堤卓の弁理士試験情報

弁理士試験に関する情報を提供します。

特許法30条の平成11年改正点 (18.5.31)

2006-05-31 08:33:43 | Weblog
特許法30条の平成11年改正点

1.法改正の意義
 特許法29条1項3号において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を頒布された刊行物に記載された発明と同様に新規性喪失事由とする改正を行ったことに伴い、30条1項においても、電気通信回線を通じて発表することを刊行物に発表することと同様に新規性の喪失の例外規定とする改正を行ったものである。
 また、従来、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるのは、出願人の自己の行為(試験の実施、刊行物による発表、研究集会における文書発表、博覧会への出品)により29条1項各号に該当するに至った発明と、出願に係る発明が同一である場合のみであり、両者の発明が異なれば、新規性喪失の例外規定は適用されず、その結果、自己の発表した発明に基づいて容易に発明することができたもの(29条2項)として特許出願に係る発明が拒絶されることがあった。特に、学術的な意義や成果を重視する研究集会での発表は、その発表文書の内容が、権利範囲や明細書の記載要件を重視する特許出願の内容と同一とならない場合が多く、研究集会での発表や論文発表を重視する者にとって権利取得に対する一種の障壁ともなり得るものであった。
 このような状況に対処するために、自己の行為により発表された発明と出願に係る発明が同一でない場合においても、新規性喪失の例外規定の適用を可能とすることとした。

2.30条4項に記載された発明
(1)「29条1項各号の一に該当するに至つた発明」とは、発表等をすることにより29条1項各号の一に該当するに至つた発明を指す。

(2)「1項又は前項の規定の適用を受けることができる発明」とは、1項又は3項における発表等をした発明を指す。

3.電気通信回線を通じた発表行為を証明する書面について
(1)電気通信回線を通じた発表行為を証明する書面には、その情報の内容(その情報を発表したホームページ等のプリントアウト等)、その情報の掲載日時の表示、発表者、その情報をのせたアドレスが含まれる必要がある。その際、その情報に関して掲載、保全等に権限又は責任を有する者による証明書類を添付することが望ましい。

(2)提出された電気通信回線を通じた発表行為を証明する書面に疑義があると判断した場合には、審査官は、問い合わせ先等に表示されている連絡先に、改変されているか否かの照会をする。疑義が解消しない場合には、その旨を拒絶理由通知等で指摘する。

4.29条1項及び2項の規定の適用について
 提出された証明する書面によって示された情報は、出願がその情報によって新規性喪失の例外規定を受けられるものであれば、当該出願についての29条各項を判断するにあたってはその情報を先行技術情報としない。

5.適用時期
 この運用指針は、平成12年(2000年)1月1日以降の出願について適用する。

※注意点
 30条1項は、「電気通信回線を通じて発表」した行為が適用の対象となりますが、インターネットを通じてプログラムを提供する行為は、譲渡(販売)に該当することになりますので、製品の販売の場合と同様に、30条1項の適用は受けることはできません。

審決取消訴訟 (18.5.31)

2006-05-31 06:40:23 | Weblog
審決取消訴訟

1.請求成立審決に対して不服のある被請求人(特許権者)又は請求不成立審決に対して不服のある請求人は、東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起することができる(特178条)。
 特許権者は、審決について直接の不服はないが、訂正審判を請求して特許無効理由を解消することができると判断した場合には、審決取消訴訟は、訂正審判を請求するための手段として形式的に提起することとなる。
 一方、審決の違法性について直接争うときは、訂正審判を請求することなく、審決取消訴訟において本格的に争うことができる。

2.出訴期間
 審決の謄本の送達があった日から30日以内(特178条3項) 
 30日は不変期間→ただし、付加期間あり(特178条4項、5項)

3.訂正審判の請求
(1)訴えの提起があった日から起算して90日以内であれば、訂正審判(特126条)を請求することができる(特126条2項)。
 特許無効審判においてした訂正がまだ広すぎて無効理由を有している場合に、これをさらに減縮する訂正をすることにより、特許無効理由を解消することができる場合に有効な訂正である。

(2)ただし、取消し判決(特181条1項)又は差戻し決定(特181条2項)が確定した場合には、前記90日の期間内であっても、訂正審判を請求することができない(特126条2項かっこ書)。

(3)訂正の要件→特126条

4.差戻し決定
(1)特許権者が訂正審判を請求した場合、又は訂正審判を請求しようとしている場合は、裁判所は、裁量により、決定をもって、審決を取り消すことができる(特181条2項)。

