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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

不明熱

2023年12月01日 | 感染症

 11月28日午前の発熱外来を48歳女性が受診した。40℃の発熱があった。腰痛があって動けないが、前日当院の整形外科外来を受診していた。

 整形外科の記載は11月26日から腰痛とあった。土日に娘さんのこと東京に出かけていた。結構歩いたらしいので、それが引き金になったかもしれない。ただ後で診察した整形外科医に訊くと、安静時痛が気にはなってはいたそうだ。体重が100kg超と肥満がある。

 発熱外来なので、上気道症状がなくてもコロナ・インフルエンザの迅速検査から始まる。両者陰性だった。

 

 この患者さんは2019年に心不全で外来を受診して、地域の基幹病院循環器内科に紹介していた。返事には拡張型心筋症様で心収縮能が全体的に低下しているとあった。糖尿病もあり、心不全に対してにもなるがSGLT2阻害薬が処方されていた。

 何らかの細菌感染症と判断され、院内で精査を行うことにした。白血球14300・CRP19.0と炎症反応高値があった。アトピー背皮膚炎で基幹病院皮膚科にも通院している。

 処置室の看護師さんが蜂窩織炎でしょうか、といっていた。膿痂疹(少し時間が経ったもの)と確かに蜂窩織炎様の発赤が身体中に散在している。ただし、圧痛を伴うようなここが蜂窩織炎といえる部位はなかった。

 肺炎像はなく、意外に尿混濁もなかった。腰痛に注目すれば皮膚感染症から波及して、化膿性脊椎炎になる可能性がある。腰椎MRIで確認することにしたが、特に所見はなかった。(椎間板ヘルニアは軽度にある)

 整形外科医にもMRIを確認してもらったが、ないそうだ。病初期に画像で出ない可能性もあり、1週間後に再検してはということになった。

 心雑音はないと判断したが、自信はない。当院の心エコーは他の病院から検査技師が来る週1回の検査になっている。自分でもエコーを当ててみたが、よくわからない。

 血液培養2セットと(尿所見は異常がないが)尿培養を型通りに提出した。入院で、蜂窩織炎?としてセファゾリンで治療を開始した。

 次の日に検査室から血液培養2セットからグラム陽性球菌が検出された報告があった。やはり皮膚からの菌の侵入、心内膜炎の疑い、化膿性脊椎炎疑いになる。抗菌薬を全グラム陽性球菌カバーのバンコマイシンに変更した。

 

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Dr.岡の感染症プラチナレクチャー~ケアネットまつり

2023年10月30日 | 感染症

 CareNeTVで、ケアネットまつりとして著明な先生方の講義が出ている。岡秀昭先生のレクチャーは何度も見返している。ご著書の「感染症プラチナマニュアル」に沿って日常診療を行っている。

 ただ岡先生は、新型コロナは基本飛沫感染、といわれる。エアロゾル感染は空気感染とは違うともいわれる。

 医療センターの西村秀一先生らは、新型コロナはエアロゾル感染であり、要するに空気感染であるとしている。インフルエンザも他の呼吸器ウイルスも基本的にはエアロゾル感染と考えているようだ。

 西村先生らが主張するように、飛沫と飛沫核は含まれる唾液成分の量が連続的に変化しているだけで、はっきり区別できるわけではない。ダイアモンド・プリンセス号では循環式換気により個室にいても感染した。飛沫感染、飛沫核感染(空気感染)ではなく、すべてエアロゾル感染と表現するのが正しいと思う。

 通常の風邪もインフルエンザも、周囲に感染者がいない(わからない)状態で感染している。新型コロナも現在はそうなっている。無症状感染者がいることも含めて、それはエアロゾル感染したと考えるのが妥当だと思う。

 

Dr.岡の感染症プラチナレクチャー
お祭りVer.発熱診療
2023年9月23日

症例)22歳女性 39.0℃の発熱と倦怠感
(この時点では)診断できない
検査値:白血球6340・好中球93.5%・CRP6.61、コロナ・インフルエンザ抗原検査は陰性
(この時点では)診断できない

PCR診断のゴールドスタンダード
・咽頭よりも鼻咽頭の方がウイルス量が多い
・PCRは鼻咽頭スワブまたは喀痰(エアロゾル対策のもとで採取)
・スワブでの検体採取の方法
 …少し頭部を後方に反らして目を閉じてもらう

PCRについて
・PCRの精度-高い特異性
 理想的な環境では高い感度も持つが、臨床性能は条件により可変的
・偽陽性はまれ
・偽陰性率は5%未満から40%
・繰り返し陰性で、4回以上の検査で初めて陽性となることはまれ

 偽陰性
 ・暴露日 100%
 ・5日目 38%
 ・8日目 20%
 ・21日目 66%
 Ct値の臨床応用は不正確(異なる検査室で標準化されていないため)

PCRの解釈と運用
・PCRが陽性=COVID-19確定
・PCR陽性≠感染力がある
・陰性でも、可能性が高ければ疑いのまま!!

