庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

規制緩和による市場競争では、付加価値のある新技術は無理。

2011-10-30 | 国創り政治問題
規制緩和を実施して、市場の参入条件を緩めて新規の企業が競争に参加すれば、経済は活性化する筈である。
これは、1990年代の後半から2000年代前半までの、経済専門家の論理で、これに沿って果敢に実行したのが『小泉内閣の構造改革路線』であった。
確かに、当時は旧時代の産業界は既得権益に浸かって、新規の事業や新技術の積極的に投資をする企業が減っていた。
それを、規制の壁を取り払えば参入する企業が増えて、魅力のある技術や商品が続々と生まれてくると、期待を膨らませたのである。

しかし構造改革路線は、市場競争を激化させたが、新技術や新商品の競争よりも、既存商品のコストダウン(生産合理化と人件費の削減による)を徹底することで、価格競争力を高めて値下げ競争に走る業種がほとんどであった。
これによって、国内生産では太刀打ちできない企業は、人件費の安い海外の発展途上国へと、生産を移転する路線を選ばざるを得なくなったのである。
構造改革による市場競争の激化を招く政策は、価格競争、人件費削減、海外生産への移転の加速を産みだしたのである。

政治家や経済学者は、新商品を産みだす過程や、新技術を創出する基盤がどの様な仕組みであるか、解っている人は皆無に近い。
市場競争の激化が、新技術を産みだすことはほとんどない。
あるのは生産合理化の省力化技術であって、商品の付加価値が上がることや、魅力のある新技術を産みだす原動力は、競争至上主義では無理なのである。
省エネルギー技術ば、省エネルギー生活が価値のあると国民が判る様な社会環境を整備しなければ、市場にでた省エネ商品が普及を早めることはない。
今回の原発事故の影響で、省電力が切実になって、照明器具の節電型が時代の要請となって「LED照明器具」の普及が加速したのである。

また、原発に頼る社会を拒否する国民意識が高まることによって、再生可能エネルギーへの投資意欲が促進され、それに応える形で、先進性のある企業が新技術への挑戦に力を入れ出した。
同時に、再生可能エネルギーによる電力の固定優遇価格の買い取り制度の法制化が、菅内閣の粘り腰で成立したことによって、やっと日本もグリーン電力革命の時代に、移行し出したのである。

付加価値のある商品、技術への転換は、社会条件が整うことが必須なのだ!

貿易拡大が最善と思い込む成功体験が破滅への道へ。

2011-10-30 | 国創り政治問題
人間は成功体験があることが、人生で最も価値のある経験である。
特に、成功体験によって、事業を拡大させて大きな権限を獲得し、個人資産を大きくしてきた人は、これ以上の満足感はないであろう。
しかし、もっと大事な社会的な名声と言う、人間的な価値を多くの人から認めてもらう方が、もっと価値の高いことには気がつかない。
社会的な地位と名声とは結びつかないのが本当のところだが、既得権集団の地位をえたことで、名声を得ていると勘違いする人間が多くいる。

今回の国論を大きく分ける議論に、アメリカの利益を増やそうとする[TPP]参加問題が浮上している。
何度も書いてきた様に、この交渉は、アメリカ企業を有利にして、経済の復調を画策するアメリカ政府の戦略の一環であるのは明白である。
日本を参加させて、日本の国内市場にアメリカ系企業が参入しやすくして、アメリカの利権を増やすことで、経済の立て直しをしたい、のが見え見えの強圧益な外交交渉である。
それに参加する事を前ノメリに進めようとする、日本の[TPP]参加が不可欠との論者の言い分は、とにかく、解らない内容ばかりである。

日本の経済停滞の主要原因がデフレ経済であり、その根底には慢性的な【総需要の不足】が、日本国中に蔓延していることにある。
この状況については判ると言いながらも、それでも、関税引き下げなどの輸入促進政策を推し進めて貿易を活発化する事が、経済活動を活性化すると言う、論理がめちゃめちゃな、説明を続けている。
関税引き下げを実施すれば、日本人が買いたいと思っていた商品が安くなるので、もっと需要量が増える、とでも言う筋書きが成り立っているとは思えない。

さらにひどい論理は、農業分野などの弱い産業を関税で保護する事は、『高付加価値化商品』への挑戦する事業の進展を遅らせている。
だから、[TPP]交渉に参加して、交渉を日本に厳しい状況でも妥結して、その動きに期限を設けるべきだ!というのである。
ぬるま湯に浸かっているから、いつまでたっても合理化や高付加価値事業への進化が進まないので、この際は、アメリカの外圧を利用して、無理やりに寒風の中に晒す方が良い、という帝国陸軍並みの突貫精神論を説いている。

外圧の脅威を利用して、論理もなく戦略もない政策で破滅へ進めようとする。