場合において、特許庁長官は国際事務局に送付した国際登録出願の願書の写しを当該国際登録出願の出願人に対して送付する。

〔解説〕

・68条の3第1項(国際事務局に送付)
 国際登録出願の願書等は、特許庁長官が国際事務局に送付しなければならない。
 本国官庁である特許庁長官は、国際登録出願の受理のための窓口になるだけである。国際登録は国際事務局が管理することとなる。

・68条の3第2項(記載事項が一致するとき)
 本国官庁である特許庁長官は、国際登録出願の願書の記載事項と、基礎出願又は基礎登録の記載事項が一致するかどうかを点検し、一致するときは、その旨及び国際登録出願の受理の日を願書に記載しなければならない。
 本国官庁は、願書の記載事項が基礎出願等の記載事項と一致するかどうかを点検することが重要な任務となる。
 記載事項が一致しているときは、本国官庁が受理した日が、原則として国際登録の日として認定される(議定書3条(4))。
 記載事項が一致しないときは、証明をしないで、国際登録出願の願書を国際事務局に送付することとなる。その後は、国際事務局から出願人に対して、欠陥の通報がされることとなる。
 本国官庁が証明する時において、記載事項が一致していれば足りる(議定書3条(1))。証明する前、証明した後、記載事項が一致しなくても国際登録の日に影響を与えない。

・68条の3第3項(願書の写しの送付)
 本国官庁である特許庁長官は、国際事務局に送付した国際登録出願の願書の写しを出願人に対して送付する。
 議定書によるものではないが、出願人の便宜のため、写しを送付することとしたものである。
 願書の写しの送付を受けた出願人は、記載事項が一致していることが証明されたかどうかを確認することができる。
 証明されていないときは、いずれ国際事務局から欠陥の通報があることが予想できる。

 議定書 第3条 国際出願
(1)この議定書に基づくすべての国際出願は、規則に定める様式の願書によって行う。本国官庁は、国際出願の願書の記載事項が基礎出願又は基礎登録の記載事項と一致している旨を証明する。この場合の基礎出願又は基礎登録の記載事項は、本国官庁による証明の時点におけるものとする。更に、本国官庁は、次の事項を当該願書に記載する。
(i)基礎出願については当該基礎出願の日及び番号
(ⅱ)基礎登録については当該基礎登録の日及び番号並びに当該基礎登録の出願の日及び番号
 本国官庁は、また、自己が国際出願を受理した日を当該願書に記載する。
(4)国際事務局は、前条の規定に従って出願された標章を直ちに登録する。本国官庁が国際出願を受理した日から2箇月の期間内に国際事務局が国際出願を受理したときは、当該本国官庁が国際出願を受理した日を国際登録の日とし、当該2箇月の期間の満了後に国際事務局が国際出願を受理したときは、国際事務局が国際出願を受理した日を国際登録の日とする。国際事務局は、関係官庁に対し国際登録を遅滞なく通報する。国際登録簿に登録された標章は、国際出願の記載事項に基づき、国際事務局が定期的に発行する公報に掲載する。


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2022年12月23日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の4

2022-12-23 05:32:10 | Weblog
2022年12月23日 弁理士試験 代々木塾 意匠法60条の4

(意匠登録出願に関する規定の準用)第六十条の四
 第六十八条第二項において準用する特許法第十七条第三項(第三号に係る部分に限る。)及び第十八条第一項の規定は、国際登録出願に準用する。

〔解説〕

 特許法17条3項3号と18条1項を、国際登録出願に準用することとした。

 特許庁長官に国際登録出願をするときは、所定の手数料(送付手数料、67条1項4号)を納付しなければならないが、所定の手数料を納付しないときは、特許庁長官は、出願人に対し、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる(準特17条3項3号)。
 補正命令を受けた出願人が指定期間内に所定の手数料を納付しないときは、特許庁長官は、国際登録出願を却下することができる(準特18条1項)。

 特許法17条3項1号及び2号は、国際登録出願には準用していないので、国際登録出願が方式的要件を満たさないときでも、特許庁長官は補正命令をすることはできない。国際登録出願についての方式的要件の点検は国際事務局が行うことになっているからである(改正協定8条)。

