今回の選挙の結果、投票率が下がったことは、組織票の強い自公は有利に働いた。
投票率低下の理由は、民主党への期待はずれと、その受け皿となるべき第三極の混迷と潰しあいである。
今回の選挙では、驚くことに、自民党の得票数(得票率ではない)は前回選挙より下がっていて、得票率の低下と民主党への批判が向かったかもしれない第三極の票の奪い合いとで大きな漁夫の利を得たということらしい。
事実、自民党候補も自民党への風を感じていなかったというし、マスコミやTVの評論家・コメンテーターは、今回は、自民党が敵失で勝った選挙と評価している。
民主党に関しては、有権者が、民主党の党としてのまとまりの無さ、統治能力に不安を持ち、更に実行力の無さに民主党への信頼や期待をなくしたといわれる。
また、選挙直前まで離党者が発生し、離党者は民主党の欠点をあげつらう。
これは民主党のイメージを大きく下げると同時に、そんな党に忠誠心が無い人を多く抱える、まとまりのない民主党に、有権者が不安を抱くのは当然だ。
今回の選挙で、第三極として維新の会、みんなの党、未来の党、が注目されたが、それぞれ問題があった。
先ず、維新やみんなは第三極というものの、政策の実態や志向性は自民党と非常に近く、保守・第二自民党といってもよく、新自由主義経済の小さな政府、自己責任を求め、金持ち優遇傾向の強い、競争原理主義の方向の改革を目指している。
当初、維新とみんなの党の連携は進むかに見えたが、太陽の党との合流問題で足踏みした。
維新の党は、はじめに、古い統治機構や既得権を破壊し新しい経済構造を作るといったスローガンが新鮮で、革新的な感じであったので、維新を支持していた人たちが多くいたかもしれない。
しかし、国政レベルに話が進むにつれ、新自由主義的傾向(競争第一や小泉時代の自己責任論)や憲法問題や保守色の強さに気付き、当初のイメージとの違いを感じた人たちも多くいたのではないだろうか。
橋下氏の発言が、ずれるということも信頼に疑問を持たれた。
石原氏と、太陽の党=たちあがれ日本のかなり保守的な大物政治家達を迎えて、石原グループと橋下グループの体質の違いは、傍目から見ても大きいように見える。
又、個人的に発言される石原氏と橋下氏の路線の違いは大きく、深刻な対立も起きるのではないかと、指摘されている。
このように橋下氏の方向と石原氏の政治志向やイメージの違いで有権者は、安定性に疑問を持ち、思ったように支持は伸びなかったのかもしれない。
また、維新の会の原点の,府市の水道事業の一体化で驚くほど効率が上がったのだろうか。
大阪府や市の行政が、そんなに良くなったのだろうか。(実感がない)
統治機構を変えるだけで、どれだけ効率UPが出来るのだろうか。
府市統合レベルよりも、各都道府県間の二重行政のほうが多いのではないか。
確かに道州制を実施し、府県を廃止して広域行政と各市町村という単位であればお互いの、住み分けが明確になり、地域経済の活性化は期待できるだろう。
中央集権や一極集中を排除しを打破して効率的分散型の経済活性を図ることは、誰も異論は無いだろう。
更に、効率UPは大切であるが、新自由主義的手法で何でも競争とか、文化関係予算を切るのはいかがなものか。
ただ今回の維新の会が府市の実権を握ったために、良し悪しは別にして今まで手を付けられなかった分野(例:給与削減等・・公務員の給与が納税者の民間より高くていいはずはない。)に切り込んだとかの良い面もあるが、補助金カットという荒療治で文楽等は世間の関心も高まり自助努力で活性化しているように見えて、結果的にうまくいきつつあるが、本質的には文化面での行政の役割を放棄しているし、都市の魅力をアップさせ、都市の価値を高めるという政治的側面からも誤った政策であると思う。
本来価値の高い貴重な伝統芸能は、行政が文化財の一つとして保護すべきものであろうし、それを核の一つとして町おこしや観光振興に利用すればよく、政治家としての知恵がない。
大阪の文化行政は、イルミネーションや、マラソンやその他イベントといった、企画会社が提案しそうな底の浅い文化振興をしているように見える。
イルミネーションやイベントも悪くはないが、地方が世界に誇る財産を放置して、違う方面に金を使うなら、文楽の魅力をもっとアピールするように金を使ったほうが良い。
マスコミも、府市の行政改革の評価を報道していないので、なんとなく大きな成果が上がっているように見られているが、実態はどうなのだろうか。
廃止や合併すれば、誰がしても一時的にコストカットが出来て成果が上がるが、問題はコスト対サービスの関係である。
マスコミは、維新体制の府市の現状を検証すべきである。
いま、大阪府市が沈んではいないが、かといって輝いているようにも見えない。(イルミネーションは輝いているが。)
