アルコール性肝硬変の76歳女性が、今朝から右上肢の動きが悪く、普段よりも反応が鈍いという訴えで受診した。夫の当地にある温泉別荘地に住んでいたが、腎臓外来に通院していた夫が腎不全で亡くなった。元々は首都圏に住んでいて、息子が引き取りたいといっていた。硬膜下血腫の既往があり、頭部CTを撮影したが、それはなかった。脳幹部にHighなとことが1スライスで写り、脳外科医に相談して頭部MRIT2スターで診てもらった。脳出血はなく、どうやらアーチファクトらしい。血中アンモニアが180と普段よりも上昇していた。肝性脳症の悪化らしい。増悪の誘因となる感染症などは指摘できなかった。リーバクトを内服しているが、外来でアミノレバン点滴を開始した。点滴しているうちに症状は改善した。入院を勧めたが、入院したくないという。世話をしているのは専任のヘルパーと看護師で、息子夫婦は首都圏にいる。電話で相談したが、本人が入院したくないというのでは仕方ないという。今日はいったん帰宅として明日の状態で再受診・入院考慮とした。
開業医さんからの紹介患者さんが毎日5名くらい来院する。循環器科だと、心雑音の精査、浮腫がある(慢性心不全)、胸痛(狭心症疑い)。消化器科だと、腹痛・腹部重苦感の精査、健診の二次検査(上部・下部の内視鏡)が多い。内科には発熱が続く、食欲不振・倦怠感、血糖が高いなどが紹介される。呼吸器科がないので、肺炎の紹介も多い。
明日の月曜日には80歳台の貧血・血小板減少が紹介されてくる予定だ。経過もよくわからないので、判断しがたいが、慢性の経過であれば骨髄異形成症候群(MDS)が考えられる。血液科に紹介してほしいところだが、遠くの病院まで行けないので、地元で診てほしいといわれることが多い。精神科のクリニックからは、どうやら高齢で廃院を考えているらしく、統合失調症の患者さんを紹介したいというFAXが来ていた。高血圧症などはいいいが、統合失調症で処方されている抗精神薬までお願いされても困る。
病院の赤字がかさんでいる。公立病院とはいえ、赤字額を何とか減らさなくてはならない。放射線科医が2台あるCTの古い方を廃棄する案を出した。維持費が年間500万かかるという。当院のCTは2台で古いのが4列、新しいのが64列で、ふだんは64列しか使っていない。64列が点検中の時や救急患者さんが複数搬入された時にだけ4列を使用している。
医局会の議題に挙がったが、救急担当医から、点検で半日CTが使えなければ、救急は受けられないと反対意見が出た。他の医局員も異存はなかった。放射線技師からは最低でも4列をそのまま残して、予算が許せば64列かそれ以上を購入して、2台置きたいとメールが来ていた。循環器科医が、放射線科医は平日日中の救急当番にも時間外の救急当番にも入っていないので、実際に救急を受けるものの気持ちがわからないのだろうと言っていた。
一番近い基幹病院はCTが2台あり、今度3台になるそうだ。今までも新機種のCTが使えない時は、救急を制限するという連絡が何度か来ていた。確かに、今の医療レベルを維持するためには、CTなしの診療は許されない。
73歳男性が昨日の夕方に内科外来を受診した。外来は午前中だけだが、直接受診した患者さんは、そのまま診ている。胸痛という話だったが、話をしているうちに腹痛になったりする。どうも理解力がなさそうだと、長谷川式に準じて質問すると、年月日がわからない。祖語後に胸や腹はいたいですかと聞くと、痛くないという。胸部X線と心電図は異常がなかった。家族に聞くと、先月半ばから食欲が低下して3Kgやせたそうだ。腹部に圧痛はなかった。明日絶食で来てくださいと指示した。
今日血液検査と腹部エコーと上部消化管内視鏡検査を行った。白血球数が9000でCRPが20と炎症反応の上昇があった。腹部エコーは異常なし。内視鏡は胃粘膜の萎縮と発赤が目立つが、画にゃ潰瘍はなかった。上肢下肢の痛みや圧痛はなかったが、項部のこわばりとしゃがんでからの立ち上がりが辛そうだった。両側鼠径部が痛いらしい。どうもリウマチ性多発筋痛症らしいと思われた。念のため、胸腹部CTなで行ったが、腸腰筋膿瘍などの感染巣はない。歩くことはできるが、辛そうだった。
