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18.9.26 平成14年1月30日東京高裁判決

2006-09-26 08:36:55 | Weblog
平成14年1月30日東京高裁判決・平成13年(行ケ)265
商標権 行政訴訟事件 角瓶事件

第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 原告は、平成6年5月17日、別紙表示のとおり、「角瓶」の文字を左横書きしてなる商標(以下「本願商標」という。)につき、指定商品を商標法施行令別表による第33類「ウイスキー」として商標登録出願をした(商願平6-48572号)が、平成8年10月1日に拒絶査定を受けたので、同年11月26日、これに対する不服の審判の請求をし、その後、指定商品を同類「角型瓶入りのウイスキー」と補正した。
 特許庁は、同審判請求を平成8年審判第20067号事件として審理した上、平成13年4月18日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年5月14日、原告に送達された。
2 審決の理由
 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本願商標は、指定商品の品質、形状を表示するにすぎないので、商標法3条1項3号に該当し、また、同条2項所定の要件を具備していると認めることもできないから、原査定を取り消すべき限りではないとした。

第5 当裁判所の判断
1 取消事由(商標法3条2項該当性判断の誤り)について
(1)出願に係る商標が、指定商品の品質、形状を表示するものとして商標法3条1項3号に該当する場合に、それが同条2項に該当し、登録が認められるかどうかは、使用に係る商標及び商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用をされた結果、需要者がなんぴとかの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるかどうかによって決すべきものであり、その場合に、使用に係る商標及び商品は、原則として出願に係る商標及び指定商品と同一であることを要するものというべきである。
 そして、同条1項3号により、指定商品の品質、形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標が、本来は商標登録を受けることができないとされている趣旨は、そのような商標が、商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによることにかんがみれば、上記の場合に、使用商標が出願商標と同一であるかどうかの判断は、両商標の外観、称呼及び観念を総合的に比較検討し、全体的な考察の下に、商標としての同一性を損なわず、競業者や取引者、需要者等の第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがないものと社会通念上認められるかどうかを考慮して行うべきものと解するのが相当である。(途中省略)

(4)外観、称呼及び観念を総合的に比較検討し、全体的に考察した場合には、上記のとおり本願商標と厳密には書体が同一ではない文字、縦書きで書された文字及び「角」と「瓶」の字間が本願商標よりも広い文字による表示に係る商標も、本願商標と商標としての同一性を損なうものではなく、競業者や取引者、需要者等の第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがないものと社会通念上認められるから、使用商標が出願商標と同一である場合に当たるものというべきである。

(5)「サントリー」が、出所表示機能を有する原告の代表的かつ著名なハウスマークであることは当事者間に争いがないところ、新聞、雑誌の広告及びテレビコマーシャルにおいて使用された商標に係る「角瓶」の文字中には、「サントリー」の文字に連続して表されていると認められるものが存在する。
 そして、審決は、上記のような表示につき、「『角瓶』の文字は、請求人(注、原告)の代表的な出所表示機能を有する著名なハウスマークである『サントリー』と常に結びついて使用されているものといわなければならない。してみると、『角瓶』という表示は、それ単独で多くの銘柄のウイスキーの中の特定のウイスキーを示す商標として使用されているということができない」と認定判断し、被告は、「角瓶」の文字よりなる本願商標が独立して取引の目的となり得るような態様で使用されてきたということはできない旨主張する。
 しかしながら、上記新聞、雑誌の広告及びテレビコマーシャルにおいて使用された商標のうち、上記に挙げたもの以外は、表示の形態として、必ずしも「角瓶」の文字が「サントリー」の文字と連続し、又は一体の商標と認められる程度に近接して表されているわけではなく、したがって、それらの「角瓶」の文字は「サントリー」の文字と結びついて使用されているということはできない(なお、同一広告中の隔離した位置に「サントリー」等の文字があるからといって、それだけでこれらの文字と結びついて使用されているということができないことは明白である。)から、審決の上記「ハウスマークである『サントリー』と常に結びついて使用されている」との説示はそれ自体誤りというべきであるが、その点はおくとしても、上記の「角瓶」の文字が「サントリー」又は「サントリーウ井スキー」の文字に連続して表されていると認められる形態のものであっても、以下のとおり、「角瓶」の文字よりなる本願商標が使用されているものというべきである。
 すなわち、一般に、それ自体で出所表示機能を有する商標であっても、具体的な使用の態様においては、他の文字と連続して表示されることがないとはいえず、当該他の文字が当該商標に係る商品又は役務の出所を示す著名なハウスマークである場合でも、そのようなことがしばしばあることは、例えば自家用車や家電製品等の場合を考えれば明らかである。そして、このような場合に、常に、ハウスマークと結合して一体化した商標が使用されているのであって、当該商標自体の使用に当たらないと見るのは不合理であることが明らかであり、結局、そのような態様における使用が、ハウスマークと結合して一体化した商標の使用に当たるか、当該商標自体の使用に当たるかは、当該商標がハウスマークと連続又は近接しないで表示されることも相当程度あるかどうか、あるいは、当該商標の使用者自身が、例えばハウスマークと結合して一体化した構成の商標について登録出願をする等、むしろ、ハウスマークと結合して一体化したものを一個の商標として扱うような積極的な行為に及んでいるかどうか等の事実に基づき、その点についての使用者及び取引者、需要者の認識いかんに従って、これを決するのが相当である。
 そこで、本願商標についてこの点を検討するに、上記の新聞、雑誌の広告及びテレビコマーシャルにおいて使用された商標に係る「角瓶」の文字のうちには、上記のとおり、「サントリー」又は「サントリーウ井スキー」の文字に連続して表示されているものが存在する反面、(途中省略)「角瓶」の文字が、特段、「サントリー」等の文字と連続又は近接することなく表されており、そのような使用の態様も少なくはないものと認められるのみならず、「サントリー」等の文字と連続して表されているものであっても、「角瓶」の文字部分が四角形の枠で囲まれ、また、「角瓶」の文字部分が括弧で囲まれていて、いずれも「角瓶」の文字部分と「サントリー」又は「サントリーウ井スキー」の文字部分とを区分し、一体化することを妨げるような表示態様とされている。
 これに加え、一般の刊行物においても、本件製品を「サントリーウイスキー 角瓶」と指称するものもあるものの、前掲「ウイスキー戦争」及び「国産ウイスキー&ビールオールカタログ」のように、単に「角瓶」との表記を用いて本件製品を指称するもの、あるいは「サントリー角瓶」との表記と単なる「角瓶」との表記を併用するものも存在する。
 他方、原告において、「角瓶」の文字とハウスマークである「サントリー」等の文字とを結合して一体化した「サントリー角瓶」等の商標の登録出願をしたこと、その他、原告自身が、そのようなハウスマークと結合して一体化したものを一個の商標として扱うような積極的な行為に及んでいることを認めるに足りる証拠はない。
 以上の各事実を総合して考慮すれば、原告自身においてはもとより、ウイスキーについての取引者、需要者においても、本願商標はそれ自体が単独で使用されるものと理解し、たとえハウスマークである「サントリー」等の文字と「角瓶」の文字とが連続して表示されている態様であっても、ハウスマークと結合して一体化した「サントリー角瓶」等の構成よりなる商標が使用されているのではなく、「角瓶」の文字からなる本願商標自体が使用されていると認識するものと認めるのが相当である。
 したがって、上記の新聞、雑誌の広告及びテレビコマーシャルにおいて使用された商標は、「角瓶」の文字が「サントリー」又は「サントリーウ井スキー」の文字に連続して表示されている態様のものも含めて、「角瓶」の文字よりなる本願商標が、標章として独立して指定商品「角型瓶入のウイスキー」に使用され、自他商品識別機能を備えるに至ったものと認められる。(途中省略)

(7)以上の各事実を総合すれば、本願商標と同一と認められる商標が、原告により、遅くとも昭和28年ころから審決時に至るまで、新聞、雑誌の広告及びテレビコマーシャル等において、相当量が販売されている本件製品につき我が国のほぼ全域にわたって多数回使用されており、その使用の結果、需要者において、上記商標が使用された本件製品が原告の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものと認めることができる。
 このような事実に照らして、審決が、「『角瓶』の文字は、請求人(注、原告)の代表的な出所表示機能を有する著名なハウスマークである『サントリー』と常に結びついて使用されているものといわなければならない。してみると、『角瓶』という表示は、それ単独で多くの銘柄のウイスキーの中の特定のウイスキーを示す商標として使用されているということができない」、「『角瓶』の文字についても・・・本願商標と使用に係る標章とは同一であることは、認められない」と認定判断したことは誤りというべきであり、この瑕疵が審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は違法として取消しを免れない。