 改正協定 第四条 国際出願をするための手続
(2)[間接の出願の場合の送付手数料]
 いずれの締約国の官庁も、自己を通ずる国際出願について送付手数料を支払うことを出願人に要求することができる。

 意匠法(手数料)第六十七条
1 次に掲げる者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
 四 国際登録出願をする者

 改正協定 第八条 不備の補正
(1)[国際出願の審査]
 国際事務局は、国際出願の受理の時に当該国際出願がこの改正協定及び規則の要件を満たしていないと認める場合には、出願人に対し所定の期間内に必要な補正をするよう求める。
(2)[補正されない不備]
(a)国際出願は、出願人が所定の期間内に(1)に規定する求めに応じない場合には、(b)の規定が適用される場合を除くほか、放棄されたものとみなす。
(b)第五条(2)の規定に関連する不備又は締約国が規則に従って事務局長に通告した特別の要件に関連する不備がある場合において、出願人が所定の期間内に(1)に規定する求めに応じないときは、国際出願は、それらの要素又は要件を要求した締約国の指定を含まないものとみなす。

 国際事務局から不備の補正が求められた場合において、出願人が不備の補正をしないときは、国際出願は放棄されたものとみなされる。取り下げられたものとみなされるのではなくて、放棄されたものとみなされる。
 日本国では、意匠登録出願の取下げと、意匠登録出願の放棄は、いずれも先願の地位を失うという点において(39条3項本文)、効果は同じである。


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2022年12月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法184条の3

2022-12-22 05:59:31 | Weblog
2022年12月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法184条の3

(国際出願による特許出願)第百八十四条の三
1 千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下この章において「条約」という。)第十一条(1)若しくは(2)(b)又は第十四条(2)の規定に基づく国際出願日が認められた国際出願であつて、条約第四条(1)(ⅱ)の指定国に日本国を含むもの(特許出願に係るものに限る。)は、その国際出願日にされた特許出願とみなす。
2 前項の規定により特許出願とみなされた国際出願(以下「国際特許出願」という。)については、第四十三条(第四十三条の二第二項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。

〔解説〕

 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願は、国際出願日が認められると各指定国において国際出願日から正規の国内出願としての効果を有するとされ、国際出願日は各指定国における実際の出願日とみなされること(PCT11条(3))から、日本国において特許を受けようとして日本国を指定国に含む国際出願であってPCT11条(1)若しくは(2)(b)又は14条(2)の規定に基づく国際出願日が認められたものは、PCT11条(3)、特許法26条の規定により当然に特許法による特許出願としての効力を有することとなる。
 このような効力を有する日本国を指定国に含む国際出願を国内出願と同じように特許法上の手続につなげるために設けたのが184条の3である。
 また、184条の3の規定により日本国に対する特許出願とみなされる国際出願(国際特許出願)の内容は、まず国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されたものにより特定されることが明確にされている。

・184条の3第1項(国際出願日にされた特許出願とみなす)
 184条の3第1項は、指定国に日本国を含む国際出願の日本国における取扱いを特許協力条約(PCT)に従って明確にしたものである。

 PCT規則4.9 国の指定、保護の種類、国内及び広域特許
(a)願書の提出は、次の事項を構成する。
(ⅰ)国際出願日に条約に拘束される全ての締約国の指定
(ⅱ)第四十三条又は第四十四条が適用される指定国において、その国を指定することによつて得られる全ての種類の保護を求める旨の表示
(ⅲ)第四十五条(1)が適用される指定国において広域特許を求める旨及び、第四十五条(2)が適用される場合を除き、国内特許を求める旨の表示
(b)(a)(ⅰ)の規定にかかわらず、二千五年十月五日において、締約国の国内法令が、当該国の指定及び当該国で効力を有する先の国内出願に基づく優先権の主張を伴う国際出願により、当該先の国内出願が取下げと同一の効果をもって消滅することを定めている場合には、当該指定官庁が当該国の指定に関してこの規定が適用される旨を二千六年一月五日までに国際事務局に通告すること及びその通告が当該国際出願日になお効力を有することを条件として、当該国でされた先の国内出願に基づく優先権を主張する全ての願書は当該国を指定しない旨の表示を伴うことができる。国際事務局は、その通告を速やかに公報に掲載する。

