Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

少林寺三十六房

2013-11-19 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その25)★邵氏兄弟有限公司/ゴードン・リュー(リュー・チャーフィ)

■「少林寺三十六房/36th Chamber of Shaolin」(1977年・香港)

監督=ラウ・カーリョン
主演=リュー・チャーフィ ホワン・ユー ロー・リエ

 80年代にジャッキー・チェンのコミックカンフーがブームになると、次々にカンフー映画が日本でも公開された。テレビまでもがジャッキー・チェンの未公開作品を見つけては放送する、しかもナイターが中止になるとそうした映画が穴埋めに放映されるのだ。僕らは新聞のテレビ欄で「ジャッキー・チェンの少林門」?とかを<中止のとき>の文字の後で見つけると、ひたすら雨乞いしたものだ。たとえそれがジャッキーが脇役の脇役で話半ばで殺されたとしてもだ。「少林寺三十六房」はそんな83年に日本で劇場公開されたショウ・ブラザース作品である。僕はこの映画をテレビの洋画劇場で初めて観た。同世代ならこの頃にいろいろ観ていると思うのだが、この映画は他とは違う、と感じていたに違いない。それは武術としてのカンフーを見せ物でなく、きちんと描いているからだ。

 それもそのはず。監督であるラウ・カーリョンは、「ワンチャイ」シリーズでジェット・リーが演じたウォン・フェイ・フォン(黄飛鴻)直系の弟子で、ブルース・リーのケンカ仲間だったという人物。そのラウ家に養子にきたのが、他ならぬラウ・カーファイ、英語名ゴードン・リュー(リュー・チャーフィ)であった。一時は商社マンとして働いていたが義理の兄カーリョンの勧めで映画界入りした。「少林寺三十六房」はそんな彼の代表作にして世界的大ヒット作。アメリカでは「Master Killer」のタイトルで公開され、タラティーノもこの映画を”傑作”だとする。ブルース・リーを除けば、ゴードン・リュー(リュー・チャーフィ)が一番好きなカンフースターだと述べている。そして「キル・ビル」への出演ということになったのだ。「vol.2」ではかつて自身の主演作で敵役だったパイ・メイを演じている。「三十六房」のオープニングタイトルで、チャーフィは数々の演舞を披露している。最初に登場する、両手に輪を付けた洪家鉄線拳は「カンフー・ハッスル」でもオカマ仕立屋チウ・チーリンがつかっていた。

 「少林寺三十六房」はあらゆる武術を身につける35の房での修行を通じて、主人公サンダ(チャーフィ)が一流の使い手となる様がたっぷりと時間をかけて描かれる。水に浮かぶ丸太渡り、両手に剣をつけての水運び、砂袋に頭突きといった基礎訓練を経て少林寺内でも実力をもってくる様子がとても面白く、興奮させられる。またそれらの一見地味な基礎訓練が、後半の場面で見事に活かされているのがいい。何事も基礎が大事なんだ。サンダは三節棍を考案する場面はなかなか感動的。途中ある房で登場するのが「ドランクモンキー酔拳」でお馴染みのユアン・シャオティエンだったりするのでこちらもお見逃しなく。2004年にDVD化されたのは何とも嬉しい。ありがとう、キングレコード。




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大酔侠

2013-11-18 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その24)★邵氏兄弟有限公司/敵陣に乗り込むヒロインは・・・
大酔侠 [DVD]
■「大酔侠/大酔侠」(1966年・香港)

監督=キン・フー
主演=チェン・ペイペイ ユエ・ホア チェン・ハンリェ

 ショウ・ブラザースの未公開作が次々と観ることができるようになって嬉しい限り。本作「大酔侠」は、香港での武侠映画ブームを起こしたとされる重要作。映画秘宝別冊の「キル・ビル」研究本「キル・ビル」&タランティーノ・ムービー インサイダーによれば、この映画からは、クレイジー88とブライドが戦うところ、パイ・メイの元で修行するくだりが引用だとされている。映画が始まってしばらくすると、ヒロイン金燕子(チェン・ペイペイ)が酒場にやってくる場面がある。ヒロインの周りに次々と悪党が現れ、一人戦うことになる。ここの金燕子の強いこと強いこと!。観ていて実に爽快な活躍ぶりだ。待てよ、酒場で女一人が悪漢に襲われて大活躍・・・って「グリーン・デスティニー」のチャン・ツィイーじゃん!。と思ったあなた、いい発想ですよん。実はヒロインを演ずるチャン・ペイペイは「グリーン・デスティニー」の悪役ジェイド・フォックスを演じている女優さん。チャン・ツィイーのアクションが決まった後のポーズがやたらかっこいいあの場面は、「大酔侠」へのオマージュなんだろう。

