『お客さまの「特別」になる方法 ――「リレーションシップ・キャピタル」の時代』 小阪裕司・著、角川oneテーマ21、2010年11月10日
p.8 「同じ商品がすぐ近所で安く売られているのに、どうして高い方を買うのですか?」「それは、この店から買いたいからですよ」
p.13 実は、お客さんの「特別」になることには、多くの企業やビジネスパーソンが考えるよりずっと多大な恩恵がある。ここでほんの少しだけ、私が実際に見聞きした恩恵の一部を羅列してみるだけでも、他社に浮気しなくなる、購入単価が上がる、来店頻度が上がる。薦めたものが断られにくくなる、クレームがゼロになる、と多彩である。
p.43 何があれば「あなたから(買いたい)」となるのか。どんなことをすれば、お客さんのこの気持ちを獲得できるのか。それが「絆」である。
p.45-6 絆には感情的なものが含まれる。好意や愛情やロイヤルティといったものを含み、コミットメントも含み、価値ある関係性を維持したいという持続的な願望があるとき、そこには絆があると言えるだろう。
だからこそ、絆作りは「顧客の囲い込み」とはまったく異質であることが分かるだろうか。
p.48-9 絆作りがもたらす恩恵についての、もうひとつのよくある誤解は、その恩恵を受けるのがずっとずっと先のような気がしてしまうことだ。
長らく数多くの企業と絆作り活動を行ってきて分かったことだが、なかには売り上げや収益に結びつくには時間を要するものもあるが、多くの恩恵は、多くのビジネスパーソンが思うよりずっと、早く受け取り始めることができる。
p.58 「DMはもう効き目がなくなってきた」などと、まことしやかに言われることもあるが、私に言わせればそんなことはない。絆がないゆえに反応が悪いのだ。
p.61 絆ができることで、値引きをしなくても商品やサービスが売れるようになる。隣の店で同じ商品が安く販売しているとしてもだ。
p.63 値引きに魅力を感じて来る人は、より安い店があればそちらに流れてしまう。価格競争は、瞬間的な効果はあるかもしれないが、利益を圧迫しながら顧客を失ってしまうという二重のリスクを常に抱えている状態だ。
p.68-9 クレームにどう対応するかという話題をよく耳にするが、私はこのようにクレームにならない関係を築くことこそが第一だと思う。
p.75-6 (絆がもたらす恩恵の中で)最もすばらしいもの、それは「仕事が楽しくなること」である。
これは実践者の多くが異口同音に語っている。「絆作りを行ってきて一番良かったのは、仕事が楽しくなったことだ」と。
絆で結ばれていないとギスギスした関係になりやすく、お互いの利得を奪い合う駆け引きや綱引きの中で商売をせざるを得ない。このような殺伐とした環境で仕事をするのはつらいものだ。
p.77 顧客との絆を深めていくと、スタッフにも変化が出てくる。数字のノルマからではなく、顧客に対して「今度はこういうことをしてあげたい」という気持ちが生じてくる。
その理由は、顧客との絆が深まることで、親しげに声をかけてもらったり、名前を覚えてもらったりと、スタッフにとっても嬉しく感じるやり取りが増えてくるからだ。また顧客に対して販売がつながる働きかけをしたときも高い反応が返ってきて、しかも喜ばれ、売り上げにつながることにもなり、仕事をすることが楽しくなるのだ。
なぜ「楽しく」なるのか。
それはその関係における売り手と買い手のやり取りが、利己的な動機に基づく駆け引きや綱引きではなく、言うなれば他を利する「利他的」ともとれるものに変わっていくからである。
p.96 お客さんが利他的行動をしてあげたくなる「誰か」になればいいのである。
お客さんとそのように行動し合える関係を築き上げるには、相手にとってそういう存在になることだ。
多くのビジネスパーソンは、お客さんにとって利他的行動をしてあげたい「誰か」になっていないのかもしれない。しかし利他的な行動をした方が、本当は脳もハッピーなのである。なぜなら、それは生まれつき備わっているものだから。
p.99 私たちの脳は、大切な他者、自分にとっての「特別な存在」に対し、利他的行動をすることを欲している。そして脳は、そこで快を得ると共に、つながりを感じ、幸福感を得る。脳は絆を求めているのである。
