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2023年2月28日 弁理士試験 代々木塾 講座案内

2023-02-28 06:17:18 | Weblog
2023年2月28日 弁理士試験 代々木塾 講座案内

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2023年2月28日 弁理士試験 代々木塾 意匠法3条の2

2023-02-28 06:15:28 | Weblog
2023年2月28日 弁理士試験 代々木塾 意匠法3条の2

 意匠法第三条の二
 意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
 ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。

〔解説〕

(1)本文の規定の趣旨(平成10年改正の趣旨)
 平成10年改正前は、先願意匠の一部と同一又は類似であっても、先願意匠の全体と同一又は類似でなければ、9条1項により拒絶されず、後願も登録されていた。しかし、後願の出願後に意匠公報に掲載された先願意匠の一部と同一又は類似の意匠に係る後願を登録することは、新しい意匠の創作でないものを保護することとなり、意匠制度の趣旨(1条)に反する。また、完成品の意匠について意匠権の設定の登録がされた場合、その出願後その意匠公報発行前に出願された部品の意匠については、平成10年改正前は拒絶理由に該当せず、意匠権の設定の登録がされることになるが、この場合は、権利関係の錯綜が生じていた。また、平成10年改正による部分意匠制度(2条1項)の導入と組物の意匠の登録要件(8条)の緩和により、先願の意匠の一部と同一又は類似の意匠が後願として出願されるケースが増大するおそれがある。そこで、平成10年改正により、後願の出願後に意匠公報に掲載された先願意匠の一部と同一又は類似の後願は、登録しないこととした(3条の2本文)。

(2)意匠登録出願に係る意匠
 審査対象である後願の意匠登録出願に係る意匠を意味する。

(3)当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であって
 (a)他の意匠登録出願が先願であることを意味する。
 (b)「日前」→同日出願は含まない。
 (c)出願日の解釈→分割、変更、パリ条約の優先権の場合は、要件を満たすときは、遡及した出願日を意味する。特44条2項ただし書では、特29条の2の適用については出願日が遡及しないが、意10条の2第2項ただし書ではそのような規定は存在しない。意匠法では、分割、変更、優先権の要件の判断が容易であるからである。
 (d)出願人は同一人であっても本文は適用される。なお、ただし書(出願人同一の適用除外)が適用される場合は、本文は適用されない。

(4)20条3項又は66条3項の規定により意匠公報に掲載されたもの
 (a)20条3項→意匠権の設定の登録後の意匠公報
 (b)66条3項→9条2項後段の理由で拒絶が確定した出願の意匠公報
 (c)意匠公報が発行されない場合には、3条の2は適用されない。
 (d)秘密期間中は、最初の意匠公報が発行されても、登録意匠の内容は掲載されないので(20条4項)、この時点では3条の2の拒絶理由は通知できない。
 (e)後願の意匠登録出願の審査において、将来意匠公報が掲載されたときは3条の2本文の先願に該当することとなる意匠登録出願が存在する場合において、当該先願が特許庁に係属しているときは、後願の出願人に待ち通知をする。待ち通知は拒絶理由通知ではない。

(5)かっこ書の「先の意匠登録出願」
 3条の2の適用において、先願の意匠登録出願を「先の意匠登録出願」と定義している。この定義は、他の規定には適用されない。

(6)願書の記載及び願書に添付した図面等に現された意匠
 (a)先願の意匠公報において創作された意匠として開示された意匠であることが必要である。
 (b)先願において参考図(使用状態を示した図等)にのみ記載された意匠は、創作された意匠として保護されるべきものではないので、3条の2の引用意匠とはならない。
 (c)部分意匠の出願の場合は、意匠登録を受けようとする部分以外の部分も創作されたものとして3条の2の引用例となり得る。意匠に係る物品を「自転車」とし、意匠登録を受けようとする部分を「ハンドル」とするする部分意匠について意匠公報が発行された場合には、図面に記載されているハンドル部分以外のサドル部分やペダル部分も3条の2の引用例となり得る。

