何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

どこまでできるか、在宅医療

2008-02-29 22:32:32 | よくわからないこと
 薬局に対して「私、在宅をやりたいんです」なんていう求職者がいると、一瞬戸惑う。そういう思いの人が世の中にいておかしくないと思うが、薬局で行う在宅医療となると、訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)ということになる。

 どのような思いでそう言うのか。経験があって、既にやりがいを感じているのか、未知の体験で興味が先行しているのか、それともそう言うことが採用されるうえでのリップサービスにしているのか、定かではない。

 薬局が、必要に応じて在宅に赴くのは、ある意味必然である。しかし、一般論で言えば、業務に意義があっても薬局業務全体から見ると、経営効率は良くない。それは厚労省も半ば気づいていることであって、明言は避けているものの、それでも使命だと思って取り組むよう、言葉を濁しながら認めたような発言をしている。

 在宅患者をどんどん集めて・・・などというのは、ある意味、矛盾だ。うまくいっているように見えても、それだけで薬局としては食っていけないのであり、どこかにしわ寄せが来ざるをえない。一薬局で担当できる在宅患者数は、調剤業務量とのバランスを考えると、それほど多くは受け入れきれない。

 そういう在宅を、知ってか知らずか、やりたいという求職者。業界のことをまったくわからない人なら、あまり突っ込むこともないのだが、高齢化社会を迎えるから、先を見てそこに活路があると思っているのなら、考えものだ。

 薬局は、あくまでも薬局として機能しなければ、その先のことはありえない。OTCでも、在宅でも、相談黄綬でも、薬局として薬剤師として、果たすべきことができて成り立つものだ。在宅を「薬のお届け」程度の思っているのなら、またそれも仕方のないことだ。

 いかにせよ、薬局が持つひとつの機能としてやるのならともかく、そこを強化しようとか、積極的に拡大しようなどと言う意見に会うと、まず薬剤師として疑わざるをえない。
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続ける技術

2008-02-29 00:00:04 | 心に残ること
 石田淳氏の講演でのメモから。

 ある目的を持って物事を続けられる人は、およそ2%にすぎない。3カ月でもいいから、一つのことをどうやって楽しく続けるか。習慣化することで、無意識につ行動できるようになる。

 ダイエットでも、達成した人の大半が半年にリバウンドでこれまで以上に元に戻っている。いかにその状態を維持することが難しいことか。

 やる気、意志、モチベーション、これらは瞬発力に関係する。どうやってやる気を出させるかではなくて持続力。継続するための環境を整えること。
 ポイントはスモールゴールの設定。どうやって決めて、実行していくか。

 段階を追って、少しずつやっていくことが大切。急激な行動の変化は持続しない。“急にやろう”は続かない。「いかに継続するか」が重要。

 楽しくやるセルフマネジメント。人は楽しいものでないと行動を継続できない。いつ、誰がやっても同じ結果が得られるか(再現性)。どんなリーダーがやってもできるか。

 毎日の行動を、一つできただけでも評価するようにする。結果ではなく、途中の行動(成果を得るための行動のステップ)を評価する。たとえば、できたらカレンダーに○をつけていくだけでもよい。

 行動が続かない理由は、次の2点。
1)やり方がわからない
2)やり方がわかっているが、継続できない

 「やり方」とは、知識と技能。技能とは、技能のトレーニング。しかし、ついひとりのときはサボってしまうこともある。継続が難しいのは、継続するための環境が確保されていないから。

 目標ややる気が、人が行動を起こす時の影響力は0~せいぜい20%。どうすればやる気を出すかが重要ではない。どういう環境条件を作ればよいか、が重要。

 「やり方がわからない」といに、成果に至るまでの行動を分解し、チェックリストで行動ができているかを評価し、わからない行動はトレーニングで補う。
 「行動を分解する」とは、初めての人、未経験の人、重度障害者の人にでもわかるように、ひとつひとつの行動を分解する。
 そして、行動分析を行う(メジャーメント)。マインドマップを用いて自分の継続したい行動を分解し、優先順位をつけてみる。

 継続できないのは、have to(しなければならない)になっているから。それをいかに want to に変えていくか。黙っても自分で道を切り開ける人(上位2割)よりも、多くの8割を変えていく。
 wanto to で行動を促すには、褒めて、楽しく行うようにする。そうでないと、生産性は上がらない。また仕事が出来る人であっても、放っておかないで、不定期でいいあkら接触して褒める。

 行動を促しているようで、具体的でない言葉はたくさんある(例:コミュニケーションをとる)。具体的でないと、評価できないし、褒めることもできない。あいまいなままでいると、主観的になる。

 指示も、具体的な言葉で行う。そして、行動したら評価する。くれぐれも、カッコイイけどあいまいな言葉、抽象的な言葉で済ませない(例:明確化する、向上する、検討する)。

 ABCモデル。A:先行条件-->B:行動-->C:結果。
 先行条件(目標、ゴール、締切り、トレーニング、優先順位など)では、行動は持続しない(せいぜい0~20%)。
 どうやったら、また行動を繰り返したくなるか。どうすれば、またくりかえすようになるか。結果次第で、行動をくり返すようになる。これが80~100%を占める。

