(前回からの続き)
米FRB等が発表したデータによると、2017年第4四半期(10~12月)のアメリカの家計債務は年率5.2%増と2007年以降では最高率で拡大し、同時点での合計残高は13.1兆ドルとなり、4四半期連続で過去最高額を更新しています。クレカローンが前期から3.2%増えて2007年以降で2番目の大きさ、自動車ローンは過去最大額を記録、住宅ローンは5四半期連続で増加しており、2008年の最高値を抜くのも時間の問題(?)と思われます。
いっぽう、ローン返済の滞りも目に付くようになってきました。クレカローンの90日以上返済が滞ったローンの比率は7.55%と2016年以来の高水準になっています。自動車ローンのほうも同様で、格付け会社フィッチレーティングス等によると米サブプライム層(支払い能力が低い層)向けローンの60日を超える延滞率は5.8%とすでに2008年金融危機時(約5%)を上回るレベルにまで高まっているとのこと・・・
こうした状況は、全家計債務の約68%(2017年第4四半期時点)を占める住宅ローンにも及んでいることが推察されます。同ローンのうち30年固定金利は2012年には3%台半ばくらいでしたが、以降はじりじりと上昇し、直近(5/11)では4.77%になっています。これ、借入額が大きく数十年にわたって返済が続くローンですから、こうして1%少しでも金利が上がるのは家計にとっては大ダメージのはず。よってここでも資金繰りが苦しい中低所得層からローン延滞とか、最悪ローン破綻が続出する事態が今後予想されるわけです、金利がこのまま上がり続けるのならば・・・
・・・といったように、低金利をいいことに弁済能力をはるかに超える巨額の(ドル建て)債務を抱えてしまったという点では先述の新興国と上記の米家計はよく似ているといえるでしょう。そして両者とも「バブル」を当て込んでいるところもそっくりです。前者は原油や鉄鉱石や小麦といった一次産品価格が、後者は株やジャンク債や不動産などの資産価格が、いつまでも値上がりを続けるだろう、といった何とも都合の良い見通しに基づいて借り入れを膨らませた、というわけです・・・
こちらの記事に書いたように、すべてのバブルのうち「逆オイルショック」に象徴される原材料バブルは2014年半ば以降、一足早く崩壊過程に入ったと思われます。他方で金融資産&不動産バブルのほうは現在まで膨張中(?)。このあたりが同じ巨大債務者でも先に新興国が苦しくなってきたことの大きな理由でしょう。かたや米家計は表向き、大丈夫そう(?)にみえても、上記バブルもまたバーストが不可避のため(?)、やがては相対的に「フラジャイル」(資金繰りが脆弱)なサブプライムな人々から順次、追い詰められていくのではないか。それはあたかも新興国の中でもとくに弱い(経常赤字国でこれといった外貨獲得源が乏しい)トルコやアルゼンチンのような国々が真っ先に危機に陥ったように・・・