(7)一部と同一又は類似であるときは
 (a)一部であるから、全部と同一又は類似であるときは、3条の2の引用例とはならない。この場合は、9条1項が適用される。
 (b)一部とは、先願の意匠として開示された意匠の外観の中に含まれた1つの閉じられた領域をいう。先願に係る意匠が形状と模様の結合意匠である場合には、模様を除いた形状のみの意匠を一部として取り扱うことはできない。
 (c)先願の開示意匠の中に、後願の意匠の全体の形状等が対比可能に開示されていることが必要である。
 (d)先願の開示意匠の一部と、後願の意匠に係る物品とが、用途及び機能が同一又は類似であって、形状等が同一又は類似である場合には、一部と同一又は類似であるといえる。先願の意匠に係る物品と後願の意匠に係る物品とが、同一、類似、非類似のいずれであるかは問わない。全体における部分の位置、大きさ、範囲も考慮しない。
 (e)後願が部分意匠の場合には、意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能と形状等が、先願の開示意匠の一部と同一又は類似しているときは、後願は3条の2により拒絶される可能性がある。
 例えば、先願が自転車を意匠に係る物品とする自転車のハンドル部分の部分意匠であり、後願が自転車を意匠に係る物品とする自転車のサドル部分の部分意匠である場合において、先願の自転車の意匠の中に後願のサドル部分の意匠と同一又は類似の意匠が対比可能に含まれている場合には、後願の自転車のサドル部分の部分意匠は3条の2により拒絶される。

(8)ただし書の規定の趣旨(平成18年改正の趣旨)
 平成18年改正前は、出願人が同一であっても3条の2が適用されるため、自己の先願意匠の一部と同一又は類似の後願意匠については意匠登録を受けることはできなかった。しかし、デザイン開発においては、先に製品全体の外観デザインが完成し、その後個々の構成部品の詳細なデザインが決定されて製品全体の詳細なデザインが完了するという開発実態がある。また、市場において成功した商品については、模倣の対象となりやすいことから、最初の意匠の出願に遅れて、先の意匠の一部を部品意匠や部分意匠として出願し、独自性の高い自己の製品のデザインの保護を強化したいというニーズがある。そこで、平成18年改正により、出願人が同一の場合には、一定の時期的制限のもとで3条の2本文を適用しないこととした。

(9)ただし書の適用の要件
 (a)当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であること。
 出願人同一の要件は、当該意匠登録出願(後の出願)の査定時に判断する。当初別人の出願であっても、後の出願の査定時までに出願人が同一になれば、3条の2ただし書の規定により3条の2本文の適用が除外されることとなる。この点で、特29条の2ただし書とは異なる。
 「先の意匠登録出願の出願人」とは、先の出願に係る意匠権の設定の登録時の願書に記載された出願人を意味する。先の出願に係る意匠権を譲り受けても、出願人を同一にすることはできない。意匠権の設定の登録後は、出願人名義変更届を提出することはできないので、出願人を変更することができない。
 (b)当該意匠登録出願が、先の意匠登録出願について20条3項の意匠公報の発行の日前にされたこと。
 意匠公報の発行の日前としたのは、出願可能期間をあまり長期にすると権利の錯綜等の弊害が生じる可能性が高くなること、先の出願について意匠公報が発行された後に出願を認めることは新たな創作を保護する趣旨に反するからである。
 なお、66条3項の意匠公報が発行された場合には、本文が適用されるが、ただし書は適用されない。ただし書は、先願について意匠権の設定の登録がされることを前提としたものであるからである。
 (c)20条4項の規定により20条3項4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。
 秘密意匠の場合の意匠公報の発行の日前とは、秘密意匠について最初の意匠公報の発行の日前を意味する。秘密期間経過後の意匠公報の発行の日前とした場合には、他人の出願意匠や公知意匠との間で権利関係が抵触する蓋然性が高くなること、秘密期間の最長3年の期間も出願が可能とすると実質的に権利期間を延長することにもつながること、から最初の意匠公報の発行の日前までとした。

(10)創作者が同一の場合
 特29条の2では発明者が同一の場合には適用を除外することとしている。しかし、意3条の2では、創作者同一の場合には適用を除外しないこととしている。創作者が全体意匠についての意匠登録を受ける権利を他人に譲渡した後に、その全体意匠の一部について創作者に意匠登録を認めると、全体の意匠権と部分の意匠権とが異なる権利者に帰属することとなり、権利の錯綜を招くおそれがあるからである。


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2023年2月27日 弁理士試験 代々木塾 意匠法2条2項1号