 PCT規則4.9(a)(ⅰ)により、国際出願の願書に指定国を記載する必要はない。国際出願をすると、国際出願日にPCT締約国となっている全ての締約国が指定されたものとみなされる。
 逆にいうと、国際出願の願書において指定国を限定することができない。1の国のみの指定を含む国際出願は、できないことを意味する。

 PCT規則4.9(b)により、国際出願において優先権の主張を伴う場合において、自国に関して、国内優先権の主張に該当し、先の出願が取り下げられたものとみなされるときは、国際出願の願書において自国の指定を除外することができる。現在(2022年9月)、そのような締約国は、ドイツ、韓国、日本の3か国のみである。
 日本国の特許庁に特許出願Aをし、特許出願Aに基づく優先権の主張を伴う国際出願Bをするときは、日本国に関しては国内優先権の主張となるため(41条1項)、国際出願Bの願書において日本国の指定を除外することができる。その結果、特許出願Aのみなし取下げ(42条1項)を回避することができる。国際出願Bにより他の締約国においては特許権を取得することができ、日本国においては特許出願Aにより特許権を取得することができる。

 PCT第十一条 国際出願日及び国際出願の効果 
(1)受理官庁は、次の要件が受理の時に満たされていることを確認することを条件として、国際出願の受理の日を国際出願日として認める。
(ⅰ)出願人が、当該受理官庁に国際出願をする資格を住所又は国籍上の理由により明らかに欠いている者でないこと。
(ⅱ)国際出願が所定の言語で作成されていること。
(ⅲ)国際出願に少なくとも次のものが含まれていること。
(a)国際出願をする意思の表示
(b)少なくとも一の締約国の指定
(c)出願人の氏名又は名称の所定の表示
(d)明細書であると外見上認められる部分
(e)請求の範囲であると外見上認められる部分
(2)(a)受理官庁は、国際出願が(1)に掲げる要件を受理の時に満たしていないと認める場合には、規則の定めるところにより、出願人に対し必要な補充をすることを求める。
(b)受理官庁は、出願人が規則の定めるところにより(a)の求めに応ずる場合には、当該補充の受理の日を国際出願日として認める。
(3)第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、(1)(ⅰ)から(ⅲ)までに掲げる要件を満たし、かつ、国際出願日の認められる国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有するものとし、国際出願日は、各指定国における実際の出願日とみなす。
(4)(1)(ⅰ)から(ⅲ)までに掲げる要件を満たす国際出願は、工業所有権の保護に関するパリ条約にいう正規の国内出願とする。

 PCTに基づく国際出願制度は、所定の言語で作成した1つの出願書類を1つの受理官庁に提出することにより、全てのPCT締約国において出願したものとみなすこととする制度である。

 国際出願日が認められた国際出願であって、指定国に日本国を含むものであって、特許出願に係るものは、国際出願日にされた特許出願とみなされる(184条の3第1項)。
 なお、実用新案登録出願に係るものは、実用新案法48条の3第1項により、国際出願日にされた実用新案登録出願とみなされる。

 PCT第四十三条 特定の種類の保護を求める出願
 指定国又は選択国が発明者証、実用証、実用新案、追加特許、追加発明者証又は追加実用証を与えることを国内法令に定めている場合には、出願人は、当該指定国又は当該選択国に関する限り、国際出願が特許ではなく発明者証、実用証若しくは実用新案を求める出願であること又は国際出願が追加特許、追加発明者証若しくは追加実用証を求める出願であることを規則の定めるところによつて表示することができるものとし、その国際出願は、出願人のこのような選択に従つて取り扱われる。第二条(ⅱ)の規定は、この条及びこの条の規定に基づく規則
の規定については、適用しない。

