「認知症 専門医が語る診断・治療・ケア」 池田学・著、中公新書2061、2010年6月25日
p.9-10 一方、正常老化による物忘れの方は、みずから物忘れを心配して一人で病院にも来られますし、こちらから尋ねなくても「若い頃に比べて、物忘れがひどくなりました。アルツハイマー病かもしれません。MRIで脳の委縮を調べてください」などと訴えます。すなわち、老化による微妙な物忘れですら十分自覚している点が、病識が薄れ始めている初期の認知症とはまったく異なります。
正常廊下による物忘れの場合、その内容は、とっさに人命や日付が想い出せないといったものです。ゆっくり時間をかければ想い出せるし、ヒントを出せばただちに答えることができます。
自覚の有無、出来事自体の記憶が失われているかどうか、という二つの点を確かめていくことで、医療が関わる必要のある認知症なのか、正常老化によるものなのかの区別がつきます。
p.17-8 では、これらのせん妄はどうすれば防げるでしょうか。
実は、かかりつけ医と患者さんがよく話し合って、薬の内容を十分確認した後、きちんと指示通りに薬を飲んでいれば、せん妄はまず起こりません。たいてい起こるのは、複数の医療機関から似たような薬が出て、それを知らずに飲んだ場合です。