(2)本案審理を続行した場合において、訂正審判において特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を認める審決が確定すると、訂正後の内容について裁判所は第一次的に無効理由の存否を審理判断することができないため、本案審理の内容にかかわらず、審決を取り消す判決をしなければならない。この場合は、すでにした本案審理がまったく無駄となる。このような場合には、裁判所は、本案審理をすることなく、差戻し決定をするものと解される。

(3)ただし、審決の違法性が明らかであり、審決を直ちに取り消すことができるような場合には、裁判所は、差戻し決定(特181条2項)ではなくて、取消し判決(特181条1項)をするものと解される。

(4)差戻し決定をする場合には、裁判所は、当事者の意見を聴かなければならない(特181条3項)。裁判を受ける権利を尊重するためである。

(5)差戻し決定は、審判官その他の第三者に対しても効力を有するものとされている(特181条4項)。行政処分の合一確定の要請を満たすこと、特許無効審判の再開の根拠を明確にすること、がその趣旨である。
 なお、差戻し決定は、訴訟物について実体判断をするものではないから、行政庁に対する拘束力(行政事件訴訟法33条1項)は、ない。

5.取消し判決
(1)裁判所は、請求を理由があると認めるときは、審決を取り消さなければならない(特181条1項)。本案審理をした結果、審決の違法性があると判断した場合には、判決によって審決を取り消すことが義務づけられる。

(2)取消し判決は、行政庁に対する拘束力(行政事件訴訟法33条1項)がある。したがって、特許無効審判の審判官は、判決の判断と矛盾する審決をすることはできない。

6.取消し判決又は差戻し決定が確定した場合には、特許無効審判の審判官は、さらに審理を行い、審決をしなければならない(特181条5項)。

7.特許無効審判における訂正の請求
(1)請求不成立審決に対する取消訴訟に関して取消し判決が確定し、特許無効審判の審理を開始するときは、審判長は、取消し判決の確定日から1週間以内に被請求人(特許権者)から申立てがあった場合に限り、訂正を請求するための期間を指定することができる(特134条の3第1項)。
 ① 請求不成立審決→請求成立審決が取り消された場合には、訂正の必要性に乏しい。
 ② 申立て→特許権者に積極的な訂正の意思がない場合にまで訂正の機会を付与する必要はない。
 ③ することができる→原審決の取消しの理由が手続上の瑕疵であり、再度有効審決ができる場合には、訂正の機会を与える必要はない。

(2)差戻し決定が確定し、特許無効審判の審理を開始するときは、審判長は、訂正を請求するための期間を指定しなければならない(特134条の3第2項)。差戻し決定は、訂正を前提とした終極裁判であるため、訂正の機会を必ず付与して、特許無効審判における訂正に一本化することをその趣旨とする。
 ただし、特許無効審判の審理の開始の時に、訴えの提起の日から90日以内に請求した訂正審判の審決がすでに確定している場合には、訂正の機会を付与しない(特134条の3第2項ただし書)。訂正後の内容で審理を開始すれば十分であるため、あらためて訂正の機会を付与する必要はない。

(3)訂正明細書等の援用
 審決取消訴訟の提起があった日から90日以内に訂正審判を請求した場合において、取消し判決又は差戻し決定が確定し、特許無効審判において指定期間内に訂正の請求をするときは、訂正審判の請求書に添付した訂正明細書等を援用することができる(特134条の3第3項)。
 訂正審判と同じ内容の訂正を請求するときは、訂正明細書等はあらためて作成する必要はなく、援用することができる。
 なお、訂正請求書は、訂正審判の請求書を援用することはできず、あらためて作成し、提出しなければならない。
 訂正審判の内容と異なる内容の訂正を請求するときは、あらためて訂正明細書等を作成し、これを訂正請求書に添付することが必要とされる。

(4)訂正審判のみなし取下げ
 審決取消訴訟の提起があった日から90日以内に訂正審判を請求した場合において、取消し判決又は差戻し決定が確定し、特許無効審判において指定期間内に訂正の請求をしたときは、訂正審判の請求は取り下げられたものとみなされる(特134条の3第4項)。訂正審判が独立して審理されることを防止して、特許無効審判における訂正の請求に一本化することをその趣旨とする。
 ただし、訂正の請求の時に、訂正審判の審決が確定している場合には、訂正審判の請求は取り下げられたものとみなされない(特134条の3第4項ただし書)。

(5)審決取消訴訟の提起があった日から90日以内に訂正審判を請求した場合において、取消し判決又は差戻し決定が確定し、特許無効審判において指定期間内に訂正の請求がされなかったときは、指定期間の末日に、訂正明細書等を援用した訂正の請求がされたものとみなされる(特134条の3第5項)。
 ただし、指定期間の末日に訂正審判の審決が確定している場合には、訂正の請求がされたものとみなされることはない(特134条の3第5項ただし書)。