 ヒロインは強敵の前に破れる。影ながら彼女の力になってきた男(これが武術の使い手である酔侠)が、彼女を助け出し、傷の手当てをし、協力を申し出る。しかし彼は悪党のアジトである寺院から帰った途端に浮かぬ表情を見せる。それは悪党一味の協力者が、自分の兄弟子だったからだ。しかも兄弟子は師匠を殺した憎むべき相手。青竹派というその流派はとにかく凄い。手のひらから強い風圧の風を出し、滝の流れをも分かつ。クライマックスは兄弟弟子同士の死闘。さすがはショウ・ブラザース!と言いたくなるような血みどろの死闘。キン・フー監督というと武侠映画の傑作「侠女」(「LOVERS」でチャン・イーモウがパクった(失礼)竹林の戦いが有名。カンヌ映画祭では受賞も!)で知られる名監督。どちらかというとスタイリッシュなイメージが強かったのでこれは意外だったなぁ。”ヒロインと悪の群衆”が「キル・ビル」の元ネタということだが、僕は酔侠と兄弟子の対決も「キル・ビル」に影響を与えたのでは・・・と推測する。ビルとブライドは師弟にして元恋人。エル・ドライヴァーとブライドはパイ・メイの弟子同士。「大酔侠」での酔侠は兄弟子に恩義を感じているところが弱みなれど、戦いを挑んでいく。エル・ドライヴァーは師匠パイ・メイを殺しているだけに、ブライドとの戦いは仇討ちの意味も込められている。アクションを単なる戦いやドンパチに終わらせず、観客がそこに込められた登場人物の思いと一体になることで、よりよいアクション映画が生まれる。「キル・ビル」に僕らが惹かれるのももちろんそれが理由なのだ。




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キル・ビルvol.2

2013-11-17 | 映画(か行)

■「キル・ビル vol.2/Kill Bill vol.2」(2003年・アメリカ)

監督=クエンティン・タランティーノ
主演=ユマ・サーマン デビッド・キャラダイン ダリル・ハンナ

 オスカー総ナメの「LOTR」なんぞより、僕にとってはこっちこそが2003年のムービー・イベントだ。待ってました!タランティーノ!。今回は初日・初回に鑑賞って訳にはいかなかったけれど・・・ともかく観てきました。「vol.1」のド派手なバイオレンス描写は今回は控えめで、むしろ人間ドラマに力が注がれている。あのアクションを期待して拍子抜けしてしまった方々も多いだろう。もともと一本の映画だったのだから、それぞれのパートで見せ場が異なるのは当然だし、タランティーノの力量はバイオレンスというそんな狭い範疇のものだけではございません!。特に「vol.2」は単なる謎解きだけでなく個々の人間が見えてくるパートだ。エンドクレジットを観ながら 怨み節 の歌詞が胸に刺さるのよ、今回は。これは「vol.1」との大きな変化。

花よ綺麗とおだてられ/咲いてみせればすぐ散らされる/
馬鹿なバカな/馬鹿な女の怨み節

それだけ「vol.2」はオンナが描けているのだよ、ウン。「vol.1」をやりすぎと感じ、かつ「ジャッキー・ブラウン」で泣きそうになった映画ファンはきっとこの「vol.2」はお気に召すはず。

 前作同様タランティーノの映画愛はよりマニアックに「キル・ビル」という名の結晶と化した。オープンカーに乗りながらユマが語り始める冒頭、正面からカメラを据えて背景だけが遠ざかって行くモノクロの構図・・・往年のハリウッド映画ってこんなだったよね。ヒッチコックの「断崖」や「汚名」を思い出した人も多いはず。最初の「6章」はスクリーンサイズが小さいんだけど、パイ・メイとの修行が始まる「7章」に入った途端にサイズが拡大し粒子が粗くなる。退いたショットからいきなりパイ・メイのアップになった瞬間ズームがボケる。芸が細かい!昔の香港映画ってこんなだったよね。「vol.2」は随所にマカロニウエスタンの雰囲気が再現されているが、とにかくクローズアップが多い。セルジオ・レオーネ作品でもみられたイーストウッドやブロンソンの目だけスクリーンにどアップ!。そんな撮影のせいかデビッド・キャラダインの皺のひとつひとつまでもがビルという役柄を演じているようである。元ネタとされるデビッド・キャラダイン主演の「サイレント・フルート」を観ていないのが悔やまれるなぁ!(中学のとき観た映画の同時上映だった。あのとき1本観て帰るんじゃなかった!)。