18.9.22 平成12年4月13日東京高裁判決

2006-09-22 09:45:40 | Weblog
平成12年4月13日東京高裁判決・平成11(行ケ)101
商標権 行政訴訟事件 「いかしゅうまい」事件

第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯
 原告は、登録第4084767号商標(平成4年3月31日商標登録出願、同9年9月29日登録審決、同年11月21日設定登録。本件商標)の商標権者である。
 本件商標は「いかしゅうまい」の別紙(1)のとおりの構成から成り、旧第32類「いか入りしゅうまい」を指定商品とする。本件商標については登録異議の申立てがあり、平成10年異議第90664号事件として審理された結果、平成11年3月4日、本件商標の登録を取り消す旨の決定があり、その謄本は、同月12日原告に送達された。

第5 当裁判所の判断
1 「いかしゅうまい」の表記の特殊性の有無について
(1)原告は、まず、本件商標のうちの「しゅうまい」との平仮名表記が普通に用いられる方法に当たらない旨主張するが、原告自身が、本件商標登録出願において指定商品を「いか入りしゅうまい」に訂正した経緯があること(平成5年7月14日手続補正書。甲第13号証の3)も合わせ考えると、平仮名表記の「しゅうまい」の表記をもって普通に用いられる方法に当たらないと認めることはできない。
 原告が主張するとおり、「広辞苑」など代表的な国語辞典では、焼売が「シューマイ」と表記されているが(甲第23ないし第26号証)、これらの辞書は中国語に由来する食品名を外国語の表記に即して書き表しているものと認められるのであり(例えば、「広辞苑第5版」の凡例の「見出し語」の項では、「外来語には片仮名を用いた」とあり、「大辞林」の凡例にも同旨の記載がある。)、一般取引者、需要者において、辞書編集者が意図する表記方法にとらわれずに、「しゅうまい」の表音どおりに平仮名表記する事例のあることを否定することはできない。

(2)原告は、その調理加工の特殊性から、「いか」と「しゅうまい」の組合せは特異なものである旨主張する。
 しかし、「いか」も「しゅうまい」も、共にごくありふれた食材ないし加工食品の普通名称であることは、当裁判所に顕著な事実である。原告主張のように、調理加工に特殊技法が必要であるものであるとしても、用語自体としてみて、この二つの組合せに独創性があるとは到底認めることができない。本件商標の指定商品として「いか入りしゅうまい」と訂正された事実も、このことを裏付ける。
 「しゅうまい」については、「えびしゅうまい」、「かにしゅうまい」「ほたてしゅうまい」などの例(乙第6ないし第14号証、第29号証の2、第71号証の2、丙第1号証)にみられるように、「しゅうまい」の語にその材料名を冠する例が多数存することが認められ、加工食品である「しゅうまい」については、「しゅうまい」の語にその材料名を冠して「○○しゅうまい」と表示する使用例は多数あることが明らかである。そして、いかを原料としたしゅうまいも、函館市の業者により、昭和53年ころから「いかシュウマイ」と表示されて製造、販売されてきたこと(乙第4号証の1、2)、平成7年11月当時も東京都の業者がいかを原料とするしゅうまいを「いかしゅうまい」と表示していたこと(乙第29号証の2)が認められ、「いか」と「しゅうまい」を組み合わせること自体に格別の独創性、特異性はないということができる。

2 書体の独創性について
 本件商標の「いかしゅうまい」の字体をもって、平仮名の書体を多く掲載している「五體字類」(決定引用のもの。甲第5号証)や、書体見本帳である「もじもじデイブレイクですが・・・」(乙第16号証)及び「シンカ書体見本帳」(乙第17号証)などに表れる各種の平仮名書体に比較して、顕著に一般の書体と異なって識別されるものと認めることはできず、他に本件商標の「いかしゅうまい」の字体に特別顕著性を認めるべきことを裏付ける証拠はない。原告は、平成12年3月28日付けの上申書により、本件商標の書体が独特のものであることに関し、この書体の原筆を提出したが、本件商標の書体の原型をうかがうことができるものの、これをもってしても、上記認定を左右するものではない。
 したがって、「(本件商標)の平仮名文字は毛筆で一種の行書体をもって書されたものといえるところであり、この程度の書体はいまだ普通に用いられる方法の域を脱していないといえる」とした決定の認定に、誤りがあるということはできない。

3 本件商標の使用状況について
(1)決定の認定中、「原告は、別紙(2)及び(3)に表示したとおりの構成より成る商標を付した商品「いか入りしゅうまい」を、自己の業務に係る店頭、百貨店及び通信販売等により、本件商標の登録出願時には相当多量販売し、広告宣伝していたものと認定し得るところである」との部分は、もとより原告も争っていないところであり、甲第5号証、第10号証、第17号証、第27号証などによれば、佐賀新聞、「かちがらす」(京都佐賀県人会報)、雑誌「dancyu」等新聞、雑誌での広告・宣伝の中には、原告の商品名として「いかしゅうまい」の表示を、「まんまる」あるいは「萬丸」の標章(別紙(2)、(3)の使用商標参照)を付さずに単独で掲げている例も多く認められるし、また、甲第29号証によれば、平成11年12月から12年1月にかけて、福岡市の中央区天神の街頭等で20歳以上の男女100人に対して行ったNTTトラコム㈱のアンケート調査結果では、「いかしゅうまい」の商品名から思い付く店名又は会社名というアンケートに対し原告を思い付くという回答が6割以上の高い比率を占めていることが認められる。
 これらの事実からすると、「原告の使用に係る商標は、「いかしゅうまい」の文字のみから成る本件商標とは社会通念上同一のものとはいえないというのが相当である」とした決定の認定部分は、必ずしも当を得たものではない。
 また、「当該新聞(佐賀新聞)は、佐賀県内を主発行地域とする地方紙と認められるものであって、限られた地域の購読者を対象とするものである」との決定の説示部分も、「いかしゅうまい」商標が、佐賀県以外を含む日本全国において原告と必ずしも結び付くものではないとの結論に至る一つの要素になり得るものとはいえ、当該結論に至るのに十分な理由となるものではない点において、必ずしも適切なものとはいえない。

(2)しかしながら、上記広告宣伝においては、当然のことながら、「いかしゅうまい」商標のほか、製造、販売業者である原告名(「萬坊」あるいは「呼子萬坊」)も併記されていることが認められるし、上記アンケート結果において、「いかしゅうまい」商品で他業者を思い付く者も、約3割存在するなど、相当割合の者が、原告以外の業者と結び付けて思い付いた者がいたことも、甲第29号証から明らかである。
 甲第17号証の1ないし52、乙第4号証ないし第6号証、第29号証ないし第52号証、第62号証、第89号証並びに弁論の全趣旨によれば、遅くとも平成9年9月当時までには、佐賀県下のみならず全国各地に、「いかしゅうまい」「いかシュウマイ」「いかシューマイ」の表示の下に商品「いか入りしゅうまい」を製造、販売してきた業者は、原告以外にも多数(少なくとも20社)存在しており、飲食店やレストランにおいても、料理、「いか入りしゅうまい」に「いかしゅうまい」の名称を使用している業者が多数存在していることが認められる。

(3)したがって、「いかしゅうまい」の商品名から原告を思い付く者が、佐賀県や特に九州の中心である福岡市に比較的多く存在するであろうということは推認されるが、福岡市においてすら、「いかしゅうまい」の商品名から原告以外の業者を思い付く者が少なからず存在することも否定することができない。
 ましてや、前記1、2のように、「いかしゅうまい」の語や書体自体に、特殊性や独創性が認められないことも考え合わせると、九州以外の地方において、「いかしゅうまい」商標を原告と結び付けて認識する者がどの程度存在するのかは、かなり疑問であるといわざるを得ない。

(4)以上のことからすると、本訴の口頭弁論終結時においてさえも、本件商標が、商品「いか入りしゅうまい」に使用された結果、需要者が原告の業務に係る商品であると認識することができるものとなっていたものとは認められないのであり、その他、ビデオテープとして提出された書証を含む本件全証拠によるも、「いかしゅうまい」の本件商標に、商品「いか入りしゅうまい」の一般的な商品表示を超えて原告との関係で特別顕著性を認めることはできない。
 したがって、本件商標の査定不服の審判の審決時(平成9年9月29日)においても、商品「いか入りしゅうまい」に使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるものとなっていたものと認めることはできず、これと同旨の決定の認定には、結論として誤りはない。