病院や医療施設での感染予防策
COVID-19は
・症状出現前から感染性がある
⇒病院に入る人全てのユニバーサルマスク(全員のマスク着用)実施を推奨
●実際に医療従事者の感染予防効果あり ユニバーサルマスクの導入後⇒医療従事者のCOVID-19陽性者が減った

いずれにしても大切なことは
決して ガードを下ろしてはいけない!ということだ

症例)22歳女性 39℃の発熱と倦怠感 続き
病歴で、コートジボアール共和国から帰国
末梢血塗抹でマラリア原虫2%
診断:熱帯熱マラリア
治療マラロン

感染症のSTSTAE
(Dr.徳田の臨床推論講座)
S:Sick contact 病人との接触
T:Tb contact 結核暴露
S:Sexual History 性行為
T:Travel History 渡航歴
A:Animal contact 動物との接触、生肉
E:Enviromental Exposure 環境暴露(山、川、温泉)

症例)54歳男性 39℃の発熱と頭痛、倦怠感
診断はデング熱
渡航地:インドネシア
暴露歴:蚊
潜伏期:3~5日

症例)41歳男性39℃の発熱と頭痛、倦怠感
診断はレプトスピラ症
渡航地:西表島
暴露歴:河川での遊泳
潜伏期:5~7日

エボラ出血熱
・症状:発熱、頭痛、倦怠感、嘔気、下痢
潜伏期:約7~10日間
流行地:中央・西アフリカ

症状は非特異的
マラリア、ウイルス出血熱(デングも)、腸チフスの症状での区別は難しい
外来での
発熱!発疹!下痢!咳!
必ず渡航歴の確認をしましょう→速やかに感染症専門医へコンサルト

一方で!
・院内発熱の診断は難しくない!
・ただし、原則を守ること

発熱、CRP上昇のみを根拠に
抗菌薬を開始しない、変更しない、追加しない

感染症診療は三角形で考える
感染臓器
微生物
抗菌薬
  CRPは臓器も微生物も教えてくれない!

感染症診療は2段構え
初期治療(経験的治療)標的治療
 De-escalation:敗血症、細菌性髄膜炎、重症肺炎
 Escalation:膀胱炎、副鼻腔炎

頚椎歯突起周囲石灰化、CRP12
→偽痛風
膝関節炎、CRP18
→偽痛風

院内発熱 非感染症
薬剤熱
偽痛風
深部静脈血栓症
無石胆嚢炎
内分泌疾患

薬剤熱 比較三原則
・比較的徐脈
・比較的元気
・比較的低CRP
発疹や好酸球増加があればラッキー

感染症?非感染症?
・CRPだけで判断できない!
・感染巣、微生物を丹念に探すこと
・感染症は原則、悪化か改善のみ!

院内FUOの原因
〇感染症は悪化か改善する
〇引き分け状態なら以下を鑑別する
・膿瘍
・C.difficile感染症
・薬剤熱
・深部静脈血栓症、肺塞栓症

院内発熱 感染症
だいたいこのどれか!
カテーテル血流感染
カテーテル尿路感染
院内肺炎人工呼吸器関連肺炎
手術部位感染
C.difficile感染症
ひとつずつ指先確認!

●カテーテル血流感染症
 局所感染所見は? 3%

カテーテル血流感染の診断基準
①末梢血液培養の少なくとも1セットが陽性
  +
発熱、悪寒戦慄、血圧低下などの所見があり
  +
カテーテル以外に感染のフォーカスがない
②なおかつ以下のうちいずれか陽性
a.カテーテルの定量・半定量培養で有意な菌量あり
b.CV血・末梢血の培養陽性化に有意な時間差あり
c.CV血・末梢血の定量培養で、コロニー数比が5:1より大きい

●カテーテル尿路感染症
無症候性細菌尿かどうか?
・高齢者では20%ほど
・原則、利用しない(例外:妊婦。泌尿器科手術前)
・カテーテル留置があると1日4%細菌尿
 
膿尿、細菌尿あり≠尿路感染症
カテーテル尿路感染症の診断
膿尿、細菌尿あり+除外診断
⇒血液培養を提出
尿培養から大腸菌、血液培養から黄色ブドウ球菌(こちらが本物)