 叱ることもあるが、行動に対して叱る。人格を持ち出さない。

 意志の力だけでは続かない。続かないのは、意志の力が弱いからではない。
 何を「ターゲット行動」として、それができるように不足している行動を増やし、過剰行動を減らす。行動のピンポイントを見つけ、「毎日、これこれの行動をする」とし、記録する。

 不足行動は増やしにくい。すぐに成果の出ないものは、持続しにくい(逆に、すぐに効果の出るものは、持続する)。最大で2週間程度、できれば1週間以内に、行動したことに対して、自分へのプレゼントを行う。評価は、グラフやカレンダーへの記録によって行う。

 ライバル行動として、行動を邪魔するものがある。それらは近づけないに限る。身の回りに、どんなライバル行動があるのか、考えてみる。
 また、どういう環境を作れば、やろうと思うのか、それを作る。

 ターゲット行動を増やすために、サブゴールをたくさん作る。行動のハードルを低くする。動機付け条件を作る。

 そもそも、「続けたいこと」は、本当に続けるに値する行動かどうか。そうであればターゲット行動を決めて、日々続ける。

 スモールゴールは、あまりハードルを高くしない。一般的に作る難易度の半分程度にとどめておく。毎日1時間行う、を30分程度にするように。
 毎日、新たな時間を工面して絞りだすよりも、生活のどこかの時間に組み入れるほうがよい。急激な生活の変化は、難しい。
 ポイントは、自分に厳しくしないこと、挫折してもよい、と考えておくこと。挫折したら、ハードルを下げて、再開すればよい。
 スモールゴールの例として、ここまでやったら、自分の好きな喫茶店に行く、ちょっとしたものをプレゼントする、など。

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ゴーストタブレット

2008-02-26 22:15:43 | くすり雑感
 スローケー錠をジェネリックに変更したら、ゴーストタブレットが前にも増して気になるので、変えてもらえないかという事例があった。

 ゴーストタブレットなんて、久々に聞いた(ほとんど忘れかけていた)。徐放性カリウム剤の添付文書には、すべてゴーストタブレットに関する記載があるが、この患者さんの訴えによると、どうも形状というか残存状態が異なるらしい。スローケー錠の添付文書では、ゴーストタブレットについて「有効成分放出後の殻錠」と説明されている。

 先発品のスローケー錠(1976年2月発売)にゴーストタブレットの記載がなされたのが、1993年6月改訂の時からだという(ノバルティス社による)。不活性なWax Matrix基質に塩化カリウムを含有させ、消化管内を通過中に徐々に塩化カリウムを放出させる。そして残ったスポンジ様基質として崩壊したワックスが、ゴーストタブレットの正体だという(ノバルティス社内資料)。ちなみにスローフィー錠も同様の徐放性の仕組みだそうであるが、ゴーストタブレットの記載はないという(調べたら、確かにない)。

 ゴーストタブレットのことを知らないと、溶けずにそのまま便中に排泄されてしまったかのように誤解するだろう。溶けずに出てきたという不安の訴えについて、探してみると以前から指摘もされていることもわかった。

 昨今、ジェネリックにおいて「溶けずにそのまま排泄される錠剤がある」との批判がなされることがあったが、その一部はゴーストタブレットによるものも含まれている可能性がある。

 pmdaのデータベースでゴーストタブレットについて検索すると、その単語ではカリウムの徐放性製剤しか引っかかってこなかった。どうもゴーストタブレットの話題は徐放性カリウム製剤において特筆すべき話題なのかもしれない。
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薬剤師と利益相反

2008-02-24 21:46:45 | 薬害は人災だ
 近年、臨床試験、臨床研究等において利益相反が問われるようになってきた。インフルエンザに関する研究班の長が、タミフルの供給元である中外製薬から多額の献金を受けていたことは記憶に新しい。また文献でも、冒頭あるいは末尾にそれに関する記述が載るとともに、文献評価上、重要なポイントの一つとされるようになっている。

 利益相反とは、専ら(もしくは通常)医師と利害関係者(主に製薬企業や行政など)との裏でのつながりについて問われるものだが、薬剤師のそれについても最近気になることがある。いわゆるジェネリックの薬局採用におけるものだ。

 ジェネリック医薬品を採用するにあたり、最も最善のジェネリックを選定する段階でバイアスを入れ、色のついた判断をしかねないのだ。開局薬剤師と製薬企業の癒着といってもよい。

 チェーン薬局では、特定の(あるいは限定した)ジェネリックメーカーの採用を全店舗的に進め、採用や使用拡大を図る裏で、値引き率の確保やリベートを生む素地がある。隠れ蓑は「後発医薬品の使用促進」であり、安定供給の確保だ。

 それらを建前や言い訳にして、経営安定を目論む。それでは国民に最善の医薬品は供給されない。安全確保にも不安を残す。専門家の目で、品質や安全使用を確保するのとはまったく次元の異なる価値観で、医療が蝕まれることになる。

