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キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

怒りの荒野

2014-01-09 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その34)★マカロニウエスタン

■「怒りの荒野/I Giorni Dell'ira」(1967年・イタリア=西ドイツ)

監督=トニーノ・ヴァレリ
主演=ジュリアーノ・ジェンマ リー・ヴァン・クリーフ アンドレア・ボシック

 「キル・ビル」は主人公の復讐劇であるとともに、師弟対決がクライマックスの大きな要素となっている。タランティーノ監督はマカロニウエスタンに大きな影響を受けている。「キル・ビル」では「vol.1」「vol.2」ともにマカロニウエスタン映画のサントラ楽曲が数多く使われ、ついには「ジャンゴ 繋がれざる者」で西部劇を撮っている。マカロニウエスタンは「キル・ビル」同様に復讐劇が多い印象があるが、今回取りあげる「怒りの荒野」の見どころは師弟対決。イタリア製西部劇の中でも秀作とされる一本だ。

 私生児として生まれたスコット(ジュリアーノ・ジェンマ)は町の人々に虐げられて暮らしていた。銃がものを言う時代から法によって秩序が保たれる時代にさしかかっていた。その町へ凄みのあるガンマン、タルビー(リー・ヴァン・クリーフ)がやってくる。自分を手伝ってくれたスコットをタルビーが酒場でねぎらおうとしたことからトラブルが起こる。タルビーは正当防衛を認められたが、スコットも町に居づらい状況になってしまう。スコットはタルビーを追い、銃を教えてくれと頼み込む。やがてスコットは早撃ちガンマンに成長することになる。次第に町を牛耳るタルビーは判事や保安官ら町の実力者たちともめ始め、ついにはスコットの恩人マーフを殺害。ついにスコットは師であるタルビーと対決することを決意する・・・。

 ブライドとビルは殺し屋の師弟関係にして元恋人。それが殺しあうことになる「vol.2」のクライマックスは、緊張と切なさといろんな感情を握りしめる名場面となっている。「vol.1」の青葉屋の場面では、リズ・オルトラーニが手がけた「怒りの荒野」テーマ曲が使われている。また、この曲は「ジャンゴ 繋がれざる者」でも使用されているだけに、タランティーノ監督はさぞお気に入りなのだろう。

 「怒りの荒野」が面白いのは、タルビーがスコットにガンマンとしての心構えを教えていく様子だ。その1 他人にものを頼むな /その2 決して他人を信用するな/その5 傷を負わせたら殺せ。さもないと自分が殺される・・・といった"教訓"10箇条がひとつずつ語られる。「ベストキッド」のミヤギ翁の教えにしても、「007/死ぬのは奴らだ」でソリティアに施す愛のレッスンにしても"その1""その2"と進むたびにわくわくしてくる。観ている僕らも次は何を教わり、それが映画の展開にどう関わっていくのかが気になり、「怒りの荒野」に引き込まれてしまうのだ。それにつけてもカッコいいのは、リー・ヴァン・クリーフ。馬上から睨みつける登場シーン、見事なガンファイト。冷静さを失わず、自信にあふれ、狡猾で、常に紳士的。町に建てたカジノ付きの酒場は何とも悪趣味で笑えるけれど、そのダサさがまた素敵じゃないか。




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