8.訂正請求書等の副本の送達等
(1)審判長は、訂正請求書の副本、訂正明細書等の副本を請求人に送達しなければならない(特134条の2第2項)。

(2)訂正の請求の審理
 特許無効審判の審判官は、訂正の要件を満たすかどうかについて審理する。
 審判官が当事者が申し立てない理由について審理した場合において、訂正の要件を満たしていないと判断したときは、審判長は審理の結果を当事者に通知し意見を申し立てる機会を与えなければならない(特134条の2第3項ただし書)。

(3)特許無効審判請求書の補正
 審判請求人は、審判長の許可があれば、審判請求書の請求の理由について要旨を変更する補正をすることができる(特131条の2第2項)。

(4)手続補正書の副本の送達
 特許権者は、指定期間内に再度の訂正の請求をすることができる(特134条の2第1項)。

9.特許無効理由の審理
 審判官は、訂正の要件を満たしていると判断した場合には、訂正後の内容について無効理由があるかどうかの審理を行う。
 審判官は、訂正の要件を満たしていないと判断した場合には、訂正前の内容について無効理由があるかどうかの審理を行う。

10.審決
 審判官は、請求成立審決又は請求成立審決をすることとなる。
 審決に不服がある場合には、審決取消訴訟を提起することができる(特178条)。

間接侵害(101条2号) (18.5.31)

2006-05-31 06:39:08 | Weblog
間接侵害(特101条2号)

1.「発明による課題の解決に不可欠なもの」
(1)「発明による課題の解決に不可欠なもの」は、請求項に記載された発明の構成要素(発明特定事項)とは異なる概念であり、発明の構成要素以外にも物の生産や方法の使用に用いられる道具、原料等も含まれることがある。
 逆に、請求項に記載された発明の構成要素であっても、その発明が解決しようとする課題とは無関係に従来から必要とされていたものは、「発明による課題の解決に不可欠なもの」には当たらない。
 それを用いることにより、初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような部品、道具、原料等が、「発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当することになる。 

(2)「発明による課題の解決に不可欠なもの」という要件は、「~にのみ用いる」という専用品の要件を外した場合に、間接侵害の規定が特許権の効力の不当な拡張とならないよう、新たな間接侵害の規定の対象物を「発明」という観点から見て重要な部品等に限定するために設けられたものである。
 「発明による課題の解決に不可欠なもの」は、専用品に限られないため、その発明にとって重要でない部品等は間接侵害の対象外となるが、その発明にとって重要な部品等は、他に非侵害用途があるものであっても、間接侵害の対象に含まれることになり、間接侵害の成立範囲をより適切なものとすることができる。

2.「日本国内において広く一般に流通しているものを除く」
 「日本国内において広く一般に流通しているもの」には、例えば、ねじ、くぎ、電球、トランジスタ等、日本国内において広く普及している一般的な製品が含まれる。
 「広く一般に流通している」ということは、それが特注品ではなく、市場において一般に入手可能な状態にある規格品、普及品であるということであって、そのような物の生産・譲渡等まで間接侵害行為に含めることは、取引の安定性の確保という観点から好ましくないため、新たに追加する間接侵害の規定の対象外としたものである。

3.「その物がその発明の実施に用いられること」
 これは、文字通り、自らが生産、譲渡等を行う部品等の物が、他者により特定の発明の実施に用いられることを認識しているという要件である。

4.「その発明が特許発明であること」
(1)「特許発明」とは、特許を受けている発明であって(特2条2項)、「その発明が特許発明であること」とは、その発明が特許を受けている発明であること、すなわち、その発明に特許権が存在していることを認識していることという要件である。

(2)専用品という要件を外した2号の規定では、その部品等に侵害用途以外の多くの用途がある場合もあるので、部品等の供給業者に対し、部品等の供給先で行われる他人の実施内容についてまで、特許権が存在するか否かの注意義務を負わせることは、酷であるといえる。
 したがって、2号の規定では、自ら生産、譲渡等をする物が、特定の発明の実施に用いられることの認識に加え、その発明に特許権が存在することの認識も間接侵害成立の要件とすることとした。

5.「知りながら」
(1)「知りながら」という要件は、「その発明が特許発明であること」及び「その物がその発明の実施に使用されること」について実際に知っていたことを必要とするものである。
 それらの事実を知らなかった場合には、それがたとえ過失による場合であっても該当しないことになる。
 過失により知らなかった場合を含めていないが、これは、自らの供給する部品等が複数の用途を有する場合に、それらが供給先においてどのように使われるかについてまで注意義務を負わせることは、部品等の供給者にとって酷であり、また、取引の安全を著しく欠くおそれがあるためである。

