(前回からの続き)
先日のテレビニュースによると、足元の為替の円高ドル安傾向を受け、一部のスーパー等では円高還元セールが行われているそうです。インタビューに答えた複数の消費者はこれを家計にプラスと好意的に捉えていました。まあ当然ですね、日々の食品やエネルギーの価格が下がるのは誰にとっても大歓迎でしょう、一握りの人々を除けば。これらの支払額が減った分だけ、レジャーや貯金などの他の用途に使えるおカネが殖えるわけですからね。それによって個人消費は活性化するし、預貯金の増加すなわち長期金利の上昇リスクの低減が図られるし、貧困の深刻化にも一定の歯止めがかかりますよ。
なお上記の報道は、今後さらに円高が進むと輸出に悪影響が出るリスクがある、といった指摘をしていましたが・・・個々の企業の収支等は別として、日本経済トータルでは全く問題ないと考えます。こちらの記事に書いたように、わが国の輸出産業と産業構造はとっくの昔に為替変動に大きな影響を受けない体質に変化しているからです。大半の自動車メーカーは輸出台数よりも現地生産台数のほうがずっと多いくらいですし。いっぽう、円高は円建て輸入原材料の輸入額の減少をもたらすので、円安で輸出振興を図ろうという手よりも、差し引きの貿易収支や経常収支にとっては、ずっと有益です。このあたりは本稿の上段で指摘した同収支の好転にもはっきりと示唆されています。
ということで日本経済は大半の人々にとって「2014年の夏」よりも「いま」のほうが少しは居心地が良さげに思えるのですが・・・これを上記「一握りの人々」は我慢ならないみたいです。もちろんそれは、円安インフレで貧富差の大きな社会づくりを目指す(?)「アベノミクス」推進者たる安倍政権であり黒田日銀。おそらくみなさん、上記報道等に接して「くそ~、もう一度インフレを巻き起こしてやる~」と息巻いているに違いありません。その表れが今月上旬に話題となった麻生財務相と黒田日銀総裁の意見交換・・・って、テーマは「デフレ脱却」ですからね。ようするに日銀が追加緩和を発動すなわちさらなる円安誘導で輸入インフレを再喚起しようというのでしょう。
・・・もう勘弁してほしい・・・つくづくそう思います。上述のとおり、異次元緩和≒円安誘導は、わが国の実体経済そして大半の家計(個人消費)にはネガティブに作用するばかりだし、当の日銀自身ひいては国家の根幹である金融・財政の信認を揺るがしかねないほどの危険きわまる金融政策(?)。これほど危ないことが平然と行われているのは、その実行者すなわち黒田総裁をはじめとする日銀の現役員が、その意思決定がもたらす破局的事態に対して金銭的な責任を取らされないことに由来している(?)と考えています。そんな彼らの代わりに、彼らが空けた巨大な穴≒日銀純損失の埋め合わせをさせられるのは、わたしたち一般国民になってしまうのか・・・(?)
・・・アベノミクスの2大災厄(?)―――年金基金のリスク投資失敗にともなう巨大評価損は安倍政権関係者が、日銀の上記ダメージは日銀役員が、それぞれ私財をもって償う―――これこそが安倍首相がしばしば口にする国民に対しての「責任」の果たし方だと思うのですが・・・
(「とっくに限界!?日銀『異次元緩和』おわり」)
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