●院内肺炎/VAP
院内肺炎、VAPの診断
・新規の胸部陰影
  +
・以下のうち2つ
 ✓発熱
 ✓WBC増加
 ✓膿性痰増加
この診断基準でおおよそ7割が実際に肺炎!
⇒血液培養を提出

●手術部位感染
深部か、浅部か?それが問題
深部は表面からではわからない

表層切開部:皮膚、皮下組織
深層切開部:筋膜、筋層
臓器体腔:腹腔内感染、新内外膜炎、縦隔洞炎、頭蓋内感染、骨髄炎、副鼻腔炎、乳腺炎、血管の感染など

●CDI
院内下痢
・非感染性7割→薬剤が多い
・感染性3割→ほどんどがCDI
下痢があれば、CDトキシン抗原検査を出す
便培養ではない

院内発熱で大切なこと
・基本に忠実に、型通りにやる
・全身を診察
・除外診断

発熱ワークアップ
 血液培養2セット尿培養胸部X線

症例)72歳男性
脳出血で入院
開頭血腫除去術実施
術後7日目に発熱、頻脈、血圧低下あり
手術部位は問題なし、喀痰増加なし、胸部聴診異常なし
人工呼吸管理下で経鼻経管栄養中
右前腕に末梢ライン留置あり、オムツ
感染症?非感染症?
・術後7日
・急激に悪化
おそらく感染症!

ひとつずつ指先確認
→末梢点滴部位に発赤・腫脹があった

見逃しやすいものを認識して探せ!
・副鼻腔炎
・感染性心内膜炎
・褥瘡、肛門周囲膿瘍
・急性前立腺炎、精巣上体炎
・化膿性椎体炎、化膿性関節炎
・胆管炎、肝膿瘍

感染症診療は三角形で考える
・感染臓器:CRBSI
・微生物:MRCNS、MRSA、GNR、カンジダ
・抗菌薬

血液培養からE.faecalis
尿培養陰性
胸部X線異常なし

カテーテル血流感染症治療
初期治療(経験的治療)
バンコマイシン+セフェピム
  ↓
標的治療
腸球菌E.faecalisに対してアンピシリン
 
Take Home Message
病歴、身体所見をしっかりとる
端折るな日々血液培養
とことん考えろ 
  迷ったら前へ

 

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ICD講習会

2023年10月02日 | 感染症

 9月28日(木)はICD講習会に参加した。地元での開催なので参加証をもらうのには都合がいい。ICD講習会は医療関係の学会に合わせて開催されて、参加自体は無料だが、遠方の学会場まで出かけることになると負担が大きい。

 講習会は90分と短く、これまであまり役立ったという印象はない。参加証をもらうためと割り切って参加していた。今回も期待してなかったが、これまでで一番役立つ内容的にも面白い講習会だった。

 

 最初の講演は「結核菌の分子疫学解析」だった。結核菌のゲノム解析(約440万塩基対)を行い、ゲノムの変異蓄積状況を制裁することで、誰から誰に伝播したかを推定できる。

 たとえば、病院内で2名の結核患者が出ると、1名から他の1名にうつったと判断されるが、実際はまったく別の患者からその2名がうつったということがわかったりする。

 COVID-19のように潜伏期が短いと、伝播の状況(患者発生の時期・場所・感染経路)が通常の疫学調査で推定できる。結核菌のように潜伏期間が長いと伝播の状況を、疫学調査だけでは推定するのが難しい。そこで、ゲノム解析が必要となるということだった。

 

 2つ目の講演は、リケッチア症とCOVID-19の講演だった。演者は研究したリケッチアの話をしたかったらしいが、学会からの要望はCOVID-19だった。

 日本に多いリケッチア感染症として、つつが虫病と日本紅斑熱ではどちらが多いかを、抗体保有率で調査したそうだ。すると、つつが虫病や日本紅斑熱よりも、(同時に検査していた)発疹熱の抗体保有率の方が多かったそうだ。発疹熱は日本では見逃されているのではないかという。

 つつが虫病は、Orientia tusutusugamushiを保有するダニ(つつが虫)が人を刺咬して感染する。日本紅斑熱はRickettsia japonicaを保有するマダニに刺咬されて感染する。発疹熱はRichettsia typhiを保有するノミに吸血されて感染する。

 かなり以前にフィリピンから帰国した20代女性が発熱・発疹で当院に入院した。血液検体を国立感染症研究所に送って、発疹熱と診断された。ミノサイクリンで軽快退院した。

 

