Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ショコラ

2013-03-22 | 映画(さ行)

■「ショコラ/Chocolat」(2000年・アメリカ)

監督=ラッセ・ハルストレム
主演=ジュリエット・ビノシュ ジョニー・デップ レナ・オリン

 久し振りに癒される映画です。僕はハルストレムファンの一人ですけど、期待を裏切らない出来でした(実は「アバ・ザ・ムービー」がハルストレム初鑑賞だったりするのですが・・・小学生のときです)。

 人は大なり小なり何らかのコミュニティーに属して生活しています。しかしそのコミュニティーが自分に嫌な感情を持つならば、何らかの意味で戦うことになります。ジュリエット・ビノシュ扮する主人公はそれをチョコの魔力で、と言うよりも彼女の人間性で乗り切っていこうとします。でも彼女も生身の人間。強くあろうとしても、そうはいかないこともあります。全体におとぎ話の構成ですが、そこには現実が散りばめられています。

 そんな世の中をよりよくしていけるのは、寛容さや人間の優しい気持ちです。ラストの司教の演説にあるように「何を受け入れるか」、そんな気持ちをエゴイストと化した現代人に思い出させる映画なのです。ビノシュ扮する主人公は夫の暴力から逃れてきたレナ・オリンを勇気づけます。二人がかつて共演した「存在の耐えられない軽さ」では逆の立場だったことがふと頭によぎりました。キャストが実にいいですよね。ジョニー・デップにしても、ジュディ・デンチ、キャリー・アン・モス。脇役に往年のミュージカルスター、レスリー・キャロンが出てます。お見逃しなく。

(2001年筆)

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秋菊の物語

2013-03-21 | 映画(さ行)

■「秋菊の物語/秋菊打官司(The Story Of Qiuju)」(1992年・中国=香港)

●1992年ヴェネチア映画祭 金獅子賞(グランプリ)・主演女優賞

監督=チャン・イーモウ
主演=コン・リー リウ・ペイチー レイ・ラオション

 (注・結末に触れています)
 口論の末、村長に股間を蹴られてけがをしてしまった慶来。夫が仕事ができなくなったことから、身重の妻秋菊は村長に抗議するが、謝る様子もない。秋菊は役所に抗議し調停が始まるが、金で解決しようとする村長側は決して謝ることはしない。”スジを通したいだけ”という秋菊はついに訴訟に持ち込む・・・。

 原作は1991年に出版された小説。当時中国では行政訴訟法が施行されたばかりで、行政を相手取った裁判が初めて可能になったと聞く。国内でも関心が高まっていた訳なのだろう。しかし訴訟という近代的な国の仕組みは、秋菊の望む結末を用意してはくれなかったのだ。村長が難産の秋菊を病院に連れて行ってくれたので、訴訟は抜きにして感謝したい彼女は祝いの席に村長を招待する。だが慶来に別のけがを負わせていたことがわかり、村長は祝いの日に身柄を拘束されてしまう。ただスジを通したい、村長に謝ってもらいたかっただけなのに・・・何ともいえないラストのコン・リーの表情。一個人の思惑と国の対応のズレ。中国だからって訳じゃない。国民感情と政府の対応や裁判所の判決が食い違うのは、何処の国でもあることなのだ。

 でもそんな政治的なお話はさておき、この映画は観る僕らに何か力をくれる。それは大きなお腹を抱えて右往左往する秋菊の力強さなのだ。夫はどうしても村での人間関係があるから強く出られない。「北京まで行く気か。もう帰ってくるな。」とまで言われても、それでも納得のいく解決を求めて秋菊は町へ行く。出産に関わって村長の優しさが見えてくる場面、人と人のつながりの大切さを感じずにはいられなかった。チャン・イーモウ監督作品独特の色彩はここでも健在。軒先に吊された唐辛子の赤い色、着ぶくれた秋菊の赤い上着の色。温かみのある赤い色と、田舎道を走るラストのヒロインは「初恋のきた道」を思わせる。

(2003年筆)

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早春物語

2013-03-20 | 映画(さ行)


■「早春物語」(1985年・日本)