それでも比例代表の票を見る限り、維新の統治機構の改革や既得権益廃止といった表面的スローガンが、かなり全国的に支持されつつあることが見て取れる。
次に第三極として注目されたのは、未来の党である。
しかし、卒原発を掲げて多くの国会議員が参集したが、現実には自民党を除くほとんどの党が脱原発を掲げており、その差は廃炉時期の違いにすぎなく、未来の主張は埋没し更にその具体策が明らかでない点も指摘された。
更に未来の実態が、小沢氏主導ということが見えてきて、多くの有権者は未来への支持を躊躇したのではないだろうか。
また未来に参加している国会議員は、議員実績の浅い人も多く、知名度も無く未来は支持を得られなかった。
その政策についても、小沢氏グループの国民の生活が第一の政策が主体となっていて、古い民主党のマニフェストがベースで、国民から注目されなかった。
その結果未来は、完敗した。
消費税増税に関しては、投票率が低いにしても、批判票が少なく自公が圧勝しているのを見る限り、国民の判断は三党合意を認めているといえるのではないか。
国民は増税は嫌だけれども、ギリシャのようになるのを避けるためにはやむをえないと考えているのだろう。
社会保障と税の一体改革については、問題が複雑でよく分からないので、国民は三党合意の実施状況を見ようと言う姿勢のように思われる。
今回の自公圧勝の要素に政策面や外交防衛面と、宣伝手法による影響もあるのではないかと考えている。
宣伝手法において、自民党がネットを活用しているということが報道されていた。
自民党のSNSでの発信は民主党とは大差があったという。
その意味で、自民党の主張がネット上にシンパを増やし浸透し有利に働いたかもしれない。
もう一つ、ネット上では、過激で単純な意見が通りやすく、実証的で批判的な意見の交換が少ないといわれる。
ネット上では、まことしやかな誤った情報や推測情報を、本当らしく語ったり、根拠のない謀略説がSNSで大きく広がることが多い。
又、選挙では事実かどうか判定しにくいことでも、例えば「失政」といった言葉や「ばら撒き」といった言葉で切り捨てられることが多く、これに対する反論が無ければ、「そうなんだ」となんとなく多くの人が信じてしまう傾向がある。
ある若い主婦層の集まりで、みんな同じネットの情報を見て集まり、単純にネット情報のみを信じて右傾化する実態を報道していた。
彼女らは、他のマスコミの論調にほとんど接していないので、批判的見方が出来ず、無批判に鵜呑みしてしまう傾向がある。
SNSの仲間内では、自分達の意見や知っている事実が、世の中の真実と思い込みやすい空気があって、外部の意見や、客観的事実を知らないことが多い場合が多くあるのではないだろうか。
その意味でも、やさしく実例をあげ、間違った事実を訂正し、正しい政治情報を一般大衆にわかりやすく親しみやすい形で流すことは、すべての政党の責任でもあるし、政党がネットでの広報活動を強化することが、必要と思う。
外交面では、中国の尖閣問題を中心の絶え間ない挑発的な姿勢や、韓国の竹島に関する姿勢、それに北朝鮮のミサイル発射は、いやおう無く危機管理や日本の国防問題をクローズアップさせ、必然的に日本全体を右傾化させる方向に作用し、自民党に有利に働いたであろう。
今後、この問題は、中国や韓国や北朝鮮が挑発行動をとるたびに、日本全体を右傾化する方向に吸引力を与えるだろう。
政策面では、自民党がTPPへの態度をあいまいにしていることが、有利に作用していると思われる。
農協は、反TPPで結束している。
民主党は、一応TPP交渉参加を打ち出しているので、農業関係者の票が自民党に流れた可能性がある。
しかし実際的には自民党内にも様々な意見があり、交渉参加への方向性を出さざるを得ないのではないかとも言われている。
民主党の敗北結果の理由としてはそれ以外に、マネジメント能力の低さもあるのではないか。
政治主導といいながら、結果的に官僚に操られたとも言われる。
党から議員が流出したのも、党のマネジメント力の不足の表れだ。
人材も不足しているのでは。
労組から自動的に人材が供給されているようでは、いい人材は得られない。
参院議員選挙や次の衆議院選に向け人材を公募するのも一つの方法かもしれない。
同時に、しっかりとした議員研修が大切である。
大臣や政務官になって、知識不足を露呈するようでは、議員失格である。
議員になれば、最低限マクロ経済ミクロ経済や法律の基礎と、官僚や党組織を管理経営するための、経営学・マネジメントの基礎知識はしっかりと叩き込むべきだ。
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