◼️「おしゃれスパイ危機連発/Caprice」(1967年・アメリカ)
監督=フランク・タシュリン
主演=ドリス・デイ リチャード・ハリス レイ・ウォルストン リリア・スカラ
1940年代から歌手女優として活躍してきたドリス・デイ。歌手としては、もはやスタンダードでもあるSentimental Journeyや主演映画の主題歌だったTea For Twoが有名。でもなんてったってヒッチコックの「知りすぎていた男」とQue Sera, Seraですよね。本作はそんなドリス・デイが主演したコメディ作品。
化粧品メーカーの産業スパイ、パトリシアはライバル社にデオドラント製品の機密を売ろうとして失敗。そのライバル社がアメリカで彼女を雇うと提案し、彼女は工業デザイナーの肩書きで雇われるが、実態は双方の会社を行き来する産業スパイ。パトリシアの行動につきまとう男性クリストファー。協力者だが時にパトリシアを見張り、信用できる男かわからない。パトリシアは髪を防水できるスプレーの開発をめぐって、社内で開発を担当する科学者に近づく。一方、彼女は独自に父親の死をめぐる真相を探っていた。
映画は「女王陛下の007」を思わせるスキーアクションから始まる。続いてパリ市街を派手なファッションで颯爽と歩くヒロイン。小洒落たオープニングタイトル。ヒロインの置かれた立場を示す最初のエピソード、なかなか巧みなツカミで引き込んでくれる。防水された髪のサンプルを手に入れようと四苦八苦する場面はちょっと痛々しい。ヒッチ映画の気丈なヒロインが、ここまでズタボロになるコメディ演技するなんて…😰ちょっとびっくり。盗聴器を撹乱する場面が面白い🤣
後半は話がだんだんとシリアスな要素が強く複雑な内容に。二転三転する展開にボーっとしていられなくなる。クリストファーを演じる若きリチャード・ハリスが、軽妙でしかも決める時は決めるスマートなカッコよさで好印象。
「ローレンス・オリビエとビートルズのおかげで、イギリス人というだけでモテるんだ」
なるほど。60年代後半のアメリカでの、ブリティッシュインベーション(英国の侵略)などと言われる空気感がわかるひと言だ。
確かにもうちょっと若いコケティッシュな女優が主役だったら、別なオシャレ映画になっていたかもしれない。でも当時40代半ばのドリス・デイだからこそ、このヒロインの執念としたたかさが表現できた気もする。スイスで化粧品店を営むマダム・ピアスコを演じたリリア・スカラは、晩年「フラッシュダンス」で主人公アレックスを励ますおばあちゃんを演じている。