(2)警告と悪意の立証
 例えば、相手方に警告状を送付した場合には、少なくともその警告状の送付後についての相手方の悪意は、比較的容易に立証可能であるといえる。
 したがって、実務上は、警告状の送付後の行為について、新たな間接侵害の規定の適用が争われるケースが多くなるものと予測される。
 しかし、特許法101条2号の規定の適用が認められるためには、問題とされている部品等の供給先の行為が特許発明の技術的範囲に属していること、その部品等がその特許発明による課題の解決に不可欠なものであることが、その前提として必要となる。
 権利者が、これらの客観的事実が認識されないままに不用意に警告状を乱発すると、不法行為(民法709条)として損害賠償請求の対象となる可能性のあることにも、注意が必要である。

無効審判と訂正と訴訟との関係 (18.5.31)

2006-05-31 06:37:03 | Weblog
「特許無効審判」と「訂正の請求」と「訂正審判」と「審決取消訴訟」との関係

1.特許無効審判の請求
(1)請求人適格
 ① 共同出願違反(38条)又は冒認出願(123条1項6号)を理由として含む場合
  請求人→利害関係人に限られる(123条2項ただし書)。
  利害関係人→当事者のみならず、特許発明の実施者も含む。
 ② その他の理由のみを理由とする場合
  請求人→何人(123条2項本文)
  ただし、当該特許権者は除外(請求の利益なしとして審決却下)

(2)請求の時期
 ① 特許権発生後
 ② 特許権消滅後(123条3項)。ただし、消滅後20年以内(請求権の時効消滅)
 なお、特許権がはじめから存在しなかったものとみなされる場合(特許無効審決確定の場合、請求項の削除の訂正が確定した場合)は、請求の利益なしとして審決却下(135条)

(3)特許無効審判請求書
 ① 所定の事項を記載(131条1項)
 ② 請求の理由の記載→特許を無効にする根拠となる事実を具体的に特定し、かつ、立証を要する事実ごとに証拠との関係を記載したものでなければならない(131条2項)。
 ③ 131条2項違反の場合
()補正ができる場合→補正命令(133条1項)
 補正をしなかった場合→審判請求書の却下の決定(133条3項)
 補正をしたが要旨変更(131条の21項)に該当する場合→審判請求書の却下の決定(133条3項)
()補正ができない場合(補正をすると要旨変更になる場合)→審決却下(135条)

2.答弁書の提出
(1)審判請求書の副本の送達(134条1項)
 特許無効審判請求書が適式な場合は、審判長は、請求書の副本を被請求人(特許権者)に送達し、答弁書を提出する機会を与える。
(2)被請求人(特許権者)は、請求人が主張する特許無効理由が存在しないことを答弁書において主張することができる。
(3)答弁書の副本の送達(134条3項)

3.訂正の請求
(1)意義→特許無効理由を解消する手段
(2)請求の時期
 審判請求書の副本の送達を受けた場合の答弁書提出期間内(134条の2第1項)
 その他の期間(134条の2第1項)

(3)訂正の目的
 ① 特許請求の範囲の減縮(134条の2第1項1号)→発明特定事項の直列的付加、上位概念を下位概念に変更、択一的な発明特定事項の一部削除
 ② 誤記又は誤訳の訂正(2号)
 ③ 明りょうでない記載の釈明(3号)

(4)訂正の範囲
 ① 1号と3号の訂正
 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内(明細書等の記載から自明な事項も含む)(準用126条3項)
 訂正の効果が発生していない場合→特許権設定登録時の明細書等
 訂正の効果が発生している場合→訂正後の明細書等
 ② 2号の訂正
 誤記→願書に最初に添付した明細書等(準用126条3項)
 誤訳→外国語書面出願では外国語書面(準用126条3項)、外国語特許出願では国際出願日における明細書等(184条の19)

(5)訂正の制限
 実質上特許請求の範囲を拡張し、変更してはならない(準用126条4項)。

(6)独立特許要件
 ① 特許無効審判の請求がされていない請求項について特許請求の範囲の減縮(1号)又は誤記又は誤訳の訂正(2号)をするときは、訂正後の発明が独立特許要件(進歩性等)を満たしていることが必要である(準用126条5項)。
 この場合、独立特許要件を満たしていることは、訂正の請求書の請求の理由の欄に記載する。
 ② 特許無効審判の請求がされている請求項については、訂正の要件として独立特許要件は課されない。しかし、訂正を認めたうえで、特許無効理由の審理の対象となるので、結果的には、独立特許要件を満たしていることが必要とされる。この場合、独立特許要件を満たしていることは、答弁書に記載する。