p.107 単なる「利便性」は、コミットメント、情緒、満足、愛顧意図のいずれとも関係が認められなかった。つまり、満足すら与えられていない状態では、たとえ毎日足を運んでくれているお客さんがいたとしても、そのビジネスが砂上の楼閣なのである。
p.107-8 ある業界にA社からD社があり、商品やサービスのコストパフォーマンスや満足には大差ないとすると、そのときは何の勝負になるかといえば、絆だ。
ビジネスパーソンは「満足では絆が生まれない」ということを意識し、より一歩踏み込んで、お客さんとの絆作りに積極的に投資するべきなのである。
p.108 満足は反復購買につながっても、絆作りにはつながらない。だとしたら、何が絆作りにつながるのだろうか。
決め手は「情緒」だ。それは、お客さんが、消費行動において情緒的な体験ができるかどうかにかかっている。
p.108-9 情緒的な体験をさせてあげることで絆が生まれる。情緒が絆を生むのである。
お客さんにとって、店や会社との付き合いのなかで買いたい商品に出会うことは、この上なく情緒的だ。「そうそう、こういうのが欲しかったんだ!」と思わずつぶやくような発見が、ワクワクするのである。それが、お客さんの買い物体験の中に情緒を生む。
p.109-110 「いつもの買い物」ではなく、「新たな買い物」をさせてくれる相手は、そのお客さんにとって情緒的な体験をさせてくれる相手なのであり、その体験がコミットメントにつながっていき、絆を育んでいくのである。
p.119 ビジネスの現場では、まず、能力に対する信頼を得るのが先決だ。ただ、それは同時に、能力をどのように証明するかという問題にもつながってくる。
いかに我々が信頼に足ることをやっていようと、それをお客さんに知られなければどうしようもない。例えば、能力的な信頼を得ようとするとき、その能力を磨くためにどんな取り組みをしているかをお客さんに語らなければ、能力的な信頼は得られない可能性がある。
p.121 いいものをちゃんと作っていればお客さんはわかってくれると考えている会社も多いが、人間の認知能力は、語られなくてもプロの技巧や取り組みの差を読み取れるほど高くはない。伝えない限り、能力に対する信頼を得ることは難しいのである。
p.133 さて、絆作りにとって「信頼」と「共感」がカギであるとすれば、そこには必ず守らなければならないことが二つある。
そのひとつは、企業として姿勢や態度に一貫性を持つことである。それらがしばしば食い違い、ブレるようだと、「信頼」と「共感」は、ガラガラと音を立てて崩れていく。
p.135 ただ、言うことが本当に「いつも同じ」では駄目だろうと思う。つまり進化していない場合だ。そこで大切なことは、一貫性を保ちつつ、進化させていくということになる。
p.136 そして一貫性と並んで大切なものは、決して相手を裏切らないことである。本章でずっとお話してきている「信頼」と「共感」は、それによって絆という極めて情緒的な側面を持ったものを支えているからこそ、相手を裏切ると必ず報復がある。
p.136-7 絆を大切にするビジネスでは、こういう裏切りは決してやってはならない。顧客は「絆を断ち切る」という報復を必ずするからである。
企業側に悪気はない場合も多々あるだろう。しかし、「ミス」が「ミス」で終わる場合と、「ミス」が「裏切り」ととられてしまう場合がある。
「ミス」が「ミス」で終わる場合と、「裏切り」ととられてしまう場合との違いは、起こったことそのものではなく、起こった後の、企業側の態度をお客さんがどうとらえるかの問題であるということだ。
p.142 大切なことは、絆を作ろう育もうとする意思だ。相手とつながろう、自分のことをわかってもらおうとする意思。相手のこともわかろうとする意思。相手の心に寄り添っていこうとする意思なのである。
p.144 売り手側が意識的につながろうとしない限り、お客さんは忘れてしまう。顧客とのつながりを持つことは、絆作りの大前提である。
そしてつながりを持つためにまず必要なことは、「接触を図る」ことである。
p.146 接触には「定期的に」「適度に」という条件がつく。定期的かつ適度に接触することがつながるための前提である。
p.149 自己開示をすると、情報発信者との精神的距離が近くなる。これが「自己開示の法則」と呼ばれるもので、情報の送り手に対して親近感を抱くようになる。