18.9.21 平成11年10月21日東京地裁判決

2006-09-21 09:51:08 | Weblog
平成11年10月21日東京地裁判決・平成11年(ワ)438
商標権 民事訴訟事件 「ヴィラージュ白山」事件

第二 事案の概要
 本件は、「土地の売買、建物の売買」を指定役務とする登録商標の商標権者である原告が、その登録商標と類似する名称を付したマンションを販売した被告に対し、商標権侵害を理由として、当該名称等の使用の差止め及び損害賠償を求めている事案である。

一 争いのない事実
1 原告は、「土地の売買、建物の売買」を指定役務とする別紙「目録(一)」(「ヴィラージュ」)及び同「目録(二)」(楕円の中に「Village」の語を配したもの)の各商標権(以下、これらを「本件商標権」と総称し、その登録商標を「本件登録商標一」「本件登録商標二」といい、これらを「本件登録商標」と総称する。)の商標権者である。

2 被告は、不動産の売買、賃貸、仲介、管理等を業とする株式会社であり、平成九年六月ころから、別紙「目録(三)」(「ヴィラージュ白山」)及び同「目録(四)」(「VILLAGE」)の各標章(以下、これらを「被告標章」と総称する。)を、東京都文京区<以下略>、同七及び同八所在のマンション(以下、この一棟の建物を「本件マンション」といい、その専有部分である各区分所有建物を「本件各住居」という。)の名称として使用し、これを分譲販売した。

3 被告標章は、本件登録標章一の「ヴィラージュ」を本件マンションの所在地の名称と組み合わせたもの(「ヴィラージュ白山」。別紙「目録(三)」)、及び、「Village」という本件登録標章二に含まれる単語の文字をすべてアルファベットの大文字で表記したもの(「VILLAGE」。同「目録(四)」)であって、いずれも本件登録商標と類似している。

第三 争点に対する判断
一 争点1(商標権侵害の成否)について
2 原告は、前記のとおり、被告が建物の販売という役務又は建物という商品に被告標章を使用したと主張するので、まず、被告が被告標章を右役務に使用したということができるかどうかを判断し、次いで、右商品に使用したということができるかどうかを判断する。

(一)まず、被告が被告標章を建物の販売という役務に使用したということができるかどうかを、判断する。
 商標法二条三項三号、四号は、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)」に標章を付する行為をもって、役務についての標章の使用とするが、右各号にいう「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)」とは、例えば、ホテル・旅館における寝具、洗面用具、浴衣、レストランにおける食器、ナプキン、タクシー会社における自動車、銀行における預金通帳など、役務提供の手段として用いられる物品であり、顧客に提供される役務との関係で付随的なものである。そして、顧客の支払う金銭との関係からいえば、これと対価関係に立つのは役務であり、右物品自体が対価関係に立つものではない。
 これに対して、本件においては、本件マンションないし本件各住居は顧客が支払う金銭と直接の対価関係に立つものであって、本件各住居の所有権こそが被告と顧客との間の契約の対象であり、本件売買において、本件各住居の所有権移転の外に顧客に対して提供されるべき役務は存在しない。したがって、被告による被告標章の使用は、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)」に標章を付する行為に該当するとはいえない。
 また、前記認定事実によれば、被告標章は本件マンションという被告の販売する個別の建物に付されているものであって、被告の不動産売買の営業一般について付されたものと認めることもできない。
 右によれば、本件マンションやその広告等に被告標章を付する行為や、これらを所持する行為をもって、「建物の売買」という役務の提供につき使用する行為に該当するということはできないから、被告の被告標章の使用について、本件登録商標の指定役務である「建物の売買」という役務に使用したものとして本件商標権の侵害をいう原告の主張は、採用することができない。

(二)そこで、次に、被告が被告標章を建物という商品に使用したということができるかどうかを、判断する。
 商標法には、「商品」についての明確な定義規定はないが、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という同法の目的(商標法一条)や、「商標」が「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」と定義され(同法二条一項一号)、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」及び「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、又は輸入する行為」が標章についての「使用」であると定義されている(同条三項一号及び二号)ことに照らすと、商標法によって保護される「商品」とは、譲渡、引渡し、展示又は輸入の対象となるもの、すなわち、市場において流通に供されることを予定して生産され、又は市場において取引される有体物であり、これに標章が付されることによってその出所が表示されるという性質を有するものをいうと、解するのが相当である。
 そして、不動産のうち、土地については、その存在する場所によって特定されるもので、同一の地番により表示される土地が複数存在することはあり得ないものではあるが、造成宅地等においては、立地条件、面積等のほぼ同等のものの間で代替性が認められる上、どの業者により宅地の造成工事が施工され販売されるかは、業者の設計施工能力、瑕疵修補能力、損害賠償能力等の点から購入者にとって重要な関心事であって、取引上、広告等において施工・販売業者が顧客に対して表示されるのが通常であるし、注文建築による住宅等についても、具体的な個別の住宅は注文主と施工業者との間の請負契約により建築されるものであるが、代替性が認められ、施工業者は建築材料、工法等においてそれぞれ特徴を備えており、いわゆるモデルハウスや広告等において施工業者が顧客に対して表示されているものであって、この点は仕立服等の場合と異なるところはない。また、分譲マンションや建売住宅は、地理的利便性、間取り等においてほぼ同等の条件を備えた、互いに競合するものが多数供給され得るものである。このように造成地、建物等の不動産であっても、市場における販売に供されることを予定して生産され、市場において取引される有体物であると認めることができるものであって、これに付された標章によってその出所が表示されるという性質を備えていると解することができるから、これらもまた商標法によって保護されるべき「商品」に該当するものと判断するのが相当である。
 なお、土地・建物は、商標法施行令及び商標法施行規則の各別表に定められた商品の区分には掲げられていないが、右に判示したところに照らせば、このことは、土地・建物が商標法上の「商品」であると解することの妨げとなるものではないというべきである。
 右によれば、被告が販売した建物(本件各住居)は商標法上の「商品」ということができ、被告が本件マンションないし本件各住居及びその広告に被告標章を付した行為は、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、又は輸入する行為」及び「商品又は役務に関する広告、定価表又は取引書類に標章を付して展示し、又は頒布する行為」(商標法二条三項一号、二号及び七号)に該当するものと認められる。
 したがって、被告は、被告標章を建物という「商品」に使用したということができる。

3 本件商標権は、「建物の売買、土地の売買」という役務について登録されたものであるが、商標法上、「役務」と「商品」とは、互いに類似することがあるものとされている(商標法二条五項)。そこで、本件商標権の指定役務である「建物の売買」という役務と、被告が被告標章を使用した「建物」という商品とが類似するものであるかどうかにつき検討する。
 役務と商品とが類似するかどうかに関しては、前述の商標法の目的や商標の定義に照らし、役務又は商品についての出所の混同を招くおそれがあるかどうかを基準にして判断すべきであり、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか、商品と役務の用途が一致するかどうか、商品の販売場所と役務の提供場所が一致するかどうか、需要者の範囲が一致するかどうかなどの事情を総合的に考慮した上で、個別具体的に判断するのが相当である。そして、商品の販売という役務に用いられるべき標章と同一又はこれに類似する標章を、当該商品の名称として使用した場合には、当該役務の提供者と当該商品の出所とが同一であるとの印象を需要者・取引者に与えると解される。
 これを本件についてみるに、「建物の売買」という役務と「建物」という商品との間では、一般的に右役務提供の主体たる事業者は「建物」という商品の販売主体となるものであり、需要者も一致するから、役務と商品との間において出所の混同を招くおそれがあるものと認められる。したがって、「建物」という商品は、「建物の売買」という役務に類似するというべきである。

4 以上によれば、被告の前記行為は、指定役務に類似する商品について登録商標に類似する商標を使用する行為(商標法三七条一号)に該当するものであって、本件商標権を侵害するとみなされるから、原告は被告に対し、被告標章の使用の差止め及び後記の損害賠償を求めることができる。
 また、被告は、「ヴィラージュ」又は「VILLAGE」の文字と地域的名称とを組み合わせた標章を、被告が将来販売するマンションに使用する意図を表明しているところ、これらの標章もまた本件登録商標と類似するものと認められるから、これらを建物に付して販売した場合には、登録商標の指定役務に類似する商品について登録商標に類似する商標を使用する行為として、本件商標権を侵害することとなるので、原告は、その予防としてこれらの標章の使用の差止めを求めることができる。

