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【日立、電力系統システムM&Aの期待と不安】日立の英国原発事業撤収は当然の合理②

2018-12-25 00:01:16 | 日本

前回からの続き)

 今月17日、参画している英国原発事業からの事実上の撤収をほのめかした日立製作所ですが、同日、今度は同じ電力関係でもパワーグリッド(送配電系統)システム事業をスイスの企業ABBから買収することを発表しました。日立は2020年前半をめどに、ABBから分社される当該事業会社に64億ドル(持ち分80.1%)を出資し、さらに新会社発足から4年目以降に完全子会社にするそうで、最終的な買収額は7千億円あまりになる見込みです。ABBは送配電分野では世界最大手であり、関連設備の他にシステムにも強み(2017年の部門売上高は約103億ドル)があり、これを買収した日立は同分野で世界首位に立つとのことです。

 こちらの記事に書いたように、現在は世界的な株高(企業等が実態以上に高く評価されている状況)なうえ、わが国ではアベノミクスによる意図的かつ極端な円安誘導が展開されているため、本邦企業にとって、いまは(円換算で高くつく)大型の海外M&Aは原則として手控え、むしろ(円高時よりも円を多く得られるので)不採算部門を売却するなど、外国事業を縮小整理するべきタイミングにあるといえます。前述した日立の英原発撤退はその方向に沿ったものであり、時機を捉えた合理的な経営判断だと考えられます。

 そんな厳しい投資環境に、あえて逆行する危うさが感じられる上記買収ですが・・・この時期の他案件と違ってポジティブな面も見出せそうです。これが電力グリッド系の買い物であるためです。現在は各国で電力の小売自由化が進み、電気セールス第一線や発電等では競争が激しくなっています。いっぽうで送配電系統は、わが国もそうですが、自由競争から除外された公共ネットワークとして地域独占が維持されるケースが多いもの。それに風力や太陽光など、成長著しいが出力安定感などに難がある再生可能エネルギー由来の電力をいかに制御するか、等もグリッド部門の重要なミッションになっています。よってこの分野では、ひとたび仕事を請け負うことができさえすれば、どの国やエリアの事業でも安定した収益を上げられそうな期待があります。

 いっぽう、今後、必然的に到来する(?)円高局面では本件もまた多額の為替含み差損を発生させそうです。単純にドル円がアベノミクス前の1ドル80円になるとすると・・・これ2千億円ほどの額になりそう。加えて、本買収がもたらす海外収益の円換算額も小さくなってしまうわけです。そのあたりの目減りを差し引いても、安定性や発展性の観点から本件は十分にペイする!・・・と確信できる妥当な買値ラインが64億ドルだった、と信じたいところです。後になって、結局これも「高値掴み」だった、なんてことに、どうかなりませんように・・・

(続く)

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