 オーレン・イシイ同様魅力的な悪役エル・ドライバー。ダリル・ハンナ復活に拍手です。それにリュー・チャーフィー演ずるパイ・メイとの修行シーンの楽しいこと。おまけに「ママとビデオをみなさい。」と言われて観るのが「Shogun Assassin」(子連れ狼)!タランティーノにとっての女優ユマ・サーマンは、「モロッコ」のジョセフ・フォン・スタンバーグ監督にとってのマレーネ・ディートリッヒのような存在だ、とタランティーノはインタビューで答えていた。Goodnight Moon をバックにしたモノクロの画面を見ていてふとその言葉を思い出した。そこにはタランティーノの愛情が見えるではないか。

(2004年筆)




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パリの恋人

2013-11-16 | 映画(は行)
 パリの恋人> [DVD]
■「パリの恋人/Funny Face」(1957年・アメリカ)

監督=スタンリー・ドーネン
主演=オードリー・ヘプバーン フレッド・アステア ケイ・トンプソン

 いろいろ観てきたけど、この世にはまだまだ素敵な映画があるんだっ!。それが映画館を出るときに、思った素直な感想。実は「パリの恋人」は初めての鑑賞。それが映画館でデジタルリマスター版とはこれまた幸せな2時間である。いやー、何故今まで観ていなかったのだろう。こんなにロマンティックで、楽しくて、美しくって。「スクリーン・ビューティーズ」と題された特集上映。こういう企画が全国規模で上映されるのは実に嬉しい。ずっとスクリーンで観たかった「ティファニーで朝食を」に続いて映画館で鑑賞。

 スタンリー・ドーネン監督作というと、真っ先に思い浮かべるのは「雨に唄えば」。これがもう大好きで大好きで。ビデオで繰り返し観た映画でもあったし、サントラのレコードも持っていたお気に入り。高校時代は、雨が降ると校庭の片隅でジーン・ケリーの真似をしちゃってるくらいのバカだったから(周囲は何と思ってただろう・・・恥)。僕の両親や妹がお気に入りだったのは「掠奪された七人の花嫁」。お話はとんでもないけど、この上なく明るくて躍動的で素敵なミュージカル映画。そしてオードリー・ヘプバーンの大ヒット作「シャレード」、「いつも2人で」・・・。どれも心に残る素敵な映画たち。それにしても代表作でもある「パリの恋人」を観ていなかったことは、映画ファンとして不勉強でございました。

 メインタイトルから色彩の洪水、美しい映画冒頭からもう心は踊りっぱなし。古本屋の気むずかしい小娘がだんだんと綺麗になっていく。フレッド・アステアの華麗なタップ、ジョージ・ガーシュインの音楽、わくわくするようなパリの風景・・・もうスクリーンに向かって何度拍手しようと思ったか(したけど)。ボンジュール、パリ♪と歌う楽しいミュージカルシーンを始め、好きな場面がたくさんあるけれど、ダンス場面ではフレッド・アステアが傘とコートを巧みに使う振り付けのダンスシーンが素晴らしい。これ、高校時代に観ていたら「雨に唄えば」と同じくゼッタイに真似してたな。そしてオードリーが踊る場面も魅力的。ダンスだけでこんなに長い時間じっくりみせる映画なんて、現代ハリウッドではなしえない。確かにミュージカルの映画化はたくさんあるけども、これ程にダンスだけで引っ張るなんて、観客を飽きさせない力量とカリスマ性をもつ役者もスタッフがいなくなっていることなんだろうし、こうした題材が興行収入につながらない現状があるんだろう。そんな時代だからこそ、映画館のスクリーンでこの映画に出会えて、こんな場面にじっくり浸ることができるなんて幸せな瞬間。