 COVID-19について、長崎港に入港したコスタ・アトランチカ号の集団感染にかかわったそうだ。ダイアモンド・プリンセス号の経験から下船して隔離しようとしたが、受け入れ先がなく、船内で経過をみるしかなかった。

 スマホを使った「健康管理アプリ」で症状を入力してもらって管理したのが好かったそうだ。1名しか感染しなかったので、大成功だが、ニュース性に乏しくほとんど報道されなかったという。(聞いたことがなかった)

 このアプリは病院職員の健康管理(COVID-19罹患の管理)にも使えて、有用ということだ。発熱だけでは拾い上げができず、他の症状(呼吸器症状・全身症状)を入れないと診断できない。

 COVID-19は主にエアロゾル感染なので、やはりユニバーサルマスクの使用、適切なN95マスクの使用、換気が大切ということを具体的な事例を上げて解説してもらった。病院内の離れた病室でCOVID-19が発症したが、換気的に風下に当たる病室だった、というのが興味深かった。

 お互いサージカルマスクを着けただけでは、十分な感染予防にならないので、換気が重要だという。看護師さんたちの申し送りは、お互いに近すぎるということだった。また問題になっている濃厚接触者が勤務する時だが、N95マスクを着けてもらうといいという。

 

 これまで出たICD講習会で一番役立つ会だった。(参加証明で提出する用紙の感想のところにも記載した)

 

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カテーテル関連血流感染症

2023年09月24日 | 感染症

 高カロリー輸液を施行していた91歳女性は発熱が続き、血液培養2セットとカテーテル先端の培養からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された。

 

 一人暮らしをしていたが、7月7日に転倒して右大腿骨転子部骨折を来した。当院に救急搬入されて、地域の基幹病院整形外科に搬送して手術(骨接合術)を受けた。

 術後すぐに当院の回復期リハビリ病棟に転院してきた。先方の病院で不穏がひどかったらしく、向精神薬が投与されていた。

 ロナセンテープ20mg貼付、ルーラン4mg2錠内服にロフラゼブ酸エチル1mg、デエビゴ5mgだった。覚醒が悪く、内服困難もあり、それらを中止した。

 それでも経口摂取はわずかで、継続した経口摂取は困難だった。整形外科医が担当していたが、内科に転科となった。

 家族と相談して高カロリー輸液で経過をみることになった。病棟看護師さんから、手は動かすので上から入れるのは(内経静脈や鎖骨下静脈)難しいので、下から(大腿静脈)お願いします、いわれた。

 手関節の偽痛風(関節炎)の発熱もあったりしてわかりにくかったが、上記の培養を提出して、MRSA検出、という経緯だった。

 提出翌日にグラム陽性球菌が検出されたと報告があり、CVカテーテルを抜去して末梢静脈から約1週間点滴してもらった。抜去前からバンコマイシンを始めていたので、継続している。

 末梢静脈からの点滴継続は厳しいので、上肢の動きも以前ほどではないので、(少しだけ看護師さんに抑えてもらって)内頚静脈からCVカテーテルを挿入した。

 

 今月療養型病床のある病院に転院した85歳女性は、高カロリー輸液をしていたが、首も上肢も動かしてしまうことから大腿静脈から穿刺していた。

 カテーテル関連血流感染を繰り返して、MRSA、MSSA、MRSEと次々に体表面の菌が検出された。その都度CVカテーテルを入れ替えていた。

 

 やはり大腿静脈からのアプローチは感染を来しやすい。一番感染しにくいのは鎖骨下静脈からだが、今どきは合併症の危険があるのでほとんど行われなくなった。

 内頚静脈は穿刺が容易で合併症は少ないが固定しにくいという問題と、患者さんが首を動かしてしまうという問題があり、大腿静脈ほどではないが、血流感染を起こす。

 

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MRSA、MSSA

2023年08月26日 | 感染症

 5月16日に交通外傷(胸椎骨折、右脛骨骨折)で整形外科に入院した86歳女性は、保存的治療を経過をみることなった。

 糖尿病があり、内科で診てほしいといわれて、入院当初からかかわっていた。入院後に食事摂取が進まず、胸部X線・CTで誤嚥性肺炎があるとわかり、内科で抗菌薬点滴静注を行った。

 1か月経過して骨折は安定したとして、6月17日に内科に転科となった。両上肢と首は自由に動かすため、右大腿静脈からCVカテーテルを挿入して、高カロリー輸液を開始した(インスリン混合あり)。そのまま安定すれば、療養型病床のある病院へ転院依頼することになっていた。