 今でもともすれば後発品メーカーは、チェーン薬局に対し全店舗一括購入の働きかけをするようだ。また卸経由で行われることもあるだろう。卸も、特定の一社に偏っていると、あらゆるジェネリックを確保できないので、かといって取り扱い品目が増え過ぎては業務が煩雑になるので、大手3~4社の範囲で流通制限をかける。在庫品目が拡大せず、業務の混乱を防止できる。表向きは安定供給のためとするのだろう。

 OTCでは、医薬品の相談を受けると、利幅の大きい薬剤を勧める傾向にあるのは昔から知れた話だ。効き目や症状改善よりも、売上重視だ。
 それと類似のことが、今、保険薬局でも起こりかねない状態にある。いやとっくに行われているところもあるだろう。
 利益相反に問題のある文献は評価するに値しないのと同様、そういった体制がどの程度整備されているかを、国民に向けて知らせる仕組みはとれないものだろうか。
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なぜ、あの人は空気が読めるのか

2008-02-23 22:12:14 | 薬害は人災だ
「なぜ、あの人は空気が読めるのか?」秋庭道博・著、ゴマブックス、2008年2月15日
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「やる気を出せ!」は言ってはいけない

2008-02-22 16:59:57 | Book Reviews
『「やる気を出せ!」は言ってはいけない』 石田淳・著、フォレスト出版、2008年2月17日

p.28 ポジティブな人とは、「積極的に環境を改善する行動をして問題を解決した人」といえる。

p.38 動機づけ条件には、「ニード(必要性)」と「メリット(利点)」が必要だ。つまり、人は「それが必要だから」「それにメリットがあるから」ということが動機づけ条件となり、行動するわけだ。

p.44-5 マニュアルの問題点は、「読むひまがない」などということではない。まず問題なのは、中身が「具体的な行動でわかるように言語化されていない」ということだ。
 「第三者から観察することができる行動か」「第三者から見て測定できる行動か」「三人以上が見ても同じ行動だとわかる行動か」ということが大切だ。
 マニュアルをつくっても、「読んでもどんな行動をすればいいのかがわからない」「行動したかどうかを測定できない」ということでは、中身を読まなくなるのも無理はない。

p.48 物事を続けられない理由は二つしかない。
①やり方がわからないから。
②やり方は知っているが、続け方を知らないから。

p.50 実際に人間の行動に影響を与えているのは「行動した結果にどのような条件がついてくるか」だ。これが物事の継続に80~100%の影響を与えているのである。

 単にリスクマネジメントを行い、継続させるには、持続力に乏しい。服薬管理をRMにも活かし、薬剤師としてのレベルアップにもつながることを、持続させるための推進力に用いることは正しいのではないか。

p.54 コツコツとまじめに努力しても評価されないなら、行動自発率は下がって当然。やってもやらなくても同じなら、まじめにやろうとする人は減っていく。言われたことだけやっておけばいい、叱られない程度にやればいいと考えてしまう。
 このような制度はコンプライアンス(法令遵守)の低下という弊害も招く。「成果さえ挙げればいい」という風潮が強まり、多少の違反はやむを得ないと考える人が増えるからだ。
 消費者を欺いたり、非合法的手段で契約を取ったりする行為が日常的になっていく。ひそかに数字を操作し、架空の成果を報告する人も出てくる。

 成果主義の弊害というか、結果さえ良ければすべてよし、というコンセプトの誤りを述べているものと理解できよう。結果はどうでもいい、とは言わないが、結果以上に日頃それに取り組む、行動する部分が評価されることが重要だ。そうでなければ、結果も続かないからだ。

p.58 外部から講師を招いたり、社外セミナーに参加させたりして、常に社員に勉強の機会を提供している企業は少なくない。それ自体はけっしていけないことではないのだが、そうしたセミナーの効果は、なかなか持続しないものだ。
 それは一時的には、社員たちの「行動しようという気持ち」を高める・・・・・すなわち「行動自発率」を増やすことはできても、それはあくまで一時的な現象にとどまるケースがきわめて多い。

 自発率という、あるいはモチベーションというものを高めて、スタートさせても、それに加えて持続力、推進力を伴わないと、効果が定着しないし、出てこない。工夫をしても投資効率の悪いことになりかねない。それでは残念だ。

p.64 望む結果が得られないときには行動をチェックしてみる。行動を分解して分析していくと、必ずどこかに間違いがあるはずだ。

p.80 この二極化(行動を自ら~したいと考えて行うか、~ねばならないと受け止めて消極的に行うか)を防ぐには、結果だけでなくプロセス(行動)にも目を向けなければならない。「望ましい行動」をしたかどうかで評価すれば、評価されるチャンスは平等だ。

p.83 ある目的(A)のために行動(B)をしたとき、結果(C)が望ましいものであれば、人は同じ行動を繰り返そうとする。

 望ましい結果が得られるとわかれば、行動は繰り返される。

p.94-5 一口に「行動」というが、それはいくつもの連続する行動から成り立っている。連続する行動の中にはピンポイント、すなわち結果に直結する行動が必ずある。これさえ発見すれば結果を変えるのは簡単なのだ。
 その行動が真のピンポイントかどうかを探るには、業務の中でその行動を増やしてみる。結果が増えればピンポイントと言えるわけだ。
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覆面ジェネリック