18.9.20 平成16年8月31日東京高裁判決

2006-09-20 09:33:56 | Weblog
平成16年8月31日東京高裁判決・平成15年(ネ)899
商標権 民事訴訟事件 「孔版印刷用インク事件」

第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件商標権侵害の成否)について
(3)被控訴人らが、本件登録商標が付された空インクボトルに被控訴人インクを充填して販売する行為を行っていることは、当事者間に争いがないところ、かかる行為が形式的には「商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡(す)行為」(商標法2条3項2号)に該当することは明らかである。
 しかしながら、商標の本質は、自他商品の出所を識別するための標識として機能することにあると解されるから、被控訴人らの行為が、本件登録商標の「使用」に該当し、本件商標権を侵害するというためには、当該商標が商品の取引において出所識別機能を果たしていることが必要となるというべきである。そこで、以下、この観点から検討する。
 上記認定事実によれば、
 ①被控訴人らは、顧客から使用済みの空インクボトルの引渡しを受けて、同形のインクボトル(引渡しを受けた当該インクボトルに限らない。)に被控訴人インクを充填して販売する態様の行為のみならず、顧客が空インクボトルを提供することを前提とせず、空インクボトルに充填された被控訴人インクを販売する態様の行為をも行っており、
 ②被控訴人コロナは、同拓研及び多数の地域特約店を通じて、約1500もの顧客(販売先)と取引をしており、その取引規模は、個人的な小規模取引のようなものとは全く異なる大規模なものであり、
 ③被控訴人らが被控訴人インクの販売の際に使用するパンフレット、注文書等には、控訴人印刷機やこれに対応したインクカートリッジの名称がそのまま使用されている反面、上記パンフレットには、「被控訴人インクが控訴人と無関係に製造されたものである」旨のいわゆる打ち消し表示もされておらず、むしろ被控訴人インクが控訴人の純正インクであるかの如き誤解を招く記載もあり、
 ④被控訴人らが顧客に納品する、被控訴人インクの充填されたインクボトルにも、本件登録商標が付されたままであり、いわゆる打ち消し表示もされておらず、
 ⑤被控訴人らの顧客において、実際にインクを使用する者のみならず、購買担当者も、被控訴人インクが控訴人とは無関係に製造されたものである点について正確な理解をしていない事例があり、
 ⑥孔版印刷用インクについては、購入後に再譲渡されることも一般に行われている、というのである。
 これらの事情によれば、被控訴人らの被控訴人インクの販売行為が、市場における取引者、需要者の間に、「本件登録商標が付されたインクボトルに充填されたインクが控訴人を出所とするものである」との誤認混同のおそれを生じさせていることは明らかであるから、本件登録商標は、商品(インク)の取引において出所識別機能を果たしているものであって、被控訴人らの行為は、実質的にも本件登録商標の「使用」に該当し、本件商標権を侵害するものというべきである。
(4)これに対し、被控訴人らは、
「顧客は、空インクボトルに充填されているインクは控訴人のインクではなく被控訴人インクであると認識している。つまり、空インクボトルは顧客所有のものであり、被控訴人らは単にその容器に被控訴人インクを充填して販売するにすぎない。したがって、顧客が持参する空インクボトルに本件登録商標が付されていても、被控訴人らの行為は商標の「使用」に該当せず、本件商標権の侵害に当たらない。」旨主張する。
 しかしながら、被控訴人らが、顧客から空インクボトルの提供を受けることなしに、被控訴人インクを充填したインクボトルを販売する態様(控訴人主張の販売態様②)の行為をも行っていることは、前記認定のとおりであるから、被控訴人らの上記主張はその前提を欠き、理由がない。
 また、被控訴人らが、顧客から使用済みのインクボトルの引渡しを受けて、同形のインクボトルに被控訴人インクを充填して販売する態様(控訴人主張の販売態様①)の行為においても、前記認定のとおり、被控訴人らのパンフレット等には、控訴人印刷機等の名称がそのまま使用され、打ち消し表示もされておらず、むしろ被控訴人インクが控訴人の純正インクであるかの如き誤解を招く記載もあること、被控訴人らが納品する、被控訴人インクの充填されたインクボトルにも、本件登録商標が付されたままであり、打ち消し表示もされていないこと、これらに起因して、被控訴人らの顧客(販売先)において、実際にインクを使用する者のみならず、購買担当者も、被控訴人インクが控訴人とは無関係に製造されたものである点について正確な理解をしていない事例があること等が認められるのであるから、顧客から空インクボトルの提供があっても、それ故に、顧客が「インクボトルに充填されているインクが控訴人と無関係に製造された被控訴人インクである」ことを正確に認識することができるとはいえない。
 したがって、被控訴人らの上記主張は理由がない。

18.9.20 平成15年1月21日東京地裁判決

2006-09-20 09:21:39 | Weblog
平成15年1月21日東京地裁判決・平成14年(ワ)4835
商標権 民事訴訟事件 「孔版印刷用インク事件」

第2 事案の概要
1 被告らは、原告の製造に係る孔版印刷機(リソグラフ)の利用者に対して、使用済みのインクボトル(空容器)に自ら製造する孔版印刷用インクを充填して販売している。
 当該インクボトルには原告の登録商標が表示されていることから、本件において、原告は、被告らの行為は商標の「使用」(商標法2条3項)に該当し、原告の商標権を侵害するとして、被告らに対して、孔版印刷用インクのインクボトルに上記登録商標を付すことの差止め及び同登録商標を付したインクボトルの廃棄並びに商標権の侵害による5000万円の損害賠償を求めている。
 これに対し、被告らは、被告らがそのインクを販売するに当たり容器として用いたインクボトルは、顧客から容器として提供されたものであるから、当該インクボトルに原告の登録商標が表示されていたとしても、被告らの行為は商標の「使用」に該当しないものであって、商標権侵害を構成しないと反論して、原告の請求を争っている。