 7月14日から高熱・悪寒が出て、カテーテル関連血流感染症が疑われた。バンコマイシンと、尿路感染症疑いもあり、ファーストシン(CZOP)を開始して翌日にはきれいに解熱した。

 どちらかというと尿路感染症かもしれないと思われたが、血液培養2セットからMRSAが検出された。CVカテーテルを抜去したが、バンコマイシン投与後なので、カテーテル先端の培養は陰性だった。

 バンコマイシンは14日間投与したが、途中から軽度の肝機能障害を認めていた。(中止で軽減)左大腿静脈からCVカテーテルを入れ替えた。

 8月11日から高熱が出現して、再度同じ抗菌薬をカテーテルを開始した。連休の初日だったので、培養は提出できなかった。解熱傾向にはあったが、連休明けに確認すると、刺入部から血性浸出物が出ていた。これは明らかに感染を来しており、血液培養を提出して、すぐにカテーテルを抜去した。

 カテーテルから引いた血液は少量しかとれなかったので、一応それも培養に出したが、末梢静脈からも血液培養を2セット提出した(計3セット)。カテーテル先端も培養に提出した。

 カテーテル抜去後は解熱した。前回もバンコマイシン投与で肝機能障害があったが、今回は軽度ではなく高度になっていた。ファーストシンは継続した。まだ培養結果は出ていない。それで発熱が起きた時はMRSA用にテイコプラニンを開始するつもりでいた。幸い解熱したままだった。

 カテーテル先端の培養とカテーテルから引いた静脈血から、今度はMSSAが検出された。感受性は良好だった。ファーストシンも効いていたので、作用の異なる2種類の抗菌薬が入ったことになる。

 CVカテーテルはまた右大腿静脈から入れ替えている。穿刺部位として好ましくないので、次回は上肢と首を抑えてもらって、内頚静脈から入れるしかないかもしれない。

 

 

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カテーテル関連血流感染症

2023年08月18日 | 感染症

 現在、当院で提出される血液培養は月10件ちょっととかなり少ない。尿路感染症(急性腎盂腎炎)・胆道感染症・原因不明の発熱での提出もあるが、病棟からだとカテーテル関連血流感染症疑いでの提出になる。

 カテーテル関連血流感染症では基本的にはカテーテル抜去を要する。バイタルが安定していれば血液培養の結果で診断確定してから抜去することもあるが、バイタル不安定では直ちに抜去する。

 コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)以外の菌では原則、カテーテル抜去になる。CNSでは抗菌薬ロック療法でカテーテル温存を試みてもよいらしいが、行ったことはない。

 

 4月13日地域の基幹病院整形外科で大腿骨頸部骨折術後(人工骨頭)に80歳男性が、回復期リハビリ病棟に転院してきた。4月から赴任した整形外科医が担当になっていた。

 ところが4月25日から癒着性腸閉塞(虫垂炎術後)からの嘔吐で誤嚥性肺炎を来した。こうなると整形外科では診られない。一般病棟に転棟して、担当も内科(腎臓内科の若い先生)が担当になった。

 腸閉塞はNGチューブ挿入で保存的に軽快して、誤嚥性肺炎も抗菌薬投与で軽快した。結局経口摂取困難となって、末梢点滴からCVカテーテル挿入(右大腿静脈から)で高カロリー輸液になった。

 しばらく安定していたが、発熱が続き、7月⑪日提出の血液培養2セットからコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus caprae)が検出された。バンコマイシン投与で軽快していたが、CVカテーテルはそのままだったので治りきることはなかった。

 8月1日提出の血液培養2セットからまた同じ菌が検出された。CVカテーテルを抜去して、今度は右上腕の静脈からPICCが挿入された。

 腎臓内科の先生はPICCが得意だった。当院では以前に在籍した外科医がもっぱらPICCを行っていたが、どうも固定しにくいセットだったらしい。使いやすいキットを購入したいと周囲の先生方に訊いていたが、他に行う人はいないので、希望のキットを購入して下さいとお伝えした。

 

 PICCはやってみたいと思いながらまだ行ったことはない。認知症の高齢者だと首と上肢を動かしてしまうので、それを抑えて内頸静脈から挿入するのは難しい。上腕だったらなんとか(動くのを)抑えられるかもしれない。

 地域の基幹病院では血液培養の提出が月に100~200件らしい(県庁所在地の専門病院は300件と聞いた)。血液培養の提出件数が病院の診療レベルを表すとされるので、件数を増やす必要がある。

 

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