ピラミッド型組織では人は無能になるために昇進を続ける、という『ピーターの法則』(ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル著、渡辺伸也訳、ダイヤモンド社)がある。能力があるから上のポストに就けるわけだが、しだいに能力に余裕がなくなる。最終的には、能力的に職務を満足にこなせない段階のポストに至って落ち着く。したがって、全員が無能のレベルで組織は均衡する、という皮肉な結論である。
ピーターの法則について、少し調べてみたところ、以前から言われていたもののようである。この年になって知った自分がいかに遅れていたか、ということである。
しかし、無能者ばかりで構成する組織がなぜ存続できるのか。そればかりでなく、社会はなぜ崩壊しないのか。そんな疑問をイタリア人のジャーナリスト、ピーノ・アプリーレが提起している(『愚か者ほど出世する』泉典子訳、中央公論社)。なるほどと思う。アプリーレは、階級社会の組織は「知性」を必要とせず、人間に「規則と習慣」を強いるという。批判精神や好奇心などを持たない「バカ者」のほうが組織に馴染む。つまり管理されやすい、あるいは管理におとなしく従う人のほうが、組織にとって好都合なのだ。
言われてみると、身の回りに規則だの、規程だの、ルールだのと、そういうことばかりに躍起になっていることはないだろうか。思い当たるフシが少なからずあるかと思う。こういうことが横行するのは、本来の能力に欠けている者が集まり、もはや生産性に乏しい状態を意味しているのだろうか。
ピーターの法則でいう“無能者”で埋め尽くされると、規則と習慣による「統制」が始まる。このような風土がさらに次の次元に進むとしたら、どういうふうに変わっていくのだろうか。“正常化”することはないのだろうか。
引用(出典):中村邦夫「幸之助神話を壊した男」(森一夫・著、日経ビジネス人文庫、p.173-4、2006)
ピーターの法則について、少し調べてみたところ、以前から言われていたもののようである。この年になって知った自分がいかに遅れていたか、ということである。
しかし、無能者ばかりで構成する組織がなぜ存続できるのか。そればかりでなく、社会はなぜ崩壊しないのか。そんな疑問をイタリア人のジャーナリスト、ピーノ・アプリーレが提起している(『愚か者ほど出世する』泉典子訳、中央公論社)。なるほどと思う。アプリーレは、階級社会の組織は「知性」を必要とせず、人間に「規則と習慣」を強いるという。批判精神や好奇心などを持たない「バカ者」のほうが組織に馴染む。つまり管理されやすい、あるいは管理におとなしく従う人のほうが、組織にとって好都合なのだ。
言われてみると、身の回りに規則だの、規程だの、ルールだのと、そういうことばかりに躍起になっていることはないだろうか。思い当たるフシが少なからずあるかと思う。こういうことが横行するのは、本来の能力に欠けている者が集まり、もはや生産性に乏しい状態を意味しているのだろうか。
ピーターの法則でいう“無能者”で埋め尽くされると、規則と習慣による「統制」が始まる。このような風土がさらに次の次元に進むとしたら、どういうふうに変わっていくのだろうか。“正常化”することはないのだろうか。
引用(出典):中村邦夫「幸之助神話を壊した男」(森一夫・著、日経ビジネス人文庫、p.173-4、2006)