第3 当裁判所の判断
2 商標権侵害の有無についての判断
 そこで、次に、被告らの行為が商標の「使用」に該当し、本件商標権を侵害するかどうかを、判断する。
(1)一般に、商標法上の商標の「使用」に該当するというためには、当該商標が商品の取引において出所識別機能を果たしている必要がある。
 この点に照らせば、個別の取引において、買主から商品の容器又は包装紙等が提供され、売主が商品を当該容器に収納し、あるいは当該包装紙等により包装して、買主に引き渡す場合には、当該容器ないし包装紙等に商標が表示されていたとしても、商標法上の商標の「使用」には該当しない。
 けだし、この場合には、容器ないし包装に付された商標とその内容物である商品との間には何らの関連もなく、当該商標が商品の出所を識別するものとして機能していないことが外形的に明らかだからである(例えて言えば、顧客が酒店に空瓶を持参して、酒を量り売りで購入する場合や、顧客が鍋等の容器を豆腐店に持参して豆腐等を購入する場合と、同様である。)。
(2)これを本件についてみると、前記認定によれば、被告らの孔版印刷用インクの販売においては、顧客は被告拓研ないし被告コロナの地域特約店に空インクボトルを引き渡し、被告コロナが当該空インクボトルに被告インクを充填し、これが再び被告拓研ないし被告コロナの地域特約店から顧客に納品されるものであり、インクボトル上の本件登録商標の表示は、当該インクボトルがもともと原告から購入されたものであることから、当初からインクボトルに付されていたものである。
 そうすると、被告らの孔版印刷用インクの販売においては、本件登録商標は顧客から被告インクを充填するための容器として提供されたインクボトルに当初から付されていたものであって、本件登録商標とインクボトルの内容物である商品たる被告インクとの間には何らの関連もなく、本件登録商標が商品の出所識別標識としての機能を果たす余地のないことが外形的に明らかであるから、被告らの行為は商標法にいう商標の「使用」に該当しないものというべきである。
(3)この点について、原告は、被告らの行為が商標の「使用」に該当し、本件登録商標を侵害する旨を述べ、様々な主張をしているので、これらの点につき補足して説明する。
 ア 原告は、本件登録商標が付されたインクボトルに原告のインクとは異なる被告インクが充填されていること自体、商標の有する出所表示機能、品質保証機能、広告機能を害するから、被告らの行為は「商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡(す)行為」(商標法2条3項2号)に該当し、しかも、被告コロナの行為は、本来の役割を終えたインクボトルを完成品として再生させるものであり「商品の包装に標章を付する行為」(商標法2条3項1号)にも該当する旨を主張する。
 しかし、既に説示したとおり、個別の取引において買主から提供された容器に商標が付されており、売主が当該容器に商品を収納してこれを買主に引き渡したとしても、市場において商品に商標が付された場合と異なり、当該商標が商品の出所識別標識として機能する余地はない。原告の主張は、買主から容器が提供された場合を、市場での取引において商品が商標の付された容器に収納されて移転する場合と区別せずに論ずるものであって、採用することはできない。
 なお、原告は、論拠として改造ファミコン事件第一審判決を挙げるが、同判決の事案は、商品にXの商標が付されて市場において流通した事案であり、買主から提供された容器に商標が付されていた本件とは、事案を異にするものであるから、同判決を引いて被告らの商標権侵害をいう原告の主張は、失当である。
 イ また原告は、被告らは、特定の顧客から回収された特定のインクボトルを、インク充填後に当該顧客とは別の顧客に販売している場合があると主張し、この場合は、被告インクが充填されて戻ってくるインクボトルは、回収されたインクボトルと規格の点では同じであるが同一物ではないのであるから、被告らの行為は商標の「使用」に該当する旨を主張する。
 しかしながら、乙19(被告ら代表者Aの陳述書)及び甲8(原告作成の写真撮影報告書)によれば、被告らは、顧客から提出された空インクボトルに独自のロット番号を印字し、提出を受けた顧客の名称を記入するなどして、インクボトルが同一の顧客に対して返還されるように管理していることが認められるものであり、原告の主張はその前提を欠く(なお、付言するに、仮に特定の顧客から回収されたインクボトルが他の顧客に返還される余地があるとしても、顧客としては同一の種類形状のインクボトルが返還されれば、それをもって自己の提出したインクボトルと同一のインクボトルが返還されたものと認識しているものであり、社会的にも同一物が返還されたものと評価されるものであるから、いずれにしても商標の「使用」に該当するものと解することはできない。この点は、例えて言えば、年賀はがきの印刷において顧客が官製年賀はがきを持ち込んだ場合に、顧客に返還される官製はがきが必ずしも同一の番号のはがきとは限らないとしても、社会的には顧客の持ち込んだはがきに印刷がされるものと評価され、はがきの売買と評価されないのと同様である。)。
 ウ 原告は、被告インクを充填したインクボトルを見た第三者はいずれも商標権者である原告が製造したインクが入っていると誤認する蓋然性が高い、と主張し、その理由を縷々述べている。
 しかしながら、本件においては、被告インクを充填したインクボトルは市場において展示ないし移転することはないので、インクボトルに付された本件登録商標がインクの出所を識別する標識として機能する余地はない。
 この点について、原告は、本件においては、顧客は被告拓研ないし被告コロナの地域特約店から被告インクを購入するものであり、顧客と被告拓研ないし地域特約店との間の売買と、被告拓研ないし地域特約店と被告コロナとの間の売買という2つの売買が存在する旨を主張する。
 しかし、被告拓研は被告コロナと本店所在地及び代表者を共通にするものであり、被告コロナ内に所在する同被告の販売担当部門というべきもので(甲9には被告コロナは製造部門、被告拓研は販売部門である旨の記載があり、甲19、乙7~9には、被告拓研は被告コロナ内に所在する旨の記載がある。)、両者は一体というべきであり(原告も被告らは一体であるとして共同不法行為を主張している。)、また、被告コロナの地域特約店が顧客と被告コロナとの取次ぎをするにすぎないことは、甲12(地域特約店の募集要項)の記載に照らし明らかであって、原告の主張は採用できない(なお、本件において仮に被告拓研と被告コロナを別個の取引主体と解するとしても、顧客と被告拓研の間の売買、及び、被告拓研と被告コロナの間の売買は、それぞれ買主が容器を提供する態様ということができるから、いずれにしても商標の「使用」に該当する余地はない。)。
 エ また原告は、原告印刷機を使用している顧客(事業所等)においては、購買部門と使用部門とが異なるので、実際に被告インクを使用する者はインクボトルに被告インクが充填されていることは知らず、インクボトルに表示されている本件登録商標を見てインクボトルには原告のインクが充填されていると誤認する旨を主張する。
 しかしながら、顧客が法人である場合には、当該顧客の第三者との間の取引については当該取引を担当する従業員(取引の権限を授権された代理人)を基準としてその認識を検討すべきであり(民法101条1項参照)、被告インクの購入後にこれを使用する従業員がインクボトルと内容たるインクとの関係を知らないとしても、単に商品購入後の購入者内部における事情にすぎず、これを理由に本件登録商標が出所表示機能を果たしていると認めることはできない。原告の主張は、法人が取引主体となった場合における法律関係の基本的理解を欠くものといわざるを得ず、到底採用できない。
3 公文教育研究会に対するサンプルの無償提供について
 前記1(3)エにおいて認定のとおり、公文教育研究会については、被告拓研の従業員が、他の学校から借り受けた空インクボトルに被告インクを充填したものを1本、サンプルとして無償で引き渡した事実があることが認められる。しかし、前記認定のとおり、これは被告拓研の通常の営業方法に反する、例外的な事例であり、被告らにおいて今後このような販売方法をとるおそれがあるとは認められないから、このような例外的な事例があることをもって、本件において、原告の被告らに対する差止請求につき、その必要性を肯定することはできない。
 また、本件において、原告は商標法38条2項に基づき被告らの利益をもって原告の損害と主張しているものであるところ、上記のとおり、公文教育研究会に対するサンプルの提供は無償で行われたものであるから、これについて原告の損害を認めることもできない。

18.9.19 平成7年2月22日東京地裁判決

2006-09-19 15:34:51 | Weblog
平成7年2月22日東京地裁判決・平成6年(ワ)6280
商標権 民事訴訟事件 「UNDER THE SUN」事件

事案の概要
 本件は、原告が被告に対して、被告が、業として製造、販売している商品であるCD(シンガーソングライターである【A】の楽曲を収録したコンパクト・ディスク。以下「本件CD」という。)について、別紙目録記載の「UNDER THE SUN」という標章(以下「被告標章」という。)を付する行為が、原告の後記の登録商標に類似する商標の使用であり、原告の商標権を侵害する(商標法三七条一号、以下同法の条文の引用は単に条文のみで表示する。)と主張して、被告が平成五年九月一五日ころから平成六年二月末日までの間に被告標章を付して製造販売した本件CD四〇万枚について、通常受けるべき使用料相当額の一億〇四八六万八〇〇〇円の損害賠償と不法行為後の民法所定の遅延損害金の支払を求める事案である。

争点に対する判断
一 商標法は、二条一項において、「商標」とは、「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの給合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)」であって、「業として商品を生産し、証明し、譲渡する者がその商品について使用するもの」(一号。なお、役務について使用する商標については、内容が重複するため、以下省略する。)をいうと規定し、この規定を前提として、三条一項において、「その商品・・・の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(一号)、「その商品・・・について慣用されている商標」(二号)、「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品・・・であることを認識することができない商標」(六号)を除いて商標登録を受けることができる旨規定している。右によれば、商標法は、立法の仕方として、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができ」るか否かにかかわらず、業として商品を生産し、証明し、譲渡する者がその商品について使用する標章をすべて形式的に商標法上の「商標」として定義しているものと解される。
 しかし、形式的な意味での「商標」を除いて、本来的な意味での商標について考えてみると、その本質は、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができ」るようにして、自己の業務に係る商品と他人の業務に係る商品とを識別するための標識として機能することにあるというべきである。
 このことは、一条が「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」と規定しており、三条一項が、前記の一号、二号及び六号の商標並びに「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(三号)、「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(四号)及び「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」(五号)を除いて商標登録を受けることができる旨、また二項において「前項第三号から第五号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる」旨規定し、右の出所表示機能、自他商品識別機能を有する商標についてのみ商標登録を受けることができることを認めた上で、二五条で「商標権者は、指定商品・・・について、登録商標の使用をする権利を専有する」と規定し、もって、形式的な意味での商標でなく、出所表示機能、自他商品識別機能を有する商標のみをその本質を備えた本来的な意味での商標と認めて、これを権利として保護していると認められることから明らかである。
 以上によると、三六条が右二五条の登録商標の使用権を侵害する行為、すなわち指定商品について登録商標を使用する行為の差止めを規定し、三七条が指定商品についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品に類似する商品についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用について、商標権を侵害するものとみなす旨規定しているのは、商標権者以外の第三者が、登録商標と同一又は類似の商標を、指定商品又はこれに類似する商品に使用することにより、その商品の出所を表示して自他商品を識別する標識としての機能を果たし、もって、商品の出所の混同を生ずるおそれが生じ、商標権者の登録商標の本質的機能の発揮が妨げられるという結果を生じることによるものであるというべきである。
 また、二六条一項二号は、登録要件を定める三条一項一号及び三号の規定に沿って、「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期・・・を普通に用いられる方法で表示する商標」について商標権の効力が及ばない旨を規定しているが、右規定は、第三者が登録商標と同一又は類似の商標を使用しても、その商標が商品に表示されている態様からみて、その商標が、商品の普通名称や産地、品質等を表示するものにすぎず、商標の本質的な機能である出所表示機能、自他商品識別機能を果たしていないと認められる商標について、商標権の禁止権の効力が及ばない旨を定めたものであると解すべきである。
 したがって、以上の三六条、三七条及び二六条の法意に照せば、第三者が登録商標と同一又は類似の商標を指定商品又はこれに類似する商品について使用している場合でも、それが、その商品の出所を表示し自他商品を識別する標識としての機能を果たしていない態様で使用されていると認められる場合には、登録商標の本質的機能は何ら妨げられていないのであるから、商標権を侵害するものとは認めることはできない。
 すなわち、二六条一項二号の「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当しない商標についても、出所表示機能、自他商品識別機能を有しない態様で使用されていると認められる商標については、右に述べた理由により、商標権の禁止権の効力を及ぼすのは相当ではない。

