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お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ウエスト・エンド殺人事件

2023-01-19 | 映画(あ行)

◼️「ウエスト・エンド殺人事件/See How They Run」(2022年・アメリカ)

監督=トム・ジョージ
主演=サム・ロックウェル シアーシャ・ローナン エイドリアン・ブロディ ルース・ウィルソン

アガサ・クリスティによる「ねずみとり」の舞台は、コロナで記録が途絶えたものの、世界最長連続上演の記録を持っている。映画「ウエストエンド殺人事件」は1950年代のロンドンを舞台に、その「ねずみとり」が上演されている劇場で起きた殺人事件をめぐるミステリーコメディ。殺されたのは「ねずみとり」映画化を依頼された映画監督。"ただのフーダニットだろ?"とミステリーの醍醐味を認めず、派手な映画に仕上げようと主張するので脚本家と対立していた。他にも動機が疑われる人物がちらほら。事件を担当するのはのらりくらりとした仕事ぶりのストッパード警部と、メモ魔で早とちりのストーカー巡査の二人。二人は事件の真相を解き明かすことができるのか。

クリスティぽさを感じるシチュエーションや台詞をチラつかせることで、ミステリー好きを楽しませようとする映画の狙いはわかる。
「フランス人なの?」「ベルギーです」
ってポアロではお馴染みの会話。上演が終わったら映画化するとの契約条件が出てくるのも、現実世界では上演が終わらない「ねずみとり」だけに、イギリス人は「いや、映画化絶対できねぇじゃん」とニタニタすることだろう。クライマックスにはクリスティも登場して、迫った危機に鼠駆除剤を手にする。

サム・ロックウェル警部とシアーシャ・ローナン巡査の凸凹コンビのやりとりは、テンポもよく面白い。特に思い込みの激しい巡査は、目の前にチラついた新事実にすぐ飛びついて結論を出そうとする。金田一耕助映画の加藤武ですら、ちょっとは考えて「よし!わかった!」と言ったぞw。そんな彼女に警部は「結論を急ぐな」と諭す。しかしその警部まで容疑者になる大混乱w。ミステリーは読者観客をミスリードさせることで面白くするものだが、スクリーンの向こうでどんどんミスリードしていく。それは確かに面白いし、その度ごとにシアーシャが見せる凹んだ表情やケロッと立ち直った笑顔は楽しい。

でも、アガサ・クリスティをここまで軽く扱った映画は見たことない。ネタ元として使い倒しているのはわかるけど、クライマックスに出てくる本人役の扱いは、どうも敬意を感じられない。シンメトリーぽい構図と真っ正面向いた役者たち。そしてカメラは横移動…って、ウェス・アンダーソン監督の演出の真似じゃん。ミステリー仕立てなのに、映画全体がミステリーを茶化してるような印象が残った。こんな展開やラストの方がちゃんとしたミステリーよりも面白いでしょ?と言われてるみたいな。うーん。違うと思うぞ。まあ、クリスティはここまでやらないぞというユーモアと思えばいいかも。英国人はきっとそう受け止めてくれるさ。





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