 それにしてもフレッド・アステアのカッコよさもこの映画で再認識。僕が初めてアステアを観たのは、「タワーリング・インフェルノ」に出演している姿。それ以外では「レスリー・キャロンと共演した「足ながおじさん」を観たくらいで、「バンド・ワゴン」も「イースター・パレード」も全盛期のすごさは未見。やっぱり不勉強です・・・。ダンスも歌も素晴らしいけど、オードリーを喜ばせる言葉や振る舞い、粋な大人の手本。古本屋ではしごを引き寄せてオードリーにキスする場面、強引なんだけどなんか憎めないカッコよさ。

 ディティールに触れ始めたらきりがなくなりそうで、うまく感想がまとまらない。わくわくしてる自分を冷静に語ることなんてできないもん。でも、こういう映画って、言葉で感想を語ることがどうでもよくなる。ダンスを観て、歌を聴いて、感じることがいちばん。そこでグッとくるかどうかなんだもの。「ロシュフォールの恋人たち」のときにも書いたけど、もう言葉なんかいらないのかも。




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ドランクモンキー 酔拳

2013-11-15 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その23)★ユアン・ウー・ピン監督作

■「ドランクモンキー 酔拳/酔拳(Drunk Monkey In The Tiger's Eyes)」(1978年・香港)

監督=ユアン・ウー・ピン
主演=ジャッキー・チェン ユアン・シャオティエン ホアン・チョン・リー

 ユアン・ウー・ピン監督第2作目にして、日本におけるジャッキー・チェン人気を決定づけた名作でもあります。復讐劇というそれまでの基本から離れ、コミック・カンフーというスタイルが確立した映画とも言えますな。ジャッキー・チェン演ずる主人公は、ジェット・リーの「ワンチャイ」シリーズの主役ウォン・フェイ・フォン(黄飛鴻)。彼の若き日を描いた映画。ゴールデン洋画劇場でかつて観たときは、”ひこう”と呼ばれていたけれど、「ワンチャイ」でフェイ・フォンの名が通用するようになったせいか、2005年に放送されたテレ東ヴァージョンでは呼び名は”ふぇいふぉん”でした。日本で初公開されたときには、日本語の主題歌が付けられていました。それがニッポン・プログレッシヴロックのバンド 四人囃子の ♪拳法混乱~カンフージョン。一度聴いたら忘れられないこの曲は、その後ビデオリリースされたものには未収録。僕は日本公開リアルタイム世代なので、この曲こそ「酔拳」の音楽なんだけどなぁ。

 実は「キル・ビル」には「酔拳」をネタとする幻のシーンが。「vol.2」に登場する、エル・ドライヴァーがパイ・メイの下で修行する回想シーン。師匠を罵ったことからエルは片目をつぶされることになります。残念ながらカットされましたが、この回想シーンにはお仕置き場面があったとか。パイ・メイがエルに科した罰。両手を突きだした中腰の姿勢で、腕と頭に水の入った湯飲みを置く、というもの。これは「酔拳」で主人公フェイフォンが父親に罰としてさせられたお仕置き。ディーン・セキが仕返しするのも面白かったよね。ダリル・ハンナのあのポーズ、みたかった?。



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スネーキーモンキー 蛇拳

2013-11-14 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その22)★ユアン・ウー・ピン監督作

■「スネーキーモンキー 蛇拳/蛇形拳 (Snake In The Eagle's Shadow)」(1976年・香港)

監督=ユアン・ウー・ピン
主演=ジャッキー・チェン ユアン・シャオティエン ホアン・チョン・リー

 「キル・ビル」の武術指導を担当したユアン・ウー・ピン。他にも「マトリックス」や「グリーン・デスティニー」のアクション監督としてハリウッドで大活躍している。彼が弟たちと組んだ袁家班のワイヤーワーク技術にハリウッドが魅了され、今や世界のものとなったのだ。80年代には低迷していた時期があったが、リー・リンチェイの「ワンチャイ」シリーズでその技術が高く評価された。そんな彼の初監督作品が「スネーキーモンキー 蛇拳」である。ブルース・リーのシリアスなカンフー映画とは全く違ったそのスタイルは観客にも受け入れられ、続く「ドランクモンキー 酔拳」と共に大ヒットを記録した。