(7)訂正請求書
 ① 所定の事項を記載した訂正請求書を提出(準用131条1項)
 所定の事項→請求の趣旨(訂正事項の特定)、請求の理由(訂正の要件を満たすこと)
 ② 訂正特許請求の範囲、訂正明細書、訂正図面を訂正請求書に添付しなければならない(準用131条3項)。

4.訂正請求書等の副本の送達
 審判長は、訂正請求書及び訂正特許請求の範囲等の副本を請求人の送達しなければならない(134条の2第2項)。

5.審判請求書の補正
(1)特許無効審判請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならない(131条の2第1項本文)。
 ただし、審判長の許可があったときは、要旨を変更する補正ができる(131条の2第1項ただし書)。

(2)特許無効審判請求書の請求の理由について要旨を変更する補正ができる場合
 ① 要旨を変更する補正が審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなものであること(131条の2第2項本文)。
 要旨を変更する補正→特許無効理由の条文の追加又は変更、引用例の追加又は変更など
 ② 1号又は2号のいずれかに該当すること(131条の2第2項本文)
()1号→訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたこと。
()2号→審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があり、被請求人が補正に同意したこと。

(3)特許無効審判請求書の副本の送達前に要旨変更の手続補正書が提出されたときは、審判長は補正の許可をすることができない(131条の2第3項)。

(4)特許法131条の2第2項の決定に対しては、不服申立てができない(131条の2第4項)。
 決定の種類→補正を許可する決定、補正を許可しない決定
 補正を許可しない決定に対しても不服申立てができない。

6.弁駁書
(1)訂正請求書の副本の送達を受けた審判請求人は、審判請求書を補正する代わりに、弁駁書を提出することができる(特施規47条の3)。
 弁駁書には、特許権者の主張に対する反論を記載する。

(2)弁駁書と手続補正書との相違
 弁駁書も手続補正書も、反論をするための手続であり、本質的な差異はない。
 しかし、手続補正書は、補正箇所を訂正するものであり、補正後の審判請求書の全体を把握するのに手間を要する。一方、弁駁書は、反論の内容をあらためて記載するので、反論の内容を把握するのが容易である。
 したがって、実務上は、弁駁書において新たな無効理由の主張や新たな引用例の追加を認めることとしている。ただし、その場合は、手続補正書の場合と同様に、審判長の決定による許可を必要とする(131条の2第2項)。

7.要旨変更に係る手続補正書等の副本の送達
(1)審判長は、要旨変更に係る請求書の補正を許可するときは、その手続補正書の副本を被請求人(特許権者)に送達し、答弁書を提出する機会を与えなければならない(134条2項)。
 ただし、答弁書の提出をまつまでもなく、特許を維持できる審決(請求不成立審決)をする場合には、答弁書提出の機会を与える必要がない(134条2項ただし書)。

(2)被請求人(特許権者)は、答弁書を提出して、審判請求人の主張に対して反論することができる(134条2項)。

(3)被請求人(特許権者)は、答弁書提出期間内に、再度の訂正の請求をすることができる(134条の2第1項)。この場合、先の訂正の請求はみなし取下げとなる(134条の2第4項)。

8.審決
(1)請求成立審決
 特許無効理由が存在するときは、特許を無効にすべき旨の審決(請求成立審決)がされる。これに対して、被請求人(特許権者)は、審決取消訴訟を提起することができる(178条)。
 訴訟を提起しなかった場合には、特許無効審決が確定し、特許権は始めから存在しなかったものとみなされる(125条本文)。

(2)請求不成立審決
 特許無効理由が存在しないときは、請求不成立審決がされる。これに対して、審判請求人は、審決取消訴訟を提起することができる(178条)。
 訴訟を提起しなかった場合には、一事不再理の効力が生ずる(167条)。

9.審決取消訴訟
(1)請求成立審決に対して不服のある被請求人(特許権者)又は請求不成立審決に対して不服のある請求人は、東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起することができる(178条)。
 特許権者は、審決について直接の不服はないが、訂正審判を請求して特許無効理由を解消することができると判断した場合には、審決取消訴訟は、訂正審判を請求するための手段として形式的に提起することとなる。
 一方、審決の違法性について直接争うときは、訂正審判を請求することなく、審決取消訴訟において本格的に争うことができる。

(2)出訴期間
 審決の謄本の送達があった日から30日以内(178条3項)
 30日は不変期間→ただし、付加期間あり(178条4項、5項)

(3)訂正審判の請求
 ① 訴えの提起があった日から起算して90日以内であれば、訂正審判(126条)を請求することができる(126条2項)。特許無効審判においてした訂正がまだ広すぎて無効理由を有している場合に、これをさらに減縮する訂正をすることにより、特許無効理由を解消することができる場合に有効な訂正である。
 ② ただし、取消し判決(181条1項)又は差戻し決定(181条2項)が確定した後は、前記90日の期間内であっても、訂正審判を請求することができない(126条2項かっこ書)。
 ③ 訂正の要件→126条

