「思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本」 郷原信郎・著、講談社現代新書1978、2009年2月20日
p.36-7 誤った情報ないし不十分な情報提供に関して公表が求められるケースも、供給した商品が市場に残留している場合とすでに善良消費されている場合に分かれます。
後者の場合、誤った情報を表示した商品を供給した事実とその情報に基づく消費者の商品選択はすでに終了しており、そのような誤った情報を提供した企業が「過去の事実」うぃどう取り扱うかという問題が残っているだけです。その事実は、企業に対する消費者の信頼を低下させる事実です。しかし、その事実を秘匿していたことが外部から明らかにされると、その企業に対する信頼が損なわれることになりかねないので、信頼を確保するために、事実の自主公表が必要となる場合があるのです。
p.40 諸外国の多くでは、当局は、健康被害の危険があると判断したときに初めて回収指示を出し、基準値を超えただけで即回収はしない方針をとっています。
p.56 「カビ型」違法行為:組織の利益のために組織内のポストに随伴して行われ、長期間にわたって恒常化し、広範囲に蔓延している違法行為。
「ムシ型」違法行為:個人の利益のために個人の意思で行われる単発的な違法行為。
p.57 一度、不正行為を行なっていたことを認めてしまうと、その事情の如何を問わず、自主的に明らかにしたか否かを問わず、「法令遵守」に反したということで強く批判されるというのが、日本社会の実情だからです。建前上は、「違法行為、不正行為はやっていない」ということにせざるを得ず、それが、不正行為、違法行為を表に出す行動を決定的に困難にしているのです。
この問題は、日本の産業全体で、法令、規制、基準をどう活用していくのか、実態と乖離しているものがあった場合に、それをどう解消し、その乖離によって生じていた企業活動の歪みをどう是正するのかを、真剣に考えなければならないことを示しているように思います。
p.180 放送事業者が営利追求に走ると、真実ではない放送が行われる危険性が高まります。第一に、利益を増やす一つの方法がコストを削減することです、それによって真実性を確保するために必要な取材費用が削られることになります。
p.199 社会的要請に対するセンシティビティの第一の要素は、「社会的要請に応えたい」という個人の思いと姿勢です。人は誰しも、自分のやっていること、自分の仕事が少しでも社会の役に立っていてほしいと思っているはずです。しかし、往々にして、それが、何も考えないで決められたことを守ればよいという「遵守」のプレッシャーに阻まれて、行動して現実化しないのです。
p.201 法令が定められたことの背景には何らかの社会的要請があるはずです。そして、その基本的内容は社会のコンセンサスを反映しているはずです。法令の具体的規程をそのまま「遵守」するのではなく、法令の趣旨・目的と基本的な解釈を自分の頭で理解することによって社会的要請を把握することができます。そして、社会的要請という観点から考えれば、法令の適用の妥当性を判断することもできるのです。
p.36-7 誤った情報ないし不十分な情報提供に関して公表が求められるケースも、供給した商品が市場に残留している場合とすでに善良消費されている場合に分かれます。
後者の場合、誤った情報を表示した商品を供給した事実とその情報に基づく消費者の商品選択はすでに終了しており、そのような誤った情報を提供した企業が「過去の事実」うぃどう取り扱うかという問題が残っているだけです。その事実は、企業に対する消費者の信頼を低下させる事実です。しかし、その事実を秘匿していたことが外部から明らかにされると、その企業に対する信頼が損なわれることになりかねないので、信頼を確保するために、事実の自主公表が必要となる場合があるのです。
p.40 諸外国の多くでは、当局は、健康被害の危険があると判断したときに初めて回収指示を出し、基準値を超えただけで即回収はしない方針をとっています。
p.56 「カビ型」違法行為:組織の利益のために組織内のポストに随伴して行われ、長期間にわたって恒常化し、広範囲に蔓延している違法行為。
「ムシ型」違法行為:個人の利益のために個人の意思で行われる単発的な違法行為。
p.57 一度、不正行為を行なっていたことを認めてしまうと、その事情の如何を問わず、自主的に明らかにしたか否かを問わず、「法令遵守」に反したということで強く批判されるというのが、日本社会の実情だからです。建前上は、「違法行為、不正行為はやっていない」ということにせざるを得ず、それが、不正行為、違法行為を表に出す行動を決定的に困難にしているのです。
この問題は、日本の産業全体で、法令、規制、基準をどう活用していくのか、実態と乖離しているものがあった場合に、それをどう解消し、その乖離によって生じていた企業活動の歪みをどう是正するのかを、真剣に考えなければならないことを示しているように思います。
p.180 放送事業者が営利追求に走ると、真実ではない放送が行われる危険性が高まります。第一に、利益を増やす一つの方法がコストを削減することです、それによって真実性を確保するために必要な取材費用が削られることになります。
p.199 社会的要請に対するセンシティビティの第一の要素は、「社会的要請に応えたい」という個人の思いと姿勢です。人は誰しも、自分のやっていること、自分の仕事が少しでも社会の役に立っていてほしいと思っているはずです。しかし、往々にして、それが、何も考えないで決められたことを守ればよいという「遵守」のプレッシャーに阻まれて、行動して現実化しないのです。
p.201 法令が定められたことの背景には何らかの社会的要請があるはずです。そして、その基本的内容は社会のコンセンサスを反映しているはずです。法令の具体的規程をそのまま「遵守」するのではなく、法令の趣旨・目的と基本的な解釈を自分の頭で理解することによって社会的要請を把握することができます。そして、社会的要請という観点から考えれば、法令の適用の妥当性を判断することもできるのです。