(前回からの続き)
前述のように、日銀の追加緩和とりわけマイナス金利は、実体経済の側にある企業や家計にとっては誰も必要としない(どころか迷惑な?)政策だが、証券会社などの市場の側にある内外の人々には非常にありがたいものでしょう。いうまでもありませんが、これにはリスク資産価額を押し上げ、しぼみかけていたバブルの再生を促す効果が期待できるためです。
以前から記しているとおり、米欧中そして新興国すなわち日本以外のすべての国は株、債券、不動産、原油や小麦などの商品といった、ありとあらゆる資産のバブルで経済を回しているといっても過言ではありません。で、そのバブルの元手は主要中銀が量的緩和策(QE)を通じてマーケットに供給してきた超低利マネー。これが(これまた日本以外の)世界中の投資家にド派手なキャリートレード―――ようするに同マネーを借りて少しでも利ザヤを稼げそうな対象に投資すること―――を促すことでバブルを演出したわけです。ところがバブルのあまりの膨張ぶり(借金の拡大ぶり)に恐怖した米FRBが(やせ我慢で?)2014年秋にQEを停止してしまった・・・ので現在、マネーの出し手は実質的に日銀だけ―――というわけで日銀は「われわれがバブルを支えなければ」みたいなミョ~な使命感(?)から、日本の実体経済そっちのけで株や外貨の価格を実際より高く見せるべく、「異次元緩和」という名の円安誘導を続けているわけです(?)。
経済の実体面より、バブル面を重視―――いまの日銀がこうしたスタンスにあることを明確に感じさせる発言を当の日銀トップがしています。先月29日の金融政策決定会合後の記者会見で黒田日銀総裁は、インフレ目標年率2%達成年限について当初「2年」を「早期」へと事実上、後送りすると発表したうえで、(物価上昇は)2014年の夏ころまでは順調だった・・・と語っています。
で、ここに出てきた2014年の夏というタイミングはとても重要です。このころの市況はどうだったのかに?関連して、今年1月のこちらの記事に次のように綴りました・・・
(引用はじめ)--------------------
いま、大荒れのマーケットのなか、世界中の投資家が過去を振り返りつつあるのではないか・・・バブルは、少なくともバブルのピークは完全に過ぎ去った、と。で、そのピーク期とは・・・2014年の夏だった・・・
--------------------(引用おわり)
・・・奇しくも一致しましたね、黒田氏とわたしが指摘した時期が。そう、「2014年の夏」が大きな節目だったのです。世界的バブルはこのとき、最高潮に達していました。実際この前後に原油や(ジャンク債を含む)あらゆる債券の価格がリーマン・ショック後のピークをつけています。だからこそバブルの味方(?)黒田日銀はこのころを順調だったな~と懐かしんでいる(?)わけです・・・
では、日本国民にとってはどうだったでしょうか。わたし個人には、あのころは悲惨だったな~という苦い思いしかありませんが・・・(?)