●1985年日本アカデミー賞 監督賞(「Wの悲劇」に対しても)

監督=澤井信一郎
主演=原田知世 林隆三 田中邦衛 仙道敦子 由紀さおり 早瀬優香子

 原田知世ファンを公言していながら、あの頃観ていなかったもう1本・・・「早春物語」を観た。「Wの悲劇」に続いて澤井信一郎監督のいい仕事。いやぁ、もう見事に背伸びした17歳を撮っている。監督は当時のパンフレットには「私は17歳が嫌いだ」と文章を寄せている。確かにハイティーン(死語?)の頃って、主張することは主張して、キツいことも人を傷つけかねない言葉も平気で言う扱いにくいお年頃。だから監督は徹底的に17歳を痛めつけてやろう、という意図でこの映画を撮ったという。この文章を読んで納得。だって、この映画の知世ちゃんは、それまでの作品じゃお目にかかれない表情や熱演の数々。今改めて観て、ここまで頑張ってたのかと思える。薬師丸ひろ子の初キスシーンは死体役の渡瀬恒彦だったけど、知世ちゃんは(しゃべりが時々麻生太郎ぽい)林隆三おじさまと濃厚なキッス。「Wの悲劇」は薬師丸ひろ子の処女喪失場面から始まるけど、真っ暗な画面で台詞だけ。対して「早春物語」の知世ちゃんはスリップ姿で「私を抱きなさいよ!」とおじさまに叫ぶ。薬師丸ひろ子って過保護やん!と僕は病院待合室でのキスシーンを観ながら心の中でつぶやいた(笑)。食事しながら林隆三に嫌みめいたことを言う場面にしても、変に声がデカくて過剰な演技。でもそのダサさが、精一杯無理してる17歳に見えてしまうから不思議だ。

 同級生の仙道敦子が大学生の彼とつきあっていることを聞かされる冒頭。80年代の当時って、テレビ番組でも恥ずかしげもなく初体験もの青春ドラマ(「毎度おさがわせします」とか見てたけどさ・汗)が放送されるような時代。"青い体験"的なお話を映画冒頭でチラつかせておいて、知世ちゃんの危機?とファンをやきもきさせておきながらも、物語は不思議な方向へ。興味を持って近づいた中年男性が、実は亡き母親の元カレだという驚くべき展開。しかも母親の知人から聞いた話で逆恨み的感情まで抱いてしまう。恋物語にして、ある種の復讐劇。しかし林隆三おじさまの母への本心を聞いて納得した知世ちゃん。心からトゲトゲしい復讐心が抜け落ちていく。残るのは恋心。
「これ、恋だと思う。」
印象的な台詞がいくつかあるけど、唐突なれど納得させられてしまうこの一言。ルパン三世ならおでこにキスして「ばーか言ってんじゃないよ」と笑いとばすところを、林隆三おじさまは思わず抱きしめてしまう。17歳の小娘に中年男が恋してしまう瞬間。

 結局知世ちゃんはこの恋を通じて女性として成長する。オトナの階段を上るのは、あの頃お気楽なドラマや映画がはやしたてた"体験"ばかりじゃない。大学生とつきあってる同級生や、背伸びして大人とつきあった結果としてすべてを失う同級生(早瀬優香子、好演)と対比させて、大きな恋をひとつ失うことでひとつ階段を上ったことを示してくれる。その経験は、同級生の誰にもできないこと。
「私、過去のある女になったの」
ラストを飾るこの自信に満ちたひとこと。この台詞は見事だ。そして中年男は17歳の少女に「大好きだ」・・・。傑作ではないけど、実は心のどこかで大事にしておきたい愛すべき映画に思ってる人いるだろな。

そして澤井信一郎監督は「Wの悲劇」と「早春物語」の2作品で(聖子の「野菊の墓」は含めない・笑)、アイドルを女優に育てる名手との評判を勝ち取ることになる。「17歳が嫌い」だと言っていた監督は、「早春物語」のパンフの文章を最後にこう締めくくっている。
「でも今は17歳に夢中だ。」
恋は少女をオンナにするけど、中年男を少年に戻してくれる。

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リトル・ロマンス - 80's Movie Hits ! -

2013-03-19 | 80's Movie Hits !