2023-02-27 07:54:56 | Weblog
2023年2月27日 弁理士試験 代々木塾 意匠法2条2項1号

(定義等)第二条
2 この法律で意匠について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)


・2項1号(物品の意匠の実施)
(1)プログラムは、無体物であって、有体物である物品には含まれない。プログラムを業として実施しても、直接侵害(23条)にはならない。ただし、間接侵害(38条)の対象となり得る。
(2)平成18年改正により、輸出も、実施に含まれることとなった。侵害物品の海外流出を防止する必要があるからである。
(3)令和3年改正により、「輸入」には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含むこととした。
 令和3年改正法解説書・第118頁
 ① 商標法上の課題
 模倣品の越境取引において、国内に事業者(輸入・販売業者)が介在する場合には、当該事業者による模倣品の「輸入」に商標権の侵害が成立し、税関で模倣品を没収等することが可能である。
 一方、近年、電子商取引の発展や国際貨物に係る配送料金の低下等により、国内の事業者が介在しない事例、すなわち海外の事業者が、国内の個人に対し、少量の模倣品を郵便等で直接販売し、送付する事例が急増している。
 この場合において、国内の個人の行為については商標権の侵害は成立せず、また、現行法では海外の事業者の行為に商標権の侵害が成立するか否かは明らかでないことから、税関において模倣品を没収等することができない。
 実務上、税関における没収の前提として、税関長が知的財産侵害物品に該当するか否かを認定するための手続(認定手続)を執ることとされているが、当該手続において、輸入者が、「個人使用目的」を主張した場合、個人使用目的でないとは認められず商標権侵害物品として没収等することができない場合がある。近年、このような模倣品の個人使用目的の輸入が急増しており、模倣品の国内への流入増加に歯止めをかけることができていない。
 ② 意匠法上の課題
 意匠法についても、令和2年に意匠権を侵害するとして没収等の対象とされた物品がいずれも個人への直接販売が想定される物品(イヤホン、美容用ローラー等)であり、今後、個人使用目的でこれらが輸入される例の増加が高度に予見されること、新型コロナウイルス感染症による生活様式の変化や今後の電子商取引の発展、国際貨物に係る配送料金の低下等が進めば尚更増加が予想されることに鑑み、商標法と同様の改正を行うことが適切と考えられた。
(4)「他人をして持ち込ませる行為」
 配送業者等の第三者の行為を利用して外国から日本国内に持ち込む行為、例えば、外国の事業者が、通販サイトで受注した商品を購入者に届けるため、郵送等により日本国内に持ち込む場合をいう。
 なお、第三者の行為を利用することなく、自ら携帯品として日本国内に持ち込む行為(ハンドキャリー)は、令和3年改正前から「輸入」行為に該当すると解されており、事業性のある場合には意匠権の侵害が成立し得る。
 日本国内に到達する時点以降を捉え、国内における行為として規定するものであり、日本の領域外における行為(外国における発送等)は規制対象に含まれない。そのため、日本国の意匠権の効力をその領域外に及ぼすものではなく、属地主義に反するものではない。


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2023年2月24日 弁理士試験 代々木塾 通常実施権者の承諾

2023-02-24 03:47:58 | Weblog
2023年2月24日 弁理士試験 代々木塾 通常実施権者の承諾

令和3年改正法解説書

第4章 訂正審判等における通常実施権者の承諾の要件の見直し

1.改正の必要性

(1)従来の制度
 特許法においては、特許権者が特許請求の範囲等を訂正することについて請求する訂正審判、利害関係人等が特許の無効を求めることのできる特許無効審判、特許掲載公報発行後6月以内に限り何人も特許庁に対して特許の見直しを求めることができる特許異議の申立ての制度を設けており、これら制度の手続において、特許権者は、特許庁に対し、特許請求の範囲等を訂正することを請求できる。
 特許権者にとっては、訂正審判の請求及び特許無効審判又は特許異議の申立ての手続の中で行う訂正の請求は、特許が無効又は取消しとされることを防ぐための重要な防御手段である。また、特許権者にとって、特許権に基づく被疑侵害者に対する損害賠償請求等の特許権侵害訴訟において、被疑侵害者から無効の抗弁が主張された場合に訂正の再抗弁を行うことも重要な防御手段であるところ、裁判実務上、当該訂正の再抗弁をするためには原則として特許庁への訂正審判の請求又は訂正の請求が必要であるとされている。
 現行法においては、訂正審判を請求するとき又は特許無効審判若しくは特許異議の申立てにおいて訂正の請求をするときは、不測の損害を被るおそれのある専用実施権者、通常実施権者及び質権者の承諾が必要とされている(特許法第127条並びに同条を準用する同法第120条の5第9項及び第134条の2第9項)。
 また、実用新案登録請求の範囲等の訂正をするときは、通常実施権者等の承諾が必要とされている(実用新案法第14条の2第13項において準用する特許法第127条)。
 同様に、特許権、実用新案権、意匠権又は商標権の放棄に際しても、通
常実施権者等(商標権の放棄については通常使用権者等)の承諾が必要とされている(特許法第97条第1項並びに同項を準用する実用新案法第26条、意匠法第36条及び商標法第35条)。

