Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ピエロの赤い鼻

2013-07-02 | 映画(は行)
■「ピエロの赤い鼻/Effroyables Jardins」(2003年・フランス)

監督=ジャン・ベッケル
主演=ジャック・ヴィユレ アンドレ・デュソリエ シュザンヌ・フロン ティエリー・レルミット

 フランス人のドイツ侵略に対する怨念は本当に強い。これをテーマにした映画はたくさん存在するから、我々アジアの島国の住民ですらその片鱗を感ずることはできる。占領下のフランスでは対独協力者になる者もいたし、レジスタンスとして抵抗を示す者もいた。だが一般の庶民は嵐が過ぎ去るのをじっと待っていただけだ。近頃この時代を背景とした映画の中には、そうした庶民の視点で描かれるものが目立つ。例えばジェラール・ジュニョ-主演の「バティニョールおじさん」はなりゆきで対独協力者となった中年男が、ユダヤ人の子供を通じて人間味を取り戻すお話。エマニュエル・ベアールが美しかった「かげろう」は戦火を逃れて子供と共に田舎に逃げた女性の物語。そして本作「ピエロの赤い鼻」もそうした流れの作品だ。

 だが本作の魅力は単にあの時代の悲しいエピソードが描かれていることだけではない。登場する人物それぞれがとても人間くさく描かれていることが魅力だ。レジスタンスにかかわることすらなかった二人の心優しき男が、ふと芽生えた愛国心から線路の爆破を思いつく。決してヒーローではない。ところが二人の行為によって巻き添えを食らう人が出てくる。ポイント切替所にいた老人は爆破で重傷を負い、容疑者として友人と教え子までもが捕まり、二人と共に深い穴で処刑を待つことになってしまう。ちょっとした思いつきが引き起こす悲喜劇。中でも容疑者として捕らえられた4人を救うために、重傷の老人がある決断を下すところが泣ける。脇役のひとりひとりにまで人生を感じさせる。処刑を待つ4人に食料と笑顔を与える心優しきドイツ兵。彼は大戦前にパリでピエロをしていた人物だった。彼のエピソードがこの映画のメインであるが、”笑い”が敵味方を超えて信頼につながっていくこの場面はどこよりも力強い。そしてさらに父親がピエロに扮する本当の理由を知って、息子が父を信頼と尊敬をするようになるのだ。「奇人たちの晩餐会」のヴィユレ、「愛を弾く女」のデュソリエ、「妻への恋文」のレルミット、それに「ピアニスト」のブノワ・マジメルと素敵なフランス男優たちのコラボレーションも嬉しい。

(2005年筆)

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再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ - 80's Movie Hits ! -

2013-07-01 | 80's Movie Hits !

- 80's Movie Hits! - 目次はこちら

■Century's End/Donald Fagen
■True Faith/New Order
from「再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ/Bright Lights Big City」(1988年・米)

監督=ジェームズ・ブリッジス
主演=マイケル・J・フォックス キーファー・サザーランド フィービー・ケイツ

 ドラッグで身を持ち崩してはいけません。そんな教訓を若者どもに与えた2作品がある。ロバート・ダウニーJr.による”西海岸編”が「レス・ザン・ゼロ」、そしてマイケル・J・フォックスによる”東海岸編”が本作「再会の街 ブライト・ライツ・ビッグ・シティ」である(別に当時こんな風に言われていた訳ではありません)。出版社に勤める主人公は、仕事はいい加減で上司の評価も厳しい。現実から逃避すべく、悪友キーファー・サザーランドに誘われるままナイトライフとドラッグに溺れる日々。フィービー・ケイツ扮する別れた恋人のことも忘れられないから、同じ事務所でひそかに思ってくれている女性の存在も気づかない。社会人となって数年が経った20代後半。仕事の手の抜き方も夜遊びも覚えて、誰もが”自分はこのままでいいのかな?”と自答する時期。そんな今ひとつ自立しきれない主人公を、それまで「BTTF」シリーズなどでええかっこしてきたマイケル・J・フォックスが、等身大でしかも情けない男として演じてくれる。大人になりきれない主人公を”昏睡状態の胎児”とダブらせる描写も印象的だった。