(4)差戻し決定
 特許権者が訂正審判を請求した場合、又は訂正審判を請求しようとしている場合には、裁判所は、裁量により、決定をもって、審決を取り消すことができる(181条2項)。
 本案審理を続行した場合において、訂正審判において訂正を認める審決が確定すると、訂正後の内容について裁判所は第一次的に無効理由の存否を審理判断することができないため、本案審理の内容にかかわらず、審決を取り消す判決をしなければならない。この場合は、すでにした本案審理がまったく無駄となる。このような場合には、裁判所は、本案審理をすることなく、差戻し決定をするものと解される。
 ただし、審決の違法性が明らかであり、審決を直ちに取り消すことができるような場合には、裁判所は、差戻し決定(181条2項)ではなくて、取消し判決(181条1項)をするものと解される。
 差戻し決定をするときは、裁判所は、当事者の意見を聴かなければならない(181条3項)。裁判を受ける権利を尊重するためである。
 差戻し決定は、審判官その他の第三者に対しても効力を有する(181条4項)。行政処分の合一確定の要請を満たすこと、特許無効審判の再開の根拠を明確にすること、がその趣旨である。
 なお、差戻し決定は、訴訟物について実体判断をするものではないから、行政庁に対する拘束力(行政事件訴訟法33条1項)は、ない。

(5)取消し判決
 裁判所は、請求を理由があると認めるときは、審決を取り消さなければならない(181条1項)。本案審理をした結果、審決の違法性があると判断した場合には、判決によって審決を取り消すことが義務づけられる。
 取消し判決は、行政庁に対する拘束力(行政事件訴訟法33条1項)がある。したがって、特許無効審判の審判官は、判決の判断と矛盾する審決をすることはできない。

(6)取消し判決又は差戻し決定が確定した場合には、特許無効審判の審判官は、さらに審理を行い、審決をしなければならない(181条5項)。

10.特許無効審判の審理
(1)訂正の請求
 ① 請求不成立審決に対する取消訴訟に関して取消し判決が確定し、特許無効審判の審理を開始するときは、審判長は、取消し判決の確定日から1週間以内に被請求人(特許権者)から申立てがあった場合に限り、訂正を請求するための期間を指定することができる(134条の3第1項)。
()請求不成立審決→請求成立審決が取り消された場合には、訂正の必要性に乏しい。
()申立て→特許権者に積極的な訂正の意思がない場合にまで訂正の機会を付与する必要はない。
()することができる→原審決の取消しの理由が手続上の瑕疵であり、再度有効審決ができる場合には、訂正の機会を与える必要はない。
 ② 差戻し決定が確定し、特許無効審判の審理を開始するときは、審判長は、訂正を請求するための期間を指定しなければならない(134条の3第2項)。差戻し決定は、訂正を前提とした終極裁判であるため、訂正の機会を必ず付与して、特許無効審判における訂正に一本化することをその趣旨とする。
 ただし、特許無効審判の審理の開始の時に、訴えの提起の日から90日以内に請求した訂正審判の審決がすでに確定している場合には、訂正の機会を付与しない(134条の3第2項ただし書)。訂正後の内容で審理を開始すれば十分であるため、あらためて訂正の機会を付与する必要はない。
 ③ 訂正明細書等の援用
 審決取消訴訟の提起があった日から90日以内に訂正審判を請求した場合において、取消し判決又は差戻し決定が確定し、特許無効審判において指定期間内に訂正の請求をするときは、訂正審判の請求書に添付した訂正明細書等を援用することができる(134条の3第3項)。
 訂正審判と同じ内容の訂正を請求するときは、訂正明細書等はあらためて作成する必要はなく、援用することができる。
 なお、訂正請求書は、訂正審判の請求書を援用することはできず、あらためて作成し、提出しなければならない。
 訂正審判の内容と異なる内容の訂正を請求するときは、あらためて訂正明細書等を作成し、これを訂正請求書に添付することが必要とされる。
 ④ 訂正審判のみなし取下げ
 審決取消訴訟の提起があった日から90日以内に訂正審判を請求した場合において、取消し判決又は差戻し決定が確定し、特許無効審判において指定期間内に訂正の請求をしたときは、訂正審判の請求は取り下げられたものとみなされる(134条の3第4項)。訂正審判が独立して審理されることを防止して、特許無効審判における訂正の請求に一本化することをその趣旨とする。
 ただし、訂正の請求の時に、訂正審判の審決が確定している場合には、訂正審判の請求は取り下げられたものとみなされない(134条の3第4項ただし書)。
 ⑤ 審決取消訴訟の提起があった日から90日以内に訂正審判を請求した場合において、取消し判決又は差戻し決定が確定し、特許無効審判において指定期間内に訂正の請求がされなかったときは、指定期間の末日に、訂正明細書等を援用した訂正の請求がされたものとみなされる(134条の3第5項)。
 ただし、指定期間の末日に訂正審判の審決が確定している場合には、訂正の請求がされたものとみなされることはない(134条の3第5項ただし書)。

