庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

貿易収支しか見ていない経済官僚の狭量に支配される。

2011-10-26 | 国創り政治問題
経済活動は、モノの生産による流れだけで評価されるわけではない。
日本は長期に渡って、貿易収支が黒字であって、一時的に赤字になった時期はごくわずかであった。
リーマンショック後の経済縮小時期と、今回の震災の影響での国内生産減少の影響で、4月から7月の貿易収支は赤字になっている。
それでも、赤字金額は3兆円以下であり、8月以降は順調に生産が復活して輸出も回復しているので、貿易収支は黒字にもどってしまう。

国のおカネの出入りは、貿易収支のほかに、海外への投資や貯蓄したおカネに対する金利配当がある。
近年は、毎年十数兆円の金額に達している。
貿易収支がプラスマイナスゼロになっても、日本には毎年十数兆円のおカネが溜まり続けることになる。
だが、日本での金利や投資の配当は世界で一番低い水準であるので、これらのおカネは、海外への投資や貯蓄に回ってしまい、日本の経済を潤す効果がない。
長年に渡って技術を開発して事業化に成功しても、輸出にばかり力を入れていては、日本に溜まったおカネは海外に出て行くばかりである。

この日本の財産であるおカネが、海外ではなく日本国内に投資されて地域社会に潤沢に回る様にしなければ、働く人への配分が増えて行かない。
[TPP]参加論争は、経済のことが全く分かっていない経済産業省の言い分が強く主張されて、政府の統一見解がだされた。
単純にいえば、自動車のアメリカ輸出時の関税2.5%がゼロになるので、関税分の700億円が浮いてくる、と言う様な算術計算の積み上げである。
この様な論法で積み上げたGDP額は10年で2.7兆円の増加効果があるという。
だが、日本の最大の問題は、【総需要不足によるデフレ経済】からの脱却である。

今以上の貿易自由化促進、関税ゼロ化、規制の国際標準化(アメリカ標準)は、国際間の価格競争を激化させて、労働コストを一層引き下げる圧力となる。
自動車の関税ゼロで浮いた700億円が働く人に確実に還元されるならば、関税ゼロ化の恩恵もあるが、そんな事態は絶対におきない。
人件費の削減、労働分配率の低下は避けられない事態となって、今までの20年の経済停滞と長期のデフレ経済が、さらに延長されるだけとなる。

経済政策の【実績が全負の「経済官僚」の論法】を、まだ採用するつもりなのか。