二 被告標章が出所表示機能、自他商品識別機能を有しない態様で本件CDに使用されているかどうかについて判断する。
1 後掲括弧内の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(省略)
2 以上によれば、被告標章並びにフォーライフ商標及び被告の社名の具体的な表記の態様をみると、被告標章は、前記認定のアルバムタイトルの一般的な表記の態様と何ら異なることはなく、また、フォーライフ商標及び被告の社名も、前記認定のアルバムにおける製造、発売元の一般的な表記の態様と何ら異なることはないのであり、したがって、本件CDに表示されている被告標章は、専ら本件CDに収録されている全一一曲の集合体すなわち編集著作物である本件アルバムに対して付けられた題号(アルバムタイトル)であると認められ、本件CDの需要者としても、被告標章を、専ら本件CDの内容である複数の収録曲の集合体すなわち編集著作物である本件アルバムについて付けられた題号(アルバムタイトル)であると認識し、有体物である本件CDを製造、販売している主体である被告を表示するのは、アルバムタイトルとは別に本件CDに付されているフォーライフ商標や被告の社名であると認識することは明らかである。
 よって、本件CDに使用されている被告標章は、編集著作物である本件アルバムに収録されている複数の音楽の集合体を表示するものにすぎず、有体物である本件CDの出所たる製造、発売元を表示するものではなく、自己の業務に係る商品と他人の業務に係る商品とを識別する標識としての機能を果たしていない態様で使用されているものと認められる。
 なお、原告は、CD商品のタイトルは、収録された音楽情報を視覚的イメージに変えて瞬時に訴え、他の商品との識別をもたらす機能を有している旨主張するが、アルバムタイトルである被告標章が、本件CDに収録されている音楽情報を表示する機能を有しているとしても、本件CDの製造、発売元を表示する機能を有していないものであることは、右に認定したところから明らかであり、さらに、アルバムタイトルについては、その媒体たる商品を発売するレコード会社が変わった場合でも、収録曲の集合体が同一である限りそのタイトルが変更されずに使用される実例が多数存在しているとの前記認定事実等からも確認されるところである。
 また、原告の右以外の前記各主張も、以上に述べたところにより、いずれも採用することはできない。

18.9.19 昭和55年7月11日東京地裁判決

2006-09-19 03:14:56 | Weblog
昭和55年7月11日東京地裁判決・昭和53年(ワ)255
商標権 民事訴訟事件 テレビまんが事件

2 ところで、商標の本質は、自己の営業に係る商品を他人の営業に係る商品と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品の識別標識としての機能から出所表示機能、品質保証機能、広告宣伝機能が生ずるものである。
 商標法は、「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であつて、業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」であれば、右のような自他商品の識別標識としての機能を有すると否とにかかわりなく、すべて商標である旨定義し(第二条)、商標権者は、指定商品について登録商標を使用し(第二五条)、あるいは指定商品について登録商標に類似する商標を使用し又は指定商品に類似する商品について登録商標若しくはこれに類似する商標を使用する者等(第三七条)に対し、当該商標権に対する侵害として、その侵害の停止等を請求することができる旨規定する(第三六条)が、同法第一条の同法の目的、第三条の商標登録の要件についての各規定及び前記商標の本質に鑑みれば、同法における商標の保護は、商標が自他商品の識別標識としての機能を果たすのを妨げる行為を排除し、その本来の機能を発揮できるよう確保することにあると解すべきである。
 さすれば、登録商標と同一又は類似の商標を商品について使用する第三者に対し、商標権者がその使用の差止等を請求しうるためには、右第三者の使用する商標が単に形式的に商品等に表されているだけでは足らず、それが、自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で用いられていることを要するというべきである(第二条の商標の定義のし方は、立法技術上の理由に基づくものである。)。
 すなわち、登録商標と同一又は類似の商標が商品について使用されている場合、それが自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で使用されているときは、商標権者は、自己の登録商標の本来の機能の発揮を妨げるものとしてその使用を禁止しうるけれども、それが自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で使用されていると認められないときは、その商標の使用は本来の商標としての使用ということができず、商標権者は、自己の登録商標の本来の機能の発揮を妨げられないがゆえに、その商標の使用を禁止することができないのである。
3(一)しかして、成立に争いがない乙第一四号証、第一五号証の一ないし五、証人【A】の証言及び本件口頭弁論の全趣旨によれば、「テレビまんが」、「テレビ・マンガ」、「テレビ漫画」なる語は、テレビ放送用に製作された漫画映画を意味するものとして、本件登録商標についての商標登録出願前から普通に用いられているものであり、現在も同様であることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はなく(なお、原告本人尋問において、原告本人は、「テレビマンガ」なる語は、原告本人が昭和三〇年前より使用していたものである旨供述するが、仮にそうであるとしても、右認定事実の存在自体は、何ら変わりがない。)、また、成立に争いがない乙第九号証及び証人【A】の証言、本件口頭弁論の全趣旨によれば、昭和五〇年一〇月から少なくとも本件口頭弁論終結時まで、訴外東映動画株式会社が周知の昔話「一休さん」を基礎に登場人物及び話の筋に創作をも折込んで製作したテレビ漫画映画「一休さん」が、毎週一回、日本教育テレビ(現テレビ朝日)系列の全国ネツトでテレビ放送されていること(被告が本件カルタを販売したのは、右東映動画株式会社から、右テレビ漫画映画についてのいわゆる商品化権の実施許諾を受けたことに基づくものであること)が認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。
 他方、前記1(一)認定の被告標章一の使用態様によれば、被告標章一は、カルタの容器の蓋の表面の下方いつぱいに(表面の面積の約六分の五を占める。)右テレビ漫画映画「一休さん」の登場人物がカルタ取りに興じている場面が描かれている絵画部分の上部に、「一休さん」、「いつきゆう」、「(C)テレビ朝日・東映動画」の文字とともに一団として表されているものであるが、右一団の文字群の中央に赤い長橢円状の太字で大きく書かれていて極めて目立つ右「一休さん」という文字(縦二八、横八一)の左上に近接して位置し、高さ(縦の長さ)にしてその約五・六分の一という小ささ(縦五、横三八)で、白いゴシツク体文字により、いわば右「一休さん」の肩書きとでもいうごとき態様で表されていることが認められる。
(二)以上の、被告標章一を構成する「テレビまんが」なる語の有する意味内容、テレビ漫画映画「一休さん」のテレビ放送による放映の事実及び被告標章一の使用態様に本件口頭弁論の全趣旨を参酌すると、被告標章一は、前記絵画部分とも相俟つて、被告販売に係るカルタが、周知の昔話「一休さん」のうち現にテレビ放送により放映されているテレビ漫画映画「一休さん」を基にして作られたものであり、絵札に表される登場人物のキヤラクター等が右テレビ漫画映画に由来するものであることを表示するにすぎないものといわなければならず、したがつて、自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で使用されているとは認められない。
 原告は、仮に被告標章一を商品の内容を表すために使用するとするならば、同一色彩、同一態様の文字により、「テレビまんがの一休さん」というように一連に表示しなければならない旨主張するが、右のような表示のし方に限られるとする根拠はなく、却つて、前記認定の事実、特に被告標章一の使用態様に照らせば、被告標章一が、一団の文字群の中央に赤い長橢円状の太字で大きく書かれた「一休さん」という文字を修飾し、これを説明するものであることは容易に覚知しうるところであるから、原告の右主張は採用しえない。
4 前記1(二)認定の被告標章二の使用態様によれば、被告標章二は、縦八〇、横六二の大きさの絵札、字札の各左下隅に縦一四、横二という小ささ(横幅にして絵札、字札の三一分の一)で表されているものであり、そして、右絵札、字札は容器の中に納められるべきものであることを考えると、需要者が果たして被告標章二に着目するものであるか疑問であるのみならず、仮に需要者が着目するものであるとしても、被告標章二は、黒い小さな字で表されている「一休さん」の文字(縦一〇、横三)のすぐ上に、右「一休さん」の文字より更に小さく(横幅にして約三分の二)表されているものであり、かかる被告標章二の使用態様に、前記3(一)前段認定の、被告標章二を構成する「テレビまんが」なる語の有する意味内容及びテレビ漫画映画「一休さん」のテレビ放送による放映の事実並びに本件口頭弁論の全趣旨を参酌すると、被告標章二は、絵札の絵とも相俟つて、被告標章一同様、被告販売に係るカルタが、周知の昔話「一休さん」のうち現にテレビ放送により放映されているテレビ漫画映画「一休さん」を基にして作られたものであり、絵札に表される登場人物のキヤラクター等が右テレビ漫画映画に由来するものであることを表示するにすぎないものといわなければならず、したがつて、被告標章二もまた、自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で使用されているとは認められない。
 仮に被告標章二を商品の内容を表すために使用するとするならば、同一色彩、同一態様の文字により、「テレビまんがの一休さん」というように表示しなければならない旨の原告の主張の採用しえないことは、前記3(二)後段に述べたところに照らし明らかである。
5 以上のとおり、被告標章は、いずれも、自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で使用されているとはいえないから、前記2で判示したところに従い、結局、原告は被告に対し被告標章の使用を禁止することができないといわなければならない。すなわち、別紙第一目録及び第二目録のとおりの態様で被告標章をカルタ及びその容器に附する行為をとらえて、本来の商標としての使用に該当し本件商標権に対する侵害となるとする余地はない。

