特別養護老人ホームでCOVID-19のクラスターが発生した。地域の基幹病院で施設に出張して、入所者のPCR検査を行ったという話がった。
当院でもショートステイ入所者や施設職員のPCR検査を連日行っていた。先週末金曜日にはショートステイ入所だった88歳女性と73歳女性が保健所の指示で入院した。
88歳女性は年齢で、73歳女性は脳梗塞後遺症の既往で入院を指示されていた。幸いに肺炎像はなく、食事摂取もできる。ただ、ポータブルトイレもうまく使えないので、介護が必要になる。入院後に転倒したりしている。
そして、火曜日に95歳女性の入院を依頼された。89歳時に脳出血の既往があり、右麻痺を呈している。嚥下障害で胃瘻造設による経管栄養が施行されていた。発語はない。症候性てんかんで抗てんかん薬の内服(注入)があった。
3月1日から発熱があり、嘱託医の指示で点滴・抗菌薬投与をしていた(尿路感染症と思われたのかもしれない)。発熱が続いていて、入院時にも37.7℃の発熱があった。
胸部CTで両側肺に肺炎像があり、左胸水も認めた。ふだんの状態がほとんどわからないが、胸水は基本的にCOVID-19ではない所見なので、他の原因(誤嚥性肺炎併発・心不全など)によるのだろう。
白血球1800・CRP5.0、Dダイマー2.1、血清フェリチン1184、LDH236とコロナらしい検査値を呈していた。
酸素飽和度が90~93%で酸素吸入2L/分を始めた。発症1週間を経過しているので、デキサメサゾンと抗菌薬で治療を開始した。
発症して1週間以上経過して発熱が続いていることから、肺炎を来しているのは予想していた。施設内での酸素飽和度(室内気)を聞いて、少なくとも重症ではないので、当院で引き受けることにした。
保健所から家族(娘さん)に、治療として人工呼吸の適応はないと説明してもらっていた。入院後に家族が来れなかったので、電話で病状と方針を説明して了解を得た。翌日にも娘さんが来れず、その子供である患者さんの孫の男性が来てくれた。
当院は中等症までなので、重症化した際には大学病院などの高次医療機関に搬送することになっている。しかし、95歳・寝たきり状態・胃瘻造設状態では人工呼吸の適応は通常なく、酸素吸入・抗菌薬・ステロイドなどで治療して、病状悪化・心肺停止時にはDNARの方針としてもらった。
大阪の中等症までに対応する十三病院で、患者さんが人工呼吸を希望せず、重症対応の病院に搬送することなく、そのまま十三病院で亡くなったという経過をテレビで見た。
感染病棟の看護師さんから、当院でも初めてCOVID-19の死亡者が出たらどうしましょうと心配された。当院には納体袋が1セットだけ送られてきている。感染管理の看護師さんが亡くなった場合の対応を保健所に問い合わせた。
一通り亡くなった場合の話をしたが、最後はなんとか治して施設に戻そうという話になった。ここまで全介助の患者さんは初めてになる。せっかく介護・治療に通常の患者さんの3~4倍(以上?)の労力をかけるのだから、いい結果にしたい。