■Sunset Kiss/Pao
関連作品=「リトル・ロマンス/Little Romance」(1979年・米)

監督=ジョージ・ロイ・ヒル
主演=テロニウス・ベルナール ダイアン・レイン ローレンス・オリビエ

 70年代末期から80年代初めを少しでも知る方ならご存じと思う。当時、本編に全く関係のないイメージソングなる曲が、映画宣伝やエンドロールに付けられることがよくあった。最近でも、日本版だけ「007/ワールド・イズ・ノットイナフ」のエンドロールに何故かLUNA SEAが流れたり、韓国映画「TSUNAMI」ではAKB48が流れたりもした。また80年代には、ジャッキー・チェン主演作では日本独自に主題歌がつけられていたりもする。あれもその類だけど、当時のイメージソングたちは今とは違う。本編で流れないのだ。映画予告編に使われたイメージソングで、最も有名なものが「ナイル殺人事件」の Mystery Nile だろう。♪みーすてりー、なぁ~いる というそのフレーズはニーノ・ロータのスコア以上に有名で、何を間違ったか映画音楽全集みたいな企画ものレコードにも入っている程だ(無論日本だけだが)。このように強烈なインパクトで本編の音楽を食ってしまったものも多いのだ。

 ・・・前置きが長くなったが、われらがダイアン・レイン主演作「リトル・ロマンス」の宣伝にも、そうしたイメージソングが使われた。モデルとしても活躍したサビーネ金子を中心とした日本のグループ、パオが歌う Sunset Kiss なる曲である。哀愁漂うメロディは当時の僕らに強く印象づけられたものだった。本編はジョルジュ・ドリュリューのスコアとビバルディなどクラシックが使われていて、これも素晴らしい(アカデミー音楽賞受賞)。しかし、日本ではCFで大量オンエアされていたから、Sunset Kissの方が焼き付いている人、きっと多いと思うのだ。

 ベネチアの”ためいき橋”の下で夕闇の中キスをした恋人は永遠に結ばれる・・・というデマカセ(注↓)を信じた映画少年テロニウスと高IQ少女ダイアンが、ベネチアへ恋の逃避行。今にして思うとなんとも初々しい初恋映画。映画デビューだったダイアン・レインの可憐さにとにかく夢中になったもんです。監督はジョ-ジ・ロイ・ヒル。映画少年テロニウスが映画館で「明日に向かって撃て!」や「スティング」を観る場面も出てくる。「スティング」を観た後、映画館を出て彼は「ビンゴ!」と叫ぶ。いやー映画ファンとしてはものすごく共感できる場面なんだよね。僕も「リトル・ロマンス」を観てしばらくは、友達との間で「ビンゴ!」が流行した。

 その後ダイアンは「リトル・レター」(ひどい邦題)なる難病アイドル映画に出演した。「リトル」2作で美少女アイドルとしてしっかり僕らに記憶された。80年代になって「アウトサイダー」や「コットンクラブ」などフランシス・F・コッポラ監督作に出演し評価を高めた。僕は80年代のダイアン主演作では「ストリート・オブ・ファイヤー」が大のお気に入りだったなぁ。「愛は危険な香り」や「ビッグ・タウン」でみせた突然のヌードには(ファンとしては)驚いたものだ。何をさておいても、そんなダイアンが今も第一線で活躍しているのは実に嬉しい。2000年代に入ってからは「運命の女」でオスカーにノミネートされたし、出演作も次々と公開されているし。これからの活躍も楽しみ。

※注・本当の”ためいき橋”は、裁判所と牢獄を結ぶ渡り廊下のようなもの。判決を受けて囚人となる者が、最後に世間を見ることができる場所であることからそう呼ばれるのである。

A little romance - movie trailer



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ジョゼと虎と魚たち

2013-03-19 | 映画(さ行)

■「ジョゼと虎と魚たち」(2003年・日本)

●2003年キネマ旬報賞 主演男優賞

監督=犬童一心
主演=妻夫木聡 池脇千鶴 上野樹里 新井浩文

 これ程みんなが褒めている日本映画ってあろうか?・・・と思えるくらい世間では好評で、もちろんその期待感もあって観た。確かにいい映画だ。障害者をめぐる現実を描くことも忘れず、甘っちょろい恋愛映画に終わっていない。「この娘は”こわれもん”や」という祖母の言葉が痛い。孫へのいたわり・愛情と、障害者を抱えることで世間の目に留まることへの恥ずかしさ・恐れ。ノーマライゼーションの考え方も広まってきてはいるが、実際にはこうした家庭がまだまだあるのだ。また、香苗は福祉の仕事を志していながら横恋慕でジョゼを「あなたの武器がうらやましい」と見下す場面。さらに「結局逃げたのだ」という最後の別れ。互いに惹かれ合っていても存在する現実の壁。ラストの恒夫の号泣は、そんな悔しさ・情けない自分へのやりきれなさ・・・そんな思いが入り交じる名場面だ。恒夫は香苗が言うようにそんな「立派な人」ではなかったのか・・・では自分ならどうだろう。銀幕のこちら側の僕も複雑な思いで、その号泣を見ていた。

 でもこの映画に何か違和感を感じた人もいると思うのだ。それはきっと恒夫の女性関係に関すること。結局ジョゼも彼の遍歴のひとつにしかすぎないのではないか。「別れても友達でいられる種類の女の子ではない。」これ程にワン・アンド・オンリーなキャラクターであるジョゼを、「種類」という言葉でくくろうとするのは違うと思えるのだ。二人のラブシーンも自然だと感ずる人もあろうが、きっと主人公をよく思えない鑑賞者は、きっとこの場面を生々しいと感じたに違いない。僕もそのひとりだ(妬いてるだけかもしれないのだけれど・・・笑)。ジョゼの世界が今までよりも広がっていく、世間とつながる重要な場面な訳で、もっと違ったアプローチもあったように思うのだ。例えば拾ってきたSM雑誌のことを急に思い出して、恒夫を質問攻めにするとか。でもベッドインする前の恒夫の一言「あ、涙でそう。」って、何か実感こもっている気がして僕はやたら気に入ったのですが。

 池脇千鶴の関西弁だから、というのもあるかもしれないけど、台詞がきちんと耳に残る、いや心に残る映画だ。母国語の映画だから当然と言うかもしれないけれど、それはなかなかできることではないのです。それにしても思うのは、主演二人のパブリックイメージがあってこその映画。ますますキャラが固まってしまうのでは(特に妻夫木クン)。

(2004年筆)

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千と千尋の神隠し

2013-03-18 | 映画(さ行)

■「千と千尋の神隠し」(2001年・日本)

監督=宮崎駿
声の出演=柊瑠美 入野自由 夏木マリ 菅原文太

●2002年ベルリン映画祭 金熊賞
●2001年毎日映画コンクール 日本映画大賞・監督賞・音楽賞・日本映画ファン賞・アニメーション映画賞

トンネルの向こうは、ノスタルジックなんだけどみたことのない不思議な世界。八百万の神々や建物の造形がまず目をひく。ありきたりな言い方をすれば、和製「不思議の国のアリス」なんだろうけど、単なるおとぎ話に終わらない。ここには現代が見え隠れする。こんな発想ができる宮崎監督の感覚の鋭さに圧倒される。

主人公千尋は、今までの宮崎アニメに出てきた前向きな美少女タイプとは違う。甘ったれのヘナヘナした現代っ子だ。ところが、不思議な世界での体験を通じて、自立心と誰かの為に行動することを学んでいく。敢えて言えば”成長物語”の部類に属する話なのだろうけど、”この娘のように前向きに生きろよ!”みたいなストレートな説教臭さはない。

この映画は宮崎駿監督の優しくて静かなるお説教だ。お説教というのがオーバーならば、日本人へのメッセージだ。八百万の神々をこんな形で表現することで、ニッポンの伝統を語り継ぐことを訴えているようにも思える。「元気を出せ、ニッポン!」と昔どっかの政治家が言っていたけど、この物語で勇気づけられる子供たちもいっぱいいることだろう。性格や人格が変わる訳じゃない。でも行動することはできるんだ。もしかしたら自分も・・・そう子供たちが思ってくれたらいいな。

でもここで宮崎監督が「元気を出せ!」と言っているのは大人たちに対してもではないだろうか。千尋の親たちは自分の欲望に走って豚になる。他人には厳しいことを言うくせに、自分の子供は病気になるからと外にも出さない湯婆婆。説教とは違うけど、この映画の中で千は周りから「お世話になりますくらい言えないのかい!」とか様々なお叱りを受ける。現代っ子ってもしかしたらこんなことも言われた事がないのかもしれない・・・そう思った。「A.I.」観た後だからますます感じるのかもしれないけど、ここに描かれるのは大人のエゴの醜さ。

そんな思いを抱いて劇場を出たら、チケットを買う列に割り込む母親の姿がありました。あのお母さんは、あの後「千と千尋」を観て何か感じてくれるだろうか?。自分も親の一人として襟を正したのでした。えへへ。

(2001年筆)

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ジャッキー・ブラウン

2013-03-17 | 映画(さ行)

■「ジャッキー・ブラウン/Jackie Brown」(1997年・アメリカ)

●1998年ベルリン映画祭 銀獅子賞(主演男優賞)
●1998年おおさか映画祭 外国映画主演女優賞

監督=クエンティン・タランティーノ
主演=パム・グリア サミュエル・L・ジャクソン ロバート・デ・ニーロ

 僕はバイオレンス嫌いのタランティーノ好き。この映画は流血を見せず、多くの人を殺さず、実にスマートな犯罪映画の快作。タランティーノのセンスには脱帽だ。「トゥルー・ロマンス」から暴力を取り除いたらどうなる?と昔思っただけに、僕が観たかったタランティーノ映画って実はこれだったのかもしれない。世間的に評価が今ひとつのようだが、それはブラックスプロイテーション映画へのオマージュというやや一般ウケからは離れたところを狙っていることと上映時間かな?。「キル・ビル」も偏愛の極地なんだけど、こっちはアジアというエキゾチックさがあるだけにウケるんだろうね。

 でも掛け値なしに「ジャキー・ブラウン」はかっこいい。それでも見終わって物足りなさが残る(僕もそれは例外ではない)のは、きっと「パルプ・フィクション」や「キル・ビル」と比べると刺激が少ないからだ。流血だって控えめだし、テンポにしたってそれ程スピーディーではない。でもそれはタランティーノが以前よりも大人になって、偏愛とアイディア一発だけじゃない普遍的な映画づくりをしたいという意欲の表れだと思うのだ。残念ながら世間はそれを認めなかった。70年代テイストの偏愛の部分だけをつまんで同じようなことをやっているとしか見なかった。でもパム・グリアの再評価、イケてない男もやれるデ・ニーロを見せたこと、ロバート・フォスターの渋い好助演、サミュエル・L・ジャクソンの堂々とした悪役ぶり・・・そうした役者達の今までにない魅力を引き出したのはこの映画のおかげだ。タランティーノ、もっと胸張っていいんだゾ!。

 ラストのグッと抑えた大人の恋愛劇は見事というよりない。エンドクレジットにかぶさる ♪Acroos 110th Street をパム・グリアが口ずさみ始めたとき、僕は涙があふれそうになった。いやマジで。銃紹介ビデオ見ながら熱っぽい説明をするサミュエル・L・ジャクソンは観客を引き込んでくれる。「香港映画の影響で二丁拳銃が流行る」って台詞や、ブリジット・フォンダが親父主演の「ダーティ・メリー・クレイジー・ラリー」を見る場面は、映画ファンの心をくすぐってくれる。ところで、サミュエル・L・ジャクソンがかぶっていた(パム・グリアがかぶっている場面もあった)カンゴールのハンチングはいったい何色あるのだろう?。

(2003年筆)

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グーニーズ - 80's Movie Hits ! -

2013-03-16 | 80's Movie Hits !

■Goonies "R" Good Enough/Cyndi Lauper 
from「グーニーズ/The Goonies」(1985年・米)

監督=リチャード・ドナー
主演=ショーン・アスティン ジョシュ・ブローリン ジェフ・B・コーエン コリー・フェルドマン

 一時期、マドンナと人気を二分した女性アーティストと言えばシンディ・ローパー。ビジュアル面でも"Unusual"だった彼女だが、パンク系ファッションにオールディーズ的味付けを施した独自のスタイルは、MTV世代もそれ以上の世代にも好感を持って受け入れられた。当時僕の周りでは”ルックスならマドンナ、音楽性ならシンディ”みたいに言うヤツが多かった(こういう輩は”ルックスならデュラン・デュラン、音楽性ならカルチャークラブ”とも言うのだけれど)。デビューアルバム『She's So Unusual(ハイスクールはダンステリア)』からは4曲ものトップ5ヒットを出した。Girls Just Want To Have Fun はMTVから火がついた曲で、第1回MTVアワードで最優秀女性歌手に選出された。まさにMTVが生んだアーティストだった。また Time After Time は後にマイルス・デイビスにもカバーされる名曲であった。

 そんなシンディ人気は映画にも及ぶ。スピルバーグ総指揮の「グーニーズ」の主題歌を担当、Goonies "R" Good Enough も同様にヒットを記録した。今聴くと、イントロのマリンバ風のシンセ音が時代を感じさせる。ビデオには映画出演者も登場して楽しいものだった。映画の方は今も根強い人気があるようだ。RPGゲームそのものの展開(実際ファミコン版「グーニーズ」は名作だった・・・らしい)、お子さまランチ風「インディ・ジョーンズ」というべき演出、自分の属するコミュニティに対する愛情も織り込まれて、キッズムービーながらなかなかの見応えであった。だいたいスタッフがスピルバーグを始め、監督は「スーパーマン」のリチャード・ドナー、脚本は後に「ハリー・ポッター」を監督するクリス・コロンバス、音楽はデイブ・グルーシン。「スパイ・キッズ」なんかがヒットしている昨今、リバイバル公開したら面白いかも。サントラ参加メンバーも豪華。EW&Fのフィリップ・ベイリー(Love Is Alive)、この後シンディと Change Of Heart で共演するバングルス(I Got Nothing)、この年(85年)Can't Fight This Feeling が全米No.1となったREOスピードワゴン(Wherever You're Goin'(It's Alright))、ルーサー・ヴァンドロス(She's So Good To Me)、この後Totoのヴォーカリストに抜擢されるジョセフ・ウィリアムズ(Save The Night)等々。

 その後のシンディは、91年の映画「マイアミ・ムーン」で共演したデビッド・ソーントンと結婚。ティナ・ターナーやシェールと全米ツアーを行ったり、カバーアルバムをリリースしたり、現在も活動は続いている。そして2011年。来日中だった日本で起きた東日本大震災。多くの音楽家が活動を休止する中、シンディは震災への支援としてライブを敢行した。これからも応援してるぜ、シンディ。

Cyndi Lauper - The Goonies 'R' Good Enough


※Cyndi Lauper関連の歌が聴ける80年代の主な映画
1985年・「グーニーズ」 = ♪Goonies "R" Good Enough ♪What A Thrill
1988年・「バイブス/秘宝の謎」 = ♪Hole In My Heart (兼出演)





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死ぬまでにしたい10のこと

2013-03-15 | 映画(さ行)

■「死ぬまでにしたい10のこと/My Life Without Me」(2002年・カナダ=スペイン)

監督=イザベル・コヘット
主演=サラ・ポーリー スコット・スピードマン マーク・ラファロ

 友人が「涙なくしては観られない」と言っておったので、どんなもん?と疑いつつも劇場へ足を運んでみました。な~るほど、彼がビーチボーイズの大ファンだったからそこまで感動させられたのだな、納得。God Only Knows(神のみぞ知る) を随所に出してこられてはグッとくるわな。予備知識抜きでポスターを見たときにはガーリーな映画?というイメージを持ったけれど、全然そうではないのね。むしろこの写真を選んだ理由がよくわからん。本編で僕が印象に残ったのは、ビーズののれんの向こうに見える家族の風景。原題「My Life Without Me」の意味が伝わると思うのだけどなぁ。

 23歳の主人公は余命2,3ヶ月であることを宣告された。愛する二人の娘とやっと職にありつけた夫を持つ彼女は、余命のことを家族には告げず残された期間にやりたいことをリストアップした。我が子へのメッセージを録音するところが何度もあるけれど、僕も子を持つ身だけに観ていて痛い。その中に「夫以外の男性を夢中にさせる」ことを挙げていて、そこが観る人によって賛否が分かれるところだと思う。恋愛ができるのは、相手から女として認められているってことでもあるし、生きている証を求めることにもなったと思うのだ。恋することは生きていく上でエネルギーをくれるもの。そういう面ではアリでしょうね。ただ夫の立場で見ると、う~ん。まぁ相手の男性が妙なヤツでなかったからよかった、とも思えるけど。「自分の代わりになる女性を見つける」ことも挙げていたけれど、それも夫の立場としては・・・どう?(笑)。

 ペドロ・アルモドバルがプロデュースを担当したこの映画。手持ちキャメラと自然光を用いたライティングが物語のリアルさを増している。「ヘンリー&ジューン 私が愛した男と女」や「パルプ・フィクション」のマリア・デ・メディロスが、僕の持っているイメージとはかけ離れた美容師役で出演しているのは新鮮な驚き。それに母親役のデボラ・ハリー!ああいう役柄ができるようになったのねぇ・・・脇役に目がいっておりました。

(2004年筆)

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ザ・ディレクター 市民ケーンの真実

2013-03-14 | 映画(さ行)

■「ザ・ディレクター 市民ケーンの真実/RKO 281」(1999年・アメリカ)

●2000年ゴールデングローブ賞 作品賞(TV部門)

監督=ベンジャミン・ロス
主演=レーヴ・シュレイバー ジョン・マルコビッチ ジェームズ・クロムウェル

26歳の誕生日に僕が考えていたこと。
”オーソン・ウェルズは26歳で「市民ケーン」を作った。僕は何ができるのか?”
天才ウェルズに張り合うつもりは無論ないけれど、恐れ多くもそんなことを考えたのだ。では、26歳のウェルズとはどんなヤツだったのだろう?。

本作は「市民ケーン」製作の裏話を映画化したもの(本作はTVドラマとして製作。日本では劇場公開された)。メディアを操る権力者だった新聞王ハーストをモデルにしたことから、ハリウッド全体を巻き込む騒動に発展したいきさつがテンポよく描かれる。他の映画では脇役が多いレーヴ・シュレイバーがウェルズを演じ、ジョン・マルコビッチやメラニー・グリフィスが共演。新聞王ハーストは所有欲に駆られた老人として描かれているが、これを演ずるジェームズ・クロムウェルの巧いこと。権力者としての上映中止を迫るダーティな面も、ラストの寂しい一老人となった姿も見事だ。「スペース・カウボーイ」の憎まれ役や「トータル・フィアーズ」の米国大統領は記憶に新しいが、ここでもいい仕事をしている。主役のはずのウェルズはこれですっかりかすんでしまった。プロデューサー役のロイ・シャイダーも存在感ある好助演。

しかし90分足らずの短時間に押し込んでいるから物足りなさもある。例えば僕の関心事だった、ウェルズの人間像にはもう一歩迫れていない気がする。野心とか無軌道振りとか、この上映時間では十分に描ききれなかったところもきっとあるのだろう。ジョセフ・コットンとの関係や、何もなくなった豪邸で抱き合って踊るハーストとマリオンの姿をもっと見たかった。「市民ケーン」好きには楽しめる小品ですね。それにしても、”バラのつぼみ”の由来が、そういうこととはねぇ・・・そりゃ怒るだろう!。

(2003年筆)



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