p.8 「同じ商品がすぐ近所で安く売られているのに、どうして高い方を買うのですか?」「それは、この店から買いたいからですよ」
p.13 実は、お客さんの「特別」になることには、多くの企業やビジネスパーソンが考えるよりずっと多大な恩恵がある。ここでほんの少しだけ、私が実際に見聞きした恩恵の一部を羅列してみるだけでも、他社に浮気しなくなる、購入単価が上がる、来店頻度が上がる。薦めたものが断られにくくなる、クレームがゼロになる、と多彩である。
p.43 何があれば「あなたから(買いたい)」となるのか。どんなことをすれば、お客さんのこの気持ちを獲得できるのか。それが「絆」である。
p.45-6 絆には感情的なものが含まれる。好意や愛情やロイヤルティといったものを含み、コミットメントも含み、価値ある関係性を維持したいという持続的な願望があるとき、そこには絆があると言えるだろう。
だからこそ、絆作りは「顧客の囲い込み」とはまったく異質であることが分かるだろうか。
p.48-9 絆作りがもたらす恩恵についての、もうひとつのよくある誤解は、その恩恵を受けるのがずっとずっと先のような気がしてしまうことだ。
長らく数多くの企業と絆作り活動を行ってきて分かったことだが、なかには売り上げや収益に結びつくには時間を要するものもあるが、多くの恩恵は、多くのビジネスパーソンが思うよりずっと、早く受け取り始めることができる。
p.58 「DMはもう効き目がなくなってきた」などと、まことしやかに言われることもあるが、私に言わせればそんなことはない。絆がないゆえに反応が悪いのだ。
p.61 絆ができることで、値引きをしなくても商品やサービスが売れるようになる。隣の店で同じ商品が安く販売しているとしてもだ。
p.63 値引きに魅力を感じて来る人は、より安い店があればそちらに流れてしまう。価格競争は、瞬間的な効果はあるかもしれないが、利益を圧迫しながら顧客を失ってしまうという二重のリスクを常に抱えている状態だ。
p.68-9 クレームにどう対応するかという話題をよく耳にするが、私はこのようにクレームにならない関係を築くことこそが第一だと思う。
p.75-6 (絆がもたらす恩恵の中で)最もすばらしいもの、それは「仕事が楽しくなること」である。
これは実践者の多くが異口同音に語っている。「絆作りを行ってきて一番良かったのは、仕事が楽しくなったことだ」と。
絆で結ばれていないとギスギスした関係になりやすく、お互いの利得を奪い合う駆け引きや綱引きの中で商売をせざるを得ない。このような殺伐とした環境で仕事をするのはつらいものだ。
p.77 顧客との絆を深めていくと、スタッフにも変化が出てくる。数字のノルマからではなく、顧客に対して「今度はこういうことをしてあげたい」という気持ちが生じてくる。
その理由は、顧客との絆が深まることで、親しげに声をかけてもらったり、名前を覚えてもらったりと、スタッフにとっても嬉しく感じるやり取りが増えてくるからだ。また顧客に対して販売がつながる働きかけをしたときも高い反応が返ってきて、しかも喜ばれ、売り上げにつながることにもなり、仕事をすることが楽しくなるのだ。
なぜ「楽しく」なるのか。
それはその関係における売り手と買い手のやり取りが、利己的な動機に基づく駆け引きや綱引きではなく、言うなれば他を利する「利他的」ともとれるものに変わっていくからである。
p.96 お客さんが利他的行動をしてあげたくなる「誰か」になればいいのである。
お客さんとそのように行動し合える関係を築き上げるには、相手にとってそういう存在になることだ。
多くのビジネスパーソンは、お客さんにとって利他的行動をしてあげたい「誰か」になっていないのかもしれない。しかし利他的な行動をした方が、本当は脳もハッピーなのである。なぜなら、それは生まれつき備わっているものだから。
p.99 私たちの脳は、大切な他者、自分にとっての「特別な存在」に対し、利他的行動をすることを欲している。そして脳は、そこで快を得ると共に、つながりを感じ、幸福感を得る。脳は絆を求めているのである。