(2)改正の必要性

① 通常実施権者の増加及び多様化
 近年、特許権のライセンスにおいて、1つの特許権を1者にライセンスする単純な態様から、多数の特許権を多数の者にライセンスする大規模かつ複雑な態様への変化が加速している。
 例えば、標準規格に関連する特許権は多数存在し、それら多数の特許権を包括クロスライセンス等によりライセンスすることが常態化している。
 それを裏付ける例として、複数の企業が特許権を持ち寄り、参加企業にまとめて通常実施権を許諾する枠組みである「パテントプール」の存在がある。パテントプールの利用が特に活発である通信技術分野では、例えば、「4G」の通信規格である「LTE」について、当該規格を利用するために必須であると宣言された特許権の数が6000件程度、特許権者数が50者程度あるとされる。LTEの主たる利用は、携帯電話によるものであるが、今後、次世代の通信規格がスマート家電や自動運転車等の無線通信機能を必要とするあらゆるものに利用されることを踏まえれば、当該通信規格や他の標準規格に係る特許権の通常実施権者数は一層増加していくと考えられる。
 また、AI・IoT技術の進展に伴うビジネス環境の変化は、これまで協働することのなかった異業種間におけるライセンス交渉の必要性を生み、ライセンス契約の相手の多様化の一因となっている。特に、グローバル化の進展により、外国企業が日本の特許権の通常実施権者となるケースも増加している。米国特許法、欧州特許条約、ドイツ特許法、英国特許法、中国専利法といった他の主要国の特許法又は条約には、日本の特許法とは異なり、訂正審判において通常実施権者の承諾を必要とする規定は設けられていない。したがって、ライセンス交渉に際して、日本の企業が、訂正審判等において通常実施権者の承諾が必要であることについて外国企業に説明して理解を得ることに係る負担が生じている。
 以上のとおり、通常実施権者が増加し、多様化したことにより、特許権者が訂正審判又は訂正の請求に際して、全ての通常実施権者の承諾を得ることが現実的に困難となっている。また、他の主要国との制度の違いにより、今後国際間のライセンス交渉において日本企業が不利な立場に置かれるおそれがあることから、海外制度との調和を図る必要が生じている。

② 特許権者の防御手段が失われる懸念
 上記のとおり、訂正審判の請求及び特許無効審判又は特許異議の申立ての手続の中で行う訂正の請求は、特許が無効又は取消しとされることを防ぐための、特許権者にとっての重要な防御手段であるが、通常実施権者の承諾を得ることが現実的に困難なことにより、特許権者の当該防御手段が実質的に失われ、特許無効審判又は特許異議の申立てにおいて特許が無効又は取消しとされる又は特許権侵害訴訟において特許無効が認定されて特許権者が敗訴することが懸念される。
 一方で、通常実施権は、「特許発明の実施をする権利」(特許法第78条第2項)であって、その法的性質について、通説、判例では、特許権者に対し差止請求権や損害賠償請求権を行使しないように求める不作為請求権であるとされている。このため、訂正により特許請求の範囲が減縮されたとしても、通常実施権者の特許権の実施の継続が妨げられるわけではないから、訂正は通常実施権者の法的利益を害するものとはいえない。
 このように、特許請求の範囲を訂正しても通常実施権者の法的利益を害するものとはいえないにもかかわらず、通常実施権者の承諾を得られないことにより特許権者が訂正という防御手段を実質的に失うことは、特許権者の保護を欠く状況となっている。