18.9.17 昭和46年9月17日福岡地裁飯塚支部

2006-09-17 11:39:56 | Weblog
昭和46年9月17日福岡地裁飯塚支部・昭和44年(ヨ)41
商標権 民事仮処分事件 巨峰事件

三、ところで、商標は、商品の出所を表示して営業者が自己の商品を他人の商品から区別する作用を有するものであり、営業者が自己の営業にかかる商品であることを表彰するためその商品について使用するものである。
 本件についてこれをみるに、まず成立に争のない甲第一一、第一二、第一三号証、証人【A】(第一回)、同【B】の各供述、右【B】証人の供述により成立を認め得る乙第二号証の一、二、証人【C】、同【D】の各供述を併せると、「巨峰」は、元来大粒ぶどうの一品種の商品名で、戦後日本で栽培されるようになり、おそくとも昭和三〇年代の後半頃にはその名称は一般に認識され、現在では全国的に生産販売されているものであることが認められる。
 また、証人【E】(第一、二回)、同【F】、同【G】の各供述及び被申請人代表者本人の供述によれば、被申請人は、別紙目録記載のA・Bの各段ボール箱を、右ぶどう「巨峰」の生産者にその出荷用の包装用容器として販売するため製造しているものであつて、本件各段ボール箱に前記認定の如く表示されている「巨峰」、「KYOHO」等の文字は、その内容物たるぶどう巨峰を表示する目的のもとに印刷したものであると認められる。即ち、これらの文字は、被申請人の取扱う商品たる段ボール箱(包装用容器)の出所を表示し、あるいはその出所の判定を混乱させる目的をもつて表示されたものではないことが明らかである。
 一般に包装用容器に標章を表示してその在中商品ではなく、包装用容器そのものの出所を示す場合には、その側面又は底面、表面であれば隅の方に小さく表示するなど、内容物の表示と混同されるおそれのないような形で表わすのが通例であつて、包装用容器の見易い位置に見易い方法で表わされている標章は、内容物たる商品の商品名もしくはその商品の出所を示す標章と見られるもので、包装用容器そのものの出所を表わすものとは受けとられない、というのが今日の取引上の経験則というべきある。
 しかして、先に認定したとおり本件においては、A箱、B箱共に見易い位置に見易い形状で「巨峰」又は「KYOHO」と印刷されており、更に、「BEST GRAPE」又は「HIGH GRAPE」と印刷されていると共にぶどう葉型の窓から内容物を見ることができるようになつているのであつて、これらの事実を考えれば、本件A箱、B箱の「巨峰」「KYOHO」の各文字は、客観的にみても内容物たるぶどうの商品名の表示と解するのが相当である。右認定に反する証人【H】の供述は、内容物の表示と、包装用容器の出所の表示の差異を明確にしない点で採用しえない。
 他に以上の認定を左右するに足る疎明資料はない。

四、要するに本件A・B各段ボール箱に表示された「巨峰」「KYOHO」の標章は、その客観的機能からみても、又これを製造している被申請人の主観的意図からみても、内容物たる巨峰ぶどうの表示であり、包装用容器たる段ボール箱についての標章の使用ではないというべきである。しかりとすれば、被申請人の別紙目録記載の物件の製造販売は、申請人の本件商標権に対する侵害行為を構成するものとは認められず、他に、別紙目録記載の物件が、申請人の本件商標権の侵害物件であることを認めるに足りる疏明はない。

18.9.16 平成12年8月29日東京高裁判決

2006-09-16 12:36:54 | Weblog
平成12年8月29日東京高裁判決・平成11年(行ケ)390
商標権 行政訴訟事件 シャディ事件

第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 原告は、平成4年9月29日、「シャディ」の文字を横書きしてなり、商品及び役務の区分第42類「多数の商品を掲載したカタログを不特定多数人に頒布し、家庭にいながら商品選択の機会を与えるサービス」を指定役務とする商標(以下「本願商標」という。)について、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則5条1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して、商標登録出願をしたところ、平成7年9月5日、拒絶査定を受けたので、平成7年11月2日、拒絶査定不服の審判を請求した。
 特許庁は、これを平成7年審判第23933号事件として審理した結果、平成11年10月4日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年11月1日、その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由
 審決の理由は、別紙審決書の理由の写しのとおりである。
 要するに、商標法にいう「役務」は、「他人のために提供する労務又は便益であって、独立して取引の対象となるもの」と解するのが相当であるのに、請求人(原告)が指定役務とする労務・便益自体は、独立して経済取引の対象になっているものとはいえないから、本願商標登録出願に係る指定役務は商標法にいう「役務」ではなく、これによれば本願は商標法6条1項の要件を具備していない、としたものである。