2008-02-21 23:40:17 | くすり雑感
 本当はジェネリックの分類なのに、あたかも先発品のように思われている医薬品を列挙(順不同、カッコ内は先発品)しておく。まるで先発品の“覆面”を被っているようではないか。

○テオロング(テオドール)
○バイアスピリン、バファリン81mg(アスピリン末、バファリン錠330mg)
○メチコバール(なし)
○セブンイー・P
○ビオフェルミンR、同錠(ビオフェルミン)
○ラックビーR(ラックビー)
○マグラックス、マグミット(酸化マグネシウム)
○AZ点眼液
○アルデシンAQネーザル(アルデシン、ベコタイド)
○SPトローチ
○アルビナ坐剤
○カリーユニ点眼液(カタリン)
○デキサルチン軟膏
○コリマイC点眼液
○MS温シップ、MS冷シップ


 これらは名が通っており、広く使われており、ときに先発品とも勘違いされている。テオロングは薬価が先発品より高く、メチコバールは同成分同剤形の中で最高薬価である。

 これまでもGE同士の変更は出来た(患者への説明、そして同意、処方医へのフィードバック)が、あまり知られていない向きもあったようだ。4月以降には、それが改めて明記される。
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不機嫌な職場

2008-02-21 23:16:18 | Book Reviews
「不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか 高橋克徳+川井太介+永田稔+渡部幹・著、講談社現代新書、2008年2月6日

p.158 プロというのは、「それしか知らない人」のことではない。「その仕事を(顧客にとって)最高パフォーマンスで提供できる人」のことである。
 筆者らが仕事で接する一流のプロが口を揃えて言うことがある。それは、「自分の仕事で最高の仕事をしたかったら、周辺分野の知見をあわせて持つこと」である。

p.170-1 自発的な協力が進んでいる会社は意外と少ないのではないだろうか。
 外発的動機(要は“馬ニンジン”)で協力を求めるには限界がある。馬ニンジンとは、良いことをすれば、飼い主から馬がご褒美をもらえるという仕組みをさすわけだから、これは逆に言うと、飼い主が見ていないところでは、どんなに良いことをやってもご褒美はもらえないことになる。
 だから、「この人には協力しておいたほうが、評価の上で得」という判断が働く人には協力行動をとるが、「この人には協力したところで、得になることはないな」という判断が働く人には、協力しない、という斑模様の協力状況を発生させやすい。

p.174-5 彼らがそこまで自発的に関わろうとする「場」には、強いリーダーがいるわけではない。また、報酬というインセンティブがあるわけでもない。
 それなのに、人々が携わっているそのサイトをより良くしていこうとする。あるいは、使い方やどれを買ったらいいのかわからなくて悩んでいる人に助け舟を出そうとしたりする。
 命令されているわけでもないし、無償であるのに、なぜ、これほどまでに自発的に協力的になれるのか。
 それは、人々のそのような協力的行為に対して、ネットの世界では「感謝」や「認知」という応答反応があふれているからである。
 「感謝」とは文字通り「ありがとう」という応答のことだ。
 何かで悩んでいる人、アイデアを欲しがっている人がいる。その悩み等をネットに書き込む。それを見た人がアドバイスをしたり、新しいアイデアを提供したりする。すると、「ありがとう、助かりました」という反応が返ってくる。
 協力した人は「協力し甲斐」を感じる。また今度、悩んでいる人がいたら協力をしてあげようという気分になる。人のためになる「貴重なお節介」を進んで行う動機が備わるのである。
 面白いことに、そのやり取りを見ていた周囲の人たちも、そのような反応に惹かれて、自分も協力の輪に加わるようになる。よい感情もまた伝染するのである。

p.176 会社で非協力的な人は、はじめから非協力的なのではない。効力感を得ることができないから非協力的になっていくのである。

p.177-9 「認知」とは文字通り、「他人を認める」という応答のことだ。
 「すごい」と言ってもらうと、自分の存在が本当に認めてもらえた感じがして、人は大いなる喜びを得る。
 自分を認知してくれる個人、組織、社会に対して、自分が何か貢献えきないか、という前向きな感情を持つ。
 しかし、いまの会社の中では、社員はなかなか認知される機会がない。
 それは、会社の中の評価軸が「一軸」になってしまっているからだ。
 その一軸とは、「業績」である。
 会社は多様な能力が集まり、多様な協力があって、全体がうまく回っていく。しかし、評価の一軸化が進むと、業績をあげる人以外が、会社で周囲に認知される機会は非常に乏しくなっていく。
 自分を認知しない個人、組織、社会に対して、人は愛情を弱める。
 たとえば、自分のことを日頃認めない人が困っていても、助けてあげようとは、素直には思えない。

p.183 東京ディズニーリゾートでは、「素晴らしい対応」をしているキャストに対して、仲間が、上司がカードを渡すという仕組みがある。
 仲間が自分のことを(温かい眼差しで)見ていてくれるということである。仲間が自分のことを認めてくれるのである。そんな仲間が困っているときがあったら、どうして無視できるだろうか。協力して、少しでも良いことができるように貢献しようという気持ちになるのが人間の感情ではないだろうか。