 タランティーノは、ユアン・ウー・ピン監督作では「蛇拳」が一番好きだという。隠れた秀作を彼が紹介するクエンティン・タランティーノ映画祭でも紹介されている。蛇形派を抹殺しようとする鷹爪派。蛇形派の生き残りの名手たる老人(ユアン・シャオティエン ユアン・ウーピンの実父)は追われる身となる。ふとしたことから老人を助けた主人公チェン(ジャッキー・チェン)。彼は道場の門下生からいじめられる存在だった。老人は彼に蛇拳を教えるのだが、3つのことを約束させる。それは師匠と呼ばないこと、むやみに技を使わないこと、老人が危ないときにも手出しをしないことだった。やがて追っ手は迫り、老人に危機が。チェンは蛇拳に猫の動きを加えてあみだした自身の技で、敵を倒すのだった。この後の「酔拳」の明るさと比べると、やはり悲壮感が漂う。だが、師範(ディーン・セキ)のいじめをかわす場面の面白さ、また”復讐”という常道を外した物語は、当時のカンフー映画では革命的なものだった。僕はTVの映画番組で初めて観ることになるのだが、当時「なーんだ、やっぱり純粋な蛇拳だけでは勝てないんじゃん!」と生意気にも思ったものだ。

 「蛇拳」のクライマックスは、鷹爪拳のホアン・チョン・リーと、蛇拳のジャッキー・チェンが戦う場面。「vol.2」でブライドがパイ・メイに弟子入りを志願する場面では、パイ・メイは鷹爪拳、ブライドは蛇拳と鶴拳で戦っており、「蛇拳」の影響と考えることができるだろう。タランティーノはユアン・ウー・ピンを使って「蛇拳」を再現させたのだ。



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続・夕陽のガンマン 地獄の決斗

2013-11-12 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その21)★セルジオ・レオーネ風のカット割り

■「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗/The Good The Bad And The Ugly」(1967年・イタリア)

監督=セルジオ・レオーネ
主演=クリント・イーストウッド リー・ヴァン・クリーフ イーライ・ウォラック

 この映画のラスト、主人公三人の決闘シーンは何度観ても緊張するし引き込まれる。何度も繰り返されるカットバック。その度にクローズアップして最後はシネマスコープの画面いっぱいに両目のアップ。アメリカ映画の西部劇ならサッと片づけて終わりそうなところを、ひたすら観客をじらし続ける演出。このじらされ方が観ている側にマゾ的(?)快感を与えてくれる。タランティーノ監督は本作について「こんな映画が撮れたら監督を辞めてもいい」とまで言う。ラストの三すくみなんて「レザボア・ドッグス」にも出てくるアイディアだから、この映画が”タランティーノが最も好きな映画”という報道もまんざら嘘ではなさそうだ。

 「夕陽のガンマン」とは全く関係のない別のお話だが、こんなタイトルの付き方は当時じゃあったりまえのこと。こちらは南北戦争を背景に、賞金稼ぎたちがだましだまされる様を描いた大長編となっている。むかーし「ゴールデン洋画劇場」で観て以来だったのを今回観なおしたのだが、覚えていない場面の連続にあれはいったい何分カットされていたのか?と思う。最初にも書いたラストの息詰まる決闘シーンもすごいけれど、橋をめぐる北軍と南軍の攻防を描くエピソードも印象的だ。戦争の愚かさを感じずにはいられない。またイーストウッドとウォラックが交わす会話も実に気が利いていてかっこいい。もちろんエンニオ・モリコーネの音楽は最高!

 「キル・ビル」という映画は日本映画やカンフー映画へのオマージュであると同時に、マカロニ・ウエスタンへのオマージュでもある。「vol.2」の脚本で、エルとブライドがにらみ合う場面には、「セルジオ・レオーネ風のカットで」とト書がつけられている。荒野を泥だらけになって歩くブライドの姿は、この映画の砂漠をひたすら歩かされるイーストウッドの姿の様だ。悪役リー・ヴァン・クリーフが男を家族の前で殺す場面だって、「vol.1」最初の犠牲者ヴァニータが娘の前で殺されることに通ずるではないか。さらにこの場面の音楽まで「vol.2」で引用している。多大な影響を与えた映画であることは間違いない。えっ?オマージュってパクリだって?そうとも言えるだろう。でもそこにオリジナルへの尊敬の念が込められていることを忘れてはならない。これは愛情の表現なのだ。



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恋愛睡眠のすすめ

2013-11-11 | 映画(ら行)

■「恋愛睡眠のすすめ/The Science Of Sleep」(2006年・フランス=イタリア)