 PCT規則49の2.1 特定の種類の保護の選択
(a)出願人は、第四十三条が適用される指定国において国際出願が特許の付与ではなく同条に規定する他の種類の保護を求める出願として取り扱われることを希望する場合には、第二十二条に規定する行為を行う時に、指定官庁に対しその旨を表示する。
(b)出願人は、第四十四条が適用される指定国において国際出願が第四十三条に規定する二種類以上の保護を求める出願として取り扱われることを希望する場合には、第二十二条に規定する行為を行う時に、指定官庁に対しその旨を表示する。該当する場合には、主として求める種類及び補助的に求める種類を明示する。
(c)(a)及び(b)に規定する場合において、出願人は、指定国において国際出願が追加特許、追加証、追加発明者証又は追加実用証として取り扱われることを希望する場合には、第二十二条に規定する行為を行う時に、関連する原出願、原特許、原付与を表示する。
(d)出願人は、指定国において国際出願が先の出願の継続出願又は一部継続出願として取り扱われることを希望する場合には、第二十二条に規定する行為を行う時に、指定官庁に対しその旨を表示し、関連する原出願を特定する。
(e)出願人が、第二十二条に規定する行為を行う時に、(a)に規定する明示の表示されていないが、出願人により支払われた第二十二条に規定する国内手数料が、特定の種類の保護の国内手数料に相当する場合、当該手数料の支払は、出願人が国際出願が当該種類の保護を求める出願として取り扱われることを希望する旨の表示とみなし、指定官庁は、その旨を出願人に通知する。

 日本国において、特許出願とするか、実用新案登録出願とするかは、国内書面(184条の5第1項)を提出するときに確定する。
 すなわち、国内書面の【出願の区分】の欄に、「特許」と記載すれば、特許出願とみなされ、「実用新案登録」と記載すれば、実用新案登録出願とみなされる。

 国際出願日が認定されない国際出願は、日本国の特許出願とみなされることはないが、国際出願日が認定された国際出願であっても、取り下げられたものとみなす旨の宣言がされた場合(PCT12条(3)、14条(1)(b)、(3)(a)、(4))、出願人が国際出願を取り下げた場合、日本国の指定を取り下げた場合は、PCT24条(1)により、特許出願の取下げと同じ効果をもって消滅する。

・184条の3第2項(43条の適用除外)
 国際特許出願については、43条(パリ条約による優先権主張の手続)は適用しない。

 PCT第八条 優先権の主張
(1)国際出願は、規則の定めるところにより、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国において又は同条約の締約国についてされた先の出願に基づく優先権を主張する申立てを伴うことができる。
(2)(a)(b)の規定が適用される場合を除くほか、(1)の規定に基づいて申し立てられた優先権の主張の条件及び効果は、工業所有権の保護に関するパリ条約のストックホルム改正条約第四条の定めるところによる。
(b)いずれかの締約国において又はいずれかの締約国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴う国際出願には、当該締約国の指定を含めることができる。国際出願が、いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内法令の定めるところによる。

 PCT規則4.1 必要的及び任意的な内容並びに署名
(a)願書には、次の事項を記載する。
(ⅰ)申立て
(ⅱ)発明の名称
(ⅲ)出願人及び、代理人がある場合には、代理人に関する表示
(ⅳ)指定国のうち少なくとも一の国の国内法令が国内出願をする時に発明者の氏名又は名称を表示することを定めている場合には、発明者に関する表示
(b)願書には、該当する場合には、次の事項を記載する。
(ⅰ)優先権の主張
(ⅱ)4.12(ⅰ)並びに12の2.1(b)及び(d)に規定する先の調査に関する表示
(ⅲ)原出願又は原特許の表示
(ⅳ)出願人が選択する管轄国際調査機関の表示
(c)願書には、次の事項を記載することができる。
(ⅰ)いずれの指定国の国内法令も国内出願をする時に発明者の氏名又は名称を表示することを定めていない場合であつても、発明者に関する表示
(ⅱ)優先権の主張の基礎となる出願が受理官庁である国内官庁又は政府間当局に出願されている場合には、優先権書類の作成及び国際事務局への送付についての受理官庁に対する請求
(ⅲ)規則4.17に規定する申立て
(ⅳ)4.18に規定する陳述
(ⅴ)優先権の回復の請求
(ⅵ)4.12(ⅱ)に規定する陳述
(d)願書には、署名をする。