③ 特許権等の放棄についての改正の必要性

(ⅰ)特許権、実用新案権及び意匠権の放棄について
 特許権を放棄した場合においても、特許請求の範囲等の訂正をした場合と同様に、通常実施権者による実施の継続が妨げられるわけではなく、また、通常実施権者が増加し、多様化したことにより、全ての通常実施権者の承諾を得ることが現実的に困難なケースが増加することが見込まれる。
 この点は、実用新案権及び意匠権についても同様であるといえる。
 このため、本来、特許権者等が自由に行えるべき特許権等の放棄に関し、そのことに対して法的な不利益のない通常実施権者の承諾を求めることとなれば、特許権者等に不必要な負担を課すことになる。

(ⅱ)商標権の放棄について
 これに対し、商標法については、以下の理由により、商標権の放棄において、通常使用権者の承諾を引き続き求める必要がある。
 まず、商標法は、商標を保護することにより、通常使用権者も含めてその商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図るとともに、需要者の利益を保護することを目的としている(商標法第1条)。そのため、仮に、通常使用権者の承諾を得ることなく商標権が放棄され、誰もがその商標を使用できる状態になった場合には、これまで商標を使用してきた通常使用権者の信用が毀損されるおそれがあるのみならず、商品・役務の出所について混同が生じることにより需要者の利益も害されるおそれがある。
 また、特許権が放棄された場合には、当該特許権は消滅し他者が当該特許権を取得することはなく、通常実施権者による実施の継続が妨げられるわけではないが、商標権が放棄された場合には、その後、同一又は類似の商標について他者が権利を取得し、通常使用権者であった者が差止め等の請求を受ける可能性がある。

2.改正の概要

(1)訂正審判等における通常実施権者の承諾要件の廃止(特許法第127条)
 特許法第127条(同条を準用する同法第120条の5第9項及び第134条の2第9項並びに実用新案法第14条の2第13項を含む。)を改正し、訂正審判の請求及び特許無効審判又は特許異議の申立ての手続の中で行う訂正の請求並びに実用新案登録請求の範囲等の訂正において通常実施権者の承諾を不要とした。

(2)特許権、実用新案権及び意匠権の放棄における通常実施権者の承諾要件の廃止並びに同廃止に伴う商標権の放棄に係る規定の見直し(特許法第97条第1項並びに商標法第34条の2及び第35条)
 特許法第97条第1項(同項を準用する実用新案法第26条及び意匠法第36条を含む。)を改正し、特許権、実用新案権及び意匠権の放棄において通常実施権者の承諾を不要とした。
 また、商標権の放棄においては引き続き通常使用権者の承諾を必要とするため、商標法第35条における特許法第97条第1項の準用を削除し、商標法第34条の2において商標権の放棄についての条文を新設した。


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2023年2月23日 弁理士試験 代々木塾 「輸入」

2023-02-23 05:40:59 | Weblog
2023年2月23日 弁理士試験 代々木塾 「輸入」

令和3年改正法解説書
第10章 海外からの模倣品流入に対する規制の強化

1.改正の必要性

(1)従来の制度

① 商標法における商標権の侵害
 商標法上、商標権を有する者(商標権者)は、指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)について、登録「商標」を「使用」(商標法第2条第3項)する権利を専有しており(同法第25条)、権原なく指定商品等について登録「商標」を「使用」する行為には、商標権の侵害(直接侵害)が成立する。また、商標法は、指定商品等に登録商標と類似の商標を使用する行為及び指定商品等に類似する商品・役務に登録商標と同一・類似の商標を使用する行為(同法第37条第1号)、並びに商標権の直接侵害の予備的行為(同法第37条第2号以下)を侵害とみなす旨を規定している。
 この「使用」及び侵害とみなす行為の一類型として「輸入」があり、模倣品(権原なく登録商標と同一のマークを指定商品に付したもの等)を「輸入」する行為には商標権の侵害が成立し得る。
 もっとも、「商標」とは、標章(マーク)のうち、「業として」商品を譲渡等する者(以下「事業者」という。個人事業主を含む。)が商品・役務について「使用」するものをいうことから(同法第2条第1項第1号及び第2号)、事業者でない者(以下「個人」という。)が使用するマークは「商標」に該当せず、商標権の侵害は成立しない。
 そのため、個人が、模倣品を個人的に使用する目的(以下「個人使用目的」という。)で輸入する行為は、「商標」の使用等に該当せず、商標権の侵害が成立しない。