監督=ミシェル・ゴンドリー
主演=ガエル・ガルシア・ベルナル シャルロット・ゲンスブール アラン・シャバ ミュウ・ミュウ

 男子は夢の中や妄想で恋愛をシュミレーションしたがる生き物だ。そりゃ女子だって彼氏を喜ばせることを想像して、ときめいたりもするだろう。でも男子は本当に恋したら、好きな女の子のことを考え、いろんな想像をめぐらしながら長い時間を過ごす。そして狩猟本能があるからなのか、どうしたら二人の距離を縮められるかの行動を頭の中で想像して、プランをたてる。誰もがすることだ。そんな男のコの妄想や考えを見事にスクリーンに示した映画が、「(500)日のサマー」だった。スプリットスクリーンで左右に分かれた画面で、主人公の想像と現実が同時進行するシーンは、僕らの心を見透かされたようで切なさと気恥ずかしさが入り交じる名場面だった。「初体験リッジモント・ハイ」の映画史に残るフィービー・ケイツのムフフな場面も、ジャッジ・ラインホールドの妄想だったよね。「夢の中なら大胆になれるのに。」とヒロインに言ったのは、「ノッティングヒルの恋人」のヒュー・グラント。きっと彼も夢でコクるシュミレーションをしていたはず。

 ミシェル・ゴンドリー監督の「恋愛睡眠のすすめ」の主人公ステファンもそんな男子のひとり。だけど度を超している。夢の中の彼は「ステファンTV」という番組のホストであり、ボール紙で作られた街を飛び回り、職場の風変わりな同僚たちとバカ騒ぎを繰り広げる。そして彼はアパートの隣に引っ越してきた女性ステファニーと出会う。彼女の友達に興味をもったのが始まりだったが、次第に二人は仲良くなっていく。だって二人は想像の世界を楽しむことができる似たもの同士。ステファニーはメルヘンチックな想像を好むいわゆる"不思議ちゃん"だった。だけど不器用なステファンは、隣に住んでいることさえ最初はタイミングを逸して言い出せず、近くに住んでいると嘘をつく情けなさ。冒頭、申し上げたように不器用な男子は妄想でうまくいくことを想像する。妄想癖のあるステファンもそうだ。そしてステファンは次第に現実と想像の区別がつなかくなっていく・・・。

 男として共感はできるのだけど、大人なんだからそこまでやっちゃダメだろ・・・と主人公の行動を現実的になって冷ややかに見てしまう。それは僕が夢みる頃を過ぎた大人になっちまったからなのか、ミシェル・ゴンドリー監督のやり過ぎ演出を過剰と感じたからなのか。ビジュアル面の面白さや斬新さを楽しみながらも、とにかくステファンがじれったくて仕方なく、映画にのめり込めない自分がいる。パリを去ろうと決意するクライマックスも、ステファニーを不快にさせるようなことばかり口にして不器用にも程ってもんがある。しかしステファニーのロフトで彼が目にしたのは・・・二人にとっての大事なもの。そのまま眠りにおちてしまったステファンとそれを見つめるステファニー。不思議な余韻を残すラストシーンに、それまでのじれったさを忘れて何故かほっとしてしまった。

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狼 男たちの挽歌最終章

2013-11-09 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その20)★ジョン・ウーはお好き?

■「狼 男たちの挽歌最終章/喋地雙雄(The Killer)」(1989年・香港)

●1990年香港電影金像奨 監督賞

監督=ジョン・ウー
主演=チョウ・ユンファ ダニー・リー サリー・イップ

 タランティーノ監督がブライドについての構想をまとめようとしているときのこと。彼が参考にしてくれ、とユマ・サーマンに見せた映画のひとつが他ならぬこれ、「狼 男たちの挽歌最終章」だった。サリー・イップの長い髪が風になびく場面を見て、タランティーノはユマに「その長い髪をオレから奪わないでくれ」とのたまった。かくして、ユマが演ずるところのブライドは金髪のロングヘアーと決定したのだ(まぁ「vol.2」ではショートになるのだけれど)。

 ところで「男たちの挽歌最終章」とは言うものの、この映画は「挽歌」・「挽歌ll」とはまっったく関係のない別物である。チョウ・ユンファ演ずる殺し屋は、ある殺しの現場で歌手サリー・イップの両目に怪我を負わせてしまう。彼女の治療の為に最後の殺しを引き受けるのですが、そこに立ちはだかる黒い影!。殺しの依頼人が素性がバレるのを恐がり、ユンファは命を狙われることになる。彼の運命や、いかに・・・ってなお話。「挽歌」のように絶叫もせず、「挽歌ll」のようにやたらニッタラニッタラせず、ここでのユンファはひと味違う。とにかくかっこいい。お馴染みの二丁拳銃は当然として、寡黙にタバコくゆらせてみたり、サリー・イップ抱きしめてみたり。ユンファのファンにはたまらない映画かもしれない。