 PCT規則4.10 優先権の主張
(a)第八条(1)に規定する申立て(「優先権の主張」)は、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国において若しくは同条約の締約国について又は同条約の締約国ではないが世界貿易機関の加盟国である国において若しくは同条約の締約国ではないが同機関の加盟国である国についてされた先の出願に基づく優先権を主張することによつて行うことができる。優先権の主張は、願書において行うものとし、先の出願に基づく優先権を主張する旨の陳述及び次の事項を記載することによつて行う。
(ⅰ)先の出願の日付
(ⅱ)先の出願の番号
(ⅲ)先の出願が国内出願である場合にあつては、その出願がされた工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国又は同条約の締約国ではないが世界貿易機関の加盟国である国の国名
(ⅳ)先の出願が広域出願である場合にあつては、適用される広域特許条約に基づき広域特許を与える任務を有する当局
(ⅴ)先の出願が国際出願である場合にあつては、その出願がされた受理官庁
(b)(a)(ⅳ)又は(ⅴ)の規定に基づき要求される記載に加え、(ⅰ) 先の出願が広域出願又は国際出願である場合にあつては、優先権の主張には、その先の出願がその国についてされた一又は二以上の工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国の国名を記載することができる。
(ⅱ)先の出願が広域出願であり、かつ、当該広域出願について適用される広域特許条約の締約国のいずれかが工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国又は世界貿易機関の加盟国のいずれでもない場合にあつては、優先権の主張には、その先の出願がその国についてされた国のうち少なくとも一の同条約の締約国又は同機関の加盟国の国名を記載する。
(c)第二条(ⅵ)の規定は、(a)及び(b)の規定については、適用しない。

 国際出願において、PCT8条により、優先権の主張を伴うことができる。
 PCT8条(2)(a)は、パリ条約の優先権が適用される場合について規定し、PCT8条(2)(b)は、国内優先権(41条1項)が適用される場合について規定している。

 国際出願における優先権の主張は、国際出願の願書において行うこととされている。
 そこで、国際出願における優先権の主張については、43条(パリ条約による優先権主張の手続)は適用しないこととした。
 なお、国際出願における優先権の主張が、日本国に関して国内優先権(41条1項)の主張に該当するときは、184条の15第1項において、41条4項は適用しないこととしている。

 43条の2(優先期間徒過の救済)は、184条の3第2項において適用を除外していないので、国際特許出願についても、43条の2(優先期間徒過の救済)が適用される。

 青本・第21版・第182頁(43条の2)
〔趣旨〕
 一項は、四一条一項一号の改正と同趣旨によるものである。すなわち、パリ条約四条D(1)の規定による優先権の主張について、その主張を伴う特許出願を優先期間内にすることができなかったことについて正当な理由(※令和3年改正により「故意ではない」に改正された。)があり、かつ、優先期間の経過後一定期間内に当該特許出願をした場合の救済措置を規定するものである。当該期間は、四一条一項一号と同様に「経済産業省令に定める期間」として規定することとした。
 二項は、一項の規定による優先権の主張に際し必要な諸手続については、四三条の規定を準用して行うことを規定するものである。
 なお、当該救済措置は、国際特許出願、実用新案登録出願及び国際実用新案登録出願についても適用される(一八四条の三第二項、実用新案法一一条一項及び同法四八条の三第二項)。

 PCT規則49の3.2 指定官庁による優先権の回復
(a)国際出願が先の出願に基づく優先権の主張を伴い、国際出願日が当該優先期間の満了の日の後であるが、当該満了の日から二箇月の期間内である場合には、指定官庁は、(b)の規定に基づく出願人の請求によつて、当該指定官庁が適用する基準(「回復のための基準」)が満たされていること、すなわち、優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが、次のいずれかの場合によると認めたときには、優先権を回復する。
(ⅰ)状況により必要とされる相当な注意を払つたにもかかわらず生じた場合
(ⅱ)故意ではない場合
 各指定官庁は、これらの基準のうち少なくとも一つを採用し、また基準の両方を採用することができる。
(b)(a)の規定に基づく請求は、次のとおりとする。
(ⅰ)第二十二条に規定する期間から一箇月の期間内に又は、出願人が第二十三条(2)の規定に基づき指定官庁に明示の請求を行つた場合には、指定官庁が当該請求を受領した日から一箇月の期間内に、当該指定官庁に提出する。
(ⅱ)当該優先期間内に国際出願を提出されなかつたことの理由を記載するとともに、(c)の規定に基づき要求される申立てその他の証拠を公表することが望ましい。
(ⅲ)(d)の規定に基づき要求される回復請求のための手数料を添える。
(c)指定官庁は、事情に応じて相当の期間内に(b)(ⅱ)に規定する理由の記述を裏付ける申立てその他の証拠を要求することができる。
(d)(a)の規定に基づく請求の提出は、回復請求手数料の指定官庁への支払を条件とすることができる。
(e)指定官庁は、(a)の規定に基づく請求の全部又は一部に関し、拒否しようとすることについて事情に応じて相当の期間内に意見を述べる機会を出願人に与えることなく、これを拒否しない。指定官庁による拒否しようとする書面は、(c)の規定に基づく申立てその他の証拠を提出する求めとともに出願人に送付できる。
(f)指定官庁が適用する国内法令が、優先権の回復に関して、出願人の立場からみて、(a)及び(b)の規定に基づく要件よりも有利な要件を規定する場合には、当該指定官庁は、優先権を決定する場合に、当該(a)及び(b)の規定に基づく要件に代わり、国内法令の規定に基づく要件を適用することができる。
(g)各指定官庁は、当該指定官庁が適用する回復のための基準、要件、該当する場合には(f)の規定に従つて適用される国内法令、及びこれに関する後の変更を国際事務局に通知するものとする。国際事務局は、当該情報を速やかに公報に掲載する。
(h)二千五年十月五日において(a)から(g)までの規定が指定官庁によつて適用される国内法令に適合しない場合には、当該指定官庁がその旨を二千六年四月五日までに国際事務局に通告することを条件として、これらの規定は、当該国内法令に適合しない間、当該指定官庁については、適用しない。国際事務局は、その通告を速やかに公報に掲載する。