p.184 かつてのバグジーは、業績至上主義で、社員のことなどろくに考えもしない経営だったという。
 ところが、あるとき、信頼していたスタッフがまとまって辞めると言い出し、会社の運営が危機に陥ったことがあり、それを境にして変わった。
 深く反省した経営者が、社員至上主義、愛情至上主義の経営に変えたのである。
 面白いことに、業績至上主義のときは全然ダメだった会社の業績が、社員至上主義に変えて、絶好調になったという。
 経営者の感情にスタッフが応え、スタッフの愛情あるサービスに顧客が応え、ファンになっていく。感情伝染がプラスに働いた典型的なケースである。

p.194 人は他人が協力してくれるとわかっているときには協力する。だがそのためには最初に誰かが協力しなくてはならない。そのような「利他的」な振る舞いを誰かがしなくてはならないのだ。

p.200-1 協力し合うという行為は何も、ただ単にみんなで仲良くしましょうと言っているわけではない。また昔のように村社会をつくり、協力を強制することは難しくなった。いわゆる集団主義という形での協力関係は成り立たない。
 むしろ「一人ひとりが主役になる、一人ひとりが輝いて生きていくことを支援し合う協力関係」を構築していくことが必要なのではないだろうか。一人ひとりが自分の居場所を見つける。そのために多くの人に、自分を知ってもらう。そして、一緒に結びついていく。そうした中で、一人ひとりの存在価値がみんなに認知される。その中でお互いが困ったときには助け合い、支援し合うという基盤を共有し、感謝のフィードバックを大切にする。

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ジェネリック時代の先発メーカー

2008-02-20 23:23:38 | くすり雑感
 4月から処方せん様式が変更となり、主治医が意図的に先発品の使用を続けようとしない限り、ジェネリック医薬品の使用が可能となる。

 もし特許期間中、再審査期間中の先発医薬品を除いて、すべて処方が後発品に置き換わってしまったとしたら、新薬メーカーはどうなってしまうのだろうか。

 近年発売して間もない新薬を持っていないメーカーは、売上がなくなってしまい、一気に立ち行かなくなること必至だ。
 中堅メーカーで、限られた先発医薬品に依存してきたメーカーにおいて、屋台骨を支えるその品目がジェネリックに変更されてしまったとしたら・・・、ひとごとながらゾッとする。

 メーカーの再編は進むだろう。また製薬業界の地図が変わる。

 新薬なんて急に出るわけではない。数年に1剤出ればいいほうだ。毎年、ジェネリックの上市がなされるたびに、製薬企業が少しずつ消滅していくような事態が起こらないとも言い切れない。

 先発品でも、薬効によってジェネリックに変更しやすいものと、慎重にコトを進める必要のあるものとがあるから、ドル箱商品が変更しやすい類に相当するものだったとしたら悲惨だろう。

 先発メーカーでは、そういった予測がどこまでできているのか。ジェネリックもそんなに急速に進展しないとタカをくくっていたら超危険ではないか。気がついたら吹っ飛んでいた、ということもありうるのだ。
 
 では、先発メーカーはどうしたらよいのだろうか。新薬が出なかったら、どこに活路を見い出すのか。口腔内崩壊錠も、適応症追加も、いまさらだ。ネームバリューをもとに、ジェネリックにも進出するか。それとも薬以外で事業を始めるのか。

 製薬メーカーに救いの手を差し伸べるがごとく、薬価制度が変わる(!)、たとえば自由価格制になるとか、厚労省はそんなことも視野に入れているのだろうか。
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その他大勢から抜け出す成功法則

2008-02-20 22:57:00 | Book Reviews
「その他大勢から抜け出す成功法則 「何か必ずやる人」11の考える習慣術 齋藤孝・著、三笠書房、2005年9月15日

p.216-7 自信がなかったり、地位や権力のことが心配でたまらない人は、他人のアイデアを拒否し、自分のなわばりを守ろうとして人々を遠ざける。つまり、人のアイデアを受け入れようとするのは、情緒が安定していなければならない。

 何年も前のことだが、情緒不安定な人が私の会社の重役会の重要な役職に就いたことがあった。何度か会議が開かれて明らかになったことは、この人物が会社に貢献していないということだった。

 私は一人のベテラン重役に、「この人は言うこと、なすこと、会社の発展を妨げるようなことばかり言うのはなぜだろう」とたずねた。そのときの「自分の地位や権力を守ろうと必死だからでしょう」という答えを私は忘れることができない。


 目先の利益、とりあえず今月の、今期の利益を追い、そのためには手段を選ばず、社員を顧みず、数字を作るだけに強権を振り回し、結果として組織をボロボロにし続ける役員は、まさしく自分の地位保全に汲々としているのだろう。それに従う取り巻きも、地位にこびへつらって従っていることでいいのか。イエスマンになることが役割なのか。その取り巻きも、自身の地位にしがみついているからだろう。

p.231 メルク社の創業者のジョージ・W・メルクは、「薬は人のためにあるのであって、収益のためにあるのではないと肝に銘じています。収益は後からついてくるものです。そのことを忘れないでいれば、絶対に大丈夫」だと言っている。