 この映画のもうひとつの見どころは、ダニー・リー演ずる刑事の葛藤。法を守る刑事としての使命感と、相棒を殺された怒りと、そして殺し屋ユンファを追ううちに彼に惹かれていく自分・・・。そして共に戦うラスト、教会の銃撃戦(またかよ)はもう感涙もの。この辺りのダニー・リーの葛藤、「キル・ビル」のブライドに通ずるように思える。かつての師匠・恋人でありながら、殺すべき仇としてのビル。「vol.2」で屋敷に単身乗り込むブライドの胸中、複雑な複雑な複雑なものがある。「狼~」の登場人物たちも葛藤を抱えた者ばかり。僕はサリー・イップの目が治ると犯人であることがバレる、でも助けずにはいられない・・・というハラハラを期待しながら観ていたのだが、そっちはすっかり裏切られる。あれだけ弾くらってるのに生きている主人公たちを不思議に思わない自分がいたり。個人的には「挽歌」よりも好き。



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嵐を呼ぶドラゴン

2013-11-08 | キル・ビルのルーツを探せ!
「キル・ビル」のルーツを探せ!(その19)★邵氏兄弟有限公司(ショウ・ブラザース)の功夫片

■「嵐を呼ぶドラゴン/Heros Two」(1972年・香港)

監督=チャン・ツェー
主演=チェン・カンタイ アレクサンダー・フーシェン ジュー・ムー

 「vol.1」のオープニング。傷だらけのフィルムで高らかなファンファーレと共に出てくるのが、ショウ・ブラザースのロゴ。タランティーノはこの会社が製作した荒々しい功夫映画の大ファン。「キル・ビル」の脚本執筆時に、一連の作品群を改めて見なおしたと言われる。ショウ・ブラザースは60年代から80年代にかけてアジアを代表する映画製作会社として存在した。カンフー映画だけでなく、ミュージカルやドラマなど様々なジャンルの映画を製作していた(思えば「北京原人の逆襲」もここの製作だ)。60年代に武侠映画(剣劇)、70年代のカンフー映画ブームで数多くの名作・珍作・名監督・名優を輩出した。この「嵐を呼ぶドラゴン」はショウ・ブラザースの”少林英雄傳四部作”第1弾として製作された作品である。ちなみに助監督はジョン・ウー。

 主人公は実在の少林英雄、洪煕官と方世玉。清朝による少林寺焼き討ちからこの映画は始まる。焼き討ちから逃れた洪煕官。同門の英雄とは知らずに、方世玉は清朝の手先が洪煕官をとらえるのに力を貸してしまう。方世玉は自分の行いを恥じて、仲間と共に洪煕官を救いだす。そしてクライマックスは、丘の上での死闘。悪役はチベット武術の達人を率いて現れ、主人公達も苦戦するが、洪煕官の虎型拳と方世玉の鶴型拳を合わせて勝利を収める。しかし、明朝復興を望む漢民族と清朝との戦いは続く・・・というお話。

 監督のチャン・ツェーは”ショウ・ブラザースのサム・ペキンパー”との異名を持つ映画監督。つまり暴力描写が多い。「嵐を呼ぶドラゴン」のラストでもとどめがさされる場面は画面が赤く反転して強烈なイメージを残すし、「キル・ビル」同様目をえぐる攻撃もやっぱり出てくる。とにかく善と悪がまっすぐに戦う、他の人間ドラマ的要素は徹底して排除される実にピュアな映画。この単純明快さがいいんだよね。洪煕官に扮するチェン・カンタイが男っぽい荒々しいイメージなのに対して、方世玉扮するアレクサンダー・フーシェンは白い扇なんか持っちゃって、すっごくニヒルなイメージ。フーシェンはイギリス貴族が父親で気品あるルックスが人気を呼んだ(僕はアルフィーの高見沢俊彦にしか見えないのだが)。しかし自動車事故で29歳の若さで死去。タランティーノはインタビューで「アレクサンダー・フーシェンが生きていれば彼にも「キル・ビル」に出て欲しかった」と述べている。




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