p.107 単なる「利便性」は、コミットメント、情緒、満足、愛顧意図のいずれとも関係が認められなかった。つまり、満足すら与えられていない状態では、たとえ毎日足を運んでくれているお客さんがいたとしても、そのビジネスが砂上の楼閣なのである。
p.107-8 ある業界にA社からD社があり、商品やサービスのコストパフォーマンスや満足には大差ないとすると、そのときは何の勝負になるかといえば、絆だ。
ビジネスパーソンは「満足では絆が生まれない」ということを意識し、より一歩踏み込んで、お客さんとの絆作りに積極的に投資するべきなのである。
p.108 満足は反復購買につながっても、絆作りにはつながらない。だとしたら、何が絆作りにつながるのだろうか。
決め手は「情緒」だ。それは、お客さんが、消費行動において情緒的な体験ができるかどうかにかかっている。
p.108-9 情緒的な体験をさせてあげることで絆が生まれる。情緒が絆を生むのである。
お客さんにとって、店や会社との付き合いのなかで買いたい商品に出会うことは、この上なく情緒的だ。「そうそう、こういうのが欲しかったんだ!」と思わずつぶやくような発見が、ワクワクするのである。それが、お客さんの買い物体験の中に情緒を生む。
p.109-110 「いつもの買い物」ではなく、「新たな買い物」をさせてくれる相手は、そのお客さんにとって情緒的な体験をさせてくれる相手なのであり、その体験がコミットメントにつながっていき、絆を育んでいくのである。
p.119 ビジネスの現場では、まず、能力に対する信頼を得るのが先決だ。ただ、それは同時に、能力をどのように証明するかという問題にもつながってくる。
いかに我々が信頼に足ることをやっていようと、それをお客さんに知られなければどうしようもない。例えば、能力的な信頼を得ようとするとき、その能力を磨くためにどんな取り組みをしているかをお客さんに語らなければ、能力的な信頼は得られない可能性がある。
p.121 いいものをちゃんと作っていればお客さんはわかってくれると考えている会社も多いが、人間の認知能力は、語られなくてもプロの技巧や取り組みの差を読み取れるほど高くはない。伝えない限り、能力に対する信頼を得ることは難しいのである。
p.133 さて、絆作りにとって「信頼」と「共感」がカギであるとすれば、そこには必ず守らなければならないことが二つある。
そのひとつは、企業として姿勢や態度に一貫性を持つことである。それらがしばしば食い違い、ブレるようだと、「信頼」と「共感」は、ガラガラと音を立てて崩れていく。
p.135 ただ、言うことが本当に「いつも同じ」では駄目だろうと思う。つまり進化していない場合だ。そこで大切なことは、一貫性を保ちつつ、進化させていくということになる。
p.136 そして一貫性と並んで大切なものは、決して相手を裏切らないことである。本章でずっとお話してきている「信頼」と「共感」は、それによって絆という極めて情緒的な側面を持ったものを支えているからこそ、相手を裏切ると必ず報復がある。
p.136-7 絆を大切にするビジネスでは、こういう裏切りは決してやってはならない。顧客は「絆を断ち切る」という報復を必ずするからである。
企業側に悪気はない場合も多々あるだろう。しかし、「ミス」が「ミス」で終わる場合と、「ミス」が「裏切り」ととられてしまう場合がある。
「ミス」が「ミス」で終わる場合と、「裏切り」ととられてしまう場合との違いは、起こったことそのものではなく、起こった後の、企業側の態度をお客さんがどうとらえるかの問題であるということだ。
p.142 大切なことは、絆を作ろう育もうとする意思だ。相手とつながろう、自分のことをわかってもらおうとする意思。相手のこともわかろうとする意思。相手の心に寄り添っていこうとする意思なのである。
p.144 売り手側が意識的につながろうとしない限り、お客さんは忘れてしまう。顧客とのつながりを持つことは、絆作りの大前提である。
そしてつながりを持つためにまず必要なことは、「接触を図る」ことである。
p.146 接触には「定期的に」「適度に」という条件がつく。定期的かつ適度に接触することがつながるための前提である。
p.149 自己開示をすると、情報発信者との精神的距離が近くなる。これが「自己開示の法則」と呼ばれるもので、情報の送り手に対して親近感を抱くようになる。