(前回からの続き)
米FRBは利上げに踏み切るのか、するとすればいつか、それとも後送りか―――アメリカの実体経済面をみると、先述したように利上げができる環境にまで景気が回復したとはいい難い感じがします。原油安の影響で物価が落ち着いていることもあり、なにも急いで金融引き締めに向かう必要もなさそうです。
一方で利上げするとしてもFRBは政策金利を実質的なゼロ近辺からほんのちょっぴり(0.25%程度?)上げるだけでしょうから、利上げ再開という象徴的なインパクトほどは実体経済に与える影響は大きくはないのかも・・・。そう考えると、これ以上バブルを膨らませるリスクを回避するため、早ければ今月のFOMC(連邦公開市場委員会:FRBの金融政策決定会議)でFRBは利上げを決定する可能性も・・・。さて、利上げはあるのか、それとも・・・
で、個人的には、やはりFRBは利上げをしない、というよりは「できない」と予想しています。まあどんなに早くても年内の利上げはないだろう、と楽観(?)しています。その理由は「双子のバブル」(株と債券)について綴ったこちらの記事等のとおりです。端的にいえば、米経済は金融と不動産が生み出す資産効果への依存度を高め過ぎてしまった結果、バブルにもっともネガティブな要因である金利上昇に対する忍耐力を失っているということ。
現在のアメリカの実体経済をけん引しているのはGDPの7割を占める個人消費。そしてその原動力の多くはキャッシュではなくローン、つまり借金です。で、そのローンの額が史上最高レベルにまで膨らんでいるわけです、これまでの金融緩和で。
たとえば、先月FRBから発表された4月の消費者信用残高(住宅関連ローン以外のクレカ、自動車、教育等のローン残高)は前月から大きく増えて(0.6%増)3兆3633億ドルになりました。これは、景気が良いから、というよりは現状の低金利で人々の借金意欲が刺激されたためという面が強いはず。ということは、ここで金利が上がったら、こうしたローン(に加えて住宅関連ローン)のおかげで盛り上がってきた個人消費はたちまち冷えてしまうおそれがあります。
さらに金利上昇は、利払いの負担増のほか、上記ローンの担保等となる株や不動産などの資産価額を引き下げる作用をもたらします。そうなったら多くの消費者が借金の返済に窮して支払い延滞や破産に追い込まれるとともに、融資した側にも不良債権や貸倒損失が増え、経済全体がリセッションに落ち込むうえ、悪夢の金融不安が再発するリスクが高まります。
そんなわけで、金利上昇こそはアメリカにとって最大の脅威。だからこれを引き起こしかねない利上げは「いま」はしたくない、といったあたりがFRBの本音でしょう。そしてその「いま」の状態がずっと(もしかしたら永遠に?)続くかも・・・。まさに利上げは「逃げ水」―――すぐそこにあるように見えて手が届くことはない、ということですね・・・。