② 意匠法における意匠権の侵害
 意匠法上、意匠権を有する者(意匠権者)は「業として」登録意匠及びこれに類似する意匠(以下「登録意匠等」という。)を「実施」(意匠法第2条第2項)する権利を専有しており(同法第23条)、権原なく「業として」登録意匠等を実施する行為には、意匠権の侵害(直接侵害)が成立する。
 また、意匠法は、意匠権の直接侵害の予備的行為を侵害とみなす旨を規定している(同法第38条各号)。この「実施」及び侵害とみなす行為の一類型として「輸入」があり、権原なく登録意匠に係る物品を「輸入」する行為には意匠権の侵害が成立し得る。
 個人による登録意匠等に係る物品を輸入する行為は「実施」等には該当するものの、個人使用目的の場合は、「業として」行うものに該当せず、意匠権の侵害が成立しない。

③ 知的財産権を侵害する物品と税関における取締り
 税関において、知的財産権の侵害品の取締りを実効的に行うため、知的財産権を侵害する物品は、関税法に基づく没収等の対象とされている(関税法第69条の11第1項第9号及び第2項)。
 もっとも、上記のとおり、従来の制度では、個人使用目的で模倣品を輸入する行為には商標権及び意匠権の侵害が成立しないことから、こうした輸入に係る物品は、関税法に基づく没収等の対象とならない。

(2)改正の必要性

① 商標法上の課題
 模倣品の越境取引において、国内に事業者(輸入・販売業者)が介在する場合には、当該事業者による模倣品の「輸入」に商標権の侵害が成立し、税関で模倣品を没収等することが可能である。
 一方、近年、電子商取引の発展や国際貨物に係る配送料金の低下等により、国内の事業者が介在しない事例、すなわち海外の事業者が、国内の個人に対し、少量の模倣品を郵便等で直接販売し、送付する事例が急増している。
 この場合において、国内の個人の行為については商標権の侵害は成立せず、また、現行法では海外の事業者の行為に商標権の侵害が成立するか否かは明らかでないことから、税関において模倣品を没収等することができない。
 実務上、税関における没収の前提として、税関長が知的財産侵害物品に該当するか否かを認定するための手続 〈以下、「認定手続」という。(関税法第69条の12)〉 を執ることとされているが、当該手続において、輸入者が、「個人使用目的」を主張した場合、個人使用目的でないとは認められず商標権侵害物品として没収等することができない場合がある。近年、このような模倣品の個人使用目的の輸入が急増しており、模倣品の国内への流入増加に歯止めをかけることができていない。

② 意匠法上の課題
 意匠法についても、令和2年に意匠権を侵害するとして没収等の対象とされた物品がいずれも個人への直接販売が想定される物品(イヤホン、美容用ローラー等)であり、今後、個人使用目的でこれらが輸入される例の増加が高度に予見されること、新型コロナウイルス感染症による生活様式の変化や今後の電子商取引の発展、国際貨物に係る配送料金の低下等が進めば尚更増加が予想されることに鑑み、商標法と同様の改正を行うことが適切と考えられた。

③ 欧米の規制状況
 EUにおいては、2014年の欧州連合司法裁判所の司法判断(CJEU,C-98/13 Blomqvist/ Rolex [6 Feb. 2014])がなされて以降、EU域外の事業者がEU域内の者に宛てて送付した模倣品について、当該事業者の行為に商標権侵害が成立するものと解釈し、税関差止めの対象とされている。
 米国においては、模倣品の輸入は、米国商標法上、関税法で定める場合(携帯品であって、関税法施行規則で定める数量等の制限の範囲内)を除き禁止されており、こうした規制に反して輸入される模倣品は、商標権侵害を構成するものとして税関差止めの対象とされている。

2.改正の概要
 外国にある者が、郵送等により、商品等を国内に持ち込む行為を商標法及び意匠法における「輸入」行為に含むものと規定することにより、当該行為が事業者により権原なく行われた場合に規制対象となることを明確化することとした。


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2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条8項

2023-02-22 08:19:03 | Weblog
2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条8項

(訂正審判)第百二十六条
8 訂正審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。
 ただし、特許が取消決定により取り消され、又は特許無効審判により無効にされた後は、この限りでない。

