一昔前まで、緊急安全性情報は、不定期に出されるとはいえ、年に1~2回発出されていたが、近年はほとんど見られなくなった。単に、発出に値するほどの内容がなかっただけのことだろうか。
先週、使用上の注意改訂指示(8/7付)で、チャンピックス錠(バレニクリン酒石酸塩)において「警告」欄が新設されたことがわかり、久しぶりに緊急安全性情報が出るのではないかと思ったのだが、どうもその気配がない。
メーカーに聞いてみると、当局よりそのような指示がないのだという。
「緊急安全性情報の配布等に関するガイドライン」によると、作成の原則として、まっ先に「警告欄の新設等(=警告欄の新設又は重要な改訂)」がその理由として掲げられている。
てっきり警告欄が新設されたのだから、それに伴って緊急安全性情報が出されるものとばかり思っていた。しかしそれに該当しても、緊急安全性情報の発出は必須であるとの規定がなく、指示書が来ない限りメーカーでは作成されない。
「警告欄の新設」以外にも、安全性に関して緊急かつ重要な内容に対して緊急安全性情報が出されるのであるが、どうやら中央薬事審議会では配布の必要性があるとの判断はなされなかったようだ(もしくは安全課による予備的な検討において不要との判断であったのかもしれない)。
いずれにせよ、“このような時に緊急安全性情報が出される”という理解において、「警告欄が新設」されただけでなく、かつ配布の必要性があると判断された場合、というふうに認識を改めなければいけないことがわかった。
「緊急安全性情報」と「使用上の注意改訂」では随分、医療従事者側で印象が異なる。チャンピックス錠における今回の改訂は、国内の事例が少なく、FDAが警告を発出したことに伴うもののようであるが、緊急安全性情報が“出されない”状況はもうしばらく続くことになる。