麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

杉並演劇祭その3

2006年03月16日 | 鑑賞
   いきなりこの頁に来た方へ。
      劇団東演の制作者である僕は、
      今回から杉並演劇祭の実行委員に
      名を連ねており、現在開催中の
      同演劇祭の作品で観ることができた
      舞台の感想を書きつつ、演劇祭全般の
      課題なども書き散らしております。
      今日の話は昨日のつづきです・・・

「最後のアマチュア球団」が学生の卒業公演ノリの、勢いで押す芝居に対して、セシオン杉並での電劇『過ぎ去りし日々』は、基本に忠実でかつ鍛え抜かれたレベルの高い作品だった。
                             
 構成・演出がミュージカル『アニー』初演や、傑作の誉れ高い『ブンナよ木からおりてこい』、芸術祭大賞受賞『ドラム一発!マッドマウス』を代表作に持つ篠崎光正氏である(というか、電劇は彼の集団なのだが)。文豪トルストイのたった数十頁の短編を、2時間のミュージカルにまとめあげた手腕はさすが! また照明・森脇清治氏(東演も大変お世話になっております)をはじめとした超一流スタッフをバックに従えた非常にエレガントな舞台で、それは衣裳に顕著にあらわれていました。……セシオンという劇場機構も勿論ありますが、役者にピンスポット当たってましたからネ、杉並演劇祭の中ではなかなかないこと。観客全員に配られるリーフレットも裏表カラーのもの、ヒエ~!!
 真面目な話、600弱の会場の7割、僕の観たステージでは埋めていました。この部分も立派で、やはり単に「発表」にとどまらず「動員」も考えないと…。税金を使った「区」の行事である以上。
 それをクリアしてる電劇のところで書く話じゃないんだけど・・・。

 白い衣裳をまとった「馬」たちが、(主人公のホルストメールはじめ、個性豊かな馬が沢山登場するのです)まさに疾駆する舞台でした!!!
 かわいい子供達も5人、仔馬などで登場し、見事な演技を披露するのだけれど、特に一番チッチャな、思わず名指しで書いてしまうが、加藤ゆららちゃんの素晴らしさに、将来の日本演劇に大きな足跡を残しそうなスケールを感じました!
 彼女たちは「シノザキシステムキッズ」という教室の精鋭らしいのだが、客席にもお友達が沢山来ていて、その彼ら彼女らが、人間批判に富んだ哲学的な露西亜文学の舞台化を、しっかり最後まで観たことを、舞台成果と同様に特記したい。

 と。誤解のないようにあえて言えば「最後のアマチュア球団」がダメで「電撃」が素晴らしかった、とは言っていない。かたやストライクがいつ入るか解らない剛速球投手、かたや精密機械のようなコントロールを持ちフォームも美しい投手。前者は当然球数も多く試合時間が長い。後者はきっちり2時間で終わる・・・。これはタイプの違いであって、あとは好みの問題ということデス。

最後にちょこっと苦言…というか、恐らく桐朋の教授でもある篠崎さんも重々承知で、単にわかりやすいから「ミュージカル」という語を使ったとは思うし、いや、ミュージカルの範疇がどこまでかってのも難しいところだが・・・一般でいうところの「ミュージカル」には、この作品はなってなくてジャンルとしては「音楽劇」だったなあ、と。
コメント
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