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もしTPP交渉に参加したらどうするべきか。(追)

2011年11月09日 18時18分34秒 | 政治・経済・社会・法律・文化
TPPの議論が、白熱化している。11月12日13日にはハワイでAPEC首脳会議が開かれるので、ここ数日でTPP交渉参加問題に決着が付くという。しかし奇妙なことに報道は今沈静化している。
既に今日の朝のニュースでNHKは、「野田総理大臣は、今月12日、APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議が開かれるハワイで、アメリカのオバマ大統領と会談し、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉への参加問題について、日本政府の方針を伝えることにしています。」と伝えている。

一方民主党内では、11月9日午後の時点で大詰めの調整と伝えられているが、それ以外ニュース報道では動きがない。大規模な反対運動があったにもかかわらず、政府は、TPP交渉への参加を表明するのだろうか。
今日の衆議院予算委員会では、総理は「TPP(環太平洋経済連携協定)からFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)への道筋もある」と発言したと報道されている。この流れを見るとTPP推進に総理の腹は決まっているようだ。

政府がその方針なら、今後我々は今までのTPPの疑問点や問題点に関し、政府がどのように日本の国益を守りつつ日本に有利なようにTPP交渉を進めるのか、見守るしかないのだろうか。

特に大きな問題である、日本の健康保険制度を守りきることや、中小零細農家への保護政策をどうするのかといった国内農業強化策や、零細農家への保護振興策をどのように実現するのか、しっかりと議論し政府与党の政策を見守らなければなるまい。

農業林業問題は、GDPを高めるという問題だけでなく、日本文化の問題や農民や山に住む人の生き方や、生きがいの問題でもある。更に、都会に住む人にとっても、仕事を離れ疲れた心身を癒す時に、観光や休養の為、地方に行き、そこで日本の豊かな自然を特徴付ける里山とか水田や手入れされた林や森に接する事で、健康な心身を回復させることは、ますます重要になる。

そういう意味で日本の原風景である人間の手の入った里山や、自然豊かな棚田や、小規模の水田と畑の零細農業は、経済的成果主義やグローバリズムの価値観とは違う価値であるといえる。それは一種の食文化と同様の文化遺産であり、その意味での経済価値は別の観点で評価されなければなるまい。そのような貴重な里山的自然環境をグローバリズムのために破壊してはならない。

また、日本の大規模農業適地ですら、規模の点で米や大豆やトウモロコシや酪農の分野では、アメリカやオーストラリアの大規模農業牧畜に対し、日本の農家は全く勝ち目がないといわれる。現に秋田の八郎潟干拓地ですら、厳しい状況が報道されていた。しかし農業問題に詳しい人の話によると、アメリカやオーストラリアと規模が違うという。日本がいくら農地を集約してもアメリカの価格には太刀打ちできないという。米やその他農作物の内外価格差は、とても日本の農業の生産性を高めたからといって比較できるレベルではないのだ。

グローバリズムに与する日本の識者は、このときにこそ、農業の大改革をすればよいという。たとえば、美味しい米なら高くても買うと言う。確かに味に大きな差があれば、富裕層は買うだろう。しかし富裕層は多くない。それに海外の農業生産技術は向上しつつあり、品質に差が無くなれば、需給の関係で高品質の食品も低価格化するのは必至だ。

このまま農業にグローバル化を導入すれば、日本の農家や林業は、壊滅的打撃を受け、後継者もいなくなる。結果的に、日本の原風景である農村を荒廃させ、日本の原風景を失うことは、日本人の心も荒廃させることに繋がるのかも知れない。

更に、一部の日本の意欲的農家は、海外生産を積極的に考えている。海外で米を作り、それを低価格で輸出するという。当然輸出対象に日本も入っている。このような事態になれば、日本の産業空洞化が叫ばれ、意欲のある中堅企業や小企業までが中国に工場を作り、又は指導に行き逆輸入したため、バタバタと中小零細企業が多数倒産したのと同じことが起きるのではないだろうか。木材は、自由化した為に輸入材に押され、経営が維持できなくなり、山林の荒廃を招いている。

政府はTPPに参加するなら、農業や林業の保護と育成の具体的政策示すべきであろう。当然のことながら、農林業従事者の所得を減らさないようにすることが前提となる。

TPPには問題点が多くある。しかも分野は、農業だけでない。もし交渉に参加することになった場合、日本としてすべての分野の問題点と、絶対に譲れない点を列挙し、同時に日本の弱点を克服する仕組みの構築を議論することが必要と思う。

追) 末尾に掲載した、アメリカの議員の書簡を見れば、アメリカは、日本が参加すれば、農産物、自動車、医療、の分野に重点を置いて、市場開放を求めてくる可能性があるようにも受け取れる。その場合、それらの分野の交渉で日本が抵抗すれば「別の次元の複雑なものになる。」と警戒しているように見ることも出来る。


ちなみにTPP関連の参考資料を表示する。
TPP協定交渉の分野別状況(23年10月)国家戦略室http://www.npu.go.jp/policy/policy08/pdf/20111014/20111021_1.pdf
TPP関連レポート http://www.nochuri.co.jp/topics/01tpp.html

反対派の参考意見等
さるでも分るTPP(少し古いかも)http://luna-organic.org/tpp/tpp.html
解説ブログhttp://gigazine.net/news/20111104_tpp/


追記:その他アメリカの見方の一端。 NHKニュース(11/9)より
「日本がTPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉に参加するかどうか検討していることについて、アメリカ議会の有力議員らは、カーク通商代表に書簡を送り、日本が本当に市場を開放する意思があるのかどうか、慎重に見定めるべきだとして、日本の出方に警戒感を示しました。

この書簡は、アメリカ議会上院の財政委員会のボーカス委員長ら与野党の有力議員が、カーク通商代表に対して送ったものです。この中で、ボーカス委員長らは「日本は世界第3位の経済力を持ちながら、長年、重要な競争から国内市場を守ってきた」と述べ、アメリカが長年にわたり、牛肉などの農産物や自動車、医療などの分野で日本市場の閉鎖性に苦しんできたと指摘しました。そのうえで「日本が高い基準を満たし、歴史的に閉鎖的な市場を本当に開放する意思があるのかどうか、慎重に見定める必要がある」と述べ、日本の姿勢を慎重に見極めるよう、強く求めました。さらにボーカス委員長らは、日本がTPPに参加すれば、交渉は全く別の次元の複雑なものになると指摘し、日本の出方に警戒感を示しました。」

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