(2)訂正請求書等の副本の送達等
 ① 審判長は、訂正請求書の副本、訂正明細書等の副本を請求人に送達しなければならない(134条の2第2項)。
 ② 訂正の請求の審理
 特許無効審判の審判官は、訂正の要件を満たすかどうかについて審理する。
 審判官が当事者が申し立てない理由について審理した場合において、訂正の要件を満たしていないと判断したときは、審判長は審理の結果を当事者に通知し意見を申し立てる機会を与えなければならない(134条の2第3項ただし書)。
 ③ 特許無効審判請求書の補正
 審判請求人は、審判長の許可があれば、審判請求書の請求の理由について要旨を変更する補正をすることができる(131条の2第2項)。
 ④ 手続補正書の副本の送達
 特許権者は、指定期間内に再度の訂正の請求をすることができる(134条の2第1項)。

(5)特許無効理由の審理
 審判官は、訂正の要件を満たしていると判断した場合には、訂正後の内容について無効理由があるかどうかの審理を行う。
 審判官は、訂正の要件を満たしていないと判断した場合には、訂正前の内容について無効理由があるかどうかの審理を行う。

(6)審決
 審判官は、請求成立審決又は請求成立審決をすることとなる。
 審決に不服がある場合には、審決取消訴訟を提起することができる(178条)。

実用新案法37条1項7号、38条の2 (18.5.30)

2006-05-30 20:32:04 | Weblog
実用新案法37条1項7号

 訂正が、実用新案法14条の2第2項~4項までの規定に違反している場合には、実用新案登録の無効理由に該当する。
 したがって、訂正が実体的要件を満たしていない場合には、訂正は認められるけれども、無効審判において無効にされる運命にある。
 したがって、この場合は、訂正後の実用新案権に基づいて差止請求権又は損害賠償請求権を行使しようとしても、準用する特許法104条の3第1項により、権利行使が制限されることとなる。

実用新案法38条の2

 実用新案登録無効審判が請求されている場合において、請求の範囲の減縮等を目的とする訂正がされた場合には、当初の無効理由が解消したが、新たな無効理由を発見する場合があり得る。
 例えば、訂正後の考案について進歩性を否定する先行技術文献を発見した場合や、訂正が実体的要件を満たしていない場合があり得る。
 このような場合には、特許法と同様に、審判長の決定により、審判請求書の請求の理由について要旨を変更する補正を許可することとした。
 この点は、特許法と同様の制度になったといえる。

実用新案法14条の3 (18.5.30)

2006-05-30 20:30:10 | Weblog
実用新案法14条の3

(1)実用新案法14条の3第1項
 ① 柱書
()訂正の審理は、審判官ではなくて、特許庁長官が行う。
()7項の訂正の場合は請求項の削除のみであるので、基礎的要件をあらためて審理する必要はない。
()しかし、請求の範囲の減縮等を目的とする訂正がされた場合には、請求項に保護対象でないものが記載される可能性がある。
 また、考案の単一性を満たさないような訂正がされる場合もあり得る。
 そこで、1項の訂正については、基礎的要件をあらためて審理することとしたものである。
()補正命令を受けた場合には、訂正明細書等について補正をすることができる。
 すなわち、実用新案法2条の2第3項においては、訂正明細書等については補正ができないこととしているが、この規定における「補正」は自発的補正を意味するものと解される。
 したがって、補正命令を受けた場合には、訂正明細書等について補正命令を受けた事項について当然に補正ができるものと解すべきである。
 ただし、補正命令の対象となっていないいわゆる便乗補正はすることができないものと解すべきである。
 ② 1号~ 4号→実6条の2第1号~4号と同様

(2)実用新案法2条の2第3項
 実2条の2第1項の規定にかかわらず、実14条の2第1項の訂正に係る訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面については、その補正をすることができない。
 訂正明細書等については、自発補正は一切認めない趣旨である。
 したがって、補正命令を受けた場合には、この規定は適用されないと解釈することになる。

(3)実用新案法2条の3
 実14条の2第1項の訂正が基礎的要件を満たしていない場合には、特許庁長官は補正命令をするが(実14条の3)、この補正命令に適切に対応しなかった場合には、特許庁長官により訂正が却下される。
 この訂正の却下は、行政不服審査法に基づく異議申立の対象となり得る。