・126条8項(特許権の消滅後の訂正審判の請求)

・126条8項本文

(1)126条8項は、126条の訂正審判が特許権について特許無効審判(123条)をもって攻撃される場合の1つの防衛手段と考えた場合に、その特許無効審判が特許権の消滅後においても請求することができるものであるならば、訂正審判もまた特許権の消滅後にも請求することができるようにすべきであるという理由から規定したものである。

(2)特許権が存続期間の満了により消滅した場合、特許権が放棄により消滅した場合、第4年以後の各年分の特許料の不納付により特許権が消滅した場合であっても、訂正審判の請求をすることができる。
 特許権の消滅後であっても、特許権存続期間中における特許権侵害訴訟が提起され、その対抗措置として特許無効審判の請求がされる場合があるからである。

・126条8項ただし書
 取消決定の確定又は無効審決の確定により、特許権が初めから存在しなかったものとみなされたときは(114条3項、125条)、訂正審判を請求することができない。
 特許が無効等にされた後において訂正審判の請求を認めることは、128条との関連において、確定した無効にすべき旨の審決についての再審理由になってくることにもなり、いたずらに制度を複雑化することになりかねないので、訂正審判の防衛的機能は、特許が無効等にされる前に限って認めることとした。


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2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条7項

2023-02-22 08:15:43 | Weblog
2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条7項

(訂正審判)第百二十六条
7 第一項ただし書第一号又は第二号に掲げる事項を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。

・126条7項(独立特許要件)(実体要件)

(1)126条7項は、特許請求の範囲の減縮(126条1項1号)を目的とする訂正をした後の発明、又は誤記若しくは誤訳の訂正(126条1項2号)を目的とする訂正をした後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない旨を規定している。
 かりに独立して特許を受けることができない部分のみが訂正後に残ったとしても、128条の規定により訂正後における明細書又は図面により特許出願がなされたものとみなされ、その特許出願の内容は瑕疵があるということで特許無効審判(123条)が請求されることになるからである。

(2)平成6年改正において、誤記又は誤訳の訂正(126条1項2号)を目的とする場合は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては外国語書面)に記載した事項の範囲内において特許の訂正を認めることとしたことから、誤記又は誤訳の訂正(126条1項2号)を目的とする場合についても、訂正後の発明が独立して特許を受けることができるものでなければならないこととする旨の改正を行った。

(3)独立特許要件が適用されるのは、126条1項1号又は2号の訂正がされた当該請求項のみであり、126条1項3号又は4号の訂正がされた請求項や訂正がされていない請求項については適用されない。

(4)独立特許要件とは、29条、29条の2、32条、36条4項1号、36条6項1号~3号、39条1項~4項の特許要件をいう(審判便覧)。


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2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条6項

2023-02-22 08:12:00 | Weblog
2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条6項

(訂正審判)第百二十六条
6 第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。

・126条6項(訂正の制限)(実体要件)

(1)126条6項は、126条1項に規定する訂正は、いかなる場合にも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであってはならない旨を規定している。
 訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなると、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、126条6項はこのような事態が生じないことを担保したものである。

(2)形式上126条1項1号の特許請求の範囲の減縮に該当していても、実質上特許請求の範囲を拡張する訂正や、変更する訂正は、認められない。

(3)「実質上特許請求の範囲を拡張する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するもの(例えば、請求項に記載した事項をより広い意味を表す表現に入れ替える訂正)のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を拡張するようなものをいう。

(4)「実質上特許請求の範囲を変更する」とは、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味を表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正のほか、特許請求の範囲については何ら訂正することなく、ただ発明の詳細な説明又は図面の記載を訂正することによって特許請求の範囲を変更するようなものをいう。

(5)訂正審判の審決例
 発明の解決課題や解決手段が大きく変更されたり、訂正前の発明の実施に該当しない行為が訂正後の発明の実施に該当することとなるときは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更することになる。


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2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条5項

2023-02-22 08:07:02 | Weblog
2023年2月22日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条5項

(訂正審判)第百二十六条
5 第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面
(同項ただし書第二号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあつては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあつては、外国語書面))
に記載した事項の範囲内においてしなければならない。

・126条5項(訂正ができる範囲)(実体要件)