第5 当裁判所の判断
1 取引の対象としての役務の独立性の必要性
 一般に、商標は、元来、商品又は役務の標識としての役目を果たすものであるから、その機能として、識別機能、出所表示機能、品質保証機能等を有するとされ、「商品」とは、商取引の対象となる物(主として動産)をいい、「役務」とは、他人のためにする労務又は便益をいうものと解されている。
 商標法1条は、「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」、商標法2条は、「この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの 二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」と規定している。
 商標は、商品又は役務に使用され、上記商標法1条に係る目的を達成するためのものであるとされていることからすれば、業として、商取引において、標章を付されることにより自他の商品又は役務の識別機能を有し、出所表示機能、品質保証機能を果たし得るものでなければならないのであるから、商標法にいう「役務」とは、他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して市場において取引の対象となり得るものと解すべきであり、他方で、例えば、商品の譲渡に伴い、付随的に行われるサービスは、それが、それ自体のみに着目すれば、他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、市場において独立した取引の対象となっていると認められない限り、商標法にいう「役務」には該当しないものと解するのが相当である。
2 カタログ通信販売業における役務の独立性についての認定の誤りについて
(1)原告が本願商標の指定役務とするその業務が、次のとおりのものであることは、当事者間に争いがない(特許庁の審尋に対する原告の回答書に基づいて審決が認定したものである。)。
(イ)原告は、広義の「カタログ販売」を業とするものである。
(ロ)原告の具体的な業務形態は、顧客との直接的な結び付きではなく、北は北海道から南は沖縄まで全国に3000にのぼる「Shaddy シャディ」の看板を掲げた代理店並びに全国で2000以上展開している「シャディ サラダ館」の代理店を通じ、顧客に対して、本件カタログを頒布し、商品の販売を行うというものである。
(ハ)このカタログは、まず、すべて有料で上記代理店に頒布され、それら代理店を通じ需要者に頒布される。本件カタログには、各々製造元又は発売元のブランド等種々の商標が付された不特定多数の商品が満載されており、需要者は、家庭において本件カタログを見、原告の各代理店を通じて商品の申込みをし、購入をする。
(ニ)本件カタログ掲載の商品については、原告がすべて用意しており、各代理店を通じて需要者に手渡し又は配送されることとなる。
(ホ)商品の販売代金及び送付料につき、各代理店を通じて需要者に販売された商品の代金は、需要者から各代理店が受け取り、各代理店を通じ一定の額の代金が原告に支払われ、送付料は、各代理店での手渡しの場合は無料であり、送付する場合は原則として需要者の実費負担となる。
(2)上記事実によれば、原告の営業は、まず、原告が、一般消費者である顧客に対して本件カタログを頒布することによって、自己の取り扱う各種の商品を広告宣伝し、かつ、売買取引を誘引し、顧客は、上記代理店を通じて原告に商品購入の申込みをし、これを受けて、原告は、代理店を通じて、在庫の商品を顧客に手渡し又は配送して、売買が成立するという仕組みであることが認められる。
 これによれば、本件カタログに工夫が凝らされ、顧客において、本件カタログを見るだけで商品の選択ができるようになっており、この点において、顧客を誘引し、販売を促進するための他の手段との間に相違があるとしても、原告の営業が個々の商品の売買という取引以外の何物でもないものであり、本件カタログを利用したサービスは、結局のところ、上記売買において顧客を誘引し、販売を促進するための手段の一つにすぎないことが明らかである。
 また、前記(1)掲記の事実によれば、顧客は、原告の提供するカタログによるサービスを積極的に利用するとしても、原告に支払うのは、商品代金のみであり、サービスに対する対価としての支払いは存在しないから、原告が商品の価格に実質的に上記サービス費用等を上乗せしているとしても、それは、他の販売促進手段が採用された場合にその費用等が上乗せされる場合と何ら異なるものではなく(原告が上記上乗せの限度を超えたものを商品価格に加えていることは、本件全証拠によっても認めることができない。)、上記サービスは独立して取引の対象となっているわけではないことが明らかである。
 以上によれば、原告の本件カタログによるサービス業務は、商品の売買に伴い、付随的に行われる労務又は便益にすぎず、商標法にいう「役務」に該当しないものというべきである。

18.9.15 平成15年6月30日東京高裁判決

2006-09-15 12:23:42 | Weblog
平成15年6月30日東京高裁判決(平成15年(ネ)1119)
意匠権 民事訴訟事件「減速機付きモーター事件」控訴審

第3 当裁判所の判断
2 争点(4)(本件登録意匠と被控訴人製品の意匠との類否)について
(1)本件登録意匠に係る物品と被控訴人製品の物品とを対比すると、本件登録意匠に係る物品は、減速機であるのに対し、被控訴人製品は、減速機部分にモーター部分を連結して1個の物品とした減速機付きモーター(ギヤードモーター)であるから、両者は物品が異なるものである。

(2)次に、本件登録意匠と被控訴人製品全体の意匠を比較する。(省略)

(3)前記(1)認定のとおり、本件登録意匠に係る物品と被控訴人製品の物品とは、異なるものであるし、また、前記(2)認定の本件登録意匠と被控訴人製品全体の意匠の共通点と相違点によれば、両者の構成態様は、①被控訴人製品の全体の構成態様が、第1のケーシング(減速機部分)のみならず、その直径と略同一の直径であり、その長さの約2倍の長さである第2のケーシングと連結されたものである点、②被控訴人製品の全体の構成態様においては、本件登録意匠の要部である前記ケーシングのモーター側端の具体的な形状(膨出部の背面視における形状全体)が外部から認識できない点において、大きく異なっているものといわざるを得ないから、被控訴人製品中の第1のケーシングの基本的構成態様や具体的構成態様の一部が本件登録意匠のそれらと共通するものであるという前記共通点を十分参酌しても、本件登録意匠と被控訴人製品の意匠は、全体として、看者に異なる美観を与えるものというべきであり、両者が類似しているということは到底できない。

(4)これに対し、控訴人は、被控訴人製品のモーター部分と減速機部分は、ねじにより着脱可能に取り付けられ、減速機部分の膨出部の存在により取付部分に僅かな間隙が形成されているため、減速機部分は独立して認識されるものであるから、本件登録意匠との類否判断の対象となるべきものは、被控訴人製品の減速機部分である旨主張し、また、部分意匠制度が導入されたことを考慮すると、「独立して取引される物品の意匠を保護対象とする」ことの根拠は明らかでないし、さらに、仮に、そのような解釈に立っても、これは「物品が独立して取引されている場合に限り保護を与える」ことと同一ではなく、意匠法が創作保護法であることを前提とすると、当該物品を内製さえすれば意匠の創作を冒用しても許されるというような結論は不当である旨主張する。
 しかしながら、意匠の保護は、最終的には産業の発達に寄与することを目的とするものであるから(意匠法1条)、意匠保護の根拠は、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、取引者、需要者が当該意匠に係る物品を混同し、誤って物品を購入することを防止すると同時に、上記取引者等の混同を招く行為を規制することにより意匠権者の物品流通市場において保護されるべき地位を確保することにあると解すべきである。そうすると、意匠権侵害の有無の判断に際しては、流通過程に置かれた具体的な物品が対象となるものというべきである。そして、本件においては、被控訴人が被控訴人製品を減速機部分とモーター部分とが一体のものとして製造販売していることは当事者間に争いがないし、前記のとおり、被控訴人製品の減速機部分は、ねじによりモーター部分と固定されているものであるから、結局、被控訴人製品において減速機部分は減速機付きモーターという物品の一構成部分にすぎないというべきである。したがって、被控訴人製品の減速機部分のみを切り離して本件登録意匠との類否判断の対象とすることはできない筋合いである。

(5)また、控訴人は、意匠法は意匠の持つ「形態価値」を保護するものであり、「形態価値」を保護するためには保護されるべき意匠が物品の流通過程で見えるかどうかは問題ではなく、モーターと減速機を結合させる「組み立て場面」と、減速機付きモーターとして「使用される場面」に注目しなければならない旨主張し、また、意匠保護の根拠は創作の保護であると解すべきであり、これを前提とすると、自己の商品に他人の意匠の創作をそのまま冒用するような行為は、たとえ最終的な製品において他人の意匠が外部から認識できなくても、許容されるべきではないから、意匠権侵害の判断に当たっては、外部から認識できない物品の隠れた形状も考慮すべきである旨主張する。
 しかしながら、意匠とは、物品(物品の部分を含む。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいうのであるから(意匠法2条1項)、外部から視覚を通じて認識できるものであることを要するものであり、また、前記のとおり、意匠保護の根拠は、当該意匠に係る物品が流通過程に置かれ取引の対象とされる場合において、取引者、需要者が当該意匠に係る物品を混同することを防止することにあると解すべきであるから、結局、当該意匠に係る物品の流通過程において取引者、需要者が外部から視覚を通じて認識することができる物品の外観のみが、意匠法の保護の対象となるものであって、流通過程において外観に現れず視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状は考慮することができないものというべきである(なお、控訴人主張のとおり、意匠保護の根拠が「創作」であると解したとしても、それが必ずしも意匠権侵害の判断に当たり、物品の隠れた形状をも考慮すべきであるとの見解には結びつかない筋合いである。)。

3 争点(5)(被控訴人製品における意匠の利用関係)について
 控訴人は、①他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を包含すること、②他の登録意匠の特徴を破壊することなく包含すること、③他の構成要素と区別しうる態様において包含すること、という要件を満たす限り、意匠の利用関係が認められると解すべきであるところ、この観点から見ると、被控訴人製品は本件登録意匠を利用ないし包含しているといえるから、本件意匠権を侵害しているというべきである旨主張する。
 しかしながら、控訴人の主張するように、利用関係による意匠権の侵害が認められるとしても、前記認定のとおり、被控訴人製品の全体の構成態様においては、本件登録意匠の要部である前記ケーシングのモーター側端の具体的な形状(膨出部の背面視における形状全体)が外部から認識できないものであるから、被控訴人製品が本件登録意匠を利用ないし包含しているということはできない(なお、利用関係の判断においても、前記のとおり、当該意匠に係る物品の流通過程において取引者、需要者が外部から視覚を通じて認識することができない物品の隠れた形状は、考慮することができないものというべきである。)。