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2022年12月21日 弁理士試験 代々木塾 商標法68条の2

2022-12-21 05:18:29 | Weblog
2022年12月21日 弁理士試験 代々木塾 商標法68条の2

(国際登録出願)第六十八条の二
1 日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人であつて標章の国際登録に関するマドリッド協定の千九百八十九年六月二十七日にマドリッドで採択された議定書(以下「議定書」という。)第二条(1)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)を受けようとする者は、特許庁長官に次の各号のいずれかを基礎とした議定書第二条(2)に規定する出願(以下「国際登録出願」という。)をしなければならない。この場合において、経済産業省令で定める要件に該当するときには、二人以上が共同して国際登録出願をすることができる。
一 特許庁に係属している自己の商標登録出願又は防護標章登録出願(以下「商標登録出願等」という。)
二 自己の商標登録又は防護標章登録(以下「商標登録等」という。)
2 国際登録出願をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより外国語で作成した願書及び必要な書面を提出しなければならない。
3 願書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 国際登録出願に係る商標の保護を求める議定書の締約国の国名
二 国際登録出願に係る商標の保護を求める商品又は役務並びに第六条第二項の政令で定める商品及び役務の区分
4 国際登録出願に係る商標又は標章について議定書第三条(3)の規定の適用を受けようとする者は、その旨及び付した色彩又はその組合せを願書に記載し、かつ、その色彩を付した商標登録出願等に係る商標若しくは標章又は登録商標若しくは登録防護標章の写しを願書に添付しなければならない。

〔解説〕

 議定書2条(2)においては、議定書に基づく国際出願は、本国官庁を通じて国際事務局しなければならないこととされている。
 そこで、日本国の特許庁が本国官庁となる場合について、68条の2に規定することとした。

・68条の2第1項(国際登録出願)

(1)国際登録出願
 68条の2第1項の「国際登録出願」は、日本国の特許庁長官を本国官庁とする国際出願であって、日本国以外の議定書の他の締約国を領域指定して、当該他の締約国において商標権を取得するためのものである。

 マドリッド協定の議定書に基づく国際出願は、常に、本国官庁を通じてしなければならない(議定書2条(2))。国際事務局に直接国際出願をすることはできない。
 本国官庁とは、基礎出願を受理した官庁又は基礎登録をした官庁をいう(議定書2条(2))。

 なお、ジュネーブ改正協定に基づく国際出願においては、直接国際事務局にすることができる。

 日本国では、国際登録出願により保護を求めることはできず、基礎出願又は基礎登録により、保護を求めることになる。

 なお、ジュネーブ改正協定に基づく国際出願においては、日本国の特許庁に国際登録出願をするときは、日本国を指定締約国に含めることができる。

(2)出願人適格
 国際登録出願の出願人は、日本国民であるか、又は日本国内に住所等を有する外国人であることが必要である。
 日本国民であれば、日本国内に住所等を有しない者であっても、差し支えない。
 日本国民が在外者であるときは、商標管理人により国際登録出願をしなければならない(準特8条)。