 そんな本作のサントラは、僕にとっては、80年代サントラの中でも1,2を争う愛聴盤。主人公の夜遊び場面のBGMとして流れたダンスミュージック中心に選曲されたアルバムになっている。サントラのラストに Pump Up The Volume が収録されているが、これは当時大ヒットしたダンスナンバー。僕には何がいいのかよくわかんないんだけど(汗)。トップを飾るプリンスの新曲 Good Love は、殿下が清少納言風に「クールなるもの」について考察した佳作。本人名義のアルバム未収録だけに、これを目当て購入した人々も多かったことだろう。ブライアン・フェリーの Kiss And Tell や、ホイットニー・ヒューストンらのプロデューサーとしても活躍しているナラダ・マイケル・ウォルデンの Divine Emotions もとにかくひたすらカッコイイ!。あー!このサントラで踊りたいゼ!

 僕にとってのこのサントラの目玉は2曲ある。1曲は、ドラムマシンTR-808の音も軽やかなユーロ・ディスコの定番ナンバー True Faith 。僕はこの曲をときどき無性に聴きたくなる。それ故にこのサントラCDがカーオーディオに欠かせない。哀愁メロに悲しげな歌詞が何とも言えない魅力。ニュー・オーダーの楽曲には何ともいえない”切なさ”がつきまとっているように思う。当時のペットショップ・ボーイズにも似たような雰囲気は感じられたが、それらは数曲にすぎず、一方でポップチューンもバランスよくこなすことが彼らにはできた。ニュー・オーダーの楽曲はどれを聴いてもどこかおセンチで”世間を怖がっている少年”が書いているのか?とさえ思えるのだ。最近の楽曲はあまり聴いていないけれど、僕は80年代の楽曲では The Perfect Kiss や Confusion が好きだった。社会人になる前、僕のモラトリアム期に触れた楽曲だったからかもしれないな。

 そしてもう1曲が、この映画のスコアも担当したドナルド・フェイゲンの Century's End だ。これが流れるラストシーンが僕は妙に気に入っている。様々なことにしくじったマイケル・J・フォックスが、夜明けの街である決心をする。今までの浮ついた生活を改めて前向きに生きていこうと決めたのだ。そして彼は、カッコつけるために欠かせないアイテムだったサングラスを、生きるために欠かせない糧である焼きたてのパンと交換する。そこに流れてくるのがこの Century's End で、そのままエンドクレジットへ。
世紀末の都会で/愛を探している
マイケル自身はこの映画で共演したトレイシー・ポランとこのあと結婚。彼女に電話で不安な思いを告白する場面の、マイケルの泣き顔は忘れられないな。愛を見つけたんだねっ!。




※Donald Fagen関連の曲が流れる主な映画
1981年・「ヘビー・メタル」 = True Companion
1988年・「ミスター・アーサー2」 = Reflections (Steve Kahn and Donald Fagen)
1988年・「再会の街 ブライト・ライツ・ビッグ・シティ」 = Bright Lights, Big City Century's End / 8NT Blues (Bobby Forester)
1989年・「セイ・エニシング」 = Rikki Don't Lose That Number (Steely Dan)
1992年・「ラブ・ポーションNo.9」 = Ruby Baby
1996年・「エディー 勝利の天使」 = Ain't No Love (40 Thevz)
2000年・「ふたりの男とひとりの女」 = Bodhisattva (Brian Setzer Orchestra) Bad Sneakers (Push Stars) Any Major Dude Will Tell You (Wilco) Reelin' In The Years (Marvelous 3) Razor Boy (Billy Goodrum) Do It Again (Smash Mouth) Midnight Cruiser (Nash Kato) Barrytown (Ben Folds Five)

※New Order関連の曲が流れる主な映画
1986年・「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」 = Thieves Like Us Shell-Shock
1986年・「サムシング・ワイルド」 = Temptation
1988年・「再会の街 ブライト・ライツ・ビッグ・シティ」 = True Faith
1994年・「リアリティ・バイツ」 = Confusion
1994年・「スリーサム」 = Bizarre Love Triangle
1996年・「トレインスポッティング」 = Temptation
1998年・「ウェディング・シンガー」 = Blue Monday
1998年・「ブレイド」 = Confusion (Pump Panel Recon Mix)
2000年・「アメリカン・サイコ」 = True Faith
2000年・「ザ・ビーチ」 = Brutal




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