金(ゴールド)の価格が上昇しています。12日の金標準先物価格(12月限)は1グラム当たり6820円と、昨年8月に付けた本邦史上最高値の同7032円の97%にまで接近してきました。ただし、これはこの瞬間の日本だけの状況です。他方の金の国際価格すなわちドル建て価格のほうは12日終値で1トロイオンス1868ドル(NY先物)と、今春来の高値圏にあります・・・が、ドル建て最高額の同2069ドル(昨年8月6日、NY先物)の90%程度にとどまっています。このように金価格が日本では最高額に迫っているのにアメリカではそこまでではない、ということは・・・この間、それだけ為替が円安ドル高に振れている、ということになりますね。
前稿でも書いたとおり、先般のFOMC(金融政策決定会合)で、米FRBは、今月からテーパリング(量的緩和縮小)に着手することを決定・発表しましたが、これを受け、それまで1800ドルをやや下回る水準で前後していた金価格はいったん下がったもののすぐに切り返し、現在は上記のとおり、FOMC前より4%ほど値上がりしました。テーパリングつまり金融引き締めがいよいよ始まったわけで、当然、米金利には先高観が生じる一方、金利のつかない金には価格下押しの力が働いくはず・・・だったのに実際はこのように逆の展開です。ということは、市場は、金利は上がらない、より正確には、FRBにはテーパリング~利上げはできないのではないか、と読み、むしろ金価格に先高観を見出して金を買った、ということでしょう。
まあドル建て金価格の上昇の背景はそんなところでしょうが、円建て価格をいっそう押し上げる要因となった上記の円安ドル高は・・・そうはいっても、米金利は少しは上がるかもしれず(?)、円との金利差は大きくなるだろうから、という思惑に基づく円売りドル買いによってもたらされたものでしょう。と考えると、現時点で金が買われた要因と円安要因とは、米金利の今後に対する相反する見方が関係しているため、短期的には、円建て金価格の動きは神経質なものになりそうに思えます。
が、ドル建て金価格のほうは、多少の変動こそあれ、中長期的には上昇するしかないでしょう。なぜなら、前稿を含めて本ブログで何度も書いているように、FRBにはもはやインフレ制御はできず、よってそのヘッジとしての金の価値は高まるばかりと考えられるからです。となると・・・米金利は上がるはずもなく(というより、米経済が金利上昇に耐えられないのでFRBは金利を低め誘導するしかなく)日米金利差はまたまた小さくなって円高ドル安に向かうだろうから、そのあたりは円建て金価格を下げる方向に作用することになりそう・・・
以上のように考えると、この瞬間、わが国の金ホルダーは冒頭のように思案することになりそうです。が、急ぎの支払い等がないのであれば、当面、金はホールドでよろしいかと思います(投資の判断は自己責任でお願いします)。やはり・・・インフレの本番はこれからでしょうからね・・・