実用新案法14条の2第13項 (18.5.30)

2006-05-30 20:27:55 | Weblog
実用新案法14条の2第13項

(1)特許法127条
 下記の者の承諾書を訂正書に添付しなければならない。
 ① 実用新案権についての専用実施権者
 ② 実用新案権についての質権者
 ③ 実用新案権についての職務考案に基づく通常実施権者
 ④ 専用実施権についての通常実施権者
 ⑤ 実用新案権についての許諾通常実施権者
 この規定に違反する場合には、特許庁長官は実用新案権者に対して補正命令をするものと解される(実2条の2第4項)。
 補正命令を受けた実用新案権者は、承諾書を入手し、これを特許庁長官に提出することが必要とされる。

(2)特許法132条3項
 実用新案権が共有に係る場合には、共有者の全員で訂正をしなければならない。 この要件に違反する場合には、特許庁長官は、補正をすることができない不適法な訂正であるとして、訂正を却下することとなる(準特18条の2)。
 すなわち、補正命令の対象とすることができない重大な不備に該当する。

実用新案法14条の2第12項 (18.5.30)

2006-05-30 20:26:12 | Weblog
実用新案法14条の2第12項

(1)1項の訂正があったときは、請求の範囲の減縮等を目的とする訂正が行われているので、訂正後の内容を第三者に公示することが必要とされる。
 そのため、訂正後の明細書等を実用新案公報に掲載することとした。
 この点は、特許法の訂正の場合と同様である。

(2)7項の訂正は、請求項の削除のみを目的とするものであるため、訂正後の請求の範囲を公示することは必要ではない。
 したがって、削除された請求項を実用新案公報に掲載することとした。
 「その旨」とは、削除された請求項を意味する。

実用新案法14条の2第11項 (18.5.30)

2006-05-30 20:24:28 | Weblog
実用新案法14条の2第11項

(1)訂正があったとき
 ① 「訂正があったとき」とは、方式的要件(時期的要件及び手続的要件)を満たし、基礎的要件(実14条の3)を満たした場合を意味し、実体的要件を満たしていなくても、訂正が認められる。
 すなわち、特許庁長官は、訂正の方式的要件及び基礎的要件のみを審理し、実体的要件は審理しないで、訂正を認める。

 ② 1項の訂正が認められる場合
()実14条の2第1項に規定する要件を満たすこと
()実用新案権者であること
()1回目であること
()1号及び2号のいずれにも該当しないこと
()実14条の2第9項及び10項の手続的要件を満たすこと
()訂正書を提出すること
()訂正した請求の範囲等を添付すること
()実14条の3各号のいずれにも該当しないこと(基礎的要件)

(2)実用新案法14条の2第2項違反の効果
 訂正の目的が、1号の請求の範囲の減縮、2号の誤記の訂正、3号の明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない場合は、訂正を認めたうえで、無効理由として扱う(実37条1項7号)。

(3)実用新案法14条の2第3項違反の効果
 訂正が新規事項の追加に該当する場合には、訂正を認めたうえで、無効理由として扱う(実37条1項7号)。
 実用新案法3条の2の他の出願に該当する場合には、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項についてのみ後願を排除することができ、訂正によって新規事項を追加した場合でも、当該新規事項については後願を排除することはできない。
 実用新案法7条1項の先願に該当する場合には、文理上は、訂正後の内容で実用新案登録出願がされたこととなり、先願の地位を有するが、訂正後の請求項に記載した事項の中に、願書に最初に添付した明細書等に記載されていない新規事項が含まれている場合には、先願の対象としないこととなる。
 以上のように、新規事項を含む訂正が認められたとしても第三者に不測の不利益を与えることはないと解される。

(4)実用新案法14条の2第4項違反の効果
 訂正が、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものである場合には、訂正を認めたうえで、無効理由として扱う(実37条1項7号)。
 したがって、訂正前の実用新案権に基づいて登録実用新案の技術的範囲を主張することはできない(準特70条1項)。
 また、訂正前の評価書を提示した警告をして訂正後の実用新案権について権利を行使することも認められない(実29条の2)。
 この場合は、訂正後の登録実用新案についてあらためて評価の請求をすることが必要であり、訂正後の評価書を提示した警告をあらためてすることが必要である(実29条の2)。


実用新案法14条の2第10項 (18.5.30)

2006-05-30 20:22:09 | Weblog
実用新案法14条の2第10項

 1項の訂正をするときは、訂正書に訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面を添付しなければならない。
 訂正の対象が請求の範囲のみである場合には、明細書や図面を添付する必要はない。