 ここでの教訓は、自らが大きくなろうとするのではなく、より偉大なものの一部にならなければならないことだ。


p.239 彼は恐らく社員に対して、収益はあくまで目的のためにあるということを思い出させようとしていたのだろう。活動方針と実利が矛盾し合うようなことがあってはならないのだ。

 もしも、収益が本来の目的であって、人助けはそれを達成するための手段に過ぎないとすれば、人助けどころか、目標とする収益を上げることさえ覚束なくなってしまうだろう。


 結果として利益が出ることは迷惑な話ではないし、そうあって欲しいと思うが、それが目的になると、組織の体制や体質を崩し、結果としてそうならなくなってしまうことを、メルクは学んでいたに違いない。
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ジェネリック医薬品とは

2008-02-19 22:21:42 | くすり雑感
 新薬に対してジェネリック。

 新薬(有効成分)とは「医療用用途に新たに使用が認められた化学物質」であると定義できるのではないか。メーカーは医療用に使用可能な化学物質をひたすら探究してきているのだから。

 新薬メーカーは、これまで医療の世界で使われていない化学物質を探し、使い道があるか、動物実験や臨床試験で確かめてきた。新薬として世に出るうえで、特許で守られ、再審査期間が設けられ、安全性が確かめられてきた。

 よって、それらの期間が終了すれば、先発品も、もはや後発医薬品と同じ扱いでいいのではないか。つまり、社会における共同財産として社会に開放されるのではないか。

 誰でも、どこでも、作ろうと思えば作ることができる。製造承認基準を満たしていれば、同等の効果が期待できるものとして考えてよいだろう。

 その新規化学物質やそれを含む製剤は、特定の製薬会社しか作る技術を持ち合わせていないのであれば、その工場でなければ作ることのできないものであれば、話は別である。

 誰もが化学物質を製造し、それを用いて製剤化する技術を持ち合わせている。特許が切れて、製造が解禁となって、それが後発品として市場に供給されるだけのこと。

 だから適切に製造され、供給されている後発品であれば、使用しても全く差し支えないと思うし、すべきであると考える。
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答えが見つかるまで考え抜く技術

2008-02-19 21:54:13 | Book Reviews
「答えが見つかるまで考え抜く技術」 表三郎・著、サンマーク文庫、2008年1月25日
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JAL機長はなぜ離陸しようとしたのか

2008-02-18 23:06:45 | 思いつくまま
相次ぐトラブルの原因は「雪」と「企業体質」 新千歳空港無許可滑走 産経新聞 2008.2.17 18:46

 新千歳空港では平成17年1月にも、日航機が管制官の離陸指示を受けずに滑走を始めるトラブルが起きている。同一の空港と航空会社で同じトラブルが発生した原因として、専門家らは「雪」「日航の企業体質」をあげている。

 「管制官の指示を復唱するのは基本中の基本。人の命を預かる以上、きちんとしなくてはならない」。航空評論家の青木謙知さんは、機長が管制官の指示を繰り返さず、「了解」とだけ答えたことを問題視する。「了解」だけでは、機長が何を了解したのかが伝わらず、管制官は502便が滑走するまで機長の勘違いに気づかなかった。

 背景として、航空評論家の秀島一生さんは、「JASとの合併やリストラで、現場のモラルが下がっている」と、経営難が続く日航の体質に問題があるとみている。

 秀島さんは「日航は安全より営業を優先し、定時に飛ぶことや燃料の節約を機長に迫っている。雪で前方機を目視できないなら慎重になるべきなのに、雪による離陸の遅れで機長に焦りが生じ、判断を誤らせたのではないか」と指摘している。

 モラル低下は、短期間で下がるわけでもないし、末端の職員だけに見られるものではないから、長年の経営方針や企業内文化に問題があると考えるのが一般的だと思われる。JAL内部の、それも上層部だけは、案外逆の捉え方をしているのではないか。

 飛行機も滑走路の端までくれば、概ね時間の問題で離陸開始する。ましてや次は自分の順番ともなれば、管制塔から「離陸せよ」というメッセージが来るものと、かなりの確率で予想しながら待っている。しかも雪が降っていた。著しい遅れは、営業上影響が及ぶ。定時運行を守るべく、すみやかに飛び立たなきゃ・・・。

 そんなところに管制官からの指示。「テークオフ」と聞こえたら、飛び立つものとばかり思い込んでいたのではないか。実際は「まもなく離陸の予定」だったのに。


 薬局でも混雑してくると、患者さんを待たせてはいけないという意識が起こり、イライラさせて機嫌を損ねてもいけないし、度重なると他の薬局に移ってしまうかもしれないと考え、そのうえ調製は正しくできているだろうと「思い込み」、薬剤交付を行ってしまっていることはないか。すなわち薬剤調製の最終鑑査が不十分でなまま交付を開始してしまうことで、誤投薬に至っているのではないか。