プレドニン10mg/日内服で経過をみることにした。認知症がなければもっと正確な訴えができたのではないだろうか。ちゃんと長谷川式をすると、10点台くらいかもっと低いか。こちらは以前から医療機関に通院していて、家族が処方を希望しないので、経過をみているだけだという。
88歳男性が救急搬入されて、救急当番の神経内科医から連絡が来た。内科の若い先生が担当で、先月末に退院したばかりだった。誤嚥性肺炎と判断される浸潤影が左下肺野にあった。前回の入院も1か月半に及びやっと退院にこぎつけたらしい。肺炎が治るのかどうかという問題もあるが、はたして食事摂取できるかどうかわからない。この方はASOで両側の下肢を切断していた。息子夫婦と同居しているが、ふたりとも仕事があって、患者さんの姪にあたる女性が付いて来ていた。病棟の看護師さんの話では、息子さんを病棟で見かけることはなかったそうだ。お嫁さんも退院する時に、不本意という態度だったという。以前にこの方を診ていた神経内科医が、家族はクセがあるからとアドバイス?してくれた。
次に救急車で搬入されたのは、52歳女性の吐血だった。消化器内科医が呼ばれた。この方は以前にもアルコール性肝硬変の胃食道静脈瘤からの吐血で救急搬入されていた。胃静脈瘤の治療は特殊なので、大学病院に搬送されて、処置を受けたそうだ。通院を中断して、飲酒を継続して今日に至った。搬入時は血圧が40とショックだった。輸液と輸血で何とか安定して、大学病院の消化器科に搬送となった。
昨日、74歳男性が一過性の意識障害で救急搬入された。脳梗塞の既往があり、施設に入所していた。搬入時は意識清明で新たな神経症状はなかった。血圧が80~110と変動していた。心電図は異常なしで、頭部MRIでも新たな病変はない。救急担当の外科医から連絡が来て、診に行った。前の日までネフローゼで腎センターのある専門病院に入院していたそうだ。低蛋白血症・低アルブミン血症があり、BUNと血清クレアチニンが上昇していた。プレドニン25mg/日と免疫抑制剤が処方されていた。末梢血のHbは11で年齢的には問題ないと思われた。降圧剤が処方されていたが、血圧が変動していたらしく、血圧が低い時は薬をやめる指示と、高い時に追加する薬の指示があり、入院中から血圧の変動があったと推定された。座位で朝食を待っている時だったというので、起立性低血圧による脳循環不全と思われた。
外来で経過をみていたが、特に問題ないので、施設に帰すことにした。ところが、会計して待っている時にまた血圧が低下して意識低下があり、救急室に戻ってきた。横臥していると、意識は正常だった。入院して経過をみることにした。
入院後、夕食を食べた後に食物を嘔吐したが、新鮮血の吐血があった。ちょうど病棟に消化器科医がいたので、緊急で内視鏡検査をしたもらうと、出血性胃潰瘍があった。湧出性の出血があり、エタノールとクリップによる止血術が行われた。抗血小板剤2種類を内服しているので、止血しきれない可能性があったが、なんとか止血した。あとで入院していた病院に問いあわせると退院間際の検査でHbは11だという。救急搬入された時に出血が始まっていたようだ。吐血した時に排便があったが、普通便でタール便ではなかった。血圧が変動するものと決めつけずに、時間をおいて血液検査を繰り返すなどの対応が必要だった。後から考えるる、BUNと血清クレアチニンの比が上昇していて、消化管出血を示唆していた。
神経内科医から、心房細動・脳梗塞(脳塞栓)で神経内科に通院している78歳男性のことで相談を受けた。今日は定期の予約日だったが、血液検査で肝機能障害があった。白血球数は正常域だったが、追加したCRPは6.9と上昇していた。発熱や腹痛はなく、奥さんの話では2-3日前から調子が悪そうだという。腹部エコーで胆嚢内に小結石が2個あった。胆嚢は腫大しているが、緊満しているわけではない。胆嚢壁の肥厚はなかった。尿路感染症はなく、肺炎もなかった。胆道感染症はあるのだろう。腹部CTで総胆管内に結石が疑われた。放射線技師に無理に頼んで、MRCPを入れてもらった。総胆管内に結石が5個はあり、径1cmで大きい。この方は10年以上前に胃切除術を受けていた。ビルロートⅠ法で、専門医に頼めば内視鏡的処置ができなくはないのかもしれないが、砕石しないと摘出できない可能性もあり、外科手術が好ましいと判断した。外科医に相談すると、胃切除後ということで、即外科で手術しますと言ってくれた。