東矢憲二の「気づきの経営」

経営コンサルタントとしての長年の経験を活かして、様々な気づきをご紹介します。
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経営者よ目を覚ませ

2009-09-30 | 経営の気づき
昨今の厳しい経営環境下、黒字経営を夢見て利潤を追求するあまり、企業の存在意義を見失っていることが多い。結果のみを追い求めて、そのプロセスや基本的考え方を誤ってしまうと、企業経営の土台そのものが狂ってしまう。

例えば、次のような事例をもとに、考えてみよう。良識ある農家の方は、「百姓は作物を作るのではなく、土を作ることが仕事である」と言っている。立派な土を作れば、その土が素晴らしい実りをもたらしてくれるから、百姓は良い土を作るのが本来の仕事であるという考え方だ。

しかし、多くの農家は、成果を求めるあまり化学肥料をまき続けた。結果、一時的には生産性が向上したものの、だんだんと土の体力は弱ってきた。そして、害虫に対する抵抗力が弱くなり、害虫駆除のためにさらに農薬をまき続け、人が口にすることも危うい作物を生産することになった。

この事例は、農業分野のみでなく、あらゆることに通じると考えられる。企業存続の条件は、一般的には社会性・教育性・利潤性にあると言われるが、どの経営者も「利潤性」に比重を置き過ぎる嫌いがある。

実は、「企業とは営利を目的として活動する組織」という考え方は、先ほどの例で言えば、「百姓は、作物を作るのが仕事である」という次元のものであり、間違っている。利潤は、事業の妥当性を検証する一つの基準を提供するものであって、その企業の社会性・教育性が妥当かどうかを示す一つの基準に過ぎない。したがって、「企業存続の条件は社会性と教育性にある」と言うのが正しい。

その企業が正当に社会性と教育性を発揮していれば、地域社会から評価され、それ相応の売上高を確保して、結果として利益を計上できる。松下幸之助氏が「利潤を計上できない企業は、社会に対して罪悪である」と言ったのは、そのような意味が込められているからである。

社会性とは社会に対する貢献度であり、顧客を念頭に置いた活動とも言える。教育性とは、社会性を実現するための社内教育であり、全社員の品性を高めることである。物に品質があるように、企業にも品質があり、その重要要素が経営者を含めた社員の品性である。

実は、利潤の低下は、企業品質が低下した結果であり、社会からその必要性を拒絶された結果なのである。したがって、利潤回復を図るためには、教育の見直しは絶対に重要だ。