 日航のトラブルの原因が「雪」と企業体質」なら、薬局のそれは「待ち時間」と「薬局の体質」に置き換えてみるとそっくりのように思われる。
 
 疾患を抱えた患者さんに早く薬を渡してあげようというのは、ある意味、思いやりや善意でもあるものの、評判の低下や患者離れを懸念する営業優先という経営優先の体質によって、「思い込み」が加速するのではないだろうか。
 調剤事故等の際に、混雑していたとか、長いこと待たせていたので急がされた、などという“言い訳”をする土壌も、そこにあるのではないか。

 混雑する時間帯であれば、余計に慎重に最終鑑査をしなければならないのに、待ち時間を気にして焦り、鑑査不十分であるにもかかわらず、投薬に移ってしまう。薬剤師の判断を誤らせてしまうのは、きっかけは混雑であるが、背景にあるのは営業的側面を気にしすぎる体質や文化なのではないだろうか。

 この機長の思いと日航の体質は、利益優先の体質の強い薬局の場合と、かなりオーバーラップしていると思う。航空機事故はただちに多くの人命にかかわりかねないが、調剤エラーは必ずしも健康被害に結びつかないだけに、つい軽く考えられるのか、やむを得なかった、仕方なかった、といった反省の弁にもつながりやすい。それでは調剤エラーは改善を見せないのではないだろうか。
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先発医薬品を「ブランド品」に準える

2008-02-17 23:09:47 | よくわからないこと
 ある卸系の販促誌に、今春からの診療報酬改定を前に、「(ジェネリック医薬品は)ブランド品消費大国に馴染むでしょうか?」と、日本人のブランド志向という感覚にジェネリック医薬品は似合わないと、使用促進に冷ややかな記事が掲載された。使用促進が進まないおそれを懸念したというより、筆者自身もジェネリックには好意的ではないような印象を受ける。

 ところでブランド(品)とは何か。非ブランド品との違いは何か。

 贋作なら、模倣品でありブランドと偽って消費者を騙し、犯罪性がある。ジェネリックはそれとは違う。
 衣服や鞄、食品などを例に、ブランド品と非ブランド品の違いを考え、それがどこまでジェネリック医薬品にも外挿できるか考えてみよう。

 非ブランド品は、衣類や鞄の場合、外見的に魅力に欠ける(主観的評価)。食品なら、見た目の違い以上に、口に入れた際に、明らかに味や香り、食感等が異なる。どちらが旨いかも主観だが、食べ比べてみたら、おそらく大差がつくのではないだろうか。

 ジェネリックはどうか。薬は、そもそも外見は本質ではなく、それほどおしゃれセンスは重要とされない。目隠しして、先発医薬品と後発医薬品と飲み比べたら、どちらが先発品か多くの者にわかるのだろうか。誰もが認めるほど、効果に明らかな違いがあるのか。

 衣類や鞄のように、持っていることを誇示して、周囲もブランド品だとわかり、うらやましく思うのか。先発品しか飲まないのも、一種の“セレブ”のように扱われるのだろうか。

 本物を知らない人は、それが先発品だよ、と言われれば、へぇーそうなんだ、と思って受け入れるだけのことだろう。後発品だと言わなければ、誰もわからないのではないか。薬の場合、品質や機能、外観の良否とは無関係である。単に、どちらが先に世に出たかどうかの違いにすぎないように思う。

 好んで先発品を飲む人は、優越感というよりも、自己満足や安心感はあるだろう。ステイタスも感じるのだろうか。人前で服薬していたら、「あ、先発品を飲んでいる」などと羨望の眼差しで見られるのだろうか。食品のような、誰にでもわかるほど、味に格段の差があるわけでもない。

 ジェネリック医薬品は非ブランドであっても、安かろう・悪かろうではあるまい。価格差の分だけ、品質面で劣っている部分があるようには思われない。
 銘柄別収載と一般名収載とで分けられ、銘柄収載でないからブランド品ではない、という程度のことにすぎないようにも思われる。少なくとも、エルメスやヴィトン、プラダのような例を持ち出して、ジェネリックが受け入れられにくい、と危惧するのは勘違いではないかと思う。

 この記事中でとくに解せないのは「複数の病院薬局長に聞いたところ、後発医薬品の品質に対する信頼性が低いため、「医師は患者さんから信頼されない限り、変更不可にするだろう」ということでした」と紹介しているところだ。複数って、2人だけなのか、過半数程度を指すのか、それ以上の確率を指すのか、あいまいである。少なからず、ある一定の多さで、そういう薬局長がいるのだろうか。
 
 その薬局長のいる病院では、信念を持ってブランド化を進めてもらいたい。信頼性が低いことを、大きな声でもって訴えていってもらいたい。ジェネリック全般を対象に、どのような理由からそう言うのか、教えてもらいたい。
Comments (2)
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リーダーのためのとっておきのスキル

2008-02-17 15:06:43 | Book Reviews
「リーダーのためのとっておきのスキル  石田淳・著、小阪裕司・監修、フォレスト出版・発行、2005年12月20日

p.41 アベレージ以上の社員は、仕事に対して「want to」(したい)の姿勢を持っています。「仕事が好き」「会社も好き」「だから仕事がしたい」という積極的な動機です。これに対して、アベレージ以下の社員は「have to」(ねばならない)の姿勢で仕事をしています。叱られるから仕事をしなければならないという消極的な動機しか持っていません。

p.85-7 「have to」社員というのは、叱られるから仕事をしなければならないと考えている人です。叱られることは不快を避けるためにいやいや働くのです。「叱られないためにはどうすればいいか」、そのことしか頭にありません。