(3)本国官庁
 本国官庁は、特許庁長官である。
 他の締約国が本国官庁となる場合は、第2節(68条の9~68条の31)に規定されている。

(4)経済産業省令で定める要件
 基礎出願が共同出願又は基礎登録が共有であって、共有者の全員が国際登録出願の出願人適格を有しているときは、2人以上が共同して国際登録出願をすることができる。

 2人以上が共同して国際登録出願をするときは、国際登録出願の出願人が基礎出願又は基礎登録の名義人と完全に一致していることが必要である。

(5)68条の2第1項1号
 1号は、特許庁に係属している自己の商標登録出願又は防護標章登録出願を基礎出願とすることができる旨を規定している。
 したがって、放棄された商標登録出願、取下げられた商標登録出願、却下された商標登録出願は、基礎出願とすることができない。
 基礎出願は、出願日の認定要件(5条の2)を満たしていることが必要である。
 防護標章登録出願も基礎出願とすることができるので、あらためて商標登録出願をすることは必要とされない。
 なお、議定書には、防護標章に関する規定は、存在しない。

(6)68条の2第1項2号
 2号は、自己の商標登録又は防護標章登録を基礎登録とすることができる旨を規定している。
 基礎登録とするためには、商標権又は防護標章登録に基づく権利が現に存続していることが必要とされる。すでに消滅している商標権を基礎登録とすることはできない。

・68条の2第2項(願書及び必要な書面)

(1)国際登録出願の願書は、経済産業省令で定める外国語(英語)で作成しなければならない。
 議定書においては、国際出願の言語は、英語、フランス語又はスペイン語から選択することができるが、日本国の特許庁を本国官庁として国際登録出願をするときは、英語に限定されている。

 なお、ジュネーブ改正協定に基づく意匠の国際出願(国際登録出願)を日本国の特許庁にするときは、国際出願の言語は、英語、フランス語又はスペイン語から選択することができる。

(2)必要な書面とは、68条の2第4項の「写し」等をいう。

・68条の2第3項(願書の記載事項)

(1)国際登録出願の願書には、次の事項を記載しなければならない。
(a)国際登録出願に係る商標の保護を求める議定書の締約国の国名
(b)国際登録出願に係る商標の保護を求める商品又は役務並びに6条2項の政令で定める商品及び役務の区分

 国際登録出願においては、日本国を領域指定することはできない(議定書3条の2)。日本国においては、基礎出願又は基礎登録により保護を求めることとなる。
 国際分類ではなくて、6条2項の政令で定める商品及び役務の区分を記載しなければならないこととした。議定書においては、国際分類に従うことは、義務づけられていないからである(議定書3条(2))。
 商品及び役務の区分は、最終的には、国際事務局の判断に従うこととなる(議定書3条(2))。

・68条の2第4項(色彩について)
 国際登録出願に係る商標又は標章について議定書第3条(3)の規定の適用を受けようとする者は、その旨及び付した色彩又はその組合せを願書に記載し、かつ、その色彩を付した商標登録出願等に係る商標若しくは標章又は登録商標若しくは登録防護標章の写しを願書に添付しなければならない。

 議定書 第3条 国際出願
(2)出願人は、保護を受けようとする標章に係る商品及びサービスを指定しなければならず、可能な場合には、標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定に規定する国際分類に従って1又は2以上の類を指定する。出願人が類を指定しなかった場合には、国際事務局が指定された商品及びサービスについて当該国際分類中の適当な類を指定する。出願人が指定した類は、国際事務局が本国官庁と協力して行う調整に服するものとする。本国官庁と国際事務局との間で意見の相違がある場合には、国際事務局の意見が優先する。
(3)出願人は、標章の識別性のある特徴として色彩を主張する場合には、次の(i)及び(ⅱ)の規定に従って国際出願をしなければならない。
(i)色彩を主張する旨を記載し、かつ、主張する色彩又はその組合せを国際出願に際して明示的に特定する。
(ⅱ)当該標章の色彩を施した写しを国際出願に際して提出する。この写しは、国際事務局による通報に添付される。この写しの必要数は、規則で定める。


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