(前回からの続き)
前回、そして本ブログでたびたび書いているように、日本の実体経済のプラス成長(≒ドル建てGDP&円建てGDPの両者のプラス成長)に向けては、日銀の現行の金融政策「量的質的金融緩和(異次元緩和)」(≒円安誘導)は不要、というよりは逆に足を大きく引っ張るネガティブ要因なので、一刻も早くこれを以前の「ゼロ・インフレベース」程度に転換すべきと考えています(金利の乱高下を緩和するため、実際には段階を踏みながら徐々に)。
しかし・・・「アベノミクス」の現状ではこれは非常に難しいのも事実。というのは、これまた何度も指摘しているとおり、アベノミクスは実質的に「カブノミクス」(株のみ)と言い表せるように、株や外貨建て資産の価額上昇がもたらす資産効果の増大が唯一の(?)成果だから。で、その最大の推進力が円安である以上、円安を誘導してきた日銀の上記政策の変更は、たとえそれがどれほど実体経済に好影響を与えるものであっても、資産効果の消滅(円高→株安・外貨建て資産暴落)つまりアベノミクスの全否定につながるのでNG・・・というわけです。
これに関連して付け加えると、(何度も指摘していることですが)アベノミクスは円安進行局面で年金基金による大規模なリスク資産買いを仕掛けています(7~9月期のGPIFの運用損益が、大したリスク・オフでもなかったのにマイナス7.9兆円!!って、誰がこの責任者か、よーく見極めましょうね、勤労者のみなさん・・・)。そして政府に近い金融機関も同様に外債投資等に一段とのめり込みそうな気配です。そんななかで金融政策が上記引き締め方向に変わったら・・・よりによって円安外貨高&株高のときにチョ~高値掴みをした内外の株や債券に巨額の評価損が大発生! その結果、さすがに「想定外」なんて言い訳が許されなくなり、ヘタクソなバクチ(?)みたいな投資の失敗を責められて安倍政権(と、黒田日銀!?)が崩壊しかねません。そんな破局を招くトリガーを自ら引くことなんてできない、という意味からも、いまの政府・日銀にとって、円安誘導を自分たちからやめるという選択肢は絶対といってよいほど(?)あり得ないはずです。
したがってここ当面、アベノミクスは継続されるしかないため、わが国の実体経済のパフォーマンスは低迷し続けるでしょう。そのわけは先述のとおりです。安倍首相がブチ上げたGDP年600兆円の到達ラインははるか遠くにかすんで見えないほど。ドル建てGDPのほうも、めざせドイツ!といわんばかりの勢いで(?)下がっていくものと予想されます。本稿表題に掲げた「年10兆ドル」なんて夢のまた夢、といった感じ・・・。
それでも・・・日はまた昇る―――日本のドル建てGDPは近い将来、上向くだろうとの期待を抱いています。その理由ですが、たしかに上述のように、日本側の円安誘導スタンスに変化はなさそうだけれど、外国側の事情から為替は円高外貨安に向かうしかないだろうから。そうなれば、たとえわが国の円建てGDPが低成長であっても、ドルで換算したGDPは拡大すると見込まれます。こうなってようやく日本経済は、資産効果みたいなヴァーチャル作用ではない、円高デフレの後押しを受けたリアルな消費や設備投資の増加といった本来あるべき姿の成長路線をたどるようになるでしょう。
で、その外国側の事情とやらですが、その一端が先日ご紹介した以下のグラフからも読み取れるような気がしています。