 行動に賞賛を与える方法は「want to」社員を作り、だめなところを叱る方法は「have to」社員を作るのです。
 全員を「want to」社員に変えるためには、その行動を分析・分解し、具体的な行動のレパートリーとしてローパフォーマーたちに与える必要があります。この作業を「シェイピング」と言いますが、ハイパフォーマーの行動をモデル化して真似させるわけです。うまくできたら必ず賞賛を与えます。

p.56 叱ったり褒めたり、部下をマネジメントするには「行動に焦点を当てることが絶対条件」です。明確な基準をもとに叱ったりほめたりする必要があり、その基準とは「あるひとつの行動をしているかどうか」です。必要な行動をした部下をほめ、必要な行動を学ぼうとしない部下を叱責する。基準をはっきりさせないと、叱ることもほめることも逆効果です。

 褒め方、叱り方にもコツがあるということのようだ。叱るにもスジが通っている必要があるのだろうし、叱るスイッチの入り方にも一貫性のようなものを持つとよいのだろう。

p.59-60 報奨としてお金を与えるなら、お金をどの行動に結びつけるか。
 もし保養所の使用を報奨に利用するならば、
「トップ社員になったら保養所を使ってもいいよ」
このやり方では効果は得られません。報奨と行動が結びついていないからです。
「○○の行動をした人は保養所を使っていいよ」
というふうにやれば効果があります。

p.79 成果を得るためには、まず行動の内容を明らかにしなければなりません。そしてトップ社員とアベレージ社員の行動を比較し、どこが違っているか見極めます。詳細に比較するためには、「行動の分解」という作業が必要になります。

p.108 あなたが「簡単だ」「常識だ」と思っていても、「できない社員」や「新人社員」にとっては、何のことやら分かりません。単純で常識的と思われることでさえ、経験のないことを突きつけられるとどうしてよいか分からなくなるのです。

 何をどのようにしたらよいか、わかっているようで、その中身を噛み砕いて分析し、解説を加えながら説明することで、その後、確実な行動が果たされるようになる。

p.136-7 人の行動を変えさせる方法として、成果を挙げたらほめることはもちろんですが、成果を挙げるために努力したことを認め、その労をねぎらうのです。
 とくに新人は、教育期間中ほど成果らしい成果を挙げることもできませんから、一つ行動するごとに労をねぎらってください。「ここができたのか、よくやったな」とねぎらうと、「認めてもらえた、理解してもらえた」と感じて嬉しくなります。その嬉しさは次の行動を生む動機づけとなるでしょう。

 行動を、取り組みを行うことは重要なことであって、いかなる結果もそれなくしては始まらない。すなわち、行動が確実に行われたら、褒められ、ねぎらわれる意味がある。

p.141 ねぎらいの気持ちとは「相手の人間性を尊重し、努力を認め、心から感謝すること」です。口先だけでおだててやらせることとは本質的に違います。ねぎらいの言葉もマニュアル化して、「部下の操縦術」のように使っていると、部下から「うまいことおだてやがって」と思われたが最後、あなたの言葉には二度と心を開いてくれないでしょう。

p.145 部下が何か行動をしたとき、その労は必ず認められなければいけません。行動を起こさせるための仕掛けの目的は、あくまで「行動を快につなげること」です。

p.155 ミッションというのは「会社が果たすべき社会的使命」を意味します。理念と言い換えてもいいでしょう。何のためのビジネスか。これは社長が考えて決めることです。
 ヴィジョンとは、「全員が得られるごほうび」です。ミッションの達成途上で到達すべき中間目標を定め、そこに到達できたら実現するごほうび、とでも言いましょうか。

p.174-5 マネジメントに当たって注意すべきポイントのひとつが、できるだけお金をかけないこと。事業の目的は利潤の追求です。人材育成に経費をかけることは、せっかく上げた利益を減らすことにほかなりません。いかにコストをかけずに育成するか、それが正しいマネジメントのあり方です。
 お金をかけるマネジメントは本末転倒です。「経費とのバランス」というテーマを見失うことなく、正しい手法を選んでください。

 問題はここで、人材育成にできるだけ経費をかけない、という考え方はにわかに受け入れる気になれない。
 「必要以上に」とか「全体のバランスを考えて」というのなら、まだよい。誰も無条件に、湯水のように、バランスも考えず、そのようなことなどするわけがない。
 「できるだけ経費をかけない」のではなく、「少なくて済むにこしたことはない」が、「人材育成は組織の発展には重要な部分であり、ケチケチしたり、少しでも減らそうなどと最初から考えない」という意味であるのなら、ここの表現は言葉足らずだろう。
 経費の話を持ち出すと、マネジメントも、とかく「経費削減」が先行し、マネジメントや人材育成が二の次になる恐れが高く、無意味にお金をかけないまでも、必要であれば十分な投資をすべきである、ということを併記すべきではなかったか。


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