(1)126条5項は、訂正審判において訂正をすることができる範囲について規定している。
 特許後の訂正は、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならず、いわゆる新規事項を追加するような訂正は認められない。

(2)ただし、126条5項かっこ書により、126条1項2号(誤記又は誤訳の訂正を目的とするもの)の場合には、特許がされた特許請求の範囲、明細書又は図面ではなく、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあっては外国語書面)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
 126条1項2号の「誤記の訂正」は、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならない。
 126条1項2号の「誤訳の訂正」は、外国語書面に記載した事項の範囲内でしなければならない。

(3)126条1項1号と3号と4号の訂正は、特許権の設定の登録時の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならない。

(4)126条5項においては、明文の規定は存在しないが、訂正の効果が特許出願時に遡及することを考慮すると(128条)、訂正は、特許出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でしなければならないと解される。


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2023年2月21日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条4項

2023-02-21 07:37:36 | Weblog
2023年2月21日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条4項

(訂正審判)第百二十六条
4 願書に添付した明細書又は図面の訂正をする場合であつて、請求項ごとに第一項の規定による請求をしようとするときは、当該明細書又は図面の訂正に係る請求項の全て(前項後段の規定により一群の請求項ごとに第一項の規定による請求をする場合にあつては、当該明細書又は図面の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全て)について行わなければならない。

・126条4項(明細書又は図面の訂正と請求項との関係)(方式要件)

(1)126条4項は、平成23年改正において新たに設けられた規定である。
 126条4項は、請求項ごとに訂正審判を請求しようとする場合であって、明細書又は図面の訂正が複数の請求項に係る発明と関係する場合、当該関係する請求項の全てについて請求をしなければならない旨を規定している。
 明細書又は図面の訂正と関連する複数の請求項のうちの一部だけに訂正審判が請求され、その訂正が認められると、明細書の一覧性の欠如(明細書の束)が生じることになる。 
 そこで、特許権者が行う手続によって1つの特許権に複数の明細書又は図面が発生することを防止するために、明細書又は図面の訂正と関連する全ての請求項を請求の対象としなければならないこととした。

(2)特許請求の範囲に記載した文言自体を訂正していなくても、明細書又は図面の訂正によって特許請求の範囲の減縮をする訂正に該当すると解されることがある(最高裁平成3年3月19日判決・クリップ事件)。

(3)明細書の一覧性の欠如(明細書の束)
 明細書又は図面の訂正が、複数の請求項に係る発明と関連する場合に、その明細書又は図面の訂正と関連する複数の請求項のうちの一部の請求項だけについて訂正審判が請求され、その訂正が認められると、その一部の請求項に関連する明細書又は図面は、訂正後の内容が反映されるが、その他の請求項に関係する明細書又は図面については、訂正前の内容のままであるため、請求項ごとに異なる明細書又は図面が発生することになってしまう。
 この場合には、それぞれの請求項について、権利の内容を理解しようとすると、特許登録原簿に記載された審決の確定経緯を追いつつ、訂正前後の異なる複数の明細書又は図面を読み分けなければならず(このような状況のことを、「明細書の一覧性が欠如している」又は「明細書の束」が発生したという。)、権利把握のための負担が増すことになる。
 そこで、平成23年改正に当たっては、明細書又は図面の訂正が複数の請求項に係る発明と関係する場合、当該関係する請求項の全てについて請求をしなければならないこととし、明細書の一覧性の欠如(明細書の束)の発生を防止することとした。

(4)具体例
 特許権の設定の登録時の特許請求の範囲の記載は下記のとおりである。
 【請求項1】Aを備えた装置。
 【請求項2】Bを備えた請求項1に記載の装置。
 【請求項3】Cを備えた請求項2に記載の装置。
 明細書には、下記の記載がある。
 【0101】Aには、A1とA2が含まれる。
 【0102】Bには、B1とB2が含まれる。
 【0103】Cには、C1とC2が含まれる。
(a)明細書の【0101】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0101】Aには、A1が含まれる。
 Aを含む請求項1~3の全てについて訂正審判の請求の対象としなければならない。
(b)明細書の【0102】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0102】Bには、B1が含まれる。
 Bを含む請求項2と3の全てについて訂正審判の請求の対象としなければならない。
(c)明細書の【0103】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0103】Cには、C1が含まれる。
 Cを含む請求項3について訂正審判の請求の対象としなければならない。


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