
◼️「侍タイムスリッパー」(2023年・日本)
監督=安田淳一
主演=山口 馬木也 沙倉ゆうの 冨家ノリマサ 峰蘭太郎
大手の持ち回りで受賞作が決まるイメージしかなかった日本アカデミー賞。2025年の最優秀作品賞は本作が選出された。単館上映から全国に人気が波及したインディーズ作品として、2024年の大きな話題となった。選考基準があまりに偏っているので、ヒット作ばかりになり、数々の秀作を無視してきた日本アカデミー賞。そんな理由から好感を持っていない僕のような偏屈な映画ファンには、ちょっと痛快な出来事ではある。
確かに面白い。もはや日本映画でも使い古されてきたタイムスリップという設定を、これまでにないやり方で見せてくれたのもナイス。現代の協力者たちに、最後まで主人公の素性が明かされない。もといた時代に帰らず、現代を生きる話になっている。しかも過去の因縁を現代で決着つけようとするクライマックスはど迫力。予想を超えていた。だがツッコミどころも多々あるし、都合のいい話でもある。大手が製作する様々なエピソードが盛り込まれて緻密な作り込みがなされた映画とはやっぱり違う。でもそれは決してマイナスには思えないのだ。
本作が観客にウケたのは、真っ直ぐな気持ちをもったキャラクターがとにかく突っ走るシンプルさだと思う。近頃の日本映画が扱うヘヴィなテーマもいいのだけれど、スクリーンに向かう2時間くらいはせめて現実逃避させてよと時々思う。そんな疲れた日本人に元気をくれるド直球の作風が讃えられたんではなかろうか。
僕の出身地では、「とても」にあたる方言は「しんけん」。一生懸命を意味する「知心剣(しらしんけん)」がルーツとなる言葉。クライマックスで"真剣"を使った撮影を提案する場面で、スクリーンから幾度も聞こえる「しんけん」という響きが、主人公の懸命な気持ちに感じられて力がこもった。それだけにシーンの撮影後、優子の平手打ちで最高潮に達した緊張が、一気にほどける落差のタイミングの見事なこと。感服いたしました。
優子助監督、剣心会の師匠、住職夫妻との関わりの温かさにホッとする。素敵な映画でした。
確かに面白い。もはや日本映画でも使い古されてきたタイムスリップという設定を、これまでにないやり方で見せてくれたのもナイス。現代の協力者たちに、最後まで主人公の素性が明かされない。もといた時代に帰らず、現代を生きる話になっている。しかも過去の因縁を現代で決着つけようとするクライマックスはど迫力。予想を超えていた。だがツッコミどころも多々あるし、都合のいい話でもある。大手が製作する様々なエピソードが盛り込まれて緻密な作り込みがなされた映画とはやっぱり違う。でもそれは決してマイナスには思えないのだ。
本作が観客にウケたのは、真っ直ぐな気持ちをもったキャラクターがとにかく突っ走るシンプルさだと思う。近頃の日本映画が扱うヘヴィなテーマもいいのだけれど、スクリーンに向かう2時間くらいはせめて現実逃避させてよと時々思う。そんな疲れた日本人に元気をくれるド直球の作風が讃えられたんではなかろうか。
僕の出身地では、「とても」にあたる方言は「しんけん」。一生懸命を意味する「知心剣(しらしんけん)」がルーツとなる言葉。クライマックスで"真剣"を使った撮影を提案する場面で、スクリーンから幾度も聞こえる「しんけん」という響きが、主人公の懸命な気持ちに感じられて力がこもった。それだけにシーンの撮影後、優子の平手打ちで最高潮に達した緊張が、一気にほどける落差のタイミングの見事なこと。感服いたしました。
優子助監督、剣心会の師匠、住職夫妻との関